第6話 4号5号登場
人物紹介
たかし:26歳の会社員。アマ子と付き合っているが、現状に不満を感じることがある様子。
アマ子:たかしの彼女。駄菓子屋の娘で回を追うごとに奇行が目立ってきている。
魔狗瓶:たかしとアマ子にしつこくつきまとう悪魔。不健康そうなビームを放つ。
1号:美を愛する正義のヒーロー。昭和っぽい根性論で美を語っているつもりだが、読む者には全く伝わってこない。赤のマスクがトレードマーク
2号:ただのいい人。たまに貧乏くささを感じさせるところが残念。トレードマークは緑。
3号:可憐な女性ヒロイン。事前の準備に抜かりはないが、たまに行き過ぎるところがある。
デパートの屋上でたかしとアマ子の二人は少し遅めのランチタイムを楽しむ。
たかし「屋上で食べる焼き鳥っていうのも悪くないね。アマ子ちゃん。」
アマ子「そうね、たかし。屋上に誰もいなくてよかったね。」
たかし「さて、何から食べようか?アマ子ちゃんから選んでよ。」
アマ子「じゃあ、レバー、ぼんじり、砂肝で。」
たかし「おっさんかな。おっさんのチョイスをしてみたんだね、アマ子ちゃん。」
アマ子「あと漬物とビールがあったら最高なんだけどなあ。」
たかし「気がつかなかったなあ。でも、アマ子ちゃん家は駄菓子屋をやっているんだから、つまみはうまい棒とかでいいんじゃないの?」
アマ子「何言ってんのよ?たかし!変なこと言っていると、ポトテチップスを砕いて、鼻の穴に入れて飲ませるわよ。」
たかし「ごめんよ~アマ子ちゃん。」
バリバリバリバリ!
ポテチが割れたとは思えないほどの大きな音が響き渡る。
「グワッガッガー!たかしよ~!今日こそはお前を粉々に砕いてやるゾ!」
たかしたちの横にあったベンチがマクベの足で粉砕される。
たかし「お前はマクベ!やい!変態野郎!いつまで俺たちにつきまとうんだ!気持ち悪いぞ!」
マクベ「グワッガッガ!お前はその変態野郎にぶち殺される運命なのさア!」
たかし「くそー!誰かー助けてー!」
「トォウ」
不穏な空気を引き裂くように、ビューティー仮面1号が屋上に舞い降りる。
1号「美を愛する戦士、炎熱の赤色、ビューティー仮面1号、見参!」
たかし「おお!ありがとう、変態仮面。」
1号「誰が変態仮面だこの野郎!回し蹴りをくらわすぞ!」
たかし「ごめんよビューティー仮面!助けに来てくれてありがとう!」
「たかし君、僕たちもいるよ!」
たかし「おお!その声は!」
2号「優しさと調和の緑、ビューティー仮面2号!」
3号「愛と正義の結晶、麗しきピンク、ビューティー仮面3号!」
たかし「おお!3人も同時に現れてくれるとは頼もしい!」
1号「たかしよ!今日は5人全員を揃えてきたぞ!」
たかし「5人全員?」
「躍動する美しき肉体、わたる世間に黄色信号、ビューティー仮面4号!」
黄色いマスクをした小太りの男性が、軽くランニングするようなスタイルで登場する。
4号「たかし君。初めましてだね。僕が来たからにはもう安心さ。任せてくれ!」
たかし「そうですか。ちょっと息上がっていますけど、大丈夫ですか?」
4号「ああ大丈夫だ。先ほど野良犬の足を踏んで、追いかけられて逃げてきたところさ。屋上まで来たからもう来ないはずだよ。」
たかし「なんか不安だなあ。4号さんは何ができるんですか?」
4号「こう見えて音楽が得意なんだ。」4号は懐にしまってあったハーモニカを取り出して演奏し始める。
たかし「・・・うん、まあ吹けてはいるけど。可も不可もなくって感じかな。それが何に役立つんですか?」
4号「ハーモニカの音色を聴かせて、みんなの心を落ち着かせるのさ。」
たかし「そうですか。いらないんじゃないかなあ、それ。で、もう一人の方は?」
4号とは対照的に小柄な体格をした男性が小走りで登場する。
5号「空と心が晴れ渡る。スカイダイビングのブルー、ビューティー仮面5号!」
たかし「この方は何ができるの?」
1号「5号はベルマークを集めているのだ!」
たかし「ベルマーク?ベルマークってあの学校で集めてたやつ?」
5号「たかし君、いままで集めたベルマークを出してくれるかな?」
たかし「いや、持っていませんけど。なんで今集めるの?ていうか、大丈夫?新しい二人。」
マクベ「グワッガッガ!そんな雑魚が増えてもどうしようもないゾ!たかしよ!」
たかし「5人もいれば問題なしだぞ、バケモノ!でも、せっかくだから初めて来た二人にお願いしてみよう。」
4号「う、しまった!」
たかし「どうした?4号!」
4号「すまん、足を挫いたかもしれない。俺に構わずにアイツをやっつけてくれ。」
たかし「本当に足を挫いたの?まあ・・・でも大丈夫だよね。こんな5人も集まらなくても余裕なんでしょ?さあ、いつもの通りサッサと片付けてもらおうか。」
1号「たかしよ、そんなに言うならお前がやってみろ!」
たかし「え?いや、俺は無理だよ!あんなバケモノと戦えないよ!」
2号「たかし君、大丈夫だよ。やってみるんだ。僕たちも協力するからさ。」
3号「アマ子ちゃんの前でたまにはカッコいいところ見せなさいよ。」
たかし「そんなこと言われても・・・武器とか何も持っていないし。」
4号「たかし君、負けない気持ちが大切だぞ!」
たかし「うるせえ!お前には言われたくないぞ、4号!」
1号「たかしよ、これを使え。」
1号はたかしにハガネのハリセンを渡す。
たかし「これはちょっと重すぎて・・・僕じゃ使えないよ。」
2号「たかし君、これを使って。」
たかし「2号、なんだ?その細長いものは?」
2号「タコ足配線でショートした電気コードだ!」
たかし「ただのゴミだろ?それ。ここで処分しようとしてんじゃねえよ!お前の住んでいるところ自治体のルールに従って処分しろよ。」
3号「たかし君、あなたの家にあった、いやらしい本を処分しておいたわ。」
アマ子「たかし、ちょっとどういうこと?」
たかし「いや、違うんだその…外国の人の違いを知りたいなと思って。異文化交流って大切なのかなって。別に変な目的じゃないんだよ。」
3号「『絶対もうかる株式チャート』っていう本、捨てておいたわよ。いやらしいわ。」
たかし「いや、それいやらしいっていうか?ていうか、勝手に家に入ってんじゃねえよ!そんな権利はお前にないぞ!」
アマ子「異文化交流って何?」
たかし「いや、そのなんというか。今後の国際社会を生き抜いていくためにはね。他の国のね。おい、そうじゃなくてさあ、武器だよ武器!ちゃんとした武器はないのかよ!」
5号「たかし君、ベルマークで交換した一輪車だ!」
たかし「一輪車?それに乗って突撃しろってこと?」
5号「一輪車のペダルを取り外して、投げつけるんだ!」
たかし「馬鹿じゃねえの?もっとマシな武器がねえのかよ!」
「プォン」
たかし「4号うるせえ!ハーモニカ黙っていろ!」
4号はハーモニカを咥えながらうずくまっている。
たかし「だめだ。やっぱり俺じゃ無理だ。頼む、やっつけてくれ!」
1号「仕方がないな。よし、やるか。」
マクベ「グワッガッガ!今日の俺様は一味違うのさア!いにしえより封印されてきた禁断の魔法、『冥府縛鎖術』を使ってやろう!この魔法はなア、悪魔の鎖でたちまち身動きが取れなくなるのさア!これでお前たちは一網打尽よ!」
1・2・3号「元気・ハツラツ・オルナミンCパンチ!」
マクベ「グエ~、覚えてろ~」
マクベは遥か彼方へと消えていった。
4号「いやあ、手ごわい相手だったなあ。」
たかし「4号、お前ハーモニカを吹く以外何もしていないじゃねえか!」
4号「いや、たかし君。君たちがいてくれたおかげで、今日も悪魔を退治することができたんだ。」
たかし「何まとめてんだよ。だからお前何もしてねえじゃねえかって。」
3号「たかし君。さっきアマ子ちゃんが確認したがっていたものを持ってきたわ。」
アマ子「何よ、たかし!異文化交流って!」
たかし「いや、それはちょっと勘弁して・・・ごめん、何でもするから。」
3号「砕いたポテトチップス持ってきたわよ。さ、鼻から入れてみて。」
たかし「そんなもん確認しようとすんじゃねー!」