ストラップ付きのぬいぐるみと重箱
「うわ!」
イタた。まさか地球に頭突きするとは。
「お兄さん大丈夫。」
「あ、ああ。大丈夫だ。」
頭がガンガンするけど大丈夫だよ。お嬢さん。
「でも、心配だからおまじないかけてあげる。」
「それは嬉しいな。やってくれるかい。」
「うん、痛いのいたいのー誰かにうっちゃえー。もしくはー私が痛くなれー。いたたた。頭がいたーい。」
面白いな。このこ。
「大丈夫になった。」
「うん、大丈夫。ありがとう。これプレゼント。さぁ問題です中身はなんでしょう。」
重箱の中身はなんでしょう。お嬢さん。
「うー。うー。」
念を送っているのか。それでわかったら天才だ。
「食べ物。」
ガクッ。見たと思ったのにわからなかったのか。
「正解はぬいぐるみ。猫と狼と狐と雀とハムスター。そして熊のぬいぐるみだよ。ストラップぐらいしかないしちょっと不細工だけどどれがいい。」
「全部!」
「ぜ、全部!」それはおおい……。まぁ、いいか。
あげよう。面白そうだから。
「はい、君にあげる」重箱をあげる。
「ありがとうおにいちゃん。」
満面の笑顔でもらった女の子。
うん、これでいい。
後悔は・・・してない。
と言ったら嘘になるな。彼女のプレゼント一から作り直しだからな、まぁ、頑張ろう。
いや、一つあったな。
50cmのあの熊のぬいぐるみが……あの子にあげたのは結構きれいにできたやつだったのに。後悔してるな。
まぁ、いいかブサイクだけど仕方ない。
もう一回作ればいいだけのことだ。
『さぁー皆さん問題でーす。
あの子は友達にあのぬいぐるみをあげました。
どんな人にあげたでしょう。』
『ヒントは結婚して子供が二人です。』
● ● ●
・・・『では、正解発表です。』
「ねえ、みんな。これ見て、これ。」と重箱をもらった女の子。
「トイレいってたんじゃないのかよ。」と一人の男の子。
「野暮なことをいうな。」と違う男の子。
「いて、なにすんだよ。」
「いいじゃん。」
「はいこれ。みんなにあげる。」
そこには猫がいなくなったぬいぐるみの重箱があった。
「じゃあー。」どれにしようと考える男の子。
「ぬいぐるみか。」食べ物じゃないのかと残念がる男の子。
「かわいい。」興味津々な女の子。
「俺は後ででいいや。」スポーツ万能の男の子は少し興味あったがそういう。
「俺も後でいいや。」
と食べ物じゃなかったと残念がる男の子は言うのだった。
「じゃあ俺も。」どれにするか悩んでいた男の子もあとに回った。
「いいの二人とも。」二人に聞く猫を取った女の子。
スポーツ男子は興味ないからいらないかなと思っていたのだ。
「「いいよ。」」と被った食べ物だと思った子と悩んでいた子。
「わたしはね、このネズミ。」とかわいいと言っていた女の子。
「それで、君が狐。お前が狼。がいいと思うのどうかな。」
「いいと思う、残ったの渡してくる。」
というネズミを選んだ女の子。
「明日の朝一緒に学校行くから渡すって言うのはどう。」
という猫のぬいぐるみをとった子。
「うん」というネズミことハムスターを取った子。
この子達は小学校に一斉登校をしていた。
そして集まる場所に最初にやって来たネズミの子。
その次に下級生の子達がやってきた。
その次にどれにしようと悩んでいた子と食べ物だと思った子がやってきた。
それからしばらくして猫を取った女の子が重箱を持ってやって来た。
その中から2つぬいぐるみをとるとランドセルに重箱をしまった。
「はい、君に狐、お前が狼。」
「なんで狐!」という悩んでいた男の子。
これは狐なのか……。狼と大差ないような……。
「俺が何で狼なんだぁー!」という食べ物だと思った男の子。
「「「そういうのが狼。」」なんだよ。」
ぐぅー。とはがんでいる。男の子。
まぁ、この二人はなんでもいいと思ったからそうしただけなんだけどね☆。
「来たよ。」スポーツ万能な男の子が来たためネズミをとった子に教える猫を取った女の子。
「どうしよう……どうしよう……。」というハムスターを取った女の子。
どうしようって、これ君の分。って渡せばいいのに……。
「なにも言わなくてもいいの。私がいってあげるから。」
と緊張を紛らわすためにもそう言う猫をとった子。
「ダメ!それはダメなの。」
と恥ずかしそうに言うネズミことハムスターをとった子。
「そうなの、なら頑張って。」
もう、怒らなくてもいいじゃん。
放課後にはバラバラで帰ることになるから待っててと言ってあげようかなと思って、スポーツ万能な男の子に声をかけようと5限と6限の間にその男の子の教室へとやって来た猫の子。
しかし、その行為は杞憂だとわかった。
その教室に友達がいた女の子は教科書を借りるついでに聞いたのだ。ハムスターをとった子がスポーツ万能な男の子ななにか渡さなかったかと……。
そして、ああ渡してたよ。ほらこれとわざわざランドセルを持ってきてくれた友達。
そこまでしなくてよかったのにとも思ったけどよかったと思ったため教科書の感謝も込めてありがとうと言って自分の教室に戻った。
猫のぬいぐるみを取った女の子は行きは険しい顔だったけど帰りは鼻歌混じりに教室に戻ってきたため浮かれすぎ。と同じ教室の友達に怒られる。猫のぬいぐるみをとった女の子。
そして、放課後。
「美保ちゃん。ちょっと待って。」
「なによ、すぐに帰らないといけないんだけど。」
どうしたのよ、いつも笑顔でいるけど今はいつも以上よ。
「美保ちゃんにあげたいものがあるの。なんだと思う。」
・・・知らないわよ。そんなの。
「・・・」
「わからない。わからないの。」
もったいぶらないで早く言いなさいよ。
あれ取れない。
「ちょっと待って。」
1分たったが取れないため手伝った美保ちゃん。
「手伝ってくれてありがとう。美保ちゃん。」
「そんなことよりもその重箱の中身は何が入ってるのかしら。もしかして食べ物。」食べ物だと思って引かないで欲しい。
「違いまーす。やっと質問に答えてくれた。長い…。」
「それでは発表します。正解はこちらです。」
・・・
「ジャジャーン!」
ぬいぐるみ!あのいつも何考えてるかわからない男の子が持ってた狐のぬいぐるみと雰囲気が似てる。
「この熊のぬいぐるみをあげる。」
「なんでくれるの。」
「え!」
「なんで私にこんなのくれるの。」
「なんでって、それは友達なんていらないって顔してるから。」
自然と涙が出てしまった美保ちゃん。
「ありがとう。大切にする。」
「よかった。ありがとう付き合ってくれて美保ちゃん。一緒に帰ろう。」という猫のぬいぐるみを取った女の子。
「たまにはいいかもしれないわね。一緒に帰ろう。」
・・・五年前
「最近有名なあの漫画の女の子かわいいよね。」
「あの子ね。そうだね。でも、美保たんの方がかわいいよ、あっ!美保たんって呼んでいい。」
「いいわよ。私はなんて呼べばいい。」
「うーん、ネネがいいかな。元の名前気に入ってないんだ。」
「なんて名前なのですか。」
「ネネ!」
ガシャンと自転車とぶつかったネネ。
自転車は逃げた。そして、美保は近くの家に入った。
ネネを助けるため……。
・・・
「なによ、それ。なんで強がるのよ!ネネ!」
「なんの話、美保ちゃん。」という猫のぬいぐるみを取った女の子こと寧々さん。
「知ってるわよ。まだ意識が戻ってないってこと。この人形は私のお父さんが作ったもの。だから、大事にする。でも、なんで……なんでネネが生きてるの。」
これはネネにあの日あげたって父さんは言ってた。
でも、誰にも渡さなかったはず。
「なんであなたがこの熊のぬいぐるみと猫のぬいぐるみを持ってるの!」
「それは……。」
顔が青くなったネネ。いや、元々青かったのかもしれない。
「ネェネにもらったの。……お姉ちゃんにもらったの。」
「そう、ごめんなさいね。変なこと言ってごめんなさい。」
「そんなの気にしてないから。もう泣かないの。元気出さないとダメよ、生きるためには涙を流すときも謝ることも必要だけど笑顔が一番なんだからわかった。美保ちゃん。」
「そうだったの。わかった。ありがとうネネ。」
「ごめんなさい、美保ちゃん。今言ったこと嘘。本当は美保の言う通り。」
「ネネは死んだの。」
「まだ、生きてる。」
そういって美保の心臓に指を指した。
「そうなの。」
「そうなのってなによ。でも、死んでるって言うのも間違いじゃないし、死んでるって言うのも間違いじゃない今は・・・。」
そういって女子トイレへと美保を連れてきたネネ。
そこで、服を脱ぐネネ。
「これがこの体の真実。」
そこには首から下にチャックがあった。
美保は言葉を失った。
「生きてるのか死んでるのか私にはわからない。でも、元の体はちゃんと生きてる。これだけは渡したかったから渡しただけなの。ごめんなさい美保。」
それから少し時間が経った。
『それから、十年の月日が経ちました。
僕が転んだときにおまじないをかけた猫の子は今。
「母さん。」かすかな声を出すネネ。
「ネネ!ネネ!」
コールをしたネネの母。
それから五年して、なんとか普通の生活を遅れるほどに体が回復した。
そして、五年たってやっと歩けるようになった。
その時
「ネネー。やったね。どう今の気持ちは。」
「嬉しい。こんなに嬉しいことはないよ。ありがとうみんな。みんなのお陰だよ。」
「そうね、まさかあんたが医者になるとは思わなかったわ。」そういう狼こと乾楓
「お前だって女医になってるのになにいってる。」
「そうね。」
「それで、咲姫はあいつとどうなったの。」
「・・・」
「まさかなにもないの。」という美保。やめなよ。
「うるさい。うるさい。なにもないわよ。あの人忙しいの。だからここにも来てないでしょ。」
そう、あの雀は来たよ、三日前に。
ハムスターには内緒にしてくれって頼まれたけど。
「来てたよ、練習休んで来たって言ってた。野球頑張ってるだね。」というネネ。
「あいつ。」
「そうなのか。」という狐。
「それで、あんたは今何やってるの。」というハムスター。
「……先生。」とさっきのハムスターのように恥ずかしそうに言う狐。
「どこの。」と聞く美保。
「中学校の先生。」
「そう、先生なんだ。いいんじゃない。」という猫のネネ。
「プッハハハ。なにこの芝居。知ってるじゃんネネ。」
「ふふ、そうね。でも感覚って素晴らしいよ。目で相手を見て、耳で話を聞いて頭で咀嚼して、適した言葉を繋げて口から声を出す。そして、何よりこのぬいぐるみの感触も匂いもわかる。いいよ、生きてるって。」
「ネネ……。」という狼をもらった男。
「ほら、みんなもうこれぐらいでいいと思うの。少しぐらい一人にしてあげなさい。」
強引だなと思うネネ。
そして、全員家から出ていった。
「ウ、ウワーン。よかった。よかったよー。」
もう、なかないでよ。
「そうだね、よかったね。」と猫の母親も泣きながら言う。
「失礼します。」
「どうしたの、狼男。」
「そうね。どうしたの、狼男。」
「二人で話したいことがあるネネ。」
「わかったどこか連れてって。車椅子持ってくるから。」
「歩きなさい。」と美保に言われたが狼男こと楓は車椅子で運べる車で来たため車イスで向かうことになった。
その後を尾行する車があったことは言うまでもない。
「海にまで来てどうしたの。楓。」
「・・・話したいことがあってな。ネネ、ごめん!」
「どうしたの、楓。」
「俺の兄貴がネネを引いた張本人なんだ。」
「へー。そうなんだ。美ーー保ーー!
ター!スー!ケー!テー!」
「ちょっとちょっと。どういうこと。」
「そんなのもう気にしてないから。それとも前いってた付き合ってっていうのの答えをここでいえってこと。」
「・・・」
膝まつきケースをあける乾楓。
そのケースの中身は指輪だった。
断ればいいの。と思ったけど顔に伝うなにかを手で触れたとき液体が流れていた。
それはやめた方がいいみたい。
美保が二人の姿をガードレールから眺めていた。
通報しようかと携帯を出した人がいて通報された美保だった。
・・・
『いろいろな思いや悩みごとが生きていると多いです。それが
人生で一番辛いことでもありますが幸福なことなんだとぬいぐるみを見て思うネネ。
果たして……。
そして、狐のぬいぐるみをもらった男の子と熊のぬいぐるみをもらった女の子は結婚して、今では二人の子供までいるそうです。
狐のぬいぐるみをもらった子の趣味はぬいぐるみ作りとなり今は熊のストラップを作っています。
頭だけで20cmもある熊のストラップを・・・。
全員辛いこと悲しいことムカつくことあるけど楽しく生きているそうです。終わり』