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第二話 変態と肝試しと怪異

第二話になります!


登場人物が一気に増えたので大変でした。


読んでいただけると嬉しいです


コメント、評価などもよろしくお願いいたします!

 



「ただいま帰りましたよー」


 家に帰ると、クーラーがガンガンに掛かっている。

 玄関まで寒いとかどんだけ設定温度が低いんだよと思いながら、リビングに入るとそこには一体の変態がいた。


「よー、おかえり」




 兄貴が全裸で立っている。




 おかえりじゃねぇよ。いや、おかえりは合ってるけどその他が何一つ合ってねぇから!?

 怒鳴りながら突っ込んでいたら、変態兄貴はそのままソファーに座り込んだ。


「そのまま、ソファーに座るんじゃねぇよ! 服着ろ、服!」


「帰って来て早々、うるさいなぁ。別にいいだろ、暑いんだから」


「いいわけねぇだろ! ほら、パンツ履けよ!」


 近くに落ちてあったパンツを兄貴に投げると、しぶしぶ履いてくれた。


「まぁ、いいや。大分涼しくなったし」


 そう言うと兄貴はパンイチのままキッチンに向かうと、冷蔵庫を漁っている。

 そんな兄貴と入れ違いに作った料理を持ちながら、母さんがキッチンから出てきた。


「あんた達、何騒いでんのよ。本当に昔から変わらないわね」


 料理をテーブルに置きながら、流れ作業の様にこちらを見もせず言ってくる。


「だって、帰って来ていきなり全裸の兄貴なんか見たくねぇよ。服脱ぐなら、脱衣場か自分の部屋でしろって話だろ」


「あんたもほっときなさいよ、もうあれは一種の病気みたいなもんなんだから」


 母さんは気にした様子もなく、ただひたすらに晩御飯の準備をしている。

 母親に、一種の病気と言わせる兄貴も兄貴だが、それを言ってしまう母さんも母さんだと思う。

 まぁ、この母にこの子供ありって所か。


「あんた、今、失礼な事考えたでしょ?」


 母さんがさっきまで見向きもしなかったのに、鬼の形相で俺を見ている。


「なっ、何も考えてないし!」


 へっ、何、この人。テレパスか何かなの!?


 母親の勘の鋭さに怯えていると、「ご飯出来たから食べるわよ」と言う母さんの声が聞こえたので、テーブルにつく。

 ちなみに、顔の表情は戻っていた。




「でもさっきの話だけど、あんたも変わらないじゃない。部屋は汚いし、休みの日はずっとゴロゴロしてるし」


 母さんはご飯を食べながら、俺の痛い所を突いてくる。

 俺の隣では兄貴が「そうだ、そうだ」と言いながら、口にご飯を詰め込んでいた。

 まぁ、それもそうかなと思っていると、隣のパンイチはものの数分でご飯を食べ、服を着ると「ちょっと出掛けてくる」と言って出ていった。


「ご飯ぐらいゆっくり食べればいいのに」


 そう言いながら、母さんは自分の茶碗にご飯をよそっている。


「宗吾はまだ、ご飯食べる?」


「あー、もう一杯食べようかな」


 母さんは俺の茶碗にご飯をよそうと、席についた。


「そういえば、俺もご飯食べたら出掛けるからさ」


「そう、出掛けるのはいいけど気を付けなさいよ。最近は物騒なんだし」


 母さんの忠告を聞きながら、ご飯を食べ終わると肝試しの準備をする。

 鞄に懐中電灯とお菓子、ジュース、軍手などを詰め込んだ。

 時計を見ると、針は二十時四十五分を指していたので、慌てて集合場所である学校へと向かった。









「すまん! ギリギリになった」


 集合場所に着くと俺以外のメンバーは揃っていた。

 謝りながら近づくと、夏川さんは笑顔で「全然大丈夫だよ!」と言ってくれたので一安心する。


「氷山くん、やっほ~!」


 声がした方に振り向くと、そこには永井さんと佐野さんが立っていた。

 そして、二人の側には大樹が懐中電灯を持って小さく手を振っている。


「まさか、このメンバーで肝試しに行くとは思わなかったよ~。それにしても霧島くんと行けるとか嬉しすぎるんですけど! もちろん、氷山くんとも嬉しいよ!」


「私も嬉しいわよ。二人と行けるのは。心強いしね」


 永井さんの取って付けたかのような言われ方に、俺の心は少し傷付く。

 しかし、佐野さんはクールだ。いい! とてもいいよ!


 佐野さんのクールな言葉使いにテンションが上がっていると、大樹の後ろから、少年が現れた。


「氷山さん、今日はよろしくお願いします」


 丁寧な挨拶と共に少年は、頭を下げる。


「もしかして、夏川さんの弟くん?」


「はい、そうです。夏川奏(なつかわそう)と言います」


 何だろう、夏川さんは用心棒と言ってたけどとても強そうには見えない。

 どちらかと言えば、護られる側だと思う。

 そんな事を考えていると、永井さんから「この子、空手の有段者だからそこら辺の不良よりかは強いと思うよ」という発言を聞いて、人は見かけにはよらないと思い知らされた。


「そっか、頼りにしてるよ。俺の事は宗吾でいいからさ」


「ありがとうございます宗吾さん。僕の事も奏でお願いします」


「よろしくな! 奏」


 奏との挨拶を終えると、永井さんと佐野さんから「私達の事も美奈と玲香でいいよ。同級生なんだし。私達も宗吾って呼ぶわね」との事だったので俺も名前で呼ぶ事にした。


「あっ、あの! 私も、私の事も琴葉(ことは)って呼んでください! 私だけ名字だとなんだか寂しいですから」


 夏川さんの発言にドキッとした俺は、しどろもどろになりながら、「よっ、よろしくな! 琴葉」と返したら、大樹が下を向いて笑っていた。




 あいつ、絶対にあとで殴る。




「一通り、自己紹介も済んだ事だし肝試しに行こうか。時間も遅くなるしね」


 大樹が早く行きたそうにしていた為、みんなに声を掛けると全員から了解~と返事が帰って来たので町外れの廃校に歩いて向かう事にした。




 町外れの廃校に着いたのは、集合してから三十分ぐらい経った頃だと思う。

 酷く寂れた木造の校舎は、夜の暗闇も相まってか一人ではとても入れそうにない。

 本当にこの人数で来て良かったと、俺は心から思った。


「これはヤバい。怖すぎでしょ!」


「私、大丈夫かな? こんなに怖いとは思わなかった」


「確かに怖いわね。不気味すぎるわ」


「入り口の時点で、肝が冷えるとは恐ろしいな」


「僕は、お化けよりも不審者がいないかの方が怖いです」


 それぞれ、美奈、琴葉、玲香、大樹、奏の順番で廃校に対してのコメントを残している。

 俺は何か、いかにも起こりますみたいなフラグを立てるのはやめろよなぁと思っていると、大樹が先頭を切って廃校の中に入って行く。

 大樹を一人で行かせる訳にはいかないので、懐中電灯をつけて後に続くように廃校に入る。

 幸いにも入り口の扉は元から破損していたので、難なく全員が廃校内に入る事が出来た。





 廃校の中は埃っぽく、凄くカビ臭い。

 あちらこちらにクモの巣が張っていて、とてもじゃないが居心地は良くなかった。

 外に比べて温度も湿度も高く、濡れた()()が頬に貼り付く様な感覚にさえ陥る。

 足元には空になったビール缶やゴミが散乱していて、どうやら俺達以外にも訪問者は絶えない様だ。


「酷い事するわね。窓もガラスが一枚もないじゃない」


 玲香が噴き出す汗をハンカチで拭いながら、窓を指差している。

 そこには本当に窓ガラスが一枚もなく、窓の枠だけが綺麗に残っていた。

 おそらく、金属バットの様な物で丁寧に割って行ったのだと思う。

 俺達は、床に落ちたガラスに気を付けながら、教室の中を見て回ることにした。








「ここって、何か事件が起こったんだっけ?」


「あぁ、昔肝試しに来ていた連中が行方不明になったらしい。確か、五人程だったかな?」


 美奈の問いに懐中電灯で辺りを照らしながら、大樹は答えている。


 あれ? 何か俺の耳にとんでもない言葉が聞こえて来るんですけど。

 来る前に、そんな事一言も言ってなかったよね!?

 肝試しに来た連中が行方不明とか、ヤバすぎるでしょ!

 美奈は美奈で、「ヤバくない、怖い~!」とか言いながら大樹の腕にくっついてるし。

 絶対に怖くねぇだろ。ってか大樹はもうちょっと相手にしてやったらどうだ?

 美奈が泣きかけてんぞ。


 嫉妬のあまり、俺がガタガタ震えながら大樹に呪詛を呟いていると、校舎の奥から扉を思い切り閉める様な音が響いた。


「ひやっ! 今の何!?」


 琴葉はパニック気味に悲鳴をあげる。


「わからない。どうする? 確認しに行くか?」


 大樹の言葉に琴葉は、首を横に振っていた。

 他のメンバーも流石に確認しに行くのは嫌らしい。


 どうするか話合っていると、扉を閉める様な音がだんだんと近づいてくる。


「何か、ヤバくないか?」


「そうだな。今日はもう引き返そう。ある程度は見回ったからな」


「私もそれがいいと思う」


 校舎の中に入ってから三十分程しか経っていないが、美奈や玲香、奏も頷いていたので俺達は肝試しを切り上げる事にした。


 階段を降りていると、未だに遠くから音が響いている。

 三階から二階、そして、一階に降りると廊下には霧の様なものが掛かっていてよく見えない。


「入って来た時にはこんな霧、出てなかったですよね?」


「確かに出てなかったわね」


 奏と玲香が話していると、霧のかかった廊下の奥から何かを引きずる音が聞こえて来る。


 目を凝らして霧の奥を見てみると、少しずつ霧が晴れてきた。

 俺は懐中電灯を向けるとそこには、女がいる。

 ただし、その女は普通ではなかった。




 身体は上半身しかなく、切断された様な痕からは腸などの内容物がぶら下がっている。

 女がケタケタ笑いながら、黒く長い髪を振り乱して向かって来たので俺達はパニックなり悲鳴をあげた。


「なっ、何なんだよあいつ!」


「俺にもわからない! とりあえず入り口まで走ろう!」


 大樹の言葉に全員が一斉に入り口に向けて走った。

 さっきから、脇腹が痛い。

 しかし止まっている時間はない為、全力で走る。

 入り口が視界に入った瞬間、女の気配が俺のすぐ後ろまで近づいていた。

もう無理だ! 追い付かれた。そう思った瞬間。






 後ろから信じられない様な女の悲鳴が聞こえた――。







読んで下さってありがとうございます!


第三話もよろしくお願いします!

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