永遠を背負う人間
だが今のエネスのパーティには、一般論的に仲間と言えるか曖昧なスライムがいた、それがいるのに入ってくれる人間はなかなかいない気がしていた。
「でも俺の仲間にスライムがいるのに、入ってくれるのか?」
「契約してるんだろ?ならモンスターとか関係ないさ」
「そう言ってくれるとありがたいよ」
ライムの事はきっと最初からバレていたんだろう、だが知っていたと言うのに迫害的な態度を取らないでいてくれた事には感謝していた。
「犠牲者がこれ以上出ないためにも、早く行こうぜ!」
「まずは天界だね」
天界という言葉は聞いた事はあるが、場所までは知らなかったエネスも、困っているようだ。
「それで、天界ってどこ?」
今のエネス達のパーティーで天界の居場所を詳しく知る者はいないが、浅く知っている者はいたユディだ。
「詳しくは知らないけど、エンゼルトの少し先にあるらしいよね
「そもそも先がどこだよって話だな……」
「たぶんエンゼルトの北じゃない?」
このパーティーの中で最近エンゼルトについて知った者はエネスで、本の中にはエネスの故郷から北にエンゼルトがあるから天界もエンゼルトの北にあるはずだと思った。
「ハハ!だとしたらめっちゃ長い旅になるな!」
「抜けたかったらいつでもこのパーティーから抜けてね」
「この世界を幸せにするまではこのパーティーからは抜けられないよ」
皆はこの先の旅を思い浮かべて、ふいにも笑ってしまった。
そうして階段を降り外を見てみた、そこは人の死体や天使の死体さらには悪魔、ここまで酷い光景は見た事がない。
「やっぱり人もか……」
「黎明戦が起きるのを知っていて逃げなかったこいつらも悪い」
(俺のせいだよな、これ)
(気に病む事ないさ、今はどうする事もできないんだから)
ライムは肯定してくれているのか分からないが、今はどうする事もできないから、これ以上深く考える必要がないというのは確かに良い事かもしれないが、自分のした事をもう少し深く考えても良い気がしなくもない。
「もし、これから天使や悪魔、人がこの戦いで争っていたら止めよう」
「それが良い」
「少しでも死者が減るならそっちの方がいいね」
皆がエネスの意見に賛成の意思を示してくれて、嬉しそうにしていた。
「ていうか、その仲間のスライム攻撃性ないしめっちゃ頭良いな」
「確かに」
1番長く共に助け合っていた仲だというのに、その点について全く気にしていないエネスにライムも驚いていた。
こんな話をしているうちに今度は街へ着いた
「スゲェ」
この西洋風のさっきの町と比べたら発展していた、街に圧倒されていたエネスを見てユディは笑った
「確かに凄いかもね」
「何で笑うんだよ!」
「いや、今まで王都にいたからここが小さく見えただけだよ」
エネスからしたらこの街は大きいはずだが、メニフ達からしたらまだ田舎の様なものらしい。
ライムが地図を確認すると近くにダンジョンがあるらしく、そこに寄ってみようと声をかけた
「近くにダンジョンあるらしいからまずそっち行く?」
「そうだな、金もたいして持ってるわけじゃないしな」
ダンジョンでモンスターの部位を取ってきて売る事にした。
ダンジョンに着くともう1パーティーがダンジョン内へと入っていくのが見えた。
エネスは突然ダンジョンを前にし立ち止まった
「今更なんだけど皆んなの名前って何?」
「そういや教えてなかったな、俺はメニフ・ギアティ」
「僕はユディ」
「いい名前じゃん、俺はエネス・ルペラ」
「僕はライム」
皆が自己紹介をするとメニフは、エネスから距離を置き、怯えた様な表情を見せた。
「もしかして、おかしいと思ったんだ」
「やっぱりか、こんな幼いのに旅なんてどうかしてると思ったよ。」
2人がおかしな事を言っているとエネスは思ったが、今思い出したエネスはまだ冤罪をかけられている事に、情報としては幼く7歳ほどの身長をした少年で名前はエネス・ルペラ
「え?」
「エネス!まだお前は冤罪をかけられてる、もう逃げるしかない!」
「仕方ないよな……」
エネスとライムはその場から立ち去った、メニフ達も途中まで追いかけてきたが、諦めたようだ。
「流石に仲間と別れるの多いよ……」
「話せば分かってくれるかもよ?」
「どうせ村の人達と同じだよ」
仲間になれると思っていた者達と別れるのが案外辛く、病み気味になっていたが転生前と比べたらこれくらいの事は軽く挫けていない、それとも慣れてしまったのだろうか?
ライムはとりあえず魂の中へ入った
(まぁ、街の中に入ろう仮面も別の物を買おう)
「それが良いね」
街の中へ入ると、今まで見てきたところとは格が違く人で賑わっていた、商人が出歩いていたり店の数も今見てみただけで15店舗は変えていた。
「凄いな」
生で見てみると想像よりも栄えていて、村と違って夜になっても音は絶えなく聞こえてきそうであった、まずは洋服屋ではなく魔道具屋の中で仮面を買うことにした、中は以前通った魔道具屋よりも綺麗で品数も多く気分が上がったが今回買うのは新たな仮面だった
「すみません、なんか良い仮面とかってありますから」
魔道具屋の店主のような人がカウンターの下を漁り出した、商品棚などは綺麗なのに対しカウンターの後ろは汚く埃まみれであった、咳をしながら取り出したのはシンプルな黒と白の線が縦に3本あるシンプルな仮面だった
「これとかどうだい?穏便付きだよ」
「穏便?まぁ良いか、何円しますか?」
「円?……無料だよ」
エネスが穏便を知らなく不思議そうにしているのに対し、円という言葉を知らない店主も不思議そうにしていた。
「じゃあもらって良いんですか?」
「捨てる予定だったし持ってって」
店主が仮面を手渡しで渡してきて、受け取り一礼し魔道具屋を出た後新たな仮面を付け替えた。
「憂鬱だぁ」
外に出ると突然思った、何故自分がこんな事をしなくてはならないのかと、あの時あの5人を助けようとしていなければ……と思ったがあの時助けたからこそ1人の命だけは守れていた、誰1人として守れなかったよりかはまだマシだ。
(なぁ、やっぱ説明すれば分かってくれるはずだよ)
「ライムだって今まで見てきたろ?少なくとも仲間っていう肩書きしか残らなくなるよ、俺の存在なんて」
(……)
何故だか、この後仲間になったとしてもエネスの言った通りになってしまいそうだった、なんせ世間的に見たらエネスは幼くして大犯罪者、ずっと警戒されたままだそんなのは分かりきっているからこそ何も言えなかった。、
(何をしても俺は一生変な理由で叩かれるんだよ)
(なら一回メニフ達に説明してみれば良いじゃないか)
どうせ結末は分かっていた、エネスは前世でネットを見ていたが犯罪者が牢から出てきた後に自分で作った料理を上げただけで屁理屈と言っても良いほど変な理由で犯罪者であった事を叩く人間が現れる、もし本人が冤罪だと分かっていてもそれをガミガミと言う、人として終わってるような奴は一生そいつにまとわりついて来る事……そんな事が起きてしまうのならば、いっその事風化させてしまえば良いとも思ったが、それでは一生罪人として生きる事になる、ライムしか知らない本当の優しさで犯罪者になってしまう、そんなのは嫌だっただからほんの少しだけでも、と希望を持ってみた。
(俺の話に耳を貸すと良いな)
もし襲われたら今までの経験上妖精が言っていたことも踏まえ、きっとメニフ達を殺してしまうだろう。
ダンジョンに着いてしまい、中へ入るとホブゴブリンと戦っているメニフ達が見え、とりあえず手助けする事にした。
(ライム、俺が喋ればバレそうだし、あんま喋ってなかったライムが喋って)
(了解!)
先程少ししか喋らなかったライムに声だけ任せる事にした
「エネス!?じゃないよな、手助けありがとう!」
ホブゴブリンに隙を作りユディが熱線で頭を撃ち抜いた。
「ありがとう、名前は?」
(ビジェアです)
「ビジェアです」
案外上手く喋れていて、まるでエネスとは別人のようだったが、ユディは見抜いていたのか熱線を放った、それを見てメニフはとても驚き引いていた。
「な、何やってんだよ!」
「こいつは重罪犯だ」
「は!?だからって何もしなかったじゃねぇか!」
とてもメニフは怒っていたが、ユディは落ち着いている、メニフの言った何もしていなかった、は確かにメニフ達の前では何もしていなかったが過去にした罪を償っていないと言う事でスルーした。
「こいつは4人を殺したんだぞ」
「……とてもそんな奴には見えなかったぞ」
「そう見えなくても、あいつはしたんだよ!」
この光景をエネスは見ていて、とても辛かった自分のせいで周りの人間が争う事が。
すると我慢できずにライムが腹から出てきた。
「お前ら、エネスがそんな事するわけないだろ!」
「魔物のくせに!」
熱線をユディが放ったがライムが泥を瞬時に固め防御した。
「話は聞け」
「そうだユディ、もし冤罪だったらどうするんだよ」
恥ずかしそうにしながら、ユディは杖をしまい話を聞くような態度を見せた。
「よく聞けよ、エネスは異界から召喚された5人を僕から守るため逃したけど、村に行くと4人誰かに殺されてたんだよ、1人は全身火傷してたんだ」
「メニフ、どうせ犯罪者の契約モンスターの言う事だ、信じられるか?」
「でもこいつからは魔力の揺れも、オーラも出てない」
メニフは聖職者の能力を何故か持っており、シスター同様怒っている時や焦っている時などをオーラで判断できる能力を持っている。
その能力を知っていたユディもやっと納得したようだ
「うーん、なら信じるしかないか」
「でも、お前が信じた所でエネスが許すと思うのか?」
続く