第88話 ミソラ・ロレンシアの冒険 その7 ハイエルフ村からドーザ大陸南へ
第88話を投稿しました。
ハイエルフが言う伝説・・・
久々にミソラ達の魔獣退治、楽しそうな冒険です。
チロルの森で自衛隊と帝国軍による死闘が演じられていた頃、ミソラ・ロレンシア達一行はアトラム王国で「女神」と呼ばれる存在のハイエルフ達に面会していた。
ハイエルフの「リナ」に案内されてハイエルフの里を始めて訪れたミソラ達は、昔ながらの木の家に感心していた。
「女神さまは木の家にお住まいなのか。すごい作りの教会にでもお住まいと思った」と女神教の信者であるドネルグが関心しながら言う。
「王都では大きな神殿が女神教の聖地であるのに・・ここは」と神殿で一時ヒーラーとして勉強したミリナがため息と共に呟いた。
『形は大切ではありません。ここはハイエルフが助け合って生活する村です』とミソラ達の頭に響いていた。威厳のある様な愛のある様な不思議な感情が伝わる。
「いまの思念は族長様ですよ」とリナが説明する。
「女神の族長様にお会いできますか、ご挨拶したく思います」とミソラはハイエルフ村を訪れて族長に挨拶する事が目的であるので渇望した。
『リナお連れしなさい』と頭に響く。
『はーい、お連れします』今度はリナの思念だ。
「リナ様、女神様達は思念で会話するのですか」とミリナが単純な質問をする。
「そうよ。普通は思念で、大陸人との取引は大陸語で日本人との会話は日本語でするのよ。ふふ」リナはいたずらポイ顔で言う。
「そうなんですね、でも思念は女神様全員に聞こえてしまうのではないですか」とミリナが尋ねる。
「それは族長に聞いて、私が説明しても良いのだけど、族長様も待っておられるからね」
「リナ様そうでした。一刻も早くお会いしたいと思います」とミソラ。
村の中央にある大きな木造の建物にリナはみんなを案内していく。入るとそこは大きな食堂の様な部屋で一度に30名程度が食事できる大きなテーブルと木製の椅子が並んでいる。族長の謁見室と言うわけではなさそうだ。使い込まれたテーブルと椅子、奥には調理室が見えた。
「この家は族長の家ですよ。さっ入って。普段はここで食事を交代でしたり、重要な会議をする場所ですよ」とリナは説明する。
ミソラ達はキョロキョロしながら建物に入っていく。王都にもありそうな建物で宿屋に併設されている食堂の様な雰囲気であるので親近感が沸いている。
『よくぞおいでなさいました』と頭に響くと同時に奥のドアからひと際オーラを持った人物が入って来た。
いくつに見えると聞かれれば30歳前半と言う程の若さと美貌を持った族長にミソラ達は見入っていた。
族長は外部の人間がそんな状況になるのに慣れているのか、一瞥すると椅子に座る。
『あなた方も座ってください。私が族長ですよ』
見入ってボーとしていたミソラ達は慌てて椅子に座る。
「族長様・・・いや女神様。私たちはアトラム王国からまいりました、冒険者をしておりますミソラ・ロレンシアと・・・」「ソラです」「ミルネです」「お会いできて神に感激です。ミリナと申します」「トムスと申します」「タトルです」「お会いできて光栄です。自分はドネルグと申します」
『遠い所をよくぞまいられた。我々には名前はありません。思念の波長により相手を認識します』
「ですが族長、リナ様は名前が・・・」とミソラ。
「前に説明したでしょ、私は日本に留学して便宜上日本人が付けてくれた名前なのよ。ふふ」相変わらずリナはいたずらぽい顔で言う。
「すいません。そうでした聞いていたのにすいません。私たちのアトラム王国では女神シャリゼーナと呼ばれている事から、お名前があると思い・・・本当にすいません」ミソラは謝る。
「別にいいよ。それに名前持ちは6人いるから。名前のないハイエルフはだいたい35人位かな」
「そんなに女神様達はいらっしゃるのですね。安心しました」とミソラに代わりミリナが答える。
『ミソラとやら、そなたたちの来訪目的はなんです』
「はい女神様、アトラム王国では女神教が国教です。女神様に実際にお会いしていただきたく参りました。もしお教え下さるなら、このドーザ大陸で起こった事を聞きたいと思います」とミソラ。
「しかし不思議だよね。ドーザ大陸での女神教と言うなら解るけど、遠いアトラム王国で女神教が布教されるなんて」とソラが言うが失礼ではないのか・・・
「こらソラ。失礼ですよ」と女神教の熱心な信者であるドネルグに怒られた。
『あなた達の疑問は理解できます。ですが私たちが女神教とやらを広めたわけでは無いのですよ、聞きたいですか』
「はい、聞きたいです」ミリナが食い気味に答える。
『リナ、ヒナタを呼んで二人で飲み物と少しのお菓子か神の桃を用意してください』
『族長了解しました。ヒナタお仕事よ』と言うとリナはヒナタを待っていた。
「そのー神の桃って仰いましたよね。日本で見た高価な果物ですよね。ここで作っているのですか」と族長の思念に反応してミソラが聞く。
『日本人が付けた名前の果物です。もともとはこの地域に自生していたのですが、自衛隊の協力で果樹園ができ、日本人が買ってくださるのですよ。私たちは日本のお金を受け取って農機具や日本の野菜や果物の種を買わせていただいています』
「日本とは良い関係ですね」「うんうん」とミソラが言いミリナが頷く。
『ではお茶と菓子の用意ができるまでお話ししましょう。
私たちは長い者で700年生きています。私も515年になります。昔私が生まれる前には、ハイエルフは世界に散らばっていました。
私たちは使徒と自覚しています、神の使いとしてこの地に使わされたと言われていますが、私たちが(神)の存在を感じた事はありません。神は今いないのでは無いかと思っています。
言い伝えでは、神は私たちを作り地に降ろし世界の平和を託したと言われています。その後に神は遠い地に・・旅立ったと。言い伝えにはあります。
私たちの役目は神秘の洞窟にあると言われる扉を守る事と、国ができればその統治者を調べ託せるのであれば扉を開けるカギを渡す事。
ふさわしくない者や他国征服を考える者には「神のいかずち」をもって制裁をする事が私たちの役目です。
ですが・・・長い年月の為にいかずちを隠した場所の言い伝えは忘れ去られ、呪文のみ残っています』
族長は淡々と話をしていた。
「あの神々の洞窟と言われているのが神秘の洞窟ですね。確かナナさんとレイナさんがアトラム王国が開けた扉を閉じたと記憶しています」とミソラ。
『私もそう聞いています。ですがドーザ大陸の洞窟は1つではないと思います。ただし場所の言い伝えは失われました。どこにあるのか。ですが言い伝えでは、この世界には6つの扉があり、その1つがアトラム王国に、ドーザ大陸の1つが破壊されました。のこり4つの場所は不明です。日本にも同じことを伝えています。それに1つは「神のいかずち」に通じているはずです』
「帝国がそれを知れば「神のいかずち」を欲しがるでしょう」とドネルグ。
『いえ帝国だけではなく、全ての国に知られてはいけない事です』
『族長お呼びですね。すぐに用意します』ヒナタが走って飛び込んできた。果樹園で作業をしていたようだ。手に泥が付いている。調理室に引かれた水道・・・自衛隊が水汲みに苦労しているハイエルフを見て、山麓から湧水を村に引き、蛇口を付けてくれた。
ヒナタは手を消毒石鹸(日本製)で洗い、お茶と菓子と果物をリナと用意した。
「お待たせしました。紅茶とポッキー(日本製)と果物ですよ」とリナとヒナタは運んできた。
因みにマリアとヒナタはチロルの森駐屯地で働いていたのだが、大戦があると言う事でハイエルフの里に避難をしていたが、マリアは捕虜が嘘を言っていないか取り調べの為に昨日、駐屯地に戻っていった。
マリアは自衛隊から借りた偵察用バイクKLX250を使っていたのだが、族長から貯まったお金でマリア用と村用にバイクを日本から購入していた。
マリア用にスズキのVストローム650XT ABS を村人用にホンダのカブ50を5台購入していた。ヒナタも果樹園からカブで走ってきた。
村人用に自動車教官資格を持った自衛隊員が原付バイクと共に村を訪れ講習と試験を行い、合格者には仮免許を配布していた。大三角州の警察署に行けば正式な免許と交換できる。原付だけだが・・・
マリアは大三角州に作られた教習所でバイク(限定解除)と普通自動車の免許を取得していた。
大三角洲教習所では獣人やエルフ、ドワーフにも開放されており、本州よりも安く免許が取得できたが、必要なら申請すると奨学金が支給され、働いて返すことも可能だった。
ミソラ達は紅茶を飲みながら話をしていた。
「ドーザ大陸にまだ神々の洞窟がある事は知りませんでした」とミソラ。
『探そうとしない様にお願いしますね。ドーザ大陸東の洞窟がどうなったか知っていますよね。本来の使い方ではないので封鎖させましたが、知れば、開ければ、新たなる争いが起きます。それからアトラム王国にハイエルフがいない事は王族に尋ねると良いと思いますよ。アトラム王国のハイエルフ達は逃げ出してしまいました。今どこにいるのかは不明ですが、洞窟を守っているのではと思います。北の大地には洞窟と神の住処と言われる場所があるので、そこでは無いかと思います。ただし人間には行けない所です』
「はい、心得ています。好奇心だけで洞窟に行きましたが、まさかアトラム王国が攻め込んでくるとは知りませんでしたから、次も見つかれば同じことになります。心に刻みます」とミソラ。
「そうだなあれは驚いた。しかし日本が簡単にアトラム王国の戦車を撃退した事にはもっと驚いた」とタトル。
「ところで女神様、見た所ハイエルフの里には女性しか見当たりませんが・・・その子供はどの様にして生まれるのですか・・・」とソラが遠慮がちに聞く。
『だいたい三百歳になる頃に妊娠して、生まれます。子供はハイエルフ皆で育てます。もち論、教育も』
「えっっ女神様達は突然妊娠するのですか・・・」とドネルグ。
『そのとおりです。男性がいる訳でもありません。突然お腹に命を授かります』と族長。
「女神様は不思議だ・・・」とドネルグは感心する。
「では恋とかは無いのですね」とソラは尋ねる。
『恋というものは知りません。それにハイエルフ以外の種族の考えていることが解ってしまうので嘘を言って近づいても排除するだけです』
「嘘を付けない相手に恋とか愛とか・・・解りました」とソラ。
「この紅茶美味しい」とミルネ。
「それは日本から買った紅茶ですよ」ヒナタが言う。
「道理で美味しいと思った。アトラム王国の紅茶みたいなお茶は口に合わなくて・・・」とミルネ。
『ミソラと言いましたか・・この後あなた方はどうするのですか』
「はい女神様、この地を南下して山脈を回り南にある半島から帝国に入る計画です」
『そうですか、チロルは今スルホン帝国と日本が戦争しているので危険ですから、遠回りですがそれが良いですね。そういえば南にはエルフの村もあったと聞きます』
「はい、私たちも神々の洞窟に向かう途中で聞きました。寄って行こうと思います」
「姉御、聞きたいことが無くなったら出発しようぜ」とトムスが旅立ちを催促する。
「最後に女神様、お願いです。写真を一緒に撮っても良いですか」とミソラ。
『良いですよ。旅のお守りにしてください』
「有難うございます。外で撮りましょう。リナ様ヒナタ様も一緒に撮りましょう」
ミソラ一行は族長の家の前に並び、族長、リナ、ヒナタも並んだ、そこにナナが戻って来たのでカメラを頼み撮ってもらった。
「良い記念になります。女神様ありがとうございます。・・・女神様はこの里にしかいらっしゃらないのですか」とミリナが言うが、ミリナはアトラム王国にハイエルフがいない事に違和感を感じていた。
『おりますよ、ですが場所は解りません。私たちの思念は20Kmが最長です。ですが世界が戦争をする前は各大陸にハイエルフは居ました。扉を通じて交流していましたが、現在は解りません。ドーザ大陸にはここにいる者だけの筈ですよ。』
「族長ありがとうございました」とミソラ達は丁寧にお礼を言い族長もにっこり笑う。
ハイエルフ達は八頭身で手足が長く細身で顔が小さい。アトラム王国からきた身でも美人に見える。
アトラム王国の王都ブリシアシティーにも居ないほどの美形であり、女神神殿にある女神像とも似ていない。本当の女神様は神々しいオーラと美貌を持った人物なのだ。
毎日女神像に祈りを捧げていたミリナは、女神像は作り直すべきと思い、お願いをした。
「族長・・・いや女神様、お一人で写真撮らせて頂けますか」と
『女神像を作り直したいのですか』と笑いながら族長は許可をした。
ミリナはカメラで手足、全体、後ろなど女神像を作るために必要な写真を撮りだめた。
「ミリナ気が済んだか」とトムスが言う。
「皆、出発よ」とミソラ。
「では村の出口まで私が案内するわ」とヒナタ。
ハイエルフの皆は、手を振るでもなく立ってミソラ達を見送っていた。
ヒナタは村の結界まで来ると「この先が森よ、まっすぐ行くと自衛隊の基地に行きますよ」
「ヒナタさんもごちそうさまでした。紅茶美味しかったです」とミソラ。
「ミソラさん達も気を付けて冒険してくださいね」
ミソラ達はハイエルフの里に来た道を戻るように歩き大三角州の街まで戻って来た。
大三角州にできた街に泊まり、ドーザ大陸の最新地図を入手して、自衛隊のトラックに乗り南の検問所に向かっている。大三角州以外は立ち入り禁止である。因みに大三角州を含む南と北の国境までは宗谷特別自治区と呼び大三角州にできた街はドーザ街(通称日本街)と呼ばれている。日本山を越えたチロルの森一帯は日本領としてドーザ大陸チロル地方と日本では呼ばれている。
大三角州から南に250km下った所に検問所がある。本当はさらにその先250kmにある入り江を開発したいのだがチロルの森に戦いが起こり開発自体が停止されてしまった。もう入り江を発見してから1年が経過している。
南西諸島や大南島の補給基地として入り江の開発を予定して、高速鉄道や空港までも計画には入っていたのだ。
検問所に着いたミソラ達は外務省からの書類を見せ、手続きを終え出発していった。
検問所の前は南大河が横たわり、自衛隊がかけた浮き橋が渡してある。
「これからが本当の冒険だな、最初にエルフの隠れ村に行ってみよう」とドネルグ。
最新地図には神々の洞窟(破壊されてはいるが)とエルフの隠れ村が2つ書かれている。1つは大三角州の南で神々の洞窟の先にあるが度重なる魔獣の群れによる攻撃で大三角州に村ごと住まいを移してしまったので無人の筈だった。
その先の南西諸島や大南島も書かれている。陸路は調査済みの南大河までで、その先は村や城塞都市に港街が書かれている。ただし先の街や村には自衛隊が接触を避けている為に詳細は解らないし種族も書かれていない。
南大河を渡り、道が途切れる約5kmをいった所で「久々の冒険だ腕が鳴るぜ」とトムスが腰の剣を撫ぜる。
「ミリナ、サーチを頼む」とタトル。
「オッケー」と日本語で答える。
・・・・・・・・・・っと
「前方5百メートルに大型動物1匹、右百メートルにうさぎ? が2匹」
「よし俺とタトルとミルネが前に、ミソラとソラはウサギを頼む。ドネルグとミリナは前方3百メートルで待機よろしく」
「各自気を付けてね、特にトムス張り切りすぎよ」とミソラ。
「ははは、久しぶりの狩だから仕方ないよね、トムス」とミルネ。
トムスとタトルは剣を抜き大型動物に向かっていった。
「まってよ」とミルネ。「二人で狩るの・・私要らないじゃない」と怒る。
「撃ち漏らしたらミルネが頼りだからな」とトムスは煽てる。うまいぞトムス。
「やれやれ、ソラ、ウサギ狩りしましょう」久しぶりの新鮮な食材にミソラも悪い気分ではない。
トムスとタトルは大型生物・・・アトラム王国で言うワイガー、ドーザ大陸で言うドラフマに向かっていった。四つ足だが立つと3mはある。ドマフラは立ち上がり威嚇している。最初トムスが剣で右から切りつける、後ろからタトルがトムスに隠れて首に切りつける、ドラフマは右腹を切られたが次の攻撃である首を前足で防いだ。
「タトル鈍っているぞ」とトムス。「わかっている」とタトルはそのまま側面から後ろに向かい背中を切る。
剣士二人がかりでも致命傷にはならない。
再度二人は間合いを取りトムスが後ろ足を、タトルが後ろから背中を刺す。ドラフマは「うぉぉーーー」と咆哮を上げ、トムスに前足を振り上げ薙ぎ払う。トムスは脇腹に当たってしまう。
痛さをこらえ、再度前足を狙う。その間タトルは後ろから背中を数か所刺している。
「くそ、体力あるワイガーめ」とトムス。
「首を狙って」と遅れて到着したミルネが叫ぶ。
「おうさ」タトルはドラフマの後ろから首を狙い刺した。
ドラフマは咆哮して後ろを向いた。
「今だミルネ」とトムス。
ミルネはトムスの背中を踏みつけ飛び上がると火球をドラフマの頭に放って後ろに下がる。
突然の火球攻撃にドラフマは咆哮をあげ、再度正面を向く。
すかさずタトルは燃えている頭に剣を刺す。タトルの剣は細身で刺す方が効果が高いが致命傷にならない。
ドラフマは4つ足に戻ると、トムスに向かって走り出す。
トムスは剣を水平に構え、ドラフマの速度と体重を利用して頭に剣を刺して、飛び上がると回蹴りを放ち剣の柄を蹴って深くに刺さるようにし、再度飛び上がり横に避ける。
ミルネはトムスの剣に火球をぶつけ、急速に剣の温度を上げて内部に高熱を送り込む。
ドラフマは急に速度を落として横倒しになり咆哮する。
タトルも飛び上がり、体重を剣に乗せて首を切断する。
ドラフマはもう咆哮しない・・・
「お互い体が鈍っているな」とトムス。
「まったくだ」とタトル。
「二人とも油断しない様に」とミルネ。
トムスは頭に刺さった剣を引っこ抜きドラフマの心臓に突き刺す。これで終わりだ。
「あぶなかったぜ」とトムス。
「本当にもう」とミルネ。
タトルは解体ナイフを取り出し、ドラフマの腹を割いて内臓を出す。
トムスはロープを取り出すと、ドラフマの後ろ足に巻いて木に逆さに吊るし血抜きをする。
そこにウサギ狩りから戻ったミソラ達とドネルグ達が合流した。
「誰か怪我した?」ミリナが聞く。
「ミリナ頼む、脇腹やられた」とトムス。
ミリナに治療してもらいながらトムスは言う「姉御、体が鈍っている。すまない」
「んまーしょうがないよね、日本ではワイガーより小型の「くま」とか言う動物としか戦っていないものね。少しづつ勘を取り戻せば良いよ」とミソラ。
向こうではタトルとドネルグがワイガーと赤ウサギを解体している。
「トムス歩けそう?」「姉御大丈夫だもう痛くない」
「ならもう少し進みましょう。ここは生臭いから魔物が集まるからね」
ミソラ達は検問所から20km歩き、途中で「いのししもどき」アトラム王国では「ばふふ」と呼ばれる魔物が2匹襲ってきたが、トムスとタトルで討伐した。実戦で勘を取り戻すらしい。
森に広場を見つけテントを張った。盛大に火を起こして動物が近寄らない様に、ただし森が燃えないようにソラの水魔法で周りの木々を水でコーティングする。
今日のディナーは日本で仕入れたフランスパンと言われる硬パンに昔日本縦断していた時にもらったイノシシ肉のシチューと豆腐とねぎの味噌汁である。みんな味噌汁が好きになっていた。
ミソラが皆に言う「今日は少ないけど明日から40キロは進みたいね、魔獣との格闘付きだからその位で丁度良いと思うの」
「姉御それが良い、道もないから賛成だ」とトムス。
「はい、ではそれで計算すると、明後日にはエルフの隠れ里に着くよ。それから1日後には入り江でしょ。そこから百キロで帝国の村よ楽しみだわ」
「姉御・・・」とタトル。帝国の村といえど戦闘の危険性もあるのに「楽しみ」らしい。
ありがとうございました。
次話はアトラム王国との交渉と帝都攻略の始まりです。
お楽しみに。
誤字脱字報告ありがとうございます。