⑤My Girl Friend
最近の戦闘は小競り合いだけだったという。流石にそれではこの時代で戦う意味がないと言うことで殲滅戦に出ると隊長は語った。長射程の武器はあちらは皆墜とせるという。接近戦で特に火力を叩きこむしかないと自走式の対戦車砲があまり効かなくなっているとも伝えて来たのでもう降参した方がいいんじゃないですかね。というとアレは人間では無さそうなので白旗上げても無駄だという。いろいろな意味で詰んでいた。出撃前に茜に聞いた。何故アレと戦うのかと。すると以前とは違う答えが返って来た。
「わたしはあっち側に所属していた。だが殺戮を繰り返すだけに疑問を持ちこちらに来た」と茜は言った。あっち側に居たと言われてもどうみても人間だ。アンドロイドでも無さそうだし信じていいのだろうか。茜がアレたちなら超性能があっても不思議はない。ロボットとかわりとポンコツだが人型を開発したのならそれは特別な兵器だろう。茜が嘘を付くタイプではないので余計に混乱した。確かに射撃の腕は凄い。ほぼ100%相手を倒す。俺のは単なるばら撒きだった。出撃時刻が迫ったので静にキスをした。不思議そうな目で茜はそれを見ていた。分かり易く中ボスが居た。卵型で起立していた。あれがどういう動きをするのか。じりじりと固まり過ぎないように敵陣に近づくと敵が撃って来た。主にロボットが放つビーム砲だが戦車の装甲にはほぼ意味がない。卵だけに気を付け全身すると走ってくる影があった。人型だった。ビームライフル銃らしきものを放つと戦車の装甲を破り破壊した。後退して遮蔽物に隠れるように指示した。
「茜あいつはお前と同じなのか」と聞くとたぶん違うと言うと一気に敵陣へと走って言ったが桁違いの速さだった。ビームライフルで雑魚を倒しながら卵と人型に接近してゆく。卵は逃げ出すように動き出したが茜は寸分たがわず同じ場所を打ち続け遂には貫通させ卵は爆発した。接近を知って人型は逃げ出そうとしたが頭を打ちぬかれ動かなくなった。これをみて全軍突撃命令を出した。茜は俺が保護回収したが消耗し過ぎたのか眠りに落ちた。
多少の犠牲は出たが我が軍の圧勝だった。唐突の茜の覚醒に敵の人型は抵抗も出来ず狩られた。卵は力を出す前に撃ち抜かれた。敵軍の人型からライフルを鹵獲したのでこれを次から茜に使ってもらう。
静は負傷兵の対応に追われていたのでわたしも地下に降り労い手伝った。
「ここからでも見えましたよ。茜さんて人間なんですか」作業の手を休めず静は聞いて来た。触った感触では完全に人間だった気がするがと答えていたら睨まれた。前の話しだってきちんと説明した。
「ただあの動きはただの人間には出来ない。強化型人類?そんなものがあるのかどうかわからないがとにかく能力は桁違いだった」静も頷いた。
戦闘を終えこの事実を茜の母親に言うべきか悩んでいた。いや無理だ。娘がこういう戦闘に巻き込まれているのか知らない普通の母親だ。荒唐無稽過ぎて俺の人格を疑われる。静がお風呂から帰って来た。ロングヘアををバスタオルで拭いていた。静についてもそうだ。こんな戦闘にに参加してると聞いたら即やめさせ俺を訴えるだろう。そもそも茜目当てで戦闘に参加したんだった。静を彼女にした今命を懸ける意味を失っている。それにしてももう午後八時くらいだが静の親はなんとも言わないんだろうか。
「図書館終わるまで勉強してるって言ってあるから」と彼女は言った。さすが優等生だった。
「ところで彼女と旅行とかしたいな」と無理難題を突き付けたら静が困って泣きそうになった。すまない。半分冗談だよ。今出来ることをしてくれればいい。と慌てて謝った。とは言え切実な問題でもあった。性交したいと言う気持ちが強くなっていた。それは倫理的に大問題なのに気持ちは強くなってゆく。会うたびに気持ちは揺るぎがないものになっていくのに実際は嘘を付いてデートしなければならない。塾なんてやめてもいい。しかし先生じゃなくなった俺は果たして静に受け入れられるのかも疑問だった。
「わたしとのことで悩んでる先生」心配そうに静が聞いてきたから何も心配ないと俺は言った。
午後9時前に送ってあげることにした。ここから歩いて20分程度だった。物理的には近くても他の面で遠すぎると感じていた。
茜はいつも通りだった。この間の疲れも取れてマイペースに生きているようだった。英語の授業を終え残りは数学にしようと思ってたら母親がお茶菓子を出してくれた。
「静とは上手くやっている」と突然聞いて来た。知らないうちに振られて別の子に乗り換えられたのだから不満が… いや違う。そんな感じの質問の仕方ではなかったので普通に順調だと伝えた。
「身代わりじゃなくて途中から彼女はわたしだった気がするけどおめでとうございます」と言われ頷いた。この子は恋愛とかそういうことに疎いというより関心が無い。そしてあの超身体能力。敵の仲間だったという事実。今は一番遠く言感じた。
「鈴、デートしないか。奢るから」と簡単にメッセしたらOKの返事が来た。
「なんだよ彼女の代わりかよ」と聞かれたので申し訳ないがそうだと返事をした。いろいろな制約があってなにもできないことも伝えたところ当たり前だろ、なんかしたらアウトじゃんと言われた。
「こんなことになる前に告白OKの返事してあげればよかった」鈴の言葉に本当にそうだよと思った。
やっぱりロリコン犯罪者だと思うかと鈴に聞いたら首を振って否定した。この間の出撃時彼女を見掛けたんだけどあれはしょうがないわって思ったらしい。綺麗な子だねとも褒めてくれた。
「あとスーツ着てた女の子もやばかった。あっちでもおかしくないよね」と言ったので無言で頷いた。「ただ実際のとこあの子らと手を繋いで歩けないし制約多くて可哀そうだね、二人ともせめて女子高生だったら良かったににね」本当にそう思うが違うんだからしょうがない。どうしたいかは自分に掛かっていた。世の中の多すぎる禁忌を嘆いた。戦争なんだから終わったらLSDくらいやりたいと思った。鈴は若干オタクなので乙女ロードに行った。もちろん俺は外で待機で。
「人生初の彼女出来たんだけどさ。スーツの子を家に上げてるとこ見られて振られたよ」眉を顰めながら鈴はこっちを見た。どっちとも付き合ってたんだと。当たってるので頷いた。
「彼女振ってまで彼女たちに決めたなら大事にしてあげな。わたしは用無しだから帰るね」鈴は一通り話を聞いてくれた後いきなり帰った。
最近塾を終えると静と二人で帰宅していた。もちろん家の少し手前までで。塾の人間にはもう知られてるがやましいことは(帰り道では)してないので堂々と歩いた。ただ塾から親御さんに連絡されたら別れさせられるとも思った。休日になら図書館が閉まるまでデートできるのでどこに行きたいかとかそういうことを話した。今週は海に行きたいというので車を親から借りておくと伝えた。
千葉には小さなビーチがたくさんあるので行川あたりに行こうと言った。出来るだけ早く出ないと夜九時に合わないので出来るだけ早く出た。サイズを測らせてもらって水着を買ったのだが物凄く冷たい視線が店員から刺さった。子供らしく水色のフリル付きセパレートにした。
砂浜に傘を立て場所を確保し静の着替えを待った。麦わら帽子に水着がかわいかった。少し泳げる人間なら小さな島まで行けるので泳げるか聞いたらこくりと頷いた。しかしいざ泳いで見ると足が付かないことに怖くなった様子だったので引き返すことにした。足が付く場所まで戻ると手を引いて歩いたのだが静の胸以上海水がある場所で止まった。後ろから両手を胸に回した。嫌ならすぐやめると言ったが嫌がらなかった。しばらく小さな胸を優しく揉んだ。少しだけセパレート水着の下からも手を入れて。今日で振られるかも知れないなと思いながらずっと我慢してたことなので止められなかった。20分ほどそうしてから砂浜に戻った。アイスを買って戻ると土下座して謝った。ほんとに不愉快だったよね。軽蔑していいです。今振っちゃっていいからと言ったが彼女は首を振って微笑んでいた。どうやら許されたようなのでほっとしてヘタレ込んだ。するとビーチチェアーに腰掛けろと言うので従った。バスタオルを胸に二重に掛けこれなら見えないからいいよと言うのでまたゆっくり触った。彼女の息がかなり荒くなってきた。かなり気持ちがいいようなので下から手を入れ先端や周辺をまさぐった。今止めちゃ可哀そうなので時間を掛けて身体も摩ってあげた。本当の彼女みたいだと思った。午後0時を回ったので帰り支度を始めた。
帰りの車の中では学校のことや友達の話をした。そして一番大事な将来について話した。いきなり静が子供は三人欲しいと言うのでじゃあそうしようと笑って答えた。
もう10日間くらいは戦闘に参加して居なかった。戦闘フィールドとの穴は静が閉じていた。茜の家に行っても俺に特に何も言ってこなかった。近未来に訪れる戦争で人類が負ける。荒唐無稽な話だが実際に参加したのでわかる。だけど自分たちだけ身を危険に晒すことに抵抗があった。10年後の未来からやって来た戦士たちはやがて世界の都市のほとんどが敵の手に落ちると。子供三人の未来を閉ざす訳には行かない。それに茜のことを一人にしておけないと思った。思考が混濁する。今が幸せだから腑抜けたのかも知れない。短い幸せでもいいと考える刹那な自分が居た。
「静、俺が行かないと三人の子供たちの幸せはないかもしれない。だから行きたい」静は考えていた。危険すぎる戦場に自分の大切な人をまた送り出すことに。
「一緒に行きましょう。そして必ず無傷で戻ってこよう」
未来の嫁さんから許可が下りた。