表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想は程遠く  作者: GiruSIN
第一章 夕暮れと別れの決断
22/28

強者故の愉悦と孤独

両者睨み合い、先に先手を打ち熱線を4方向からうった上位悪魔であったが剛鉄の帽子を大魔族が振り下げただけで全ての攻撃は弾け飛んだ、こんなにも綺麗で圧倒的な戦いは、弱者からしたら恐怖でしかなかった。

抵抗もできず、ただ見ることしか許されないこの空間から皆は逃げ出したかったが、この戦いにはどこか4人を引き寄せる様な要素があった。


「貴方は何が目的なのかしら?」

「視聴者を喜ばせるのが目的ですよ」

「こんなことで視聴者が喜ぶとでも?」

「最後には幼女の悲鳴がずっと鳴り響くんですから、皆さんたまりませんよ!」


魔族が狂気的な事を言うと、鋼は悪魔の鎌を真似したのか赤黒い鎌と灰色の釜が混ざったかの様な鎌が四つ付いた鎖鎌を作り出した。

残りの鋼は魔族の周りを漂っている、きっと攻撃が来たらアレで防ぐのだろう。


「そんなしょぼく、強くもなさそうな物で私を殺そうと?」

「殺しはしませんよ」


魔族が悪魔に急接近し体を回転させ、鎖鎌を直撃させたかと思うと魔族を狙う大きな鎌2つが鎖鎌の攻撃から悪魔を守った。


「俺たちは何をしてれば良いんだ?」

「助けが来るのを待つしか」


ちなみに魔族の口元にある濃い魔力の玉は、一時的にラジオの番組を乗っ取りランダムの番組で放送している。


「でも助けに来ると思うか?」

「来ないだろうな……」


絶望を味わいながらこの激戦を見ていると、突如この空間が大きく何度も揺れた。


「何だ?」


魔族も動揺している様だった、揺れがおさまると1人の青年が煙幕の中に立っているのが見えた。

その姿は以前中級天使を瞬殺した、勇者だった。


「勇者ぁ来た…」

「まさか来るとはな!」


2人は驚いていたが、エネスはそんなに詳しくは知らなく驚きもしなかった。

すると勇者は宙へ舞い悪魔に一撃を与えようとしたが、それも大鎌で威力を相殺されてしまった。


「そんなんで僕を止めた気か?」


剣が光を帯び、悪魔に一撃を与えた、これはほんの一瞬の出来事だった。


「勇者の一撃!」


悪魔を切っただけだと言うのに凄まじい風がこちらに押し寄せ、今にも吹き飛んでしまいそうだった。


(こんな一瞬でアレを倒したのか!?)


エネスが圧倒するのも納得だ、あの大魔族ですらあの力を持っていたというのに、それを裕に超える勇者はさすがと言っても良いほど強かった。


「勇者は本当にネリエンテを持ってるんだな……」


その言葉を聞いた事がないエネスは少し興味を持ちユディに聞いてみた。


「何それ?」


驚いた様な表情でユディはエネスを見つめ言った。


「そんなんも知んないのか!?アレはな伝説の剣なんだ」

「選ばれた者しか受け取らない的な?」

「そんな感じ」


きっと説明すると長くなり説明を省いたのだろう、そんなことよりも今勇者がこの空間から出て行ってしまった。


「本当に一瞬だったな……」

「勇者が来たらいつもこんくらいのスピードで戦い終わるのさ」


エネスは一度勇者視点でいつもの戦いを想像したら、人生つまらなそうだな、と思ってしまったが実際はそんな物なのだろう、こんなに早くも戦いが終わってしまうのだから。

こんな勇者の人生、誰も見たがらないだろう。


(おい、まだ)


ライムが何か言うといつの間にか目の前に右肩に剛鉄を付けた大魔族が立っていて、こちらを見て笑っていた。


「私の名が先ほど聞こえて来ましたが、私は有名なのでしょうか?」


少し間が開いたが、こいつだけは怒らせてはいけないと皆知っていてメニフがすぐに、事実を伝えた。


「有名ですよ」

「それは良かった!それではまたいつの日か……」


亜空間魔法で地面の中へズルズルと引き摺り込まれ、最後には完全に魔族の姿が見えなくなった。

こんなにも一瞬の出来事で半放心状態だったエネスは悪魔の死体を見にいく事にした。


「うわぁ、痛そ」

切られた後は肩から腹までざっくりやられていたが、まだ生きている様だ


「初めはすまなかったな」


何の事だったか忘れてしまったが思い出してみる事にしたがやはり思い出せなかった。


「お前にして欲しい事がある」

「何ですか?」

「私と契約を結んではくれないか?」


考えてみたが、役に立つとは思えなかった。


「やだ」

「……だが私は強いぞ?」

「うーん……」


仲間にするんだったら性格が良い方が好きだったエネスは、この悪魔を仲間にしたくないらしい。


「いったい何なら……」


だが仲間は多ければ多いほど楽しそうだったのでやはりパーティーに入れる事を決断した。

その分仲間が死ぬ可能性も高くなると言うのに。


「どうせ契約でしょ?なら悪さもできないだろうし仲間になっても良いよ」

「え、ありがとう」


そう言うと悪魔はエネスの腹に手を当てその中に自分から入り込んでった、2回目だがとても不思議な光景だ。

悪魔が魂の中へ入り込みライムと出会った様だ。


(聞くの忘れてたけど君の名前は?)

(レニだわよ)

(戦闘力はそこにいるライムより上?)

(この子は強いけど私のが上ね)


自慢げに言うと突然魔力が遮断された、今までこんなことはなかったのに不思議だった、何者かに干渉されている気もしない。


(ど、どうした?)


ライムに聞いてみたが返事はない、エネスの様子を不思議に思ったのかメニフが近寄りエネスに質問をした。


「よぉ、何があったんだ?」

「それが、魂に繋いでた魔力が急に遮断されて」


メニフもエネスも何故こうなってしまったのか、考えているとそこへユディも来て理由を説明した。


「多分、ライムか悪魔がわざと接続切っちゃったんじゃない?」


それをする事によって利益が得られるというわけでもないのに、何故接続を切ったかわけが分からないが半信半疑で今はただ結論を出すよりも、時が経つのを待つ事にした。


「それもありえるね」


するとギルドから増援申請があったのか冒険者が、ダンジョンへ来た。


「へ、兵士がいない?」

「あぁそれなら……」


今まであった事を話し信じたのか、ギルドへ報告しに行くようだ。


「そうですか、では一度ギルドへ帰ります」


兵士が帰ってから少し経つと、接続が元に戻った。


(やぁ、エネスちょっと接続が悪かったみたい)

(そうですわね……)


きっとライムがレニに何か話したのであろう、レニの威勢が薄れているような気がしたからだ。


「ライムお前なんかしたん?」

(何もしてないよ?)

(確かに何もしていなかったわ)


きっと何かエネスについての事を言ったのだろうが、これ以上詮索しても意味はなさそうだった。

ただ今は、そんな事よりも天界に行く事を優先したかった。


「まぁ、良いさ天界へ向かおう」

「遠いなぁ」

「この旅の中でいつか第二の勇者なんて言われたりして」

「こんな弱い俺らが勇者か」


エネスはメニフの冗談であろう事が実際に起きたら面白そうで、笑った、きっとこの旅で天界に行きその後も人間や悪魔と話し合い戦争が終わればエネスのパーティーは勇者よりも素晴らしいものになるだろう。

街に行くと兵士がまた騒いでいた。


「どうしたんだ?」


メニフが確認しに行こうとすると、エネスは裾を掴み止めた、そこにはリーダーと呼ばれていた者がいたからだ。


「いたぞ!」


兵士がエネス達を指差し大勢で追いかけて来たが。まだ2人は気づいていないようだ。


「このまま天界の方に逃げるぞ!」

「追われてんのか?まぁ逃げるしかないよな!」


メニフが2人を掴み、兵士達がエネス達の方に追いかけてくるがその上をメニフが飛び、天界のある方向へ走り出した。


「な!あっちだ追え!」

「何だよあいつら!」


ユディが強力な風魔法を殺傷能力はなくし、使った兵士達は皆転んだ。


「今度は逃さないぞ!お前ら諸共死刑だ!」


リーダーがそう言うとライフルを取り出した。

それを見てメニフは、驚きユディに命令した。


「ユディシールドを貼れ!」

「分かってるさ!」

「俺も貼っとくよ」


2人が魔力壁を張ったタイミングでライフルは発射され、魔力壁を貫通したが威力は貫通した後人が誰かに指で優しく触る程度の威力になっていた。


「このまま行けば逃げられる!」

「捕まってたまるか!」


きっとこのまま捕まってしまえば、メニフやユディも死刑となってしまうだろう、きっと2人はそれも理解した上で仲間になってくれたのだろうがこんな死なせ方は嫌だった、だからと言って今ここで兵士などを殺すわけにはいかない、そうすれば完全に悪になってしまうだがどうすれば良いのだろうか、そう考えたエネスはレニにこの状況を打開してもらう事にした。


続く

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ