かく恋ぼ
小さな男の子が枝っきれの棒を指揮棒のようにふって、歌いながら歩いてきます。
川辺に咲いている紅色の彼岸花には、アゲハ蝶たちが蜜をもとめて舞っています。
ススキの原っぱからキツネのお耳がひょっこりと、男の子の歌を聞いています。
キツネの女の子が顔をだしました。
「かくれんぼしようよ」
「うん。いいよ」
「もういいかい」
「まあだだよ」
「もういいかい」
「もういいよ」
男の子はキツネの女の子が顔を隠しているけれど、しっぽをススキの原っぱから嬉しそうにふっているのをみつけました。
でも。「みーつけた」って言えないよ。まだ一緒に遊びたいんだもん。一緒にいたいんだもん。
お母さんが呼ぶ声が聞こえます。
「みーつけた」
「みつかっちゃった」
「ばいばい」
「ばいばい」
手をふってさよならしました。
ススキが風に吹かれてゆれました。
キツネの女の子のおしりのしっぽもゆれました。