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少女の頼み

それは、いつも通り冒険者ギルドに訪れて依頼を探している時だった。


「今日は依頼にするか。」


中級の依頼は3個程。


『シェナスの花の採取。』

『大蟷螂を5体討伐。』

『深緑の森にある魔物の巣らしきものの調査。』


この中だと大蟷螂が一番楽かな。シェナスの花は珍しい花だから見つけるのに時間がかかるし、魔物の巣らしきものはどんな魔物がいるか完全に運だ。いなければ楽だが、中級クラスの依頼になっているってことはそれなりに理由があるのだろう。


なので今日は大蟷螂にしよう。と張り紙に手を伸ばした瞬間、


「あの!私とパーティを組んでください。」


と少女が話しかけてきた。

見た目は15歳くらい。俺よりも肩くらいの身長。15より下かもしれない。


そんな少女がお願いをしてくるが返事はすぐに決まる。


俺は勇者パーティ解散以降、たとえ即興だったとしても誰かと一緒にパーティを組んでいない。


また自分が足を引っ張ってしまう、気を遣わせてしまうと心のどこかでそう思ってしまっているから。実際はそんなことないことなんてわかっているのに。


「俺は無理だよ。他を当たってくれ。」


そうやって適当に返事をする。

それでも引き下がることなく、


「でも。私、あの時貴方に救われて。貴方に憧れて冒険者になったんです。」


と言った。


最近の記憶でそんなものはない。


「俺が君を救った?いつの話をしているんだ?」

「3年前の話です。」


3年前。俺が勇者パーティにいた時。俺はアユミ以外の誰かを助けた記憶はない。


「人違いじゃないかな?」

「いえ、人違いじゃありません。勇者パーティのカナデさん。」


と俺の目を見てそう言う。

大きな声で勇者パーティなどと言ったせいで周囲に注目される。


「そんな訳ないだろ。俺は勇者パーティのメンバーじゃない。勇者と間違えたんじゃないか? 魔法と剣を使うし。」


慌てて否定する。


「貴方は勇者パーティの!」


その後を話させないようにするために口を抑える。これ以上注目されたくないし、勇者パーティの時の話は他の人達に聞かれたくない。


「その話は後で聞く。場所を変えようか。」


そう言って俺は少女を連れて冒険者ギルドから出て行った。

冒険者ギルドを出て近くの喫茶店に来た。

適当に飲み物を頼み本題に入る。


「さて、さっきの話の続きだけど、君はどこ出身なんだ?」


場所が分かれば何か思い出せるかもしれないそう思い聞いてみた。


「ミトムの村です。」


ミトムの村。小さな村でかなり被害が出いたあの村だよな。すぐにアユミが治癒に向かい常にその護衛をしていた記憶しかない。


「何か思い出してくれましたか。」

「いや、何も。多分、人違いだな。」


少しだけ状況を思い出したが答える必要はない。

俺は誰も助けていない。助けたのはアユミと勇者たちだ。


「そんな訳ないですよ!」

「俺じゃない。」

「もう!貴方なんですよ!」


声を荒げて聞いてくる。

全く違うって言ってるのになんで話を聞いてくれないんだ。


「君を助けたのは多分、勇者か僧侶だ。俺じゃない。」

「でも、カナデさんが私を...。」

「これで話は終わりだ。」


落ち込む少女に対して俺は椅子から立ち


「じゃあ、俺はこれで。」


とその場から離れようとすると、


「待ってください。」


と言われて足を止める。


「なんだ?」

「あの、本当に覚えてないんですか?私のこと。」

「覚えてない。」


何度言えばわかるのか。俺じゃない。


「だから、俺は君のことを。」


覚えていない。と再び言おうとすると、


「助けてくれてありがと。お兄さん。」


と笑顔と抱きついてくる。

思考が停止する。


えっ、何。なんだ?

何か伝えようとしている?


あっ!

俺が思い出すと同時に、


「これでも思い出せないですか?」


と目を潤ませて上目遣いでこちらを見てくる。


「あの時の。」


完全に記憶から消えていた。

思い出せる訳がなかった。だって、全然見た目が違うのだから。あの時はまだ小さな女の子だった。3年でこんなに変わるのか。


「そっか。大きくなったな。」


3年前、ミトムの村で勇者たちが倒し損ねた魔族に襲われてた少女。名前はユキだったか。


なんか、自分が助けた少女が成長していて感慨深い。


「思い出してくれたんですね。」

「ああ。一応な。見た目が全然違っててわからなかった。」


近所のおじさんみたいな感覚。戦士や魔法使いもそんな感じだったのかな。


「そっか。あの時のね。」


そう呟いて頭を撫でる。完全におじさんだ。

少女は黙って頭を撫でられている。


「あの時は確か、強くなって俺のお嫁さんになるって言ってたっけ。」


わざと口に出して言う。


「そっちを最初に言ってくれたら思い出せたのになー。」


と冗談を言ってみる。


「あーあー。それは忘れてください!これでももう、恥ずかしかったんですよ!」


と抱きつくのをやめてポコポコ俺の腕を叩いてくる。


「悪い悪い。」


嬉しくてついついキャラに合わないようなことをしてしまった。


再び席に座り直し、今度はしっかり話を聞く。ユキも座り直す。


「それで俺に何の用なんだ?」

「えっとですね。最初に言ったように一緒にパーティを組んで欲しくて。」

「詳しく頼む。パーティを組みたい理由。それがわからない。」

「あの、一緒にいたいので。」

「...。」


俺は黙り込む。

俺は馬鹿にされているのか?


黙っていると、


「冗談ですよ。もう!」


と顔を赤くして怒る。


「怒るなら最初から言うなよ。」

「すみません。さっき冗談を言われたので。」

「それについてはすまん。それで本当は?」

「私、カナデさんみたいに強い冒険者になって色んな人を助けたいんです。だから、私に戦い方を教えてください。」


と頭を下げる。

どうするか悩む。一緒に戦うっていうのは少し抵抗がある。


「カナデさんはソロの冒険者なんですよね? 何かダメな理由があるんですか?」

「ある訳じゃないけど。」


対した理由じゃない。だから。


「わかったよ。パーティは組む。でも、それは君に戦い方を教えるためだけだ。君が強くなったら解散するよ。いいね。」


と伝える。

すると、ユキは


「はい!」


と笑顔で返事をした。

ここまで読んでくださり大変ありがとうございます!


「もう少し読んでみたい。」と少しでも思っていただけたら、

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