第93話 帝都攻防戦 その3
第93話を投稿します。
各地で戦闘が起きています。
帝国はドフーラに騎馬隊を向かわせるようです。
スコードロン「スカイボンバー隊」の各機は帝都東側山脈を高度7000mで大きく旋回しながら後続を待ち、合流したところでA-1軽爆撃隊長の号令で指示どおり各3機の編隊を作り、高度5000mで大三角形を作りながら帝都に向かっている。
帝都直上警戒をしていたワイバーン6匹を確認し、距離50Kmで各小隊に目標を振り分け、各小隊はディスプレーに表示された目標に対し、ロックオンして99式空対空誘導弾を発射する。
A-1軽爆撃機から放たれた6発のAAM-4B(99式空対空誘導弾)は固体燃料ロケットに点火して、白い軌跡を引きながらマッハ4で高度5000mからダイブしながらワイバーンに向かう。レーダーシーカーはワイバーンを捕らえて離さない。
気づいたワイバーンは高度2000mで逃げようと転回するが、AAM-4Bは方向を変えて追ってくる。みるみる白い軌跡は近づき近接信管が作動する。AAM-4Bはワイバーンの近くで爆発と同時に前方にワイバーンに向けて炎が襲う、金属片も混ざっているから、撃たれたワイバーンは胴体に複数の穴が開きボロボロになって搭乗員と共に落下していく。帝都上空に轟音とワイバーンと帝国兵士にAAM-4Bの破片が降り注ぐ、見上げていた帝都市民は急いで家や近くの商店に逃げ込む。
この頃になると帝都に上空警戒警報が発令される。
前回F-2などによる帝都攻撃で急遽取り決めた警告音である。
慌ててワイバーン基地から準備ができた10匹が飛び上がる。
直上警戒していたワイバーン6匹は次々と落とされ、かわりに10匹が基地から飛び上がるのを確認したスカイボンバーは、第2陣のスカイキラー隊に10匹の対処を任せた。
スカイキラー隊は高度4500mでワイバーンをレーダーで捕らえ、スカイキラー隊長が目標の割り振りを行い、各小隊はAAM-4Bを計10発放つ、まだ離陸中の速度が遅いワイバーンに白い筋が向かっていく。
一匹のワイバーンは低空で横に逃げようと移動するが、割り当てられたAAM-4Bは方向を変え、ワイバーンを追っていく。白い筋が渦を巻きながらワイバーンに迫っていき、近接信管が作動した。
逃げたワイバーンの高度は500mにも満たない。一度ワイバーンは森の中にダイブしてAAM-4BをかわそうとするがAAM-4Bの方が早く爆発して金属片を前方にまき散らす。ワイバーンはそのまま後方から金属片を受けて搭乗員は絶命して森に落ちていく。ワイバーンも大きく負傷して急激に高度が下がり森の木に激突して太い枝に刺さってしまう。
残りの9匹は直線的に上昇をしたために、そのままAAM-4Bに撃たれ基地の広場に落とされた。
成果確認したスカイボンバー101隊長機は、全員に斜度機銃の試射3発させて、地上で準備しているワイバーンや宿舎、飼育小屋に対し攻撃指示をする。
スカイボンバー隊は高度5000mから一気に高度500mまで降下して、編隊を維持したまま水平飛行に移り、地上目標を次々と撃ち抜く。12.7mm機銃から放たれる炸裂弾は、地上のワイバーンに大きな穴を、建物は屋根を貫通して内部で炸裂する。宿舎が燃え上がり中から兵士が飛び出してくる。
飼育小屋も同様に簡易的な屋根を貫通して中で炸裂しワイバーンに傷をつけていく。
スカイボンバー隊の地上攻撃中はスカイキラー隊が直上警戒を行い、他方からのワイバーン侵入を警戒している。
その時、遠くから何かが近づいてくるのをレーダーで感知した。
遅れてやってきた帝国第2師団ワイバーン隊の隊長機で南から接近している。
大型のワイバーンで速度は少し早い。元ワイバーン宿営地の整理と調整を行っていた為に遅れてきたのだが、地上では完成したばかりの宿舎が燃えワイバーンも地上で数匹が撃破されている光景を高度2000mから見ていた。
その時、直上警戒のスカイキラー隊から2発のAAM-4Bが発射された。
ワイバーン隊長は、高度7~800mまで一気に降下、早い。
ワイバーンはそのまま森の中に隠れてしまった。追いかけてきたAAM-4Bは木に当たり効果は少ない。
ワイバーン隊長は上昇すると狙われるので、森の木々に隠れ地上を歩かせた。
スカイキラー隊は着陸したと思われる森を上空から編隊を組み斜度機銃で一掃したが、ワイバーンの羽に当たり飛べなくなった。隊長はワイバーンを降り、帝都の城壁と思われる方向に向かって走り出した。
怪我をしたワイバーンは羽を畳み地上で止まっているが森に隠れて見えない。
直上警戒に戻ったスカイキラー隊はスカイボンバー隊が戻るまで警戒を続けた。
攻撃を終えたスカイボンバー隊は高度を上げ、高度6000mにて編隊を組み、帝都上空を優雅に飛び、帝都東の山脈を超えてドフーラ航空基地に戻っていった。
今回の攻撃で、飛んでいたワイバーン16匹と地上建物破壊を確認したが、飼育小屋にはまだワイバーンが残っている可能性がある為、スカイボンバー隊とスカイキラー隊は500ポンド無誘導爆弾Mk82を積み込み、両翼のAAM-4Bも補充をした。両隊は燃料を満タンにすると、今度は爆撃の為に飛び上がる。
帝都上空で飛行隊は高度1000mを維持し、ガンカメラを爆撃モードに設定、高度と速度を計算してコンピューターが爆撃予定位置にカメラの角度を切り替え、HUDに地上画像と赤いクロスが写る。機銃照準は白いクロスなのだが爆撃モードで無誘導の場合は赤いクロスでHUDに表示される。
各隊は水平飛行しながら決められたワイバーン基地の目標に対し爆撃を行う。
何度も無誘導模擬弾で訓練した成果のお披露目だ。
燃えている宿舎に更に爆発が起こる。同様に飼育小屋も簡素な作りなので爆弾が降り注げば簡単に爆発分解してしまう。第3陣が飛び上がろうとして、広場で羽を広げている生き残りのワイバーン4匹にも爆弾が落とされる。
地上広場に大きな穴が幾つも開き、飛び立とうとしていたワイバーンは爆風で飛ばされ、横倒しや直撃をくらったワイバーンは四散する。地上は地獄の様相を呈していた。
地上で動く目標が無くなった事を確認したスカイボンバー隊長は、帰投命令を発した。
帝都では北西の城壁外で突然起こった爆発ではあるが、城壁が爆発の振動で揺れ、帝都北にある住宅や居城なども揺れていた。爆発音もすさまじく、西門と北門を守る守備隊は見守る事しかできない。近寄る事も出来ないほどの集中爆撃を目前にして全ての兵士は足が竦みその場でしゃがみ込んでいた。
帝都上空でワザと大きく旋回して各小隊を合流させ、高度を上げて東山脈を超えドフーラに戻っていく飛行隊を帝都市民はただ見上げて、通り過ぎるのを祈っていた。
こうして帝都に集まったワイバーン80匹は帝国第2師団ワイバーン隊長機の負傷以外、全て殺されてしまった。帝都直上で警戒していたワイバーンと操縦者の死骸は帝都市街にも落下して、市民はその周りを囲み、ただ眺めていた。兵士はとうに絶命している。
居城で日本のすさまじい攻撃を目撃した皇帝ガリル3世は、やっと呼び寄せたワイバーン隊が日本軍を攻撃する事も無く、遠くからの火の矢によって撃ち落された様子が目に焼き付いていた。
「あれは・・・日本軍なのか・・・サイネグ宰相を呼べ」と興奮している。
サイネグ宰相は自室のバルコニーから空中戦を見ていた。
「なんとも、帝国は日本の敵ではないな」と感想を漏らす。一人だから言いたい放題だ。
やがて使用人が入って来て「皇帝陛下がお呼びです」と伝えるとサイネグ宰相は「やれやれ」と言いながら皇帝謁見室に向かう。
入った早々「サイネグ宰相あれは・・・帝都の守りはどうする」と皇帝はうろたえ聞く。
「陛下、帝都の守りを固めるためには、ドフーラに作られている敵の基地を潰しかありません。さすれば帝都も安泰です」と適当に答えるが、内心では帝国兵士は日本の相手にならんだろうと思っている。
「おお、サイネグ宰相良い事を言った。騎馬隊を早速ドフーラに向けて進軍させよ」
「はい陛下、その様に手配いたします」とサイネグ宰相は言いながらさがる。
サイネグ宰相は親衛隊長となったトネグを呼び、帝都に向かっている帝国第1師団騎馬隊と第2師団騎馬隊に早馬を出し命令を伝える様にと指示をし、書簡を2通渡す。
「第1師団騎馬隊は、ムリナ街から向かっておる。第2師団騎馬隊は貿易都市リリコネを出て向かっているのではないかと思うぞ、両隊ともエルフを連れていないから正確な位置は解らんが、帝都から両街に向かえば途中で会えるであろう」と伝える。
トネグはエルフ通信室に向かい、北門と南門を警備している警備隊を呼び出し、サイネグ宰相の命令を伝え、書簡を城に取りにこさせ、出発させた。
トネグはサイネグ宰相に報告すると「皇帝にも伝えろ」と指示を受け、皇帝謁見室に入り「皇帝陛下、ご指示どおり、早馬で騎馬隊両隊にドフーラを襲撃する様に手配いたしました」と報告する。
皇帝ガリル3世は下を向いて無言である。トネグは謁見室を退出して親衛隊控室に戻る。
「何か異様な感じだな・・いやだな」と感想を漏らす。
帝都北門を出た早馬は、街道をムリナ街に向けて走る。途中で騎馬隊を見つけ書簡を渡し、ドフーラ攻撃を伝える。帝国第1師団騎馬隊長は書簡を読むと、「こんな無理だぞ」と副官に書簡を渡す。
読んだ副官は「馬が疲れ、いつ潰れても良い状況なのに何と言う命令ですか」と力なく抗議するが、命令であるので逆らえない事は理解している。
隊長は「さて、ムリナに戻って休憩したら出発だ」と疲れもあって力なく笑う。
大陸北西側のツール要塞都市から1300Kmを駆けてきて、ここで変更命令を受けてしまったが、帝国軍人として命令は絶対だが、一度に疲れが出てしまった。
「敵は城を作っているらしいから逃げんだろ」と言い、隊長は速足程度でムリナ街に戻っていく。
帝都南門を出た早馬は、ソミリア街に向けて出発している。
交易都市リリコネを出発していた帝国第2師団の騎馬隊はもうすぐソミリア街に着く所まで来ていた。
街道は真直ぐミルドに向かっており、途中の丁字路(ていじろ:漢字の「丁」ていです、「T」ではありません笑)から左に曲がれば帝都方向ソミリア街に向かう。遠回りであるために隊長はリリコネから真直ぐソミリアに向け荒れ地をショートカットして走っている。
予定より早くソミリアに到着した騎馬隊は、馬を休憩させ兵士達にも食事をさせていたが、帝都まで残り300Kmであるから、遅い時間に到着した騎馬隊はソミリアで一泊して翌早朝に出発を予定した。
帝都から早馬が12時間かかり到着した。
馬を3頭引き連れ、交換しながら走って来たのだが、それでも12時間もかかった。
伝令は騎馬隊の宿泊している宿を探し当て、深夜ではあるが隊長の部屋に向かった。
隊長は寝ていたのだが気配で起きた。
「帝都からの伝令です」とドアの前で声を上げ、隊長は慌てて寝巻のままドアを開ける。
疲れ切った伝令が息をハァハァさせながら書簡を隊長に渡す。
「なんだこの命令は」と隊長は副長を呼び、「明日からドフーラ行きだ」と書簡を渡す。
副長は何も言わないが、顔には嫌そうな表情が隠しもせず現れている。
「馬はもう一日休ませないと、ドフーラまでの1500Kmはとても持ちません」とだけ言う。
帝国第2師団の騎馬隊は、西南の街、フマラ要塞港町から2100Kmを途中で軍馬を交換しながら駆けつけてきたのに、いまさら1500Km先に向かえとの命令にうんざりしていた。
「要塞都市ミルドに向かい軍馬を調達して向かうぞ」と隊長は言い、「もう寝ろ明日は9時出発とする」と時間変更をした。副長は隊員全員に伝え自室に戻り寝なおした。
北側ではムリナ街に戻った帝国第1師団騎馬隊は、そのまま一泊して翌日は食料調達して遅い時間に要塞都市バロッサに向けて出発する。
隊長はバロッサに着いたら軍馬を買い集め馬を交換して向かう事を計画していた。
陸自第5師団第5偵察隊は要塞都市バロッサに到着し前回同様偵察小隊を周囲に配置して北門から取次ぎを頼んだ。各小隊は西門と東門に各2小隊を向かわせ、門から200m離れ警戒を行う。
要塞都市バロッサの領主ドリドル伯爵は「ついに日本軍が来たか」と言い、皇帝の要請で要塞都市バロッサ警備隊の半分は帝都に向けて出発したために全ての門を閉めて「日本軍を攻撃せよ」と命令した。
いつまで待っても門が開かない第1偵察隊長は、すこしイラっとしていたが、城壁上部に弓を持った兵を確認した途端「退避、乗車」と号令を発し、少し小隊を後退させて矢が届かない位置で止まる。
偵察隊本部に襲撃を受けたと連絡し応援を呼ぶと同時に展開した偵察小隊を北門に集め本部からの指令を待っていた。
偵察本部からは第5師団本部よりミリムソーマからバロッサに向かっている第5師団第4機動化普通連隊と、第5戦車連隊から第1戦車中隊を向けると連絡が入った。バロッサから各隊は距離200Kmの位置にいて、バロッサに向けて進行中である。
第1戦車中隊は90式戦車を配備された戦車隊であり、バロッサに向かう街道を機動化普通連隊と共に時速60Km程度で進行していた。補給隊、支援隊も後続として付いてくる。
約3時間後に合流を果たした各隊は、バロッサ東5Kmの位置に第5偵察隊本部が設営されている本部付近に集まって来た。偵察隊本部テントに戦車中隊長と普通科連隊長、そして各偵察小隊長が集まり作戦概要説明とすり合わせに入っていた。
作戦はバロッサ北門、東門から扉を破壊して侵入後、機動化普通連隊により領主を逮捕するとの手順である。
偵察隊は帝都側の西門外に集結して、西と南に逃亡者がいないかを警戒する。
逃亡者がいれば尋問して、帝国兵士は捕虜に、民間人はそのまま見逃す手筈である。
いよいよバロッサ攻城作戦が始まった。
90式戦車が、東側城壁を一斉に多目的対戦車榴弾で砲撃した。
途端に東側城壁が崩れる。「ありゃ薄いぞ」と車長は声を上げる。
厚さは20センチ程度で、木造の展望台を作り帝国兵士が攻撃していた物と推測される。
帝国が大陸征服した後に帝都に近いバロッサを補強したらしく、西側は強固に、東側は元のままに見張り台を置いた感じとなっている。帝国は東から敵が攻めてくる事を想定していないらしい。
門だけとなった城壁を越して守備隊宿舎らしき建物を90式戦車は砲撃をする。
建物は崩れ落ちた。
次に門だけ残っているのが邪魔で、北門と東門を同じく90式戦車が砲撃、同時に城壁内部に機動化普通連隊の12.7mmや81mm迫撃砲 L16が撃ち込まれる。門は木に鉄板を打ち付けただけの為あっけなく吹っ飛んだ。90式戦車を先頭に街中に突入していく。帝国兵士を確認すると90式戦車砲塔上部に備えられた12.7mm重機関銃M2が吠える。残った帝国兵士達は降伏姿勢を取り、普通科隊員が拘束を行い、門外に連れ出し、73式大型トラックに載せてミリムソーマ方面に送り出す。
屋敷から見ていた領主ドリドル伯爵は急いで支度して豪華な馬車で西門に逃げようとする。
第4機動化普通連隊は、要塞都市バロッサに高機動車や96式装輪装甲車、22式装輪装甲車を送り込み市内をくまなく捜索。帝国兵士の姿を確認すると攻撃するか、降伏姿勢をする者は捕虜とした。
第4機動化普通連隊は時速30Km程度の速度で探索を続ける。
第5戦車連隊第1戦車中隊第1戦車小隊4両は東門から侵入すると直ぐに西門に向かう。西門警備の為である。
第2戦車小隊は東門跡を警備。第3戦車小隊は北門跡の警備である。
第4、第5戦車小隊はバロッサ街の中央広場に集結して、市民から領主について聞き取りと本部設置用に広場確保を行っている。
その間に第4機動化普通科連隊本部は街の中央広場に移動してきた。戦車中隊本部、第5偵察隊本部も広場に設営する。
西門に迫っていた第1戦車小隊は豪華な馬車が西門を抜けて街外に向かうのを確認したが、城内に留まる。
西門外では第5偵察隊が検問を広範囲で行っているから彼らに無線で報告する。
偵察小隊は要塞都市バロッサ西門から現れた豪華な馬車に向かって止まれと合図をする。
馬車は無視する様に走り続ける。
第5偵察隊第1偵察小隊は馬車に乗っている者が大物だと確信して、偵察警戒車に乗り先回りして道をふさぐが馬車は横の林に逃げようと、雨対策の為に掘った窪みにはまって横転してしまった。
領主ドリドル伯爵は横転した馬車の中で気を失っている。
第1偵察小隊は素早く馬車を確保して馬を逃がす。放り出された御者を回収して、「中の人物は誰だ」と尋問する。御者は「バロッサ領主、ドリドル伯爵です」と意外にあっさり素直に答える。
偵察小隊は気を失っているドリドル伯爵を担ぎ上げ、軽装甲機動車の荷台に乗せ手足を拘束してバロッサ広場に向かう。馬車や御者回収は第2偵察小隊が行っている。豪華な馬車には金貨に財宝が積み込んでいる。
「やれやれ、市民を置いてバロッサを放棄して先に逃げだすとは見上げた領主だ。最低だな」と笑いながら言いながらも偵察小隊は回収した品をリストにしていく。
「多すぎるだろ」と文句も言う。ドリドル伯爵の全財産に近いのかも知れない。
ありがとうございました。
誤字脱字報告感謝です。
次回も戦闘が起きる予感が・・・




