どこにも帰れない旅
今回のリーダーは以前よりも強くなっているようだ、それか以前本気を出していなかっただけなのか、ただ強いと言うのは分かっていた、そして今この状況から逃げられそうにないエネスは一度レニに頼ってみる事にした。
(レニ俺達を逃してくれ!)
(任せて!)
この世界に呼び出し、エネスの背中からライムと同じように出て来て腕を兵士達に向け皆の足に魔力を過度に与え全員酷い転ばせ方をした。
「うわ!」
頭や膝から血を流し倒れていた、ただリーダーは先程持っていたライフルに魔力を最大限に込めこちらに向け打ってきた。
「避けろ!」
エネスが警告するとレニは大鎌を作り出し弾いた、この光景を見た皆は圧倒的に戦力の違うレニを見て怯え逃げる兵士も数人いた、だがそんな敵を見ながらもリーダーはまだこちらを睨んでいた。
「アハハハ!これが才能の差よ!」
レニは悪魔で、人間とは大きく戦力が異なっていたが兵士達は誰1人として悔しそうにはしていなかった。
「もういい、この戦いで勝てても意味がないんだ」
「そうだぞ、あまり煽らない方がいい」
レニに注意したが、話を聞いていないふりをしていた、だが一応は黙った。
少しの間走ると、街から少し離れる事ができた、もう兵士達の姿は1人も見えなくなっていてこの状況に皆安堵した。
すると、メニフが息を切らしながらエネスに質問をした。
「エネスって足速いか?」
「あれぐらいの距離なら普通に走れるよ」
「良かった!流石に2人背負って逃げんのは疲れる!」
エネスは笑いながら言った
「そうだったか俺も足は引っ張らないようにするよ」
「ちなみにさっき召喚した悪魔の名前知ってっか?」
「あぁ、レニだよ」
「いい名前じゃん」
(そうですわよね!)
レニはメニフから名前を褒められ満足そうにしていた。
ライムが地図を開いた、すると嬉しそうな表情を浮かべていた。
「お、どしたライム?」
「それがねぇ」
地図を見せ次の場所を自分の体の一部から触手を生やし指した所は森が生い茂っているような場所であった。
「ここは?」
「僕の故郷のリエニアだよ!」
ライムが楽しそうにしているのは正直言ってずっと一緒にいたエネスも見た事がなく、興味が湧いていた。
「そこって獣人族の…」
「じゅ、獣人だと!」
獣人好きなエネスはこの旅がとても輝いているように見えた、きっとこの世界に来てから1番嬉しい事だろう。
だがユディは困ったような顔をしていた。
「なぁ、エネスはここに行きたいのか?」
「そりゃそうさ」
きっとエネスに何を言っても生きたいと言うだろうが、一応はユディも仲間という事で忠告をした。
「やめておけ、ここの3倍は辛いぞ」
「環境がって事?それくらい何とかなるっしょ」
「良いか?そう言って帰って来なかった奴らがどれほどいるか!」
それほどまでにそこへ行かせないようにしているユディを見て少し行くのを断念しようとしているエネスを見てメニフもユディに後押しするかのように言った。
「そうだぜ、少し迂回すれば王都にはすぐ着くぞ!」
少し悩みこのチームのリーダーとして、仲間の意見を受け止めるのも大事だという事で今回行くはずだったリエニエアへは行くのを諦めた。
「分かったよ、もう少し強くなってから行こっか」
「それが良いかもね」
ライムも最初は行きたそうにしていたが諦めたようだ、確かにこの地はモンスターも何もかもが危ない、関わればきっとトラブルが起きる、今回の選択は正解だ。
「じゃあこっちのニデって言う村行く?」
「そうしよう、俺達が本気で走ればそこまで辿り着くだろう」
「そうしようか」
皆が承諾しニデへ向かう事にした、皆は立ち上がりそこへ向かった、ライムは魂の中に入りレニは魂の中で眠っていた。
数十分ほど走っていると近くで、とても高い鳴き声が聞こえ、ユディは皆に警告した。
「皆んな、あそこの林に隠れて」
静かな声でユディが言うと、きっと何か危険な生物が現れたと思い林の中に隠れた、皆は完全に隠れ外から見たら全く姿が見えなくただの林にしか見えなかった。
レニもその鳴き声で起き、エネスの視界を覗いていた。
(どうしたのよ!?)
(それが分からないんだ)
メニフの顔がとても青ざめた顔に変わり、エネス達の少し遠くにある森を指差し、気になりエネスはそちらを見てみるとそこには首が3本生えた天使の中でもかなり強いであろう大きな中級天使が現れた。
「ど、どうする?」
深く考え、ユディは言った。
「やはりリエニアへ入るしかない」
「いや、それだとリスクが高い」
2人は悩んだが、エネスが非現実的な事を言った。
「ならあの天使に勝てば良いんじゃ?」
「まだ無理だろ」
(今の皆んなじゃ勝てるか怪しいよ)
皆は否定したが、今は心強い仲間が5人もいる、たとえ相手が相当強かったとしてもここであの天使を倒せば、金にもなるし武器や防具も作れると言うのもあるが、今はただあの天使を倒したいと言うだけの欲で言っていた。
「大丈夫さ、それに俺は不死身だ」
(エネスは自分を傷つけすぎだよ)
「倒せそうになかったら逃げような」
「ありがとう」
メニフとエネスが前に立ちライムはまだ魂の中に篭り、レニとユディは後衛になった。
今見返せば仲間が多い気もした、ずっとこの仲間で旅をしているのを考えただけで、面白さに狩られた。
「じゃあメニフ達は無理しないでね」
「一つ聞くが、エネスは痛さとか感じるんだよな?」
「そうだよ?」
悲しそうな顔をして、メニフは天使に斬りかかったが横から鋭く尖った大きな羽がメニフヘ目掛け刺しに掛かっているのが見え、助けようとエネスは走り始めたが魔力壁を貫通しメニフに突き刺ささり岩に羽と共に突き刺さった。
「!?」
エネスは驚いたが、心の奥底ではこうなる事は知っていた、知っていながら立ち向かいこのように負傷者を出してしまった罪悪感から、後ろを見る事が今はできなかった。
今はただ驚くことしかできなかった。
「大丈夫さこれくらい」
メニフは大きな羽を引き抜き、神速を出し天使に切り掛かり、右翼に重傷を負わせた。
「今だ!」
メニフは後衛に命令しライムは岩を飛ばし他は熱線を打ち、天使は瀕死のようだ。
「メニフ大丈夫か!」
「だから辞めとけっていったのに……俺は少し寝るよ」
メニフはそう言い眠り回復するようだ、エネスは天使の方へ走り頭を剣で突き刺し、天使は悲鳴を上げ生き絶えたようだ。
「エネス、こうなる事はどうせ分かってたんだろ?」
「でも、まさかあそこまで強いとは」
「否定はしないんだな」
ユディはメニフが心配で傷を見に駆け寄った。
エネスはユディと2人一緒にいるのはまだ慣れないようだ、だからと言って今回起きた件はエネスのせいであり、ユディの圧の掛け方に否定も何もできなかった。
するとライムがエネスに近寄り、何か言いたそうにしていた。
「なぁ、エネス……ここから離れた方が良いかもしれない」
「なんでだよ」
メニフは死んでいないが、悲しそうな表情を浮かべているエネスにこれから言う事を伝えるのは少しライムも悲しそうにしていた。
「天使がレニの魂を奪ったんだ、それでアレはもっと恐ろしい天使に相応しくない生物になる」
「レニが?」
続く