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戦闘国家日本 (自衛隊かく戦えり)  作者: ケイ
第1章 日本転移と自衛隊激闘編
99/251

第96話 アトラム王国インフラ建設 その1

第96話を投稿します。

アトラム王国に対する日本の援助が凄い事になっています。

日本にも大きな見返りがあるのでしょうか。

 日本からの民間旅団と護衛船団、陸自を運んでいた補給船はアトラム王国南ロータス港に到着していた。

 アトラム王国南ロータス港は、木造大型船用に横づけ岸壁を備えていたが、現代日本の船舶には低いため、陸自第8師団第8施設大隊が「おおすみ」からLCACを使用して建設機材を南ロータス港の西側海岸から陸揚げを行い、近隣街から石材を集め、南ロータス港の護岸を現代船が横付けできるように工事を行っている。

 石材を石張りの岸に積み上げ、ある程度の高さになり次第、鉄板を敷いて荷重強度を高め、荷物の移動用に大きなスロープを完成させていた。

 アトラム王国の住人は予想を上回る速さで完成していく護岸を見物しようと毎日訪れており、出店までも出店している。


「すごいな、日本とやらは、毎日凄い速度で完成していく」「そうだな、我々がやってもこうはならん」「技術力なのかこれは」「完成は明日らしいぞ」などと野次馬が言うが、陸自第8施設大隊は淡々と仕事をして予定より1日早く完成させていた。


 民間船団と輸送護衛船団、外務省南ロータス出張所での打ち合わせで、明日から荷揚げを行う事でまとまった。

 民間船団からは先に各専門家が下船して、王都へ陸自第42即応機動連隊により安全に移送されて、王都でアトラム王国専門家との打ち合わせとセミナーをすでに開催している。


 護岸工事が完成し、幅1000mにもなる横付け岸壁を完成させて、民間船からの物資を次々と港に積み上げていく、コンテナがその中心ではあるが、大型の建築資材や大量のコンクリートなどに混じり、電源が必要な保冷コンテナがあるが、荷揚げ順番は最後である。

 次に民間車両運搬船より、トレーラやバス、トラックが次々と下船し、南ロータス港郊外は巨大車両基地と化していた。

 すでにバスは南ロータスと王都間を一日1往復している。

 港に燃料備蓄基地が完成すれば、1日5往復はできるはずである。なお、大型乗り合いバスが運行しており片道500Kmの距離を、悪路を進む事から時速30Km程度で17時間もかかる。早く工事を行い、日本同様な舗装道路が望まれていた。

 

 南ロータス港の改修工事が終わった陸自第8師団第8施設大隊は2つに別れ、1つは南ロータス周辺の農地開発と上下水の整備を行っている。

 別れたもう1隊は、南ロータス、王都間の道路舗装と燃料備蓄タンク設置及び車両基地建設を行っている。

 車両基地は、各隊の分屯地にも使われる。その為の資材は全て日本から持ってきている。


 陸自第42即応機動連隊は幾つかの小隊に別れ、第8施設大隊の護衛と、王都外務省事務所の警備、そして大切なアトラム王国の資源調査に送り出していた。


 南ロータス港からは、冷凍コンテナを積んだトレーラが何台も悪路を王都に向かっている。

 中身は王への献上品・・・王妃や王女がメインらしい・・

 そして、同乗している調理師である。

 冷凍肉や冷凍魚、そしてデザートが多数であり、新鮮な野菜などもある。


 別の冷蔵コンテナには、王都に住む専門家を対象とした種等が詰まっている。


 道路工事を行っている第8施設大隊はダンプで南ロータス郊外の土を積み込み、道路に敷いて盛り土をしながら、砂利や砂を撒いて下地を作り、大型ドーザとバケットローダをかけて平らに慣らしている。

 もちろん、道路両サイドには排水の為の排水溝も作っている。

 アトラム王国人に言わせれば、信じられない速度で道路が完成していくが、隊員は「まだ完成ではありませんよ、これからコンクリートを敷いて完成です」と言う。

「信じられない、このままでも十分に立派な街道なのに」と感嘆する。


 計画では、南ロータス、王都間は物流の拠点となる為に4車線の高速にも使える道路を計画している。

 幸い途中に河などは無く、工事は順調に進んでいる。

 現地の王国人達は、大型機械を神のように操り、工事を進めていく自衛隊を見学しようと毎日、何百人も訪れており、何らかの差し入れを行っている。

挿絵(By みてみん)

 車両基地を作っていた部隊は、草原を平らにして砂利を敷いて建物を建てようとしていたが、コンクリートパイルを4本打つと、パイルの根元から水が沁み出してきた。

「これはまずい」と工事隊長は驚き、急いでパイルを1本抜くと、湧き水が沸き出している。


「結構綺麗な水だな」と言うと、隊から水質検査キットを持ってこさせ、チェックする。

「おっ、このまま飲める程の水質だ。これは運が良いかもしれない」

 アトラム王国は王都の東側が山脈となって、王都には昔から良質な水が豊富で、水路が発達していたが、地方都市までは水が行き渡らず、井戸を深く掘って飲料水としていたが下水道が無いので井戸水は不衛生であった。


 その様な環境で突然の湧水である。農業にはもちろん、南ロータスでの水不足は解消される。なにより分屯地の水供給も懸念されていたが、一気に解決した。


「さて、自衛隊特製の入浴施設を作るとするか」と隊長は言うと、建設リストに水路と大型浴場を入れる。

「温泉とはいかないが、沸かせばそれなりの効能はあるだろう」と呑気である。


 ただし、燃料備蓄基地を作るためにパイルを入れた土地はそのまま池となっていく。

 湧水は豊富で、すぐに周囲を掘り下げ大きな池を完成させてしまった。

「農業用に水路を作らねばならないな」と別動隊を呼び、湧水を見せて、農業用地開発隊に水路づくりを提案する。いろいろな場所に井戸を試掘していた農地開発隊は大喜びで水路の計画に入っていた。

 彼らは上下水道も予定していたので、思いがけず上水道ができる事に計画は早まった。


 アトラム王国民は大型バスで1日かかるが、王都まで楽に行ける事が嬉しいようだ。

 いまは、開発協力隊であるから運賃も馬車より5倍も高く設定しているが、途中で夜盗や魔獣に襲われる心配がないバス旅行は好評で、定員46名に毎日100名以上の申し込みがあるので予約は抽選となっていた。しかも馬車で10日以上かかる距離なのに17時間で到着するとか、アトラム王国では考えられない速度である。道路が完成すると半分以下の時間になると言うから驚きだ、アトラム王国の技術でもこんな大型車両は作られていない。

 バスは4両がそれぞれ交代で出発するので毎日運航できる。王都に向かうバスがある事自体が南ロータス市民には信じられない程の事であった。


 

 アトラム王国、王都ブリシアシティーでは王国陸軍や閣僚と王が、王都郊外の王国演習場に集まっていた。

 今回は第42即応機動連隊による軍事演習である。

 陸自第42即応機動連隊は西部方面隊第8師団に創設された即応機動隊であり、諸外国からの侵略に即時対応する為に平成30年に第42普通科連隊から改名された。

 全て機動化された普通科連隊に16式機動戦闘車を加えた機動戦闘車隊が特徴である。

 第8戦車大隊、第8特科連隊、第8高射特科大隊に第42普通連隊を組み合わせた、高速打撃隊として存在している。

 今回は全ての中隊を連れてくることは適わなかったが、魔獣退治用の16式機動戦闘車を用いる高速打撃隊および高射小隊の93式近距離地対空誘導弾を持ち込んでいる。


 これらと、22式装輪装甲車によるデモンストレーションをアトラム王国で行うのだ。

 途中、第1艦隊旗艦DDH-184「かが」からF-35Bが1機飛来し模擬対地爆弾を使う予定である。


 アトラム王国翻訳機により、自衛隊員のアナウンスが始まる。

「本日は航空自衛隊並びに陸上自衛隊の演習においで頂き有難うございます。最初は22式装輪装甲車によるデモとなります。この車体は日本最新の車体であり、隊員を16名乗車させて、さらに上部に備えられた砲は40mmてき弾銃となります。では1Km先の標的に対して攻撃を行います」

 

 と説明が入るが、車両は止まらず砲撃する。12.7mm機関砲と96式40mm自動てき弾銃の両方を上部に搭載した22式装輪装甲車は走行しながら96式40mm自動てき弾銃より実弾を1Km付近に凄い速度でばら撒く。

 標的はバラバラとなり実弾発射を止めるが走行は止まらない。


「はい、見て頂いたのは96式40mm自動てき弾銃による、制圧訓練です。1分間に最大350発を発射できます。特に面としての制圧を目的としていますが、単発でも威力は強いために戦車等は40mm対人対戦装甲てき弾で上部を狙います」


「上部とな・・・我が国の戦車上部は厚さ20mmしかないぞ」「陸軍大将これはとんでもない兵器です」「スメタナ王これだけでも近寄れませんし、我が国の戦車はおもちゃです・・・・」

 などと、将軍たちは口々に恐れを述べるが、デモは始まったばかりである。


「つぎは、16式機動戦闘車が登場します。この機動戦闘車はタイヤが付いており、整備された道路では最高70Kmで走行できます。次に砲塔は105mmライフル砲で、各種砲弾が使用でき砲弾により使用方法が変わりますので飛距離は問題ではありません。今回は対戦車榴弾による演習です。5Km先の的に3発命中させます。ではどうぞ」

 16式機動戦闘車は舗装された道路では100km/hも出るのだが誤魔化し伝える。しかし70Km/hはアトラム王国としても未知の速度である為、実感がない。こまったものである。

 

 と放送されると1台の16式機動戦闘車が現れ、5Km先の3つの的に向かって砲撃を開始した。荒れ地を16式機動戦闘車は時速50Km程度で走行して、砲塔横向きで1発、転回しながら1発、最後はスラロームで1発を発射するが全て命中した。

 アトラム王国スメタナ王も声が出ない。動きながら目標に当てるなど強力な魔道を使わない限り無理であり一発誘導するだけで魔導士一人の魔道力は無くなる。それを目の前の車両はいとも簡単に行ってしまった。しかも3発も。これは神の奇跡であった。

 そんなアトラム王国幹部をよそにアナウンスは続く。


「さて次は特別に航空自衛隊のF-35Bが登場します。目標は見やすい様に3Km先の小屋に対地用模擬弾を撃ちます。ご覧ください」と言うと甲高い音共にF-35Bが飛来して、目標の小屋に向かって対地模擬弾を投下する。模擬弾は500ポンド精密誘導模擬爆弾であった。


 観覧席より見える程はっきりと、上空から切り離され、小屋の屋根を突き破って地面に刺さる。これが本物であればどれだけの恐怖を与えるのか・・・帝国は経験しているのだが・・・


 F-35Bは上空を一周すると、観覧席の前にホバリングして、頭を下げ、一旦着陸してから再度飛び上がり、「かが」へと帰投する。


 観覧席の何人かは腰が抜けて立てない。


 何しろアトラム王国秘匿兵器であるドラゴンより早く、重い爆弾を投下して、それが正確に当たるなど聞いたことも無い。腰を抜かして当然であった。



 一方、南ロータス街では、自衛隊による分屯地が異様な速さで作られているのを、市民は見学していた。

「すげーなこりゃ」「そうだな早いな、目を離したすきにどんどん建物が建つ」「おーい、サルナ棟梁、あんたなら、あの建物どのくらいで建てる」「ばか言え、整地からだと1か月以上はかかるのを、あいつらたった2日で建てるし、整地チームは次々と整地するし、建てるチームは次々建てる。分担してもこんな早くない。仕事失いそうだ」「まったくだ!」


 1週間程度で簡易建築の宿舎は完成し、燃料備蓄タンクや整備工場棟に簡易ヘリポートが完成した。

 分屯地の擁壁は2mで、コンクリート製である。鋼鉄をいれた型枠に強化コンクリートを流し込んで次々と建てていく。建設隊の次の仕事は南ロータス西側に3000m滑走路を持つ空港を作る作業にかかる。

 日本から東に2万Kmもの距離を飛ばすのは現実的ではないが、将来ドーザ大陸を横断しての航空路開設を睨み、当面は王都に対する航空攻撃の防衛拠点とするためだ。



 アトラム王国には、入浴する習慣がない。

 王都にある王城も湯を沸かして、柄杓でかける程度で体を洗う。

 シャワー程度発達しなかったのかと思うが、それで良いらしい。



 南ロータス郊外の遊水地では、太陽発電と石炭発電を利用した発電装置が民間会社の協力で完成しており、使える電力は豊富である。これを利用して、湧水を太陽熱交換機に入れてある程度暖め、ふろ用に火力発電廃熱を利用して温水にしている。これを貯めて入浴施設を作った。


 風呂は自衛隊が得意のテントを利用した野外入浴セットではなく、石造りの湯船を持つ立派な浴場であった。

 将来は、アトラム王国への民間委託を行い、浴場に食堂と娯楽施設を兼ね合わせた施設を目指している。

 これにより自衛隊はアトラム王国で必要な通貨を手に入れられ、また南ロータス名物にするつもりであった。今は自衛隊に帯同した日本の民間会社が便宜上経営を行い、風呂代は不明なため、かなり高額で設定した。

 一度に何人も来られては不衛生にもなるので仕方ない。大型ろ過装置が到着すれば何人もの入浴をさせる事はできるのだが、現在は廃湯の対策だけである。休憩室には南ロータスで募集した屋台が出店し、飲み物や簡単な食事を有料で提供しており、脱水を防ぐために湧水をろ過して、これは無料で提供した。


 アトラム王国に、こんな設備はない。たちまち王都で有名になり、風呂ツアーまで現れた。

 アトラム王国民の健康と衛生面で、風呂が流行るのを期待する。

 

 日本とアトラム王国で個別に国交条約を締結してから1か月で王都や南ロータス街は大きな変化をしており、王都衛星都市の各領主も見学に訪れているが、自分達にそんな技術は無く、自衛隊が来るのが待ち遠しい。


 王都に開設された外務省事務所と防衛省事務所は、スメタナ王達の要望や領主の要望を日本に伝えているが、要望自体が多くとても全ては聞けない。

 南ロータス港に入港した民間船や海自補給船は、民間の補給物資各種プラントに第8施設大隊の残りと第42即応機動連隊の残りを連れに日本に戻っていった。次は補給船が増え、陸自のAH-1SやUH-1J、CH-47JAも分解して持ち込む予定である。



 調査隊は王都のあるアトラス大陸をくまなく調査し、石炭鉱脈に石油を発見していた。外務省を通じて王に掘削許可を貰っており、次の民間船では石油精製プラント類と掘削機が来る予定である。


 次日本より「おおすみ」が来るときに、調査隊は次の大陸、山ばかりのアーリア大陸に向かう予定である。

 衛星からの資源調査でも、いくつかの有益な鉱脈が見つかっている。とても期待できる大陸であるが、住んでいる人も少ない。2つの大きな街と5つの村で、合わせても6000人程度で侵入に備え、アトラム王国陸軍が2万人と最新の戦車が守っている。アーリア大陸は対帝国の最前線であり、戦略的にも重要な拠点である。


ありがとうございました。

過去話の誤字脱字や文法等のご指摘ありがとうございます。

過去話を手直しする余裕がないので助かります。ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 自衛隊が海外で道路等の建設支援をする時は、現地作業員を雇用し技術の習得も兼ねて作業を行う事が多かった筈です。 これは自衛隊が去った後のインフラ維持の為でもあります。 [一言] 短期間で…
[一言] 更新お疲れ様です。 圧倒的なインフラ整備力と軍事力に度肝を抜かれる民衆や首脳陣たちが(^^;; 資源以外にも、アトラム側からもなんらかのブレイクスルーの技術とかあれば面白そうですが、果たし…
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