第78話 ドーザ大陸大戦 その6 総力戦その1
年マタギしてしまいました。すいませんそしてあけましておめでとうございます。
家は喪中なのでこの辺で。
また長くなってしまいました。
硫黄島分屯地とのコンタクトに成功した王国旗艦コルグ・スメタナ以下、交渉艦隊は海上自衛隊のUH-60J(JⅡ型)に言われた通り、硫黄島と母島の中間地点で停泊し、日本側の使節を待っていた。
報告を聞いた政府は戦闘行為ではなく交渉との事に安堵しアトラム王国特使を迎える準備をしていた。
「当壁総理、これはチャンスです」とノックもしないで入ってきた防衛大臣高野は息を切らせながら入ってきた。「わかっておる」と当壁は外務省レポートを読むのを止め、高野に向かい合った。
「これで当分の火種は小さくなったと思っているが、アトラム王国の本心しだいだな」と当壁。
「総理そのとおりです、帝国の様に罠に嵌めようとする連中もいますから」と高野。
「当面は様子を見るとして、迎えはどのようになっている」と総理。
「はい、外務大臣とも連携を取って、横須賀の第1護衛隊が大島近海で演習を行っていましたので、急行させており、市ヶ谷から習志野所属のV-22Jオスプレイで外務省担当官を第1護衛隊「いずも」に向かわせています」
「流石だな高野大臣。言わなくても手配が進んでいく日本政府は帝国と違い対応が早くて助かる。現場にいる人々の命を、我々が決断を早くする事で救う事ができるのだな」と当壁は自分に言い聞かせるように言葉を噛みしめる。
習志野駐屯地から飛び立ったV-22Jオスプレイは陸上自衛隊所属機であり、習志野駐屯地から特殊作戦群隊員を15名搭乗させ、さらに市ヶ谷の防衛省で待ち合わせしていた外務省担当官2名を搭乗させて、一路DDH-183「いずも」に向かい東京湾を東に向かっている。(元の世界では南下)
外務省担当官を乗せたV-22Jは時速5百km/hと最高速度に近い飛行を続け、2時間後にはDDH-183「いずも」に着艦していた。
外務省担当官2名と第1護衛隊司令や各艦長に航空自衛隊いずも航空隊長および陸上総隊隷下特殊作戦群から特殊作戦群長佐藤一等陸佐が「いずも」の会議室に集合する。
外務省担当官が最初に発言する。
「本省から外交交渉に来航した艦隊に対し目的とどのような交渉を望むのかを確認し本省と連絡を取り交渉を開始したいと思います。相手に敵意が無ければの話ですが」と帝国とも交渉を行った外務省担当官が発言する。
「はい、我々特殊作戦群は各自衛隊員の安全確保と外務省担当官の警護が任務です」と特殊作戦群長佐藤一等陸佐が発言する。
「我々は皆さんの安全と硫黄島などを含む小笠原列島の安全確保に、日本からの交渉団を安全に本国に戻すことが使命です」と向谷1等海佐が第1護衛隊司令に代わり発言する。
続けて向谷一等海佐が「各目的は解りました、今後の指揮権ですが、統合幕僚長直轄の交渉団として艦艇含め、只今よりアトラム国交渉団として編成を行います。また、指揮優先は第1護衛隊にありますが、第1特殊作戦群は任務最優先とし、第1護衛艦隊としてはアトラム国交渉団の担当官と第1特殊作戦隊の生存を最優先で考えます。それでよろしいですか」と向谷1等海佐は、統合幕僚長からの指令を伝えた。もちろん高野防衛大臣の意思でもある。第1護衛隊司令の富川海将補も頷く。
外務省担当官は「もちろん、よろしくお願いいたします。フローダ半島での交渉では何度も待ち伏せに会いましたからね、自衛隊の方々を信頼しています」と言う。
帝国第5師団の第1中隊の事を言っているのだろう。外務省担当官を含め人質にしようとした相手を返り討ちにした事件である。
「ええ、我々も聞いています、だからの第1特殊作戦隊だと思います。今回はその中でも優秀なものを選びました」と佐藤。
「エリートの中のエリートと言う事ですな、心強いです」と担当官。
「はい、では現状を説明します。現在我々はここです」と向谷一等海佐が会議室中央のモニターに海図を映し出し、相手の位置と島々の位置関係、それに第1護衛隊の位置を示していく、「予定とおり行けば12時間後に接触します。明日の朝8時の予定です」
「明日の手順ですが、午前8時近くにアトラム国交渉団の手前20キロにて停泊し、我が国交渉団を陸自さんのV-22Jオスプレイにて送り出します。幸い相手の旗艦後部に航空甲板がありますので着陸はできるものと思いますが耐熱性が判らないのでソフトランディグで無理なく着陸を目指してほしい。同時に「いずも」からF-35Bを4機、オスプレイの援護に向かわせます。それからは第1特殊作戦隊と外務省担当官にお任せします。なお、第1特殊作戦隊の個人携行カメラの画像と音声は「いずも」を経由して外務省と防衛省に中継します。危なくなったらV-22Jオスプレイで逃げるか、われわれがUH-60JをF-35Bの護衛付きで出しますのでそれで回収します。それでよろしいですか。必要なら作業艇も用意します」と向谷一等海佐が簡単に説明する。
アトラム王国との交渉準備は着々と進展していく。
帝国第4師団では、隠密行動に入るため、雇いあげたチロル入り口村の住人を戻していた。
これからは帝国兵で砲撃隊や攻城隊を移動させ、見つからずに敵の城に行けるところまで進む計画である。帝国第4師団の陣容は第1中隊を先遣隊として威力偵察を含めて先行させ、第2中隊第3中隊が砲撃隊の進路を作り、第4~5中隊で砲撃隊攻城隊の移動をさせていた。この陣形は帝国軍教練の基礎であり、人の波で蹂躙する場合の基本形であった。
「しかし、森の中を切り開いて進む砲撃隊などいまい。敵の驚く顔が楽しみだ」と臨時軍団総司令のドメスアルム領主長は笑いながら豪華な馬車の中で酒を第4師団長のゾンメル将軍と飲んでいた。敵の城(チロルの森駐屯地)までまだ80kmもある。敵は気づいていないと思いくつろいでいる。
通信役のエルフ達は師団付馬車に臨時軍団総司令付きのエルフと共におとなしく座っていた。
その時、上空からバタバタと異様な音がするが、遠いので兵士は気にしていなかった。
「エルフ達よ声を聴きなさい」突然エルフ達に思念通信が向けられた。
この世で思念通信ができるのは、女神様と呼ばれるハイエルフだけなのだ、声は優しく力強くエルフ達に語り掛ける。
「もうじき神の「いかずち」が砲撃隊や攻城隊に降り注ぎます。お前たちは魔道通信により前方にいるエルフ達に神の「いかずち」が降り注いだら、ハイデルバーグ方面に逃げなさいと伝えなさい。あなた達は馬車を降りて後方のチロル入り口村に逃げなさい。私マリアが迎えに行きます。生き残るのです」
ハイエルフのマリアが陸上自衛隊のUH-60JAに乗り上空から語り掛けていた。
バタバタと言う異様な音は後方に去っていった。
代わりに小さい音が複数と言っても2つ聞こえてきた。
エルフ達は迷うことなく魔道通信で今の思念通信を中継し、自分達も逃げる準備をした。
「御者さん、お手洗いに行きたいので道を逸れて止めていただけますか」と言い馬車を止めさせた。
チロルの森駐屯地に連絡が入る。
「スカイスカウト1から報告。エルフ達は馬車を車列から逸らして停車。車外に出た」と1機のOH-1が報告する。目視と赤外線センサーの結果だ。
「スカイスカウト2からチロルベース1。ターゲット森の中の為視認性悪し、赤外線センサーと測距レーダーの結果を送る」
本来のOH-1が搭載する各種センサーは統合戦術情報伝達システムに接続されてはいなかったが、追加導入が不可能になった転移後世界でリバースエンジニアリングを行い、統合戦術情報伝達システムにリアルタイムで各種情報を伝達できるシステムとした。
チロルの森、帝国第4師団は15Kmもの長い列を作っているので、ニンジャ(OH-1:観測ヘリコプター)を2機出していた。
送られたデータはすぐに分析にかけられ、砲の移動が確認された。
「チロルベース1から第129特科大隊(MLRS隊)。統合戦術情報システムにて目標を割り振る。5分後に最新データに更新するが各隊の目標はそのままとする。10分後に同時弾着。以上」
「よし来たぞ、訓練の成果を見せろ、ターゲットは約80~100キロ先帝国第4師団砲撃隊と攻城隊の特科兵器群だ、1台残らず破壊が任務と心得ろ。なお10分後に移動後データが入る、それにより未来位置にて撃破、中間誘導はE-767、最終誘導はF-35Aが行う。質問が無ければ戦術情報システムに従いターゲットをマークして20分後にTOTを実施する」と第129特科大隊本部管理中隊より、各中隊に指令が飛ぶ、各MLRS中隊は自走発射機、指揮装置、予備弾薬車と特科隊員の輸送車で構成されており、自走発射機にはM31GPSロケット弾が搭載されている。炸薬量は90kgと少ないが軽い分100kmの射程があり、ピンポイントでターゲットを破壊できる。
クラスター弾に関する条約(オスロ条約)を締結後はクラスター弾を使用して面の制圧を行うMLRSはその存在価値が弱くなり新世代の対舟艇弾や滑空弾等の発射機に代わる運命であった。
なので一層、第129特科大隊の全員がこの作戦成功に意気込んでいた。
MLRS発射機に1中隊あたり12発のM31GPSロケット弾を搭載しているが、帝国の砲撃隊は砲が20台、攻城隊は臼砲6台であり、攻撃精度を高めるために1台に対し1発のM31GPSロケット弾を割り振り、OH-1の報告で破壊されていない砲に対し2次攻撃も行う。当然途中で補充も必要である。
5分後最新データが入る。
本部管理中隊はデータ更新を行い同時にカウントを開始した。
MLRSは同時発射すると軌道がずれたり誘爆の可能性もあるので(ロケット炎による衝撃)目標を縦に取り遠い目標から順次発射して、同時弾着を目指している。
「5.4.弾ちゃーく、今」チロルの森に至る所に炎が同時に上がり衝撃が走る。
帝国第4師団は、突然空から火の矢が各砲に降り注ぎ破壊していく光景を唖然として見ている。
砲の傍にいた兵士は空を飛ぶ。
「ほら今よ、走って」エルフ達が首輪を隠し持った鍵で外し、マリアに言われたとおり走り出す。
マリアは帝国に協力的なチロル入り口村の広場にUH-60JAをホバリングさせて思念波を放った。
「あなた方は抵抗せず、その場に止まっていなさい」
約15分後森の中からエルフ達が4名走り出てきた。
「さあ、乗りなさい」UH-60JAは広場に着陸するとエルフ達を全員回収し、再び飛び立っていった。
マリアは思念により語り掛ける。「ほかの者たちはハイデルバーグに逃げましたか」
エルフ達が声で答える。「ええ女神様のおっしゃるとおりハイデルバーグに逃げてと魔道通信を送りました」
「なら良いですね」とマリア。
「あの子達は助かるのでしょうか」とエルフが尋ねる。
「大丈夫ですよ、仲間が待機しています。助かるでしょう」
エルフは声で尋ね、マリアは思念で回答する。なんか不思議な光景だ。
ハイデルバーグ近郊では、今回の作戦に協力する事になったハイエルフの「ひなた」が第2偵察隊第2偵察小隊とエルフ達を待っていた。道の途中には帝国第5師団の生き残りがいる可能性があり、車両は使えないので第2偵察小隊が回収して合流ポイントに行き、そこから陸上自衛隊第2師団第2航空隊に配備されたV-22Jオスプレイにて駐屯地まで連れて帰る予定である。
その頃OH-1の報告を受けた第129特科大隊の各中隊は、破壊しきれなかった帝国の砲に対し二次攻撃を開始していた。再度火の矢を浴びることになった砲撃隊と攻城隊は攻撃兵器を全て失い弾薬も誘爆して近寄れない、地獄であった。
「ゾンメル将軍なんだあれは、砲が全滅したではないか」と臨時軍団総司令のドメスアルム領主長が激怒しながら言う。
「なにもわかりません。まるで神の怒りを買った様に火の矢が空から降り注ぎました。この様な事は初めてです」とゾンメル将軍は口を乾かしながら答えた。怒りより神の逆鱗に触れた緊張である。
「ゾンメル方針変更だ、歩兵共で突撃する」とドメスアルム。
「ドメスアルム様、それでは城壁が崩せません。弾薬も誘爆しており、破壊できる武器は旧式の石弓だけです」とゾンメル将軍。
帝国では臼砲が開発されてから石弓は使っていない。かろうじて帝国第5師団第3中隊が砲の不足を補うために持ち込んだだけである。それも組み立てる前に破壊されたが、そんな報告は司令部には届いていない。
「ゾンメル将軍、石でも弓でも使えるものは全て使え、それと歩兵だけになったのだから進軍速度を上げて敵に対峙しようではないか」と戦闘経験が少なく親の威光だけで上り詰めた臨時軍団総司令のドメスアルム領主長が戦闘のプロであるゾンメル将軍に指示する。
ゾンメル将軍は無謀だと思いながらも、どの様に失敗すれば臨時軍団総司令のドメスアルム領主長の責任にできるか考えを巡らせた。
山から火の矢が飛び去って行くのを見た、帝国第3師団の生き残り35万人は帝国第3師団長ブルーム将軍の指示どおり森に紛れて分屯地に7kmまで接近していた。
分屯地では早くから赤外線監視装置により、大群が森の中を接近している様子が確認されており、「包囲殲滅A-2号」が発令されていた。
「よし射程圏内に入った。位置を特科に連絡してマーキングして貰ってくれ、同時にA-1軽爆撃機にもターゲット指示を出して、MLRS弾着と同時に特科砲撃開始とする」平沢師団長はM31GPS弾が弾着して遠くに音が聞こえたら止まって確認すると読み、そこにMk.82 500ポンド無誘導爆弾と第1特科群のM110 203mm自走榴弾砲と第2特科連隊の2個大隊が分屯地から帝国第3師団を範囲殲滅させるべく作戦を発動する。
帝国第3師団の右手奥と言っても70km程も離れてはいるのだが、TOTによる同時弾着で帝国第3師団にも聞こえる程の爆発音が聞こえて、ブルーム将軍が「止まれ」を指示した。前に爆発音が山の方で聞こえたが、今度は先ほどの爆発音と異質な音が響いた。
帝国第3師団は分屯地から7km手前で停止していた。
A-1軽爆撃機から1機3発のMk.82 500ポンド無誘導爆弾が45発同時にばら撒かれた。
特科群の砲撃もほぼ同時に着弾して、帝国第3師団は炎に包まれ爆風で兵士が空を飛ぶ。
先頭のブルーム将軍や参謀長フルトハイム周辺にも砲弾が落ち爆発する。
帝国第3師団35万の兵は幹部や後方を付いてくる負傷兵達を巻き込みながら森ごと大爆発をする。
しばらく砲撃は続き、そして突然止んだ。
「あれはなんだ」と帝国第3師団の先頭で生き残りの第1中隊歩兵が指を指す。
突然彼らの3km手前に鉄の馬車が現れた。
陸上自衛隊第7師団第71戦車大隊の、第1戦車中隊から第5戦車中隊の10式戦車と90式戦車の混合戦車軍75両が帝国第3師団の生き残りを包囲していた。
さらに帝国第3師団の左から第25機動化普通科連隊の96式装輪装甲車25両が、帝国兵士に12.7mm重機関銃M2を向けて威嚇する。そして帝国第3師団後方右側から第3機動化普通科連隊の96式装輪装甲車25両に第2偵察隊第4偵察小隊の87式偵察警戒車が2両と軽装甲機動車の上に12.7mm重機関銃M2をつけた改造LAVが2両、帝国第3師団の生き残りは抵抗もなく、戦車や装甲車に囲まれてしまった。
「我々は日本国陸上自衛隊である、抵抗すれば攻撃を開始する、速やかに武装解除せよ」と帝国語で放送する。
砲撃や爆撃を受けた帝国第3師団は35万名が5万名の負傷者のみとなった。
集団で城壁に爆弾を仕掛けて、全軍突撃を予定して密集体系で待機していたことが裏目に出てしまった。
将軍や参謀長を砲撃で亡くした兵士たちは、力なくその場に座り込んでいるだけであった。
殆どの兵は砲撃で耳が良く聞こえない。
第3機動化普通科連隊は駐屯地に報告すると、帝国第4師団に対抗するため駐屯地に戻っていった。
第25機動化普通科連隊が分屯地から(新)73式大型トラックを10台呼び帝国の負傷兵を乗せていった。
5万人もいるので何度も往復しなければならなかった。
第71戦車大隊は帝国第4師団の側面を襲うために、チロルの森奥に潜む。
同じく捕虜回収を第25機動化普通科連隊と第26機動化普通科連隊の一部に託して、第2偵察隊第4小隊も偵察隊と合流すべく森に消えていった。
帝国第3師団の歩兵たちも、いまだに何が起きたか解らないまま武装解除されて、分屯地に連れていかれた。分屯地では5万人もの捕虜に対して医療行為ができないために重傷者はV-22Jオスプレイで稚内特別行政区空港基地に運び、大三角州にできた「稚内特別行政区自衛隊病院」に運び込んでいる。
ただし「稚内特別行政区自衛隊病院」は既に帝国第5師団の負傷者で満員であった為、急遽屋外にテント救急室を作り第11旅団隊員に守られて対応している。
その頃ハイデルバーグ近郊の森に潜んでいる第2偵察隊第2偵察小隊は懸命に帝国第4師団から逃げてきたエルフを探していた。「ひなた」がエルフにだけ通じる思念で呼びかけを続ける。
帝国第4師団がミサイルによる攻撃を受けてから30分後、「女神様はいらっしゃいますか、お言葉通り逃げてきました」と「ひなた」はかすかな魔道通信を受け取った。思念で返す。
「私はハイエルフのひなたです、進む方向は間違っていません、そのまま進みなさい」と思念を送った。
「女神様ありがとうございます。すぐに参ります」と返答があった。
まだ距離は50km程度ありそうだ。
「ひなたさんどうします。距離的にはまだ50km程度ありそうですね、迎えに行きますか」と第2偵察小隊の松阪小隊長が訊ねる。
「走っても1日かかりますから、迎えに行くのが最良ですね」とひなたは答える。
既に帝国第5師団は壊滅しているので逃亡兵が居ない限り帝国軍に会うことはないと思われていた。
第2偵察小隊は報告にあった帝国第4師団の方向に向けて発進した。
木々の間をゆっくりと走る。
時々ひなたが思念を送り、エルフ達との距離を測る。
2時間も経過したころエルフ達の魔道通信が強くなってきた、距離が近づいた事を示している。
やがて姿が見えてきた。
ひなたが手を振り、こちらに来いと合図を送る。
エルフと合流ができた。さっそく軽装甲機動車(LAV)に収容しようとしたところ、後方から矢が飛んできて一人のエルフに刺さった。
「敵襲、対処開始」と松阪小隊長が森の奥に87式偵察警戒車(RCV)の25mm機関砲KBA-B02を向けて撃ちだす。木々が弾を受けて倒れる。
矢が来たと思われる方向に向けて機関砲を威嚇的に撃つ。
しばらくすると何も動きが無くなった。
念のため軽装甲機動車(LAV)を向かわせ、もう一台の軽装甲機動車(LAV)にエルフを収容する。
背中に矢を受けたエルフは荷室にうつ伏せで寝かせている。
無線で状況が入ってくる。
「敵兵死体5、他は確認できず。以上」
どうやら帝国第4師団が攻撃を受けていた時に逃げだしたエルフを見た、偵察を実施していた第1中隊の一部数名がエルフの後をつけていた様だった。
矢を受けたエルフは苦しそうだが、矢は深くまで刺さっておらず呼吸はできるようだった。
「急いで合流地点まで行きます。揺れるので毛布を下に引いてうつ伏せで寝かせて動かない様に抑えてください。起伏を乗り越えるときは声を掛けますから力を入れてください」と松阪は言い、無線で駐屯地に連絡して合流予定地点に向かう。
駐屯地では急いでUH-60JAを合流地点に向かわせた、合流地点はハイデルバーグのチロルの森側門の外である。
息が苦しそうなエルフを見守りながら先を急ぐ。
途中衛生兵が矢を折り、刺さっている矢を体に固定する。抜いてしまっては出血が止まらなくなってしまうからだ。
エルフは鎮痛剤が効いているようで、眠り始めた。
UH-60JAが上空待機している。
松阪達はカラー発煙筒を焚き合図を送ると、降下してきた。
UH-60JAからタンカーを降ろしエルフを乗せ、急いでヘリに運ぶ、他のエルフとひなたも乗りこむ。
ヘリはゆっくり高度を上げて転回し駐屯地に向かう。
ヘリの中では鎮痛剤で眠っているエルフに対し「ひなた」が「大丈夫、大丈夫」と思念を送り続けていた。他のエルフ達も祈る気持ちで傷ついたエルフの手を握り見守る。
第2偵察小隊は第1偵察小隊と合流すべくチロルの森の中に紛れて行った。
ありがとうございます。
しかし、女の子の背中を狙うとは帝国兵士はまともではないようですね。それかエルフは奴隷だから生死は関係ないのでしょうか。どちらにしろ帝国に嫌悪感が・・・