第74話 ドーザ大陸大戦 その4 特科群と奇襲
いつもお読みいただいてありがとうございます。
すこし長くなってしまいました。すいません。
いつも誤字脱字報告ありがとうございます。感謝しかありません。
アトラム王国スメタナ王からの命令により、第2艦隊無き今、南ロータス港に集結した艦隊がある。
急遽結成された軍籍旧式艦による臨時艦隊だ、先の派遣艦隊(冒険者達の艦隊)の乗務員を水先案内人として幾名かを雇い乗船させていた。その中には冒険者艦隊の旗艦の船長ゾメアも一緒であった。また日本に行けると聞いてゾメアは自らが志願したものである。
「また日本に行けるぞ、うれしいぞ」とゾメア。
「船長、船を降りてよかったのですか?」となじみの一等甲板員が声をかける。
「ああ、おんぼろ外輪船より、この戦艦の方が足が早いし、乗ってみたかったんだよ」
「そんなもんですかね」
「ああ、自慢にもなるしな。儂は王国旗艦コルグ・スメタナで水先案内人をしたんだと。な」
「確かに王国で一番新しく一番大きい船ですからね。自慢にもなりましょう」
「そうさな、それに日本に行っていろいろ交渉したから日本国に多少の繋がりはあるので、攻撃されない内にうまく交渉するさ」とゾメア。
「で船長、いや船長ではなく水先案内人のゾメア様。今回はどの様なコースで行かれるのですか」
「そうだな途中の島々には寄らず、直接横浜に向かおうと思う、補給も十分だし速力も、儂の「おいぼれ老人の奮闘号」からすると3倍も速いからな」
「えっあの船そんな名前でしたか、船首には「ロートルパワー」と書いていたからてっきりそれが船名かと思っていましたよ」
「あはは、そう船名が長いから「ロートルパワー」と書いた」「儂しか知らんのだ」
アトラム王国の船長もかなりいい加減である。船長以外誰も正式な船名を知らなかったことになる。
これで良いのか・・・・
翌日物資を積み込み、日本に向け船団は静かに出港した。
船団陣容は、旗艦コルグ・スメタナを筆頭に、旧式の200m級4隻と150m級6隻に速力の早い補給船が5隻である。各軍籍の船は石炭を粉にして噴射させ燃焼させる方式を取っていた。
旗艦以外は旧式艦と言え、速力は20ノット以上も出せる。火砲が旧式なだけだ。
その為の石炭粉砕機と粉塵噴射エンジンを備えていて、補給船は食料も少しは積み込んでいるが、その荷物の大半は石炭であった。
冒険者達の船団が平均速度7~8ノットと遅い船であるのに比べ、交渉船団は平均18ノット、最大速力22ノットにもなる。
現在の日本における最新火力発電も粉砕石炭を燃料に使っているので、燃焼効率は20%も上昇しており、炉内温度も高温になるので不要なガスは殆ど排出されないのだ。これをアトラム王国では戦闘の為の船速を稼ぐために採用していた。日本でも最新の技術なのに、おそるべきアトラム王国。
一方チロルの森では、帝国第3師団が過半数の兵士が重度の火傷や死亡などで戦闘力を失い、また砲撃隊や攻城隊の火砲は殆どが使用不能となっていた。つまり第3師団に残されたのは動ける歩兵部隊のみ約35万人であった。しかも糧食隊が燃えているので食料もテントもない状態であった。
幸いチロルの森で焼け残った部分は果物や木の実が豊富で食料には事欠かないが、夜間は魔物を警戒して火を盛大に炊いて交代で見張りを立てた。
チロルの森駐屯地では、焚火の炎を遠赤外線カメラで捕らえ、距離と位置を正確に分析していた。
ただし、帝国第3師団長ブルーム将軍の言う通り、航空機攻撃では森の中に入られると効果的ではない。
焼夷弾で囲って焼いても、点在するチロルの森村に被害が出るからだ。
第3師団の生き残りは駐屯地まで150kmに近づいていた。徒歩であるが兵士の意地なのか・・・
一方第5師団はハイデルバーグの出口での簡単な戦闘以来、隊列を組んで行進しており、そこに帝国第3師団を半壊させたA-1軽爆撃機が飛来してきた。今度も22式特殊徹甲弾を兵士の上空にばら撒く、街が近いので焼夷弾は使えない。
帝国第5師団兵士は残った砲撃隊の大砲や攻城隊の臼砲を押しながら縦列隊形で森の道を進んでいた。
そこに突然A-1軽爆撃機からの22式特殊徹甲弾によってタングステンの矢が降り注いだ。
高度500mから降り注いだ矢は、地球と変わらない重力加速度により、大きな力となって部隊を襲った。頭、肩、腕と至る所に矢が刺さる。幸い大砲や臼砲には効かない。土台に刺さるだけで車輪も抜けば同じように押せる。第5師団のキマイ将軍は最後尾から馬車で進んでいたが、馬車の屋根を突き破って矢が車内に入り込んだ。
「なんだこれは、お前他の中隊に被害状況を確認しろ」と奴隷兼魔道通信役のエルフに命令した。
「はい」エルフは言われた通り魔道通信を試みたが、なにも反応が返ってこない。
「将軍様、連絡が返ってきません。」とエルフが報告する。
「そんなバカな、第1中隊と第4中隊に第5中隊、砲撃隊や攻城隊が全滅したとでもいうのか、エルフが先に逃げただけではないのか」「ええいもういい、伝令をだす」と言うと参謀長のキャメロイ男爵を呼び、前方偵察と伝令を命令した。
しかも任務放棄のエルフが居たらその場で「首をはねろ」との命令も付け加えていた。
それだけキマイ将軍は必死であった。皇帝との約束に背くことは死罪であるからだ、何としてでも一番攻撃を成功させなくてはならない。
キャメロイ男爵は参謀の馬車に戻ると外の伝令2名に第1~第5中隊の生存率と砲撃隊、攻城隊の生存確認を指示し、残っている場合は一旦集合させろ、集合場所は森の中の任意の場所と言う事である。
エルフに対する命令は伝えなかった。あまりにも先を見据えない命令だからだ。
エルフが居なくなったら生き残りの攻撃も連絡が伝わらず大混乱となる。参謀長のキャメロイ男爵は平民の出自であり、先のアトラム王国上陸の際に帝国第1師団の第1中隊班長として最前線で従軍して、水際で50名以上のアトラム王国軍を殺傷した功績で平民から男爵に爵位授与され帝国第1師団の戦闘参謀に抜擢された経緯を持つ。今回は帝国第5師団の参謀長として着任したのだが、帝国側よりキマイ将軍の監視も同時に命令されていた。
キャメロイ男爵は思う。キマイ将軍は後がないから命令に合理性が欠けている。このままでは師団の立て直しも無理だろう。命令通りその時はやろう・・・・。と不穏なことを考えていた。帝国から何を命令されているか・・・
A-1軽爆撃機隊は初陣にして4ソーティーをこなし、隊員機体共に一様に疲れが見えていた。
なにしろ新型22式500kg焼夷弾に続いて22式特殊徹甲弾3回と帝国第5師団の生き残りに対しては森の上から斜度機銃の12.7mm機銃×2基を弾倉が空になるまで撃ち続けた。タングステン矢のフレシェット弾で軽傷だった帝国兵士も相手が機銃ではなすすべもなく倒されていった。
A-1軽爆撃機隊は初陣にして大勝利だった。もちろんエスコートのF-15Jや地上で帝国第3師団生き残りを掃討したAH-1Sコブラ隊の働きも無視できない。
だが安い単価で大きな成果を上げた事に、統合参謀監部もこの成果は予想以上であり、戦術爆撃の重要性を改めて認識するのであった。対人クラスター爆弾廃止の流れを受けていた自衛隊で初めて範囲殲滅の手法が完成したのである。範囲は狭く大きな打撃を与えることは難しいが、使いどころを間違えなければ非常に重要な戦術となりえる。特に現代戦では無理であり意味もないが、中世時代に近い軍に対しては効果的である事が証明された。
帝国第5師団は元から40万人程度の師団と呼ぶには定員の半数以下の部隊ではあったが砲撃隊や攻城隊のおかげで攻撃力は残っていたはずで、これを帝国では「おとり」に使い、敵をおびき出す切り札としていた。
最悪40万人を見捨てる覚悟があった。
だが、第1偵察小隊やA—1軽爆撃機隊のおかげで帝国第5師団の砲撃隊、攻城隊は壊滅し、兵士もさらに半分以下の15万人まで減少していた。
ただし同じく帝国第3師団もA-1軽爆撃機やAH-1Sコブラの攻撃により100万人の兵士に対して65%の兵士が火傷や死亡で戦力外となった。第1~第4中隊の生き残りと無傷の第5中隊でまだ35万人もの規模がある。
帝国第3師団参謀長のフルトハイムは伝令を複数派遣して、チロルの森のある地点に兵士を集めると同時に砲撃隊や攻城隊の大砲や臼砲で使えるものがないか、また弾薬砲弾は残っていないか点検した。
ただし、師団長ブルーム将軍は怒鳴り散らしていて生き残りを統率できない状況には変わりがなかった。
しかも無能なことに、戦況を臨時軍団総司令部に正確に伝えることなく、自分の保身を優先していた。
フルトハイムはブルーム将軍との付き合いは2年足らずであるが、この状況にはうんざりしていた。
「フルトハイム、兵はどのくらい残った」とブルーム将軍。
「はい、動けるものは35万人近くおります。ただし兵糧がありませんので兵の中から食料調達隊を組織しては如何と思います」とフルトハイム参謀長が報告と提案をする。
「ばか言うな、敵は我々が全滅したと思っているはず、ならば35万の兵で一斉攻撃すれば対応が遅れて勝利できるであろう。好機だ」とブルーム将軍。
フルトハイムは呆れた。全ての状況判断はわが軍に都合が良い解釈で優勢と判断している。これだけ異質な攻撃を受けたにもかかわらず、勝てると確信している根拠が判らない。しかも大切なエルフを全て失って、伝令でしか連絡できない不利な状況でである。
だがフルトハイムは考えを巡らせ、この状況で生き残る算段を始めた。将軍を犠牲にしてでもある。
「将軍、戦略提案であります。参謀以下検討しました結果、偵察隊が見つけた敵陣地の北側側面が弱いと判断いたします。そこに生き残り兵と先頭に馬上で指揮する将軍が行けば兵士の士気も上がり、逆に相手の士気をくじけるはずと考えます。このまま静かに森の中を行軍して、4日後には相手の城に突撃できる位置まで行けます。また、砲撃隊の弾薬が一部残っていますので、それを敵の城近くで爆裂させて城壁を破壊、その後35万人で突入するのは如何でしょうか」
「よくやったフルトハイム、それなら予定通り主要攻撃は、我が第3師団の手柄となる。それで行こう」
フルトハイムはしめしめと思い、突撃後の算段を始めた。
帝国第5師団はもっと悲惨であった。全ての第5師団所属のエルフ達は自衛隊の攻撃開始と同時にハイデルバーグ街に走って行ってしまい、ひとりも残ってなかった。これでは連絡もできない。
ここでもマリアからの思念により、自衛隊の攻撃と攻撃開始しと共にハイデルバーグに戻り、陸上自衛隊に助けてもらえとの指示であった。
帝国第5師団は使える砲もなく、兵士は半分怪我を負った者が15万人・・・でも最初の攻撃をせよとの厳命がある。
キマイ将軍は自棄になっていた。
どちらにしろ命令どおり一番攻撃をしなければ死罪になる身であり、行くも戻るも死しかない。ならば兵士の矜持として一矢報いてやると決断した。ならば行動は早い。
「生き残りの15万人を集めよ」と参謀長に命令をだす。
「良いか勇敢な帝国兵士よ、これだけの生き残りでも、お前たちの士気は高いはずだ、我はこれから我を先頭に敵城に攻め込む。なに15万人もおるのだ、広く広がり別々の方角から攻め込めば、敵も対処に時間がかかる、そこを一気に攻め込んで落城させるのだ。幸い攻城隊の爆薬もたっぷり残っている。これで城壁を破り雪崩込むのだ。帝国兵士の恐ろしさを相手に植え付けようぞ」
「歩ける者は歩いて、杖を使うものは後から、我に続け、帝国の意地を見せつけるのだ」
「おーーー」歓声がチロルの森に響き渡った。
その頃、宗谷特別強制区航空基地より、なけなしのF-35Bが偵察任務で3方向に2機ずつ、計6機が飛び立った。内容は森に紛れた帝国兵士を赤外線カメラで監視するためである。
ハイデルバーグからチロルの森駐屯地まではなだらかな丘陵が続きそこに木々が森を形成していた。
つまり帝国第3師団が入り込んだチロルの森は山と谷に囲まれた森であるが、第5師団がいる場所は木々が生えてはいるが、計画植樹や伐採によって等間隔に木々が生えそろっている、歩くに向いた林であった。
なにしろハイデルバーグ街が使う薪にするための森と言うより林であった。
第5師団生き残りは帝国兵士の意地をかけて小走りに移動する。距離は180kmもある。
矢が刺さり軽傷の者も杖を使い、早い速度で移動を開始する。
大砲もないので兵士たちは身軽である。しかも駐屯地付近は果実や木の実が豊富で小さな小川も流れている。そこまでたどり着けば体力を回復できる。
帝国第5師団生き残りは必死であった。将軍自ら先頭に立ち行軍している。行かないわけにはいなかった。
チロルの森駐屯地ではF-35Bや対人赤外線監視装置からの情報で駐屯地の南側からは帝国第5師団生き残りが、駐屯地と言うより分屯地北側から帝国第3師団生き残り35万人が近づいていた。
両軍とも歩兵のみの徒歩移動で、会敵は両方とも早くて3日後と試算された。
陸上自衛隊第2師団、師団長の平沢陸将は日本山特科群に対し2日後からの戦闘になる旨通達した。
日本山特科群の北部方面隊第1特科群は203mm自走りゅう弾砲が最大射程約21kmであり、多連装ロケットシステム自走発射機M270 MLRSはミサイルの種別にもよるが、陸上自衛隊が採用しているM31GPS誘導ロケット弾では最大100kmにもなる。ただし単純炸裂弾頭(子爆弾を使用しない弾頭)の為に対人に対しては効果は薄い。
連絡を受けて日本山の第1特科群は、兵器の点検や予備弾の管理を実施した。普段から訓練ではやっているのだが、本格戦闘は初めてであるから、失敗無い様に念を入れての点検である。
一方駐屯地および分屯地の第2特科大隊も準備を開始していた。
駐屯地および分屯地の半径1kKmは警戒区域として、植物は全て抜いて、段差の掩体壕を作っていた。
この掩体壕は堀状になっていて、非常時はせき止めた川の水を一気に流せる構造である。
この堀状掩体壕のおかげで隊員は駐屯地および分屯地から出て戦うことはなくなった。
遊撃隊として側方出口より機動車両や戦車が攻撃を行う事にした。
駐屯地および分屯地の主要兵器は12.7mmM2機銃であり、これが星形をした駐屯地の各角には2門備え付けられている。同じく6角の分屯地も同じ構成である。駐屯地では第3機動化普通科連隊が守備を行い。分屯地では第25機動化普通科連隊が守備を行う。
守備以外の隊員は全て遊撃要員として96式装輪装甲車(WAPC)や上部に12.7mmM2を乗せた軽装甲機動車(LAV)で出撃する。
「南部監視所より報告」チロルの森駐屯所指揮指令室にアラームがなった。
「南部より帝国第5師団生き残りと思われる少数の人員が接近中。守備隊は攻撃準備に入れ」
けたたましいアラームと報告が入る。
「幕僚長早くないかね。やつら」と平沢。
「はい師団長、例のハイデルバーグ郊外の戦闘から外れた偵察隊と思われます。どうしますか。このまま見過ごし本体と合流させると言う手もあります」と中野。
「そうだな、本体との合流は早くて明日の予定だ。少し様子を見るか」「おい、赤外線監視装置の映像を出してくれ」と平沢。
「南部に50名程度でしょうか、監視所からは全員冒険者の装いだそうです」と副師団長の佐藤陸将補が報告する。
「やはり散開して駐屯地の弱点を探るつもりです。対人地雷原に入れば有線爆破するのですが、どうします」と中野。
相手の兵力が中途半端すぎて対応に苦慮する。
「やはり本体と合流させて固めて撃破とするか」「おい全ての扉を固定してくれ。入られては厄介だ」「ついでに上からの見張りを強化してくれ」と平沢。
「師団長、第3師団、第4師団も偵察隊を先行させていると思われます」と中野。
「幕僚長、確かに儂でもそうする。だが手の内は本体が来てから見せるとしよう」「また、森に先行している第2偵察隊に見つからない様にと連絡」「そして秘策の第2戦車連隊は音を立てずに後退させてくれ」
「今見つかると戦略が狂う」と平沢。
再びアラームが鳴る。「北部監視所から報告、兵士たちは弓矢で攻撃を始めました」
「なんと言う事だ、威力偵察のつもりか。監視塔は相手をせず静観しろ。続いて中央口より第3機動化普通科連隊に一部の敵を追い払えと連絡」平沢が苦悩の決断をする。
「了解しました」とオペレーターが連絡を開始する。
連絡を受けた第3機動化普通科連隊からは、軽装甲機動車(LAV)が1台と96式装輪装甲車(WAPC)が1台の2台が正面口より掩体壕に作られた橋を渡り、森に入っていき、両車両の12.7mm重機関銃M2を撃ち偵察兵を蹴散らしていく、これで偵察兵は攻撃すれば門より遊撃隊が現れ、側面攻撃される事がわかった。
帝国側に重要な情報であった。伝えられればだが・・・
1日経過して、帝国第5師団は駐屯地まで2kmの森の中に集合していた。早い。小走りで走る将軍の馬に遅れまいと努力した結果だった。先行していた偵察隊も状況報告を完了し、一緒に突撃する体制を整えていた。
一方指揮指令室では、西監視所(中央)の赤外線監視装置で第5師団生き残りの合流が確認、報告されていた。
「いよいよだな、特科群にいいとこ見せてもらいましょう」「他の監視所及び分屯地の状況を報告せよ」と中野がオペレーターに指示をだす。
アラートと共に「分屯地北部監視所より10名程度の偵察兵確認」と報告が入る。
「中野君第3師団の合流予定はどうかね」「ついでにセンターに駐屯地西の赤外線カメラ映像を頼む」と平沢。
「第3師団の本体合流は明日の予定です。第5師団が先行しているようです。ついでに第4師団はあと3日かかります」と中野。
「では第4師団は遠いな、第5師団に向けて特科群射撃開始」
日本山第1特科群では駐屯地に近いことから203mm自走りゅう弾砲を選択し、通常榴弾を駐屯地2kmから7kmとし、幅も5kmとした範囲に攻撃を開始する。
日本山では並んだ203mm自走りゅう弾砲が12両、一斉に砲撃を開始した。
駐屯地から2kmのチロルの森が爆発した。次から次と砲弾が降ってくる。続いて駐屯地の第2特科大隊の一部も砲撃を開始した。半数は分屯地にいる。
指揮指令室のセンターモニターでは、西監視所からのカメラ映像がライブで映し出されている。
ものすごい迫力で爆発し、人体が空を飛ぶ。
爆発は5分間も続いた、チロルの森に爆風で広場ができていた。「15万人と聞いていましたが、そろそろ弾の無駄でしょうか」と中野。
「よし第3機動化普通連隊に状況確認と生き残りは捕虜とすべく連絡」と平沢。
すかさずオペレーターが連隊本部に連絡し、第3機動化普通科連隊から軽装甲機動車(LAV)が4台と96式装輪装甲車(WAPC)が6台、中央口より砲撃地点へ向かった。
ばらばらの人体と倒木にえぐれた地面。鼻を衝く硝煙の匂い。すさまじい破壊力である。後方に杖を突いた部隊が居たので武装解除して指揮指令室に連絡、すかさず(新)73式大型トラックが10台向かってくることになった。
杖の部隊は負傷した第5師団の生き残りであった。全部で80名近く居たが残りは全て死んだらしい。
帝国第5師団の参謀長キャメロイ男爵は砲撃が始まると同時に北部に逃げ、部下にキマイ将軍を弓で射殺させてから、駐屯地北部の出口に白旗をもって降参し投降した。
帝国からの命令は「第5師団が不利になったならば、キマイ将軍を殺害して帝都に戻れと言うものであった」
最初は逃げるつもりであったが、第3機動化普通科連隊の軽装甲機動車(LAV)に発見されてしまったのだ。
しかたなく、駐屯地方面に逃げて投降したのだった。
帝国第5師団の死を覚悟した突撃奇襲作戦は、開始前に特科群の砲撃により全滅した。なにも功績を残せなかった第5師団。すこしかわいそうである。
ありがとうございます。第3師団から本格戦闘に入っていきます。
陸上自衛隊第2師団は耐えれるのでしょうか・・・心配です。