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戦闘国家日本 (自衛隊かく戦えり)  作者: ケイ
第1章 日本転移と自衛隊激闘編
87/251

第85話 帝国帝都へ その2

第85話を投稿します。

アトラム王国交渉団も日本に到着して本格的交渉に移ろうとしています。

また、陸上自衛隊ドーザ方面隊が正式に発足して移動を開始しました。

帝都は皇帝はどの様な手を打つつもりなのでしょうか、楽しみです。

 チロルの森大戦から1週間が経過し、アトラム王国交渉団は横須賀の海上自衛隊自衛艦隊司令部側に停泊していた。300m級の旗艦コルグ・スメタナが接岸できる港で外部から遮断できる場所はここしかなく、護衛艦隊も第1護衛隊以外はアトラム王国に向けて出港しているので、比較的簡単に決められたのだが、半戦艦半航空母艦の様な旗艦コルグ・スメタナはとにかく目立つ、横須賀港クルーズの船から見物客が不思議そうに見ていた。だが海上保安庁の横浜第3ふ頭は情報流出を防止するのが難しいので横須賀に迎えたのだが、早速SNSなどで話題となってしまった。


 交渉団の主なメンバーは横須賀の海上自衛隊接岸港からMCH-101に乗り換えて、防衛省に向かう。


 MCH-101は海上自衛隊が物資及び自衛官等の輸送の為に保有している機体であり、派生型として南極観測隊「二代目しらせ」の艦載機としてCH-101が3機、海上自衛隊による訓練等の支援を行っている。このCH-101は極寒冷地対応である。

 MCHとCHの共通事項として、機体は乗員2名の他に30名の乗客を運ぶ事ができる。ただし主に荷物輸送用途での使用が多い。


 防衛省に到着したのは、外務省担当官を含めたアトラム王国交渉団5名に日本国外務省担当官2名、および第1護衛艦隊司令と副官を含む9名である。


 防衛省の庁舎A棟屋上に到着したが、アトラム王国側は地上20階建ての屋上など高さに不慣れの為、膝が立てない状況となり、仕方なくエレベーターまで車いすで運んだ。


 ゾリアス公爵(使節団長)も膝が笑ってしまった一人ではあるのだが、MCH-101で東京の街を上空から一瞬眺め、アトラム王国とは比較にならない技術力を実感する。しかし交渉団の長である為、交渉には手を抜かないことを内心誓っていた。


「どうぞこちらに」と防衛省秘書官が案内をする。


 アトラム王国交渉団の5名はどうにか歩けるところまで回復していた。

「いや失態を晒しました。まさか高さにびっくりして歩けなくなるとは・・・不覚です」とゾリアス公爵は言い訳をする。だが、高さ60mの建物のさらに屋上などの高さはアトラム王国には存在していない。王都の女神教教会には「いのりの塔」と言われる女神と交信するための塔が建っているが、高さは20m程度の物である。しかも王都にあるスメタナ王の居城も高さは5階程度で、こんな高い建物は交渉団全員初めての経験であった。


「すみません、次回からは地上の儀仗広場に着陸させます」と秘書官。

 儀仗広場は庁舎A棟前の広場であり、ここは非常時ヘリの発着もできる広場である。


「お手数をおかけします」とゾリアス公爵が控えめに言う。

 やはり怖いらしい。


 エレベーターでしばらく降りると会議室が連なる階に到着した。

 中でも大きい「大会議室1」と書かれた会場に案内される。

 本来交渉事は外務省か総理官邸で行うのが通例ではあるが、今回は関係者を呼び防衛省会議室にて行う。

 情報を外部流失させない為の工夫である。


 出迎えた外務大臣の佐藤が一行を迎える。


「遠い所をよくぞおいで下さいました」と佐藤。


「初めましてアトラム王国のゾリアスと申します。はるばる来た成果をアトラム王国も望んでいます」とゾリアス公爵。やはり交渉慣れしている。


「では早速交渉に入らせていただきます」と佐藤。


 交渉はそれぞれの国が出した要望を確認する所から始まった。


「と言うわけで、我が国としてはエネルギーに食料等の輸入に鉱山等の調査を望んでおります。また、貴国は研究対象として大変魅力的ではあります。そこで追加要望として貴国研究を付け加えさせていただきます。なに難しい事ではありません。我が国の研究者や研究施設の受け入れと安全確保をお願いします」と佐藤。後出しは交渉の常道である。


「はい時期が来れば研究者や研究施設の受け入れは可能でしょう」

「して我が国の希望ですが、戦争による国力低下は著しく、貴国が望むような燃料や作物も細々と続けている有様であり、現在は貴国への輸出とか考えられる状況ではありません。しかしながら帝国との戦に目途が付き国内に目を向けられる時が来れば、貴国のお役に立つ事が可能と考えます。それまでに国内の流通を活発化させて、来るべき時期に備えたいと思います」とゾリアス。


「その為の道路や物流の整備と言う事ですね」と佐藤。

 続けて、「しかし我が国にも貴国との交渉でメリットがなければ国民が納得しません。我が国は民主主義を掲げており、国民代表者による国会にて審議されますが、常に国民の判断を気にしており、国会の内容は全ての国民に放送されています。つまり、国民が納得しない交渉内容は破綻します」と佐藤。


「そうですね、我々も要求だけを押し付けるつもりはありません。妥協できる点を模索できればと考えております」とゾリアス。


「では明日再度交渉するとして、関係各所への連絡等でどこまでできるか、またその時期について具体的に交渉しましょう」と佐藤。

 今日は交渉初日と言う事もあり、顔合わせ程度の内容とした。


「本日は外務省にて宿舎を用意しております。そちらに移動いたしますのでご用意お願いします」と防衛省秘書官が言う。


「おおそれはありがたい」とゾリアス。

 また空を飛んで帰ることを思うと安心した。


 ゾリアス公爵一行には某高級ホテルの1フロアーを貸し切って滞在させた。

 アメリカ大使館にも近いホテルで2019年に完成した本館が高層ホテルに生まれ変わり、そのスウィートを含む1フロアーを外務省が貸し切ったのである。当然食事用に同じフロアーの大きなスウィート(250平米)の部屋を用意し、他の宿泊客に見られず会食できるように工夫されていた。


 都心のホテルは海外からの宿泊客が無くなり経営は苦しい状態が続いていた。


 防衛省は窓の全てに鏡面フィルムが貼られたマイクロバスを用意してホテルに向かう。


 鏡面フィルムは外からは見えないが、内部からは景色が楽しめる。

 交渉団は初めて近くで見る東京の景色に目を離せず、ときおり「魔道車があんなにある」とか「人々の服装が奇抜だ」とか「なんなんだあの大きな魔道車は」とか言う。バスかトラックであるらしい。


 大騒ぎする内に一行は某ホテルの横の入り口に到着した。

 正面から入ると騒ぎになると考え、ホテルの西側の出入り口を閉鎖して外部の人から見られることのない様に宿泊フロアーまでの誘導を行っていた。

 余談だが、ここを建て直す前は日本一綺麗になる洗車場があった。もちろん某社長車や官僚専用公用車を専門にする洗車場で、現在は同系列ホテルの神戸店に面影を残すのみである。残念。


 ホテルの割り振られた部屋に着くと、ゾリアス公爵は懐から紫に金の刺繍を施した「きんちゃく袋」を取り出し、袋から大切そうに大きい音叉の様な魔道具を取り出した。

 音叉とはU字の金属に金属の持ち手を付けた道具で、叩くと決められた周波数の音が出て、楽器のチューニングなどに使われる道具である。


 その大きい魔道具を目の前に出すと、呪文のような呟きを吐いて「ゾリアスからタイラグ宰相に通信、聞こえますか」と言う。

 地球もどきは元の地球と同じ円周が4万kmの球体である。

 球体であるがゆえに、無線通信は電離層に反射して遠くに飛ばすか、中継衛星を経由して遠方に届けるのである。この魔道具からは電波は出ていない。それは警備の為に展開した陸上自衛隊の特殊作戦群が電波も傍受していたのだ。各周波数のスキャンをしており、ホテルの部屋から電波が出ていれば傍受できるのだが、そんな兆候はなかった。


 なのにタイラグ宰相にあてて日本から通信を行っている。

 アトラム王国は2万km先であり、無線で言えば高出力の短波以下しか届かないのにである。

 魔道具は難なくアトラム王国までの長距離通信を可能にしていた。

 しかし、この魔道具は強力な魔力を込めないと動作しない。タイラグ宰相もゾリアス公爵もアトラム王国では優秀な魔導士である。

「おお、ゾリアス報告を待っていたぞ。報告してくれ」とタイラグ。


「はい、タイラグ宰相報告します。本日は日本側交渉団との顔合わせと、お互いの要望書についての内容確認でした。日本側は我が国に研究者と研究所の設置許可とその保護を追加で出してきました。私個人としては日本の首都東京と言う所は冒険者達が言っていたように魔道車がたくさん走っています。それに今日は大きな魔道車がたくさんの人を運んでいました。これを追加要望として出したいと思います」とゾリアス公爵は一気に報告した。


 ゾリアス公爵は魔道具を耳にあてると声を聞き取った。

「そうかゾリアス、魔道車がたくさん走っているとな、それは我が国に必要だと思う。しばらく待て国王陛下に報告と承認を貰ってくる」とタイラグ宰相が言う。日本は午後4時である。地球の反対側であるアトラム王国は早朝の4時であった。12時間の時差がある。


 1時間ほどして魔道具がウィンウィンと唸りをあげた。

「はいゾリアスです」と答え。耳にあてる。


「ゾリアス、国王の許可がでた。魔道車を追加要望として出してほしい。他に国王からは珍しい果物やお菓子に日本の首都の風景を模した物が要望だそうだ。頼むぞ」


「はいゾリアス了解しました。追加要望を出します」と言い。魔道通信は終わる。


「さて、明日からが本番だな」とゾリアス公爵は一人呟く。



 ドーザ大陸方面隊は第2師団、第5師団(第5旅団から再編成で師団となる)、第7師団にドーザ大陸方面隊の直轄部隊、第1特科団、第1高射特科団、ドーザ大陸方面混成団、第3施設団に第1電子隊やドーザ大陸方面通信群を含めた後方支援隊で構成されている。


 特に新第5師団は元第5旅団に特科、高射、戦車の各大隊中隊を連隊化に加え、普通科連隊は機動化された部隊として再編制された。新第5師団は平成16年に旧第5師団から第5旅団に編成(縮小)されたのだが、当時の師団構成以上の新師団に再編成されていた。不足している部隊は全国から集められしかも精鋭である。


 ドーザ方面総監部は札幌駐屯地からチロルの森駐屯地に移動している。

 方面隊全ての移動であるから混乱も起きていたが、ドーザ大陸方面後方支援隊の第101全般支援大隊から第103全般支援大隊が交通整理に移動順序整理を行い、防御力に空白を生まない様に誘導していた。

 当然第5師団や第7師団も移動を開始しており、隊員輸送のトラックやV-22JやCH-47JAなどの大型ヘリにUH-60JAや戦闘ヘリAH-1Sなども移動していた。航続距離が短い航空機は途中補給を受けて、日本山臨時航空基地へ、ヘリなどはチロルの森駐屯地や分屯地また防護壁外に作る臨時ヘリポートに向かっていた。


 またドーザ方面航空隊として第1対戦車ヘリコプター隊は2隊から3隊に増え、ドーザ大陸方面ヘリコプター隊も使用機種がUH-1Jが2個飛行隊と本部付V-22Jが2機であったが、UH-60JAが1飛行隊とV-22Jが更に2機追加配備された。遠征の為に特別輸送隊としてCH-47JAが1個飛行隊追加されている。

 なお、1飛行隊はヘリが約8機で構成されている。(例外もあるが)


 大規模な編成となったドーザ大陸方面隊であるが、受け持ち割り当て、北街道(ミリムソーマ)を第5師団が担当し、中央部(ドフーラ)を第2師団が、南街道のドミニク・フーラから港町ドルステインまでを第7師団が担当する事で決まった。第2師団は歴戦の勇士であるが、ドフーラを説得し条約締結できなければ新規駐屯地や航空基地が効果的な場所に作れない為、重要任務と言える。

 また、第7師団の受け持ちであるドミニク・フーラは元帝国第5師団が駐留していた要塞都市であり、反抗が予測されるのでドーザ大陸方面隊で最強の打撃力を誇る第7師団をあてたのである。


 こうして日本側の準備は進んでいた。


 時刻は夜の9時である。帝都では皇帝ガリル3世が主だった家臣を皇帝謁見の間に呼び状況の説明をさせていた。

「サイネグよ、なぜ無様に負けたのだ説明しろ」と皇帝。


「はい皇帝、逃げ帰った兵士達を捕らえ拷問したところ、日本軍はわが軍の動きを帝国第4師団が要塞都市ドフーラから出た時点で全ての師団移動を掴んでおり、我が軍の移動情報は筒抜けだったとの事です。なぜなら第5師団や第3師団は敵の城に着く前に攻撃されており、この時点で半数以上の損害が出ていたとの事です。また、第4師団は途中での攻撃に遭いながらも敵城に迫り攻撃をしましたが、大人と子供の争いの様に簡単に敗北させられ、兵士達は帝都に戻れと解放され、小隊長以上は捕えられたとの事です。なお、第4師団は最初の攻撃で砲撃隊や攻城隊を全滅させられ、その時に臨時軍団総司令のドメスアルム領主長とゾンメルも戦死しました。これ以後の指揮統制は取れていません。


 皇帝は頭をかかえ「なぁサイネグ、我々はあの日本と言う国に勝てないのか、なぜこれだけの大軍をいとも簡単に打ち破ることができるのだ。暗部は「敵は人道主義を標榜しているから積極的な攻撃はない」と言っておったではないか、なぜ負けるのだ」と嘆く。


「はい皇帝、暗部が言うには最初チロル山での戦いには小隊でこちらを一方的に攻撃はせず警告をしてきたと言う事です。ですがこの度の大戦は最初からわが軍を攻撃してきました。その様な兆候はなく、暗部も日本側の方針が変わったことに驚いています。ですが、かと言って暗部に責任がない訳ではありません。責任者は投獄しております」とサイネグ宰相は報告する。


 突然「ご報告」と言う声が聞こえる。

「何用だ」とサイネグ。


 皇帝謁見の間に親衛隊長が入ってくる。

「皇帝陛下並びにサイネグ宰相閣下、敵からの攻撃を受けています」と帝国親衛隊長のトールストが報告する。遠くで爆発音がかすかにする。


「詳しく報告しろ」とサイネグ。


「はい、ご報告いたします。現在日本のものと思われる高速の空飛ぶ機械の様な物が帝都郊外のワイバーン隊の宿舎や飼育小屋を攻撃しているとの事です。幸い帝都上空には4匹のワイバーンを警戒に当たらせていましたが、空飛ぶ機械は爆弾を落とすと同時にワイバーンでは追いつけない速度で飛び去ったとの事、ワイバーン32匹と当直の士官および操縦兵士25名が死亡、建物は破壊されたとの事です。報告は帝都西門の警備小隊よりありました」帝国親衛隊長のトールストは報告する。


 同時刻少し前、宗谷特別行政航空基地よりKC-767が1機、F-2Aが2機、各GBU-12(Mk82 500ポンド爆弾:通称ペイブウェイ)を4基と増槽2つを翼下に積み込み飛び立っていった。帝都のワイバーン施設を破壊する目的であった。


 帝都上空を通過して城壁西側の外に帝都防衛のワイバーン施設はあり、F-2Aは第101特殊普通科連隊が照射する誘導レーザー反射波を捉え、爆弾を投下した。

 GBU-12は旧式であるが、最新のGBU-54LJDAM誘導装置を搭載した最新型スマート爆弾は高価で、誘導レーザー反射波により本来は目標のGPS座標を取り込み自動で目標に向かう事ができるのだが、帝都はGPSが効いていない、無誘導でも良いのだが、精密誘導により帝国に対し日本の技術力を見せつける目的もあった。

 GBU-12は難なく宿舎2つと飼育小屋4つを完全に破壊していた。

 F-2AはGBU-12を投下すると給油地点へと向かいKC-767からの給油を受けると、宗谷特別行政航空基地に戻っていった。これで帝都の防空能力はワイバーン4匹となりC-2によるビラ撒き作戦に移れるのであった。

 C-2にもワイバーンは追いつけないのだが・・・ドラゴンを警戒していた。

ありがとうございます。

次話は続きとなります。

いつも誤字脱字報告ありがとうございます。感謝しかありません。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 防諜という意味では『魔法通信』、使い手が限定されるとはいえなかなか脅威ですね。 まあ公には出来ないでしょうが『盗聴』もやっているでしょうね。 テンプレですが、訪問団が日…
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