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戦闘国家日本 (自衛隊かく戦えり)  作者: ケイ
第1章 日本転移と自衛隊激闘編
82/251

第80話 ドーザ大陸大戦 その8 総力戦その3

第80話を投稿します。

あまり迫力ある描写にならなかったのですがお楽しみいただけたら幸いです。

誤字脱字報告感謝です。

 V-22Jオスプレイにて一度要望書を作るためにDDH-183「いずも」に戻り、艦隊司令を含め会議室に外務省(内閣府経由の首相官邸災害対策室)を含めテレビ会議をしていた。外務省担当官から内容について説明を受けていた。

「そうか、国交交渉を望むか・・・どうだろう佐野官房長官」と当壁総理が言う。

「帝国との戦争が起こっていますからアトラム王国との交渉は望むところだと思います」と佐野。

 当然帝国と王国との2面作戦は避けたい思いが強い。

「明日までに各国要望をだすか・・・我が国は食料に石炭等の化石燃料だな。帝国領で石油は見つかったが石炭等は少量だから国内石炭鉱山を再開はしているが燃料費が高騰している。特に電気だな。原子力発電はまだ転移の点検に時間がかかるし、現実的なのは火力発電だろう。特にアトラム王国の石炭は船舶で粉砕石炭燃料を使っているとか、十分火力発電に使用できる見込みはあると思うが」と当壁は専門知識を入れて説明する。


「あとは生鮮食料品ですね。日本近海では「ぶり」や「まぐろ」の仲間が見つかっていますが、アトラム王国まで行けば別種が見つかる可能性があります。また、野菜や牛肉等輸入できるなら大助かりです」と佐野は農林水産大臣を見ながら言う。農水大臣は頷く。


「他にはあるか?」と佐野。


 オブザーバーの学識経験者から、「やはりそのー、魔法について深い研究がしたく思います」

「それはちょっと待ってもらえるか、邦人を送り出すと邦人保護も考えなくてはならない。それよりアトラム王国の裏に何か隠しているなら危険だから見極めなければならない」と佐野。

「はぁ」とオブザーバーはひっこめる。

「高速大量輸送と言っていたな。衛星で確認できる農作地と街の位置を出せるか」と当壁。オペレーターから「少しお時間をください」と返答。「うむ」と了承する。


「佐野官房長官、外交文書はそちらで作り外務省経由にしてほしい。また各大臣の要望をできる限り反映させてください」と当壁。


「はいわかりました。ですが明日ですよね・・・」と佐野。


「現在解っている範囲で良い、後日追加を出そうではないか」と当壁。


「ええそれならできると思います」と佐野。

「ええと各大臣を官房長官会議室に集めてくれ」と秘書に言い。佐野は目の前の農水大臣と打合せに入った。



 チロルの森は静寂に包まれてはいるが、帝国兵士の移動とそれに伴う松明が長い列を作っている。


 中野幕僚長とオペレーターだけが戦闘指令室に残っている。

 師団長以下休めるものは仮眠を取っていた。オペレーター達にも緊張から一時的に解放された安堵感が漂っている。

 現在時刻は03:25、夜明け前だ。

 日の出の時刻は05:17であり1時間前から「包囲殲滅特-1号」の予備移動が開始される。


「赤外線センサー異常はないか」と中野は指示をする。


「最前列は駐屯地手前10キロで移動なし、丘陵後部に焚火が480ヵ所確認。推定人員は45万名、幅10キロに分散」とオペレーターは報告をする。

「集まってきたようだな」と中野。


「後続隊を確認したい、北部方面航空隊からOH-1は出せるか」


「はい。北部方面航空隊北部方面第1対戦車ヘリコプター隊本部付隊のニンジャ04が待機中」


「赤外線暗視装置で後続隊の確認せよ」と中野。


「了解、ニンジャ04に連絡します」とオペレーター。


 ニンジャ04が搭載した統合戦術情報伝達システムに指示が流れる。

 静寂の駐屯地にヘリ音が響き渡り1機が飛び立つ。


「ニンジャ04よりチロルベース送れ」「チロルベースよりニンジャ04、感度良好送れ」

「帝国兵隊列は最前列が駐屯地手前10キロ、幅10キロで変わらず。仮眠の様です。後続隊は松明を持ち森の中を移動中。最後尾は駐屯地から35キロ地点。だいぶ近づいてきました。帝国軍は合流後逐次休憩に入っている様子」「移動速度から計算すると夜明け前には長さ20キロ、幅15キロ程度に固まるものと推定。以上」


「ニンジャ04ご苦労、帰投せよ」と中野が直接指示をだす。

「さてオペレーター、作戦開始時刻前に再度偵察を実施」

「みんなもマルヨンヒトナナ(04:17)から作戦予備移動が開始されるから、備えてくれ」と中野は指示を全員に出す。


「それから駐屯地の照明を夜間照明に切り替え眠っている様に偽装。赤外線センサー担当は不届き者が来ないか監視」「来た場合は作戦時間まで監視継続」


 チロルの森駐屯地は後部に作られたヘリポートを除いて赤色ライトに変更し、探照灯も消した。


 帝国第4師団第1中隊ではこの動きを好機と捉え、偵察隊を30名程度出している。

「近くまで行って、弱点を探せ、残りは木製攻城兵器の組み立てと岩石を集めろ」


「了解」と第1中隊の偵察隊は丘陵をゆっくり下っていって、駐屯地の有刺鉄線手前3kmに近づいていった。


 帝国偵察隊は慎重に進んでいた。時折監視塔から見つからない様に匍匐前進を入れながら柵に接近している。チロルの森駐屯地は周囲1kmを掩体壕として深堀しており、その先1kmから3kmは緩衝帯として有刺鉄線を何重にも張り巡らせ隙が無い様に思えた。

 門は正面にはなく、5角形の左右に2つ門がある。正確に言えば後部にも日本山に通じる門があるのだが、相当迂回しなければ見つけることはできない。


「中野幕僚長、ねずみが30人闇に紛れて接近中」とオペレーターが報告する。

「しびれを切らせて近寄ってきたか。静観だ」と中野。

「門は閉じているな」「はい」「なら大丈夫だ、好きに偵察させろ」

「ただし緩衝帯を抜けてきたら近くの対人障害システムを起動、2つで良い。それから派手に総員起こしといこう」時間はマルサンゴ-マル(03:50)で作戦準備にはちょうど良い。


 帝国兵士は「これだけ近づいているのに静かすぎないか」「いや寝ているのだろう」「だとしたらスルホン帝国百万人に対して余裕だな」「お前たち静かにしろ気づかれるぞ」「まだ遠いから大丈夫でしょう」

 会話は全て収音装置によって中央指令所に流れていた。

 音声は翻訳されて中央モニターに赤外線センサー映像と共に流れている。


「なんだこの鉄の線は、棘が出ているぞ、触るなよ」隊長役が注意する。

「持ち上げられますよ、木の棒などがあれば持ち上げられます」

「止まれ、ここから隠れるところが何もないから見つかるな」

「一人だけ行ってこい、誰が行く」一人が志願した。複数人が木の棒で有刺鉄線を少し持ち上げ一人を通す。

 抜けた一人はそのままの匍匐前進でゆっくり先に進む、後ろから木の棒を受け取り次の有刺鉄線を持ち上げて体を入れていた。目の前に何かある。丸い形の小さい何か・・・


「057、058起爆」指令室では指示通り侵入者近くの対人障害システムⅠ型を2つ起爆する。威力は弱いはずなのだが中央部が飛び上がり1m程度で爆発、周囲に破片をまき散らす。


「敵襲、総員起こし」指令室から駐屯地全体に突然ブザーと照明が一斉に点灯され、探照灯にも火が入れられた。駐屯地の緩衝地帯が明るく照らされ侵入者が照らされている。


 突然、駐屯地上部から2筋の12.7mm重機関銃M2が侵入者に向けて撃ちだされた。

「ひぃー」逃げろ。対人障害システムⅠ型に晒された仲間を置いて侵入を試みた残り29名は懸命に森に逃げたが途中まで弾が届き10名程が負傷する。12.7mm重機関銃M2の射程は2km程度なのだが撃ち下ろし位置で曲射を狙うと6km以上届くので狙ってはいるが適当にばら撒いただけで何人かに当たってしまった。


 帝国第4師団第1中隊長は「失敗か」とつぶやいて、それ以後は命令通り大人しくしていた。


 駐屯地は突然のお客さんに喧噪が大きくなり、作戦行動開始の時間も近いことから所定の行動に移ろうとしていた。

「何事か」と師団長の平沢陸将と副師団長の佐藤陸将補が戦闘指令室に飛び込んできた。


「ねずみが30人来ましたので脅かしました」と中野。


「偵察か、来ないと思ったが敵も後続を待ちきれないか」と平沢。


「時間も良い感じですね」と佐藤。


「そうだな予備移動を開始せよ」と平沢。


「了解、オペレーター所定行動開始」と中野が指示する。


「中野君大丈夫か、濃いコーヒーでも入れるか」と平沢。


「有難うございます。助かります」と中野。


 戦闘指令室の隣には平沢のエスプレッソマシンと浄水器に非常戦闘食の「おにぎり」が置かれていた。

 平沢は人数分のエスプレッソを淹れて配る。


「有難うございます。師団長のコーヒーは絶品です」と中野は一口飲む。


「余裕がなければ突発事態に対処できないからな」と平沢も飲む。


「オペレーター状況報告」と佐藤。


「報告します。現在正面敵に動きなし、先ほど30名の偵察がありましたが1名は対人障害システムⅠ型にて沈黙生死不明、残り29名は本体と合流。正面敵は距離10キロ程度変化なし、幅は約12キロと拡大しています。後続最後尾はマルサンヨンゴ-(3:45)計測時に最前列から25キロ後方、現時刻では20キロになっているはずです。詳細は再偵察します」とオペレーター。


「了解」と平沢。


 中野が04:17と時計を見て「時間です」と言う。


 予定移動を指示されていた各隊は一斉に移動を開始する。


 先に第71戦車連隊と第2偵察隊が、次に第2戦車連隊が森の中を慎重に移動開始する。

 遅れて第3機動化普通科連隊の一部が第2戦車連隊と合流すべく移動開始、第25機動化普通科連隊も第71戦車連隊との合流に動き出す。

「第2偵察隊に連絡、後列アタックに変更なしマルゴーヒトナナ(05:17)に開始する。巻き込まれるな」「第2偵察隊了解」

 日の出と共にスルホン帝国第4師団最後部にA-1軽爆撃機がMk.82 500ポンド無誘導爆弾による爆撃を開始するが第2偵察隊は位置が近いので巻き込まれる可能性が高い。誤爆が無いことを祈る。


「F-35Aに偵察要請」


 宗谷特別自治区空港に併設された航空基地より2機のF-35Aが飛び立ち戦術情報システムにより赤外線データを送り続ける。


「帝国第4師団後続隊予定位置です」とオペレーター。


「日本山臨時航空基地および特科陣地に連絡、準備行動に入れ」

「各隊マルゴーヒトナナ(05:17)に合わせて攻撃開始」中野が次々と指示する。統合戦術情報伝達システムにも表示されるのだが確認の為に復唱させる。

 駐屯地、分屯地は完全に眠りから覚めて、防御態勢を整えていた。

 05:17時には帝国第4師団後列から爆撃が、正面から砲撃が、側面からは斜め前方に押し出すように第71戦車連隊と第2戦車連隊が2個機動化普通科連隊半数と協同して攻撃を開始する。

 帝国第4師団は最初に後列上空から爆撃されて広がって逃げるも、左右からの戦車群により圧力を受け前方に移動させられ正面は特科群の砲撃に晒される。これが「包囲殲滅特-1号」である。


 しかし、左右からの圧迫については漏れもあり機械化普通科連隊も参加はするが相手が多いために圧迫し続けることが要である。

 

 いよいよ時刻は迫る。


「最終点検急げ」


「宗谷特別行政区航空基地よりE-767とF-15J 15機、F-35A 5機上がります」

「第2戦車連隊予定位置に待機」「第71戦車連隊予定位置待機中」

「第3機動化普通科連隊および第25機動化普通科連隊もそれぞれ戦車連隊と合流」

「第2特科連隊準備完了」「第1特科群第101特科大隊並びに第102特科大隊準備完了」

「第129特科大隊準備完了」MLRSは帝国第4師団後部を再度狙う、爆撃後に弾着予定となる。


「準備はできたようだな」と平沢陸将。


 統合幕僚長より訓示が届く。


 内閣府災害対策室に官僚が集まり始め、中継を見ている。


 誰かが言う「百万対1万5千か圧倒的だな」「前の世界でこんな戦闘聞いたこともない」と呟く。


 時間だ。


「スカイボンバー101よりアタックを開始する」と無線が入る。

 航空隊の動きはE-767からのレーダーデータにより戦闘指令室の中央画面に位置情報が表示される。

「スカイボンバー101任務完了全機帰投」続いて「宗谷特別航空隊アタック開始」F-35AとF-15DJの20機による爆撃が開始される。

 地上では帝国第4師団の後部が次々と爆発に巻き込まれ大混乱している。

 物凄い炸裂音と爆風により前が見えない。

 臨時軍団総司令のドメスアルム領主長公爵も第4師団長ゾンメル将軍も爆発に巻き込まれ早々に戦死している。

 最後部の第5中隊も幹部を護衛しながらの移動であるから爆撃に巻き込まれ大半を失っていた。続く糧食隊も同様であった。

 

 第2戦車連隊は90式と10式に統一された戦車群を帝国第4師団の右側方から次々と砲撃を繰り返し移動している。一部74式戦車は駐屯地で最終防衛に使われている。

 第3機動化普通連隊の96式装輪装甲車は12.7mm重機関銃M2から弾をばら撒き敵を近寄らせない様にしている。敵兵は大きな鉄馬車と迷彩の鉄馬車から逃れるべく先頭に向かって走り出した。

 第71戦車連隊も第25機動化普通連隊の96式装輪装甲車と協同して帝国兵を追い立てている。


 第2偵察隊は爆撃中、帝国第4師団の砲撃隊が残していった榴弾砲や臼砲に87式偵察警戒車の25mm機関砲KBA-B02から2~3発砲身を目掛け撃ちだし再使用できない様にしていた。

 その後すぐに帝国第4師団の最後部を押し出す目的で移動を開始する。

 

 その頃、帝国第4師団は第5中隊と幹部を失い、第2偵察隊の25mm機関砲KBA-B02が迫ってきていて、前方に逃げるしか道はなかった。兵士たちは盾を捨て身軽になると一斉に駆け出した。

 帝国第4師団の第1中隊と合流を果たしていた第2中隊は後方の爆音がする方を見ている。

 仲間が必死の形相で走ってくる。

「なにがあった」と聞く。「チロルの森が噴火した」とあいまいに答える兵士達。

 前方から不吉な音がし始め砲弾が着弾する。


 駐屯地を望む丘陵地帯は幅15km程度一斉に爆発した。

「うぉー」と兵士たちが爆風で飛ぶ。「広がれ」と中隊長が言うも聞こえない。次々と兵たちは爆風で飛ばされた。そこに後方から帝国第4師団第3中隊と第4中隊が走りこんでくる。

「後ろから撃たれる。逃げろ」との声でパニックになる。

 一部の兵士たちは駐屯地に向かって走り出す。「待てそっちはダメだ」と誰かが叫ぶ。

 

 第1中隊長以下50名は壮絶な光景を目にして「ここにいては死ぬだけだ」駐屯地を回り込んで正面左の門を目指すべく走り出した。

「ここにいては死ぬだけだ、走れ走れ」と叫びながら声をかけて4百名近い人数になる。

 第1中隊の動きを見た第2中隊長も駐屯地正面から右の門を目掛けて同様に叫びながら走り出した。


 駐屯地上部の防御である12.7mm重機関銃M2が一斉に火を噴く。

 一部の兵士は無謀にも有刺鉄線に向かっていく。

 有刺鉄線を抜けたつわものもいる。

 対人障害システムⅠ型やⅡ型の近接防衛が間に合っていない。


 突然、駐屯地上部のキャットウォークから予備兵器である84mm無反動砲(84RR)も撃ちだされる。

 有刺鉄線を乗り越えて掩体壕にたどり着いた兵士達は12.7mm弾と84mm無反動砲(84RR)から撃ちだされるHE 441B 榴弾の餌食となる。

 そんな状況を見ていた帝国兵士たちは第1中隊長や第2中隊長の後を追った。 

 

 先に判断した帝国第4師団の第1中隊長達は駐屯地の門に通じる道を走りながら観察していた。前方に障害物が見えている。そこには対人障害システム障害II型が置かれているが帝国兵士たちは見えていない。

 駐屯地門の上から横から12.7mm弾が降り注ぐ、帝国兵士が次々と倒れていく、考える余裕がない。

 帝国兵士たちは死の走りを繰り返し、上から12.7mm弾が正面から対人障害システム障害II型の鉄球が破裂音と共に飛び出してきた。何人もの帝国兵士は鉄球を受け、弾を受け道に転がる。


 その時駐屯地の門が静かに開いた。帝国兵士達は「うぉーーーー」と声を上げ一層早く走り出している。

 内部から第3機動化普通科連隊の上部に12.7mm重機関銃M2を乗せた軽装甲機動車が3両現れ門の中から兵士たちに向かって撃ち始める。駐屯地の中から北部方面航空隊の第1対戦車ヘリコプター隊のAH-1コブラ10機が飛び立ち掩体壕や門に通じる道を走る兵士に向けて20mm M197ガトリング砲がブーンと言う音と共に発射されている。

 有刺鉄線から掩体壕にかけて動く兵士はいなくなった。

 後続の帝国第4中隊の後方から第2偵察隊と第71戦車連隊、第2戦車連隊に各サポート役の機動化普通連隊96式装輪装甲車が60両近く帝国兵士達を追い立てていた。

 ついに戦車連隊も帝国兵士達を追い立てて、丘陵地帯まで進出してきた。駐屯地門方向へ誘導すべく斜めに隊列を組み砲撃を続けている。一部の兵士たちが第2偵察隊の手薄なところからそっと戻り始めている。

 しかし大半の兵士は駐屯地の門に入ろうとして相変わらず死の走りを続けている。


 戦場から抜け出す敵兵には構うなと指令を受けている。


 もう丘陵地帯への砲撃は止んでいるが負傷した、かろうじて生きている兵たちが座り込んでいる。

 門に向かった一団も、あまりの防御に腹ばいになり降伏姿勢を取っている者もいる。

 だが中隊長以下何人かは負傷しながらも門に向かっている。


 突然スルホン帝国語で放送が流される。「帝国兵の諸君、無駄に命を散らすだけだ、我々の攻撃を受けた貴兵達は解るはずだ。異質な攻撃であると、この防御を突破して門に入ることは叶わない。直ちに抵抗を止め降伏しなさい。命は助けよう」と繰り返し放送された。

 中隊長たちも重傷であるが責任感から突撃しようとしていたが、放送を聞き停止合図を出す。

 第1中隊長はもう膝に力が入らない。そのまま倒れてしまった。

 第1中隊、第2中隊に続く第3中隊、第4中隊も停止した。


 突然森から戦車や96式装輪装甲車が彼らを囲み、自衛隊員が武装解除させていった。


 これで全員かなと陸上自衛隊第2師団の自衛隊員も呟く。


 第3機動化普通連隊と第25機動化普通連隊は急いで帝国兵を武装解除して座らせる。

 第26機動化普通連隊も分屯地から応援に駆け付ける。


 宗谷特別行政区航空基地からV-22Jが6機応援の為に飛来すると丘陵地帯に着陸する。

 北部方面隊から第5旅団の第4普通科連隊が武装解除および捕虜収容の為の応援として駆けつけてきた。


 中野幕僚長は作戦手順に沿って、次々と指示をだす。

「帝国兵士は武装解除、捕虜は下士官や上級士官に限定、兵士は武装解除後帝都に帰還させろ」

「第2偵察隊はチロルの各村に行き帝国兵が潜んでないか確認及び排除」

「特別行政区航空基地へF-35Aによる偵察を依頼。帝国第4師団の後続が居ないか確認」

「第3機動化普通連隊第1機動化普通科中隊および第2機動化普通科中隊は武装解除を第4普通科連隊に移管、予定通りハイデルバークに行き帝国兵の残党が居ないか監視および排除および街道側入り口の一時閉鎖」

「第25機動化普通科連隊第1機動化普通科中隊は北部街道監視、第25機動化普通科連隊第2機動化普通科中隊はチロルの入り口村にて帝国残党の確認及び排除、村人には丁寧に説明」

「第26機動化普通科連隊は各中隊交代でチロルの森荒野を巡回監視および帝国兵士の排除」

「第2戦車連隊は第4普通科連隊の警護」「第71戦車連隊は分屯地に帰還」「北部方面航空隊第1対戦車ヘリコプター隊は駐屯地帰還、補充および応援要請に待機」


 全ては統合戦術情報伝達システムに隊毎表示されるのだが入力漏れなどのミスが無いか確認しながら指示を出す。


「よくやった」内閣府防災対策室で見ていた当壁総理は呟く。

 すぐに北部方面隊第2師団師団長宛に「苦労をかける」と労いの連絡を防衛省経由で届けた。


 作戦指令室では中野幕僚長と副師団長の佐藤陸将補が後始末に追われていた。

 戦闘は始めるより終わらせる方が難しい。


 中野幕僚長は疲れからか独り言を言う「これから如何するのか総理の決断しだいだな」と聞こえない様に呟いた。


「これからが大変だな。」平沢陸将も副師団長の佐藤陸将補も同じ思いだ。

ありがとうございました。

日本国の決断はどうなるのでしょうか。


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― 新着の感想 ―
弾薬に使う鉄の量、半端じゃないでしょう。殲滅した敵の武器を鉄の材料として回収したら、結構な量になるのでは。
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