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⑨茜フルパワー

鹵獲した少女はうちで預かることにした。


どうしても静を手籠めにしようとした連中が心配だったからだ。

下着のサイズはさすがにわからないので茜に測らせそれを買って来た。

相変わらず店員の視線が刺さったがこれは仕事なので気にしなかった。

まだ夏なのでTシャツとミニスカートも買ってきた、ブルーと紫だ。

彼女を最初に見掛けた時のイメージに近づけた。

寒い夜のためにカーディガンもついでに買った。

寝る時は俺のスウェットを着てもらう。


半日ほど後ろ手錠のまま転がして置いたがこれでは全然捕らえてきた意味がないのでそれを外した。

言語は英語だったのであまりよく分からなかったが翻訳アプリを使いながら会話を試みた。

I don’t know why I am here. これはアプリなしで分かった。

なんでここに居るのかはわからなくて当然だろう。

君は捕虜だと俺は伝えた。

そして我々に敵意がないことを伝えた。

これに着替えて欲しいと伝えると頷いたので脱衣所に案内した。

なかなか出て来ないのでちらっと覗いたらブラが付けられないで居た。

もう割と慣れてたので後ろをぱちんと止めた。

あまり見てしまっても可哀そうなので表で待っているとすっかり普通の中学年生にしか見えない姿で出て来た。


学校が終わり慌てて静が駆け付けた。

他愛ない会話をしていただけだったのだがまた新しい女を口説いてると思ったらしく後ろから蹴られた。


「静さん誤解です。捕虜の女の子をここでリラックスさせているだけで変なことは一切してません」と丁寧な言葉で反論した。

静はある程度英語が出来るので彼女と会話を始めた。

すると一部聞き取れるのでわかってしまったがロフトを絶対に登らないよう注意していた。

それって警戒されるんじゃと思ったがまた蹴りを喰らうのは嫌だったので何も言わなかった。


「真弘さんのうちで預かったんだふぅん。またいろいろ遊べるね」

と静さんは呆れたように言って来た。

信用の無さが酷かったので思わず少し涙ぐんでしまった。

はっと気が付いた静はこちらを向いて抱きついて謝った。

もう少し慣れてきたら静や茜と出掛けたりして欲しいと頼んだ。

危険がないと判断したらお願いすると言った。

俺が出掛けてる間は茜にお願いした。


久しぶりに大学のサークルに参加した。

テニスはあくまでお飾りなのだが180km/hのサーブを叩き込んでいた。

戦闘ではないところで身体を動かすのは気持ち良かった。

その後懇親会のようなものが開かれそれにも参加した。

一年生でも普通にお酒を飲める。

くだらない法律を無視してて気持ち良かった。


しばらくすると隣に同じ一年生の女の子が座った。

テニス上手いんだねすごいと言ってきたがちゃんとやってれば普通だしテニス部に行けばもう少しうまい人が何人か居るんじゃないかなと言った。

雑談してる途中で今度二人で遊びに行かないと言われた。

デートのお誘いだった。

静も茜も生徒だったからモテても不思議なかったけど同じ大学の同級生からの誘いは嬉しい。

しかし彼女いるんでと断った。

その後二人からデートの誘いがあったがこれも断った。

モテ期が来ていようと静以外にあり得なかった。


塾の無い日は静が面倒をみてくれていた。

やはり胃袋を掴むのが大事というので炒飯を作っていた。

俺まだそれ食べさせてもらったことないと小さな声で伝えると、二人分はあるから心配しないでと言ってフライパンを上手に前後させていた。

静がいただきますと言ったので我々も続いた。


日本語の習得が速いというよりネイティブなんじゃないかと思えてきた。

顔立ちが綺麗だから最初は白人かと思ったがよく見ると肌に色素もあった。

すると呼び鈴がなり開けてみたら茜の本体がいた。

追い返すのも可哀そうなので部屋に入れるとこれが例の敵の子だねと言った。

俺が作ったパスタを食べていた静のフォークが止まった。


構わず茜本体(以下茜)はテーブルの前に座った。

そして差し入れと言って美味しそうなお弁当をくれた。

静が彼女を睨んだがまったく意に介してないようだったので、この間きちんと告白は断ったはずだが何故と聞いた。

わたしは振られたけどもう一人のわたしは振られてないよ。

まるで恋人のように息が合った戦闘してるしね。

この茜は戦士茜と完全にリンクしていた。

なのに戦士茜のコミュ障的な部分がない。

「あの子がいることがわかってよく理解できたんだよ。あの子もわたしもあなたが好き。同じだったんだ」と言うとロフトを登り始めたので目を逸らした。

前はあんなに興奮してくれたのに見なくていいの今日も真弘が好きな白だよ。

怖いので今度は静とも目を逸らした。


「だいたい真弘とわたしがちょっと微妙になった時期に盗んでいっただけじゃない。認めないよそんなの」

今日の茜は迫力があった。

たぶん戦士茜が少し混ざってる。


「隙を見せたのが悪いんですよ。好きなら捕まえて置かなきゃ彼女失格だもんね」

静も引かない。


「今日は宣戦布告に来ただけだから」

と言って俺に満面の笑顔を見せて部屋を出ていった。

部屋に戻ると静が茜の弁当を食べていた。

美味しかったのか悔しそうだった。

ちょっと手伝おうかと言ったら断固拒否された。

まずは胃袋からと唱えながら食べきった。


そんなことより相談があると言ってロフトを二人で登った。

俺が先になったのでやり直して逆にした。

静は真面目な話だと思って黙っていたので単刀直入に伝えた。

性欲が抑えきれないと。


だいぶすっきりしたので降りて行った。

俺が先で。静は真剣な顔をして降りて来た、今日はピンクだった。

静が言う前にちゃんと伝えた、もう一人の茜にも気持ちを伝えると。

するとやっと安心したのか抱きついてきたので強く抱き返した。

敵だった少女は不思議そうに我々を見ながらそしてロフトに目をやった。

静が先に気が付いたので両目を手で隠された。安心はしたけど警戒は怠らないらしかった。ロフトの上には布団もある。

一階にもあるがなんとなく寝れるように。

あと漫画が大量に積んであって敵の彼女は熱心に見ているようだ。


「彼女が慣れてきたら茜と遊びに行って欲しかったんだけどもう無理だね」

そういうと静は首を振った。愛されている実感があるので全然構わないと。

静がまたロフトに登っていった。ピンクをじっと眺めてまた抑えきれないリビドーが襲ってきた。帰り道静と手をつないで帰った。

あの後は敵の彼女に日本語と料理を教えていたらあっという間に時間が経ってしまった。

二人の時間が性欲処理だけになってしまって申し訳なく思っていた。

茜の宣戦布告もストレスだったろう。

明日は二人きりの時間を増やそうと思った。


彼女の名前は赤井玲奈というらしい。

顔認証でネットを探したら一致したと。

夏の間我が家で静や茜と過ごしたが敵対心はなかった。

なら何故敵として現れたのか。

マインドコントロールの可能性が十分あったので寝返ったら茜が即切るという条件で戦闘に参加させることになった。

切られたスーツは技術班が直してくれていた。これだけ早く戦闘要員にしたのは敵の強さが上がってきたからだ。


我々の軍備は変わっておらず特攻で敵をやっつけることくらいしか思いつかない。

静が玲奈にずっと話掛けていた、励ましているようだった。

茜と玲奈は同い年だったが二個下の静も頑張っていた。

今度も人型が真ん中に居たがその横には正方形のロボ型も居た。

今回は我々がいきなり本陣に向かった。

戦車隊は右と左に分かれ真ん中には大量の塹壕を掘り歩兵も向かう。

エイブラハムは目一杯の火力で本陣を叩く。

敵の数を減らし集中砲火を正方形に与えるがやはり硬い。

玲奈は超加速で敵人型を急襲した。


お互いの動きが速くきちんと見えない。

俺は戦車を降りXM7で硬い敵に弾丸を打ち込む。

近距離なら多少効果があった。

しかしエースはやはり茜だ突撃する前に茜は笑みを俺に浮かべた。

間違いなく茜の本体だった。

大きくビームソードを振りかざしながらジャンプ。

そして一撃で四角を撃破した。

すかさず玲奈の援護に行きスピードの差で追い詰め真っ二つに切り刻んだ。



玲奈に裏切り行為はなく茜はさらにパワーアップしていた。

本人のお出ましだった。

戦闘を終えると俺は不意打ちで茜にキスされた。

望遠中継で静にも見られただろう。

だがここは戦場なので流石に痴情は気にしない。

二人の活躍に拍手が上がった。

我々は二人のオーバーテクノロジー少女を手に入れたのだ。


負傷兵の手当で忙しい静にも少し休むよう伝えた。

笑顔だったがその手は血糊でびっしりだった。

ここまで付いてきてくれた彼女が誇らしく強く抱きしめた。

すると轟音がした後大きな爆発が近くで起こった。

エイブラハムが三台破壊されていた。


すぐ外に出ると共に地下壕への避難を指示した。

やはりというか空に人型が浮いていた。

すぐさまXM7をぶっ放す。

.277 FURY弾が何発か当たった感触があった。

気が付くと空には居なかったがすぐ傍に居るのは明らかだった。

玲奈には出ないよう通達した。

戦車の後ろに隠れながら敵を探したがこれは意味がない。

エイブラハムごと俺を吹っ飛ばす火力があるからだ。


茜は本部から敵発見の報を待っている。

他の歩兵が出鱈目にうっても反応はない。

すると茜が大きく飛び上がりそのまま宙から敵を探した。

発見と同時にビーム銃を放つ。

確実に相手を捉えて敵は完全に孤立した。

俺と歩兵がいっぺんにありったけの弾丸を打ち込み勝負は付いた。


茜ありがとう。

君のおかげでまた勝てたと礼を言うと今度はこの隊全員の前で俺にキスをした。

何をすると口を拭き静を追った。

静は泣きながらしゃがみ込んでいた。

そっと包み込むように抱きしめた。

この子は何も悪くない。

なのになんでこんなに酷いことをするのか本物の茜が。

魔性の愛にぞっとしながら自分ではなく静を守らないといけないと決意した。


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