第7話 海中の脅威 (改)
第7話を投稿します。
日本の海底センサー群が復活します。お約束の未知の物体を感知。そして・・・
皆様、過分な高評価ありがとうございます。
2020/05/29 改訂
北海道宗谷岬の現場では、名寄駐屯地から駆けつけてきた、第2師団第3普通科連隊の2中隊と合流して、第2偵察隊と任務引継ぎを実施していた。
第2師団第3普通科連隊の連隊本部は稚内空港から4km、宗谷岬の現場から14kmに本部機能を前進させていた。
第2師団第3普通科連隊第1中隊は、現場である宗谷岬の警戒及び進入禁止障害物の設置を、第2中隊は宗谷岬町の警戒と交通整理を、第3中隊は稚内空港と沿岸監視を、第4中隊は宗谷郡猿払村にて沿岸監視と稚内猿払線、道道1077号の迂回指示を行っていた。
特に第1中隊は接続大陸からの動物や昆虫侵入を防ぐため、防護ネットを両サイドいっぱいに広げて2重に設置している。だが、いのししの様なもの、(現場では「いのししもどき」と共通認識している)が突進してきたら止められないとの判断から、逆に突進してきた場合には絡めてしまおうとの意図があった。
また、接続大地に簡易な防御陣地を構築するため、第2師団第2後方支援連隊第2整備大隊第1普通科直接支援中隊と偵察直接支援小隊を派遣。
補給隊、衛生隊、輸送隊も合流し、避難している宗谷岬町民の対応もできるようになってきた。
北部方面通信群から第101基地システム通信大隊第301基地通信中隊名寄派遣隊から宗谷岬分遣隊を構成して、宗谷岬通信局を開設していた。
これにて、宗谷岬にある程度の火力と防御陣地そして通信機能が充実してきた。
この時点で2022年4月19日午前10時であった。
まだ防衛省・統合幕僚監部はこの異変について、謎の大地が接続はしているが、調査案件であり重大案件との認識は無かった。
よって、富良野の戦車大隊や名寄の特科大隊、高射特科群の必要性は考えてなかった。
宗谷岬町の電気、水道、ガス(プロパン)は正常に機能しているので、住民も不安があるだけでいつもと変わらない日常をおくっていた。
また同じ道民として、最盛期の『ほたて』加工についても、物流も含め出入りを制限する事はなかった。
・・・
一方そのころ、海上自衛隊下関基地の地下では、海底センサー群の調整を急いでいた。
ここは公にはされていない海上自衛隊下関基地地下3階の海底センサーを使った、潜水艦等早期警戒分隊である。
表向きは、掃海艇2艇を保有する海上自衛隊下関基地隊ではあるが、掃海司令部の改修を偽装し、地上2階地下5階からなる分析センターを開設していた。地上は小学校のような質素な作りである。
出入りについては民間人を装う為、全て私服が義務付けられている。
海底センサーは地震計や通信海底ケーブルに偽装されて敷設され、各センサーは地震、潮高、磁気、音響等を24時間監視できる。
磁気嵐によりセンサーの一部に不調箇所があり、故障個所の特定と切り離しを実施していた。
磁気嵐による迷走電流が発生して、一部のセンサーが破損したようだった。
分析室においては磁気嵐時に機材の電源を一時的に切って、電気的に隔離していたので分隊の分析コンピュータには影響を受けていない。
なにより、この部屋自体が電気的、磁気的、音響的に隔離されており、各センサーのデータ収集、分析に特化していた。
またセンサーはセンサーの位置とデータの強さを複数のセンサーにて分析する事で、海中といえども方位や近づいてくれば、位置、深度に、音紋を過去に収集したデータと照合して、国籍や艦名を表示できるようになっている。いわば海底のレーダーである。
過去、中国潜水艦が潜航しながら奄美大島沖海峡を通過しようとして、海上自衛隊に補足追尾され、ついには浮上した事件もこのセンサー群の成果である。
現在に話を戻すと。
各センサーは自律診断機能を持ってはいるが、なにしろ敷設数が多く、またランダムに不調センサーが発生しているために、約18時間も全てのセンサーについての診断と故障センサーの切り離しを行っていた。
ここの分析情報は、ほぼ同時に横須賀海上自衛隊司令部の情報分析室及び情報管理室に送信されている。
「あと少しで終わる、休憩できるな」と田上分析官が言う。彼も20時間以上付き合い、1つ1つのセンサーについて評価をしていた。
「あとたったの36基です」と堂島分析官補佐が合いの手をいれる。
「うえっ言うなよ」田上分析官はうんざりしていた。
1基について自律診断機能での評価150項目に加え、分析コンピュータとのリンク評価122項目、そして分析結果の評価231項目を診断する。もちろん切り離したセンサーが他に対する影響も評価項目であり、潜水艦等早期警戒分隊創設以来の混乱状態である。
非番の者も緊急対処名目で勤務している。
彼ら全員の身分は自衛隊協力会社社員となっており、
「磁気嵐による故障に対応するため、横須賀海上自衛隊司令部への修理対応出張中であり、海上自衛隊司令部であるから電話は使用できないので、連絡できない」
と偽装している。
実際も下関基地に入るときに保安隊により携帯等の通信機器は電波遮断ボックスに入れられ、基地を出るまで返してもらえない。実に都合が良い。
そんな混乱の中、
潜水艦等早期警戒分隊は、評価の終わったセンサーから通常警戒モードに移行させ、残りの評価を地道にしかし確実に行っていった。終了後の休憩と仮眠を夢見て。
同じころEEZの監視の為に佐世保から第8護衛隊の、DDG-176「ちょうかい」とDD-117「すずつき」が毎時28ノットで850km先の北大東島沖を航行していた。
警戒対象は沖大東島の排他的経済海域内である。
北大東島沖10kmを航行中、DD-117「すずつき」の水上艦用ソーナーシステムOQQ-22がアラームを鳴らした。
同時に潜水艦等早期警戒分隊も混乱のなか、南大東島沖のセンサーが複数同時に警戒警報を出す。
ほぼ同時に横須賀海上自衛隊司令部の情報分析室では対象の脅威判定を行っている。
「「ちょうかい」のソナーにはまだ反応がないが、海底センサーと「すずつき」が探知しています。」と分析官。
「故障ではないな」と佐々木主任分析官が言う。
「「ちょうかい」よりソーナーに反応ありとの連絡」と別の分析官。
「「すずつき」から連絡、対象は生物と思われる。哺乳類ではない」
護衛艦の水測員は普段から哺乳類や魚種の判別を行っているので、反応を見ただけで生物か潜水艦かの判別はできる、特に群れている魚類に対しては大きさが『しろながすくじら』以上になる事もあるので注意だがくじら類は鳴き声で判別できる。
潜水艦等早期警戒分隊から追加情報。
「対象物、南大東島沖15キロを潜航中、深度30メートル、速力25ノット、対象物の全長55メートル、幅は5メートル、形状は長い」
「えっ」佐々木主任分析官が発した。
報告後、潜水艦等早期警戒分隊田上分析官は「信じてもらえないよな」と独り言。
DDG-176「ちょうかい」司令の望月艦長より横須賀海上自衛隊司令部に入電。
「巨大生物との会敵コースに変更し、艦上監視により対象物の観察を実施する」
同時に佐世保司令部とDD-117「すずつき」にも連絡。
全長55mなら見えるだろうと、
海洋生物は護衛艦に対して無害と考えている。
「5キロまで生物に接近。観察を行う」望月館長が僚艦と船内に連絡。
46km/hで進む生物に対し、5kmは、かなり近い。
ありがとうございました。
陸上自衛隊、海上自衛隊に危機がせまる。