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視えない私のめぐる春夏秋冬  作者: shiori@


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第一章「視えない私のキャンパスライフ」7

 食堂に向かう途中に予期せぬことに巻き込まれたが、私達が立ち止まっていると静江さんが心配そうにやって来た。ミスコン運営委員会の人達のことを知っているようだった。

 

 私達は静江さんからさっき話しかけてきた男性が坂倉井龍(さかくらいりゅう)さんという名前の医学生四回生であること、さらにその隣にいたのは男性の彼女と噂されている去年のミスコン一位にも輝いた鏡沢涼子(かがみさわりょうこ)さんであることを教えてくれた。

 

 美男美女として有名で数年前から諸事情で非公式になったミスコンを主催する運営委員会のメンバーなのだそうだ。

 いつも二人で行動しているわけではないが、二人から勧誘されることはそれすなわち、主催する委員会側から推薦されているようなものらしい。


 二人が優れた容姿を持った女性に話しかけているのは、きっと周りからも色んな意見や要望を聞かされているからだろう。盛り上げるためには美人を揃える必要が迫られる、そう考えれば多少は仕方のないことなのかもしれない。


「それにしても、恵美ちゃんはよく食べるね」


 私は深く考えると疲れてしまい、話題を変えようと思い言った。

 最初の頃は遠慮していたようだけど、最近になって恵美ちゃんは食欲旺盛であることが分かって来た。今日もカツカレーとフルーツポンチを無邪気にガツガツと音を立てて美味しそうに食べている。ちょっと太らないか心配になるほどだ。

 

「午後も長い講義がずっとあるから……今日一日を耐え凌ぐためにはしっかり食べないとやっていけないよ」


 恵美ちゃんはご飯を食べている時は機嫌よく、しみじみとそう言った。

 前に食べることが生き甲斐とも言っていたのは本当のことらしい。


 私は講義を聞くのにそれほどストレスは感じないが、恵美ちゃんは眠そうにしながらノートを取っている。

 時にはこれは忍耐力の勝負だと、夕方まで講義が続く大変さを力説していた。


 確かに座学が多いのは少々退屈に感じてしまうところはあるけれど、今から鬱屈したまま講義を受けていては先が思いやられる。だから私は純粋に一日を通して何か学んで帰ろうと思って前向きに取り組んでいる。


 それに、私のためにサポートしてくれる人もいてくれている。その気持ちを無下にするわけにはいかないから、やりがいを持って頑張ろうという気概でいるのだった。


「それにしたって、栄養バランスは考えた方がいいと思うわよ」

 

 真面目な静江さんは、あっという間に平らげてしまった恵美ちゃんの食いっぷりを見て言った。


 美味しそうなカレーの香辛料の香りを食事中ずっと嗅ぎ続けることになり、私は静江さんと同じランチメニューを食べて、午後の講義に臨んだ。


 四年間ある慶誠大学でのキャンパスライフはまだ始まったばかり。

 私は私らしく、出来ることをやって行こうと前を向いた。

 

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