表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦闘国家日本 (自衛隊かく戦えり)  作者: ケイ
第1章 日本転移と自衛隊激闘編
74/251

第72話 ドーザ大陸大戦 その2 ハイデルバーグでの戦い

いよいよ交戦開始です。

初手は陸上自衛隊に軍配があがりました。

 陸上自衛隊第2師団所属の第2偵察隊から第1偵察小隊に下命された。

 第1偵察小隊は第5師団にストーキングしていた隊で、適任ではある。

「ハイデルバーグ郊外にて動き出した帝国第5師団に対し少数による威力偵察を行い、帝国第5師団の動向を探れ」と言う単純なものだ。


 転移前の第2偵察隊第1偵察小隊は、偵察バイク2台に87式偵察警戒車1台、軽装甲機動車1台が通常構成であった。

 他には通常であれば73式小型トラックと73式中型トラックが補給物資運搬用に同行するのだが、異世界転移後偵察任務強化の為に、

 偵察バイク2台、87式偵察警戒車2台、重武装軽装甲機動車2台(軽装甲機動車上部には12.7mm重機関銃M2を備えている)に73式中型トラック2台と偵察小隊は攻撃力が増強されている。

 人数も増員されており、異世界転移前は1偵察小隊12名~15名であったが、転移後15名~20名に再編成されている。第1小隊から第4小隊と小隊編成自体は変わってはいないが、各隊増員をされており、異世界における偵察任務が如何に重要なのか検討された結果である。


 しかも第2偵察隊は第2師団のなかでも過酷な偵察任務を幾度も経験し一層たくましくなっていた。


 偵察隊本部より下命を受けた第1偵察小隊は、ハイデルバーグからチロルの森方面出口に偵察バイク2台を配置し、その左右後方へ森に紛れる様に87式偵察警戒車2台をクロス位置に配置した。その後方に重武装軽装甲機動車を配置している。つまり偵察バイク2台のみ見える状態で敵を迎える状態となっている。


 敵が反応して戦闘になった場合は、偵察バイクを逃すために87式偵察警戒車2台による支援を行う。

 ただし、87式偵察警戒車の主砲はエリコン25mm機関砲KBA-B02(ライセンス生産)と副武装は74式車載7.62mm機関銃であり、25mmは敵兵士に対してはオーバーキルとなる為、7.62mmか後方の重武装軽装甲機動車に搭載した12.7mm重機関銃M2にて対処する。しかし砲撃隊や攻城隊が射程に入ればエリコン25mm機関砲が火を噴くと言う2段構えであった。しかしエリコン25mm機関砲KBA-B02の射程は3,000mにもなるので、ハイデルバーグの街を破壊する可能性もある。どの様に第1偵察小隊は対処するのであろうか。


 何も知らず帝国第5師団の生き残り40万人が砲撃隊と攻城隊の半分を率いてゆっくり移動している。

 ただし街中では石畳が完備され移動速度は荒れ地を進むに比べ格段に速い。それも馬もどきや牛もどきに歩兵兵士を使い確実に進んでくる。(牛も馬も日本とは違う種類らしい)


 帝国軍がハイデルバーグのチロルの森側出口500mに迫った時、出口に見慣れない機械と日本軍の兵士が2名視界に入った。先頭の兵士は急いで師団参謀長の元に報告をする為に駆け足で戻っていった。


 帝国第5師団は第2中隊と第3中隊が日本山で壊滅していたが、第1中隊と第4中隊、第5中隊に第5師団支援中隊(砲撃部隊)の半数、第5攻城中隊(攻城兵器部隊)半数。が陣容の陣容で(砲撃隊と攻城隊の半数は日本山で第3中隊と共に壊滅)、師団長はキマイ将軍が引き続き任命されていた。ただし、第2中隊と第3中隊を失った失態により、大きな叱責を受けたが現在もまだ将軍の地位に残っていた。しかし次はない。

 帝国第5師団参謀長より報告を受けたキマイ将軍は考えた。失敗は許されないからだ。現状での失敗は自分の死に直結する。


 臨時軍団総司令のドメスアルム領主長公爵からは、「敵居留地に他師団より先行して最初の攻撃を第5師団が行え、さすれば過去の失態も帳消しとなる可能性がある」との命令を受けていた。

 キマイ将軍としては一隅のチャンスであり、なんとしてでも敵居留地への一番乗りと最初の攻撃をしなければならない。その為にはここで行く手を塞がれては自らの生死にかかわる事態である。


「なに相手は2名か、確実に仕留め、居留地に連絡できない様に手配しろ」と参謀長に指示をする。

 帝国貴族は命令に慣れていて、自ら現状を確認すると言う器量がない。

 ここで現地を見ていれば2名による検問が異様に思えるのにだ。帝国陸軍は柔軟さに欠ける。これが後に大きな代償となって帰ってくるのだった。


 とにかく参謀長に日本兵2名の確実な排除を指示して行軍については予定どおりとする。


 命令を受けた帝国第5師団の第1中隊長は相手が2名ならこちらは10倍の20名もあれば簡単に排除できると考えて第1中隊から剣の巧みな者15名と弓隊から5名の20名を先行させて日本兵の排除にあてた。


 すべては陸上自衛隊第2師団長平沢陸将の計画通りに進んでいる。


 膠着状態になり、相手が特科群の有効射程に入るまで待ってはいられなかった。

 ここで小規模戦闘になれば、第3師団、第4師団に対して先制攻撃を実施できるからだ。


 第2偵察隊第1偵察小隊は配置についていた、あとは帝国第5師団の出方次第である。

 偵察バイク隊の前方より、帝国第5師団の20名程度が進み出てきた。


「きたな。一仕事するか」と偵察バイク兵の村田が左近に声をかけた。

「この遭遇により第2師団の運命が決まるのにのんびりしているな」と左近。

「いや、通常の偵察業務と同様にばれない様にと言う指示ですからね。危機感は出さない様にしているだけですよ」と村田がうそぶく。


「さて近づいて来たが逃げる準備は良いか」と二等陸曹でもある左近が言う。


「ええさっさと攻撃されて逃げましょう」と村田。村田は陸士長である。


「さて所定の行動を実施するぞ」と左近。


「了解」と村田は言いながら偵察バイク隊用スリングに付けた89式5.56mm小銃を張りながらセレクターを「レ」に切り替えた。セオリー通りバイクを倒して盾にして左近二等陸曹の援護を実施する。

 左近二等陸曹は9mm拳銃を抜いて咄嗟の事態に備える。9mm拳銃はSIGSAUER P220のライセンス生産品でマガジンは9発である。左近はスライドを引き1発を薬室に装てんして準備した。陸上自衛隊は暴発を防ぐために薬莢を薬室へ予備装てんはしない。村田と同じくスリングに付けた89式5.56mm小銃は背中である。


 二人が使用しているバイクはKawasaki KLX250タイプで加速には定評がある。


 左近は「やるか」と一言呟いて、門の外から片手を挙げて、

「止まれ、我々は帝国皇帝よりチロル地方の統治を認められた日本国陸上自衛隊である。あなた方の目的地と目的を述べよ」大陸語で言う。

 左近の制服の中では背中に冷や汗がすっと流れた。緊張の一瞬であった。味方の援護があるとは言えタイミングが遅ければ死ぬのは左近だ。

 20名程の先行して来た帝国兵士に向かって声をかける。


 帝国兵士は何も言わず抜剣して向かってきた。

「村田援護」と言いながら左近は9mm拳銃から後方にいる弓隊を狙った。距離は30mもある。

 元来弓は直射で20mから70mが有効射程距離である。(曲射では最大300m以上も飛ぶ)弓隊としては近づきすぎている。


 一部始終を見ていた第1偵察小隊長の深山が本部に無線で連絡する。

「こちら第1偵察小隊、本部送れ」

「こちら偵察隊本部、第1偵察小隊送れ」「第1偵察小隊より報告、帝国兵士と遭遇交戦中、作戦どおり後退します」

「こちら偵察本部了解、無理せず速やかに所定の計画に従って後退せよ。以上」

「第1偵察小隊了解」


 第2偵察隊本部より師団本部宛に、ハイデルバーグにおける交戦。また、帝国兵士は何も言わず抜剣して向かってきたと詳細に連絡が入る。遅れて左近が装着しているヘルメットに搭載されたカメラからの映像が第1偵察小隊を中継して師団本部に送られる。

 このヘルメット搭載の戦場戦術カメラは偵察隊のみ配布されテスト運用されている。

 第2偵察隊第1偵察小隊は大三角州を最初に発見した隊であり異世界の魔物達と死闘を繰り広げた歴戦の勇士である。内閣府からの要請もあり戦場の様子をリアルタイムで送れるシステムの開発を防衛研究所は急いていた。全国で唯一第2師団第2偵察隊全員に支給された物だった。


 大陸を調査する為にいろいろなカメラや装置が試され、一部では状況確認の為に支給したテスト機による映像を本部や防衛省などで確認に使用されていたが、最終仕様が決まり今回は先駆けて第2偵察隊に支給されたものであった。カメラと映像送信装置に受信機や中継器も全て日本製ある。


 師団本部ではヘルメットカメラの映像を中央モニターに流して緊張感のある映像と音声を共有していた。


「よし、敵は罠にかかったな、これからの戦略が楽になった」と中野幕僚長が言う。

「帝国兵士は命令どおり行動するから、今後の行動をこちらに知られないための選択であると思う」と副師団長の佐藤陸将補が状況分析をする。

「なんとか無傷で抜け出してくれると信じている」と平沢陸将が祈る気持ちでモニターを注視する。


 ハイデルバーグでは、弓矢隊を3名9mm拳銃で射殺した左近は援護を村田に任せて、左近は対峙しながらすり足で後退していた。

 村田は突出した剣士と弓矢を持つ兵士を交互に指切りによる2バーストで対処していた。もう5名を射殺している。マガジンは30発用の長弾倉を使用し半分の弾を使っていたが余裕はある。

 左近はすり足で後退しながら9mm拳銃の弾倉に弾が無くなるまで撃ち続けバイクに跨りさっさと戦場を抜けだした。同時に村田もバイクに跨り走り出した。


 その頃にはハイデルバーグの住人は反対側の街道入り口に避難していて、チロルの森入り口付近に住民は見当たらなかった。また建物にもいる様子は見えなかった。

 事前に陸上自衛隊より帝国軍が移動を始めたら避難するように伝えてあったのだ。


 第5師団の砲撃隊と攻城隊がゆっくり姿を現した。大砲を撃つには距離が近すぎるのだろう移動するだけであった。

 第2偵察隊第1偵察小隊にとっては好機である。

 撤退命令が出ているが機会があれば大型兵器の破壊が任務でもあった。


 第1偵察小隊長の深山は決断する。


「RCV、25ミリ機関砲用意、目標は1キロ先敵大砲隊だ、慎重に狙え、LAVは突出した兵士を狙え、優先は弓兵だ。合図とともに一斉斉射」「RCV了解」「LAV了解」4両は深山の合図を待っている。


 偵察バイク隊は300m離れてRCVと並行に並んだ。二人はバイクを横倒しして低い体勢で89式5.56mm小銃を構えている。村田は弾倉交換までしている。二人は長弾倉を6本ずつ持っている。


 兵士たちは二人が止まっているのを見て一斉に駆け出した。向かってくる。


 深山は合図を出した。「斉射はじめ」

 合図とともに87式偵察警戒車(RCV)は砲撃隊に向けて射撃を開始した。

 また、軽装甲機動車(LAV)は門の中にいる帝国兵士を、偵察バイクの二人は走ってくる帝国兵士に向けて89式5.56mmを単射にて撃っている。走る帝国兵士の後方にいる弓隊は12.7mm重機関銃M2の餌食となった。さらにその後方から向かってくる兵士達を狙うのに邪魔であったのだ。


 87式偵察警戒車は狙いすまして、後方からゆっくり近づいてくる砲撃隊の大砲目掛けて確実に撃ちこんでいた。大砲に火薬は入っていないが、25mm砲弾が当たれば砲身を傷つけ砲撃する時に砲自体が爆発する可能性がある。

 そして架台も狙っていた。つまり大砲がこちらを向いていたので大砲内部に撃ちこみ次に架台を破壊した。これで帝国軍の大砲は機能が停止した。なにより無理に撃つと砲兵を巻き込んで爆発する可能性があるのだ。

 そして架台を失った大砲は、押していた帝国兵士を巻き込み転がっていた。後ろの大砲については兵士が逃げだしていたが、かまわず使用不能とする為に砲撃していた。

 

 帝国第1中隊は30%が12.7mm重機関銃M2と89式5.56mmに射殺された。不幸にも砲撃隊の大砲に巻き込まれて死亡するものも多数でたようだ。

 

 帝国第5師団第1中隊は港町ドルステインの街で、捕虜返還交渉団を捕らえようと逆にコブラの餌食に約250名もの兵士が死亡したのに学習しないのは帝国軍の気風なのか。


 その時もまとまって迫ってきたので、20mm M197三砲身ガトリング砲の1発で2~3人が倒されたのにだ、今回も固まってしかも走ってくるものだから1発の12.7mm弾で2~3名が倒れた。


「小隊長、攻城隊は遠く砲撃隊に隠れて狙えません」と報告がRCVより入る。


 深山は考えた、当初の目的は交戦を仕掛ける事。次に狙えれば大型兵器を破壊する事。そして前者は予定通り完了した。後者は帝国第5師団の砲撃隊は当初の4分1までに減り、攻城隊は健在であった。

 ただし攻城隊は砲撃隊と違って射程は1km程度の臼砲であるからどちらにしても駐屯地まで近づけないだろうと、砲撃隊は15km近く飛ぶが駐屯地まで20km程度近づけば特科群の餌食となる。


 ここハイデルバークの街でできる事は全て終わったと思案し、撤退を命令した。


 第2師団作戦司令所では平沢陸将が偵察隊各自のヘルメットカメラを見ながら、「良いタイミングだ深山二等陸尉」と相手には聞こえないが褒めていた。


「よし奴らの監視を引き続き第1偵察小隊に指示。気づかれない様に注意してくれ」と平沢陸将が中野幕僚長に言う。「ついでに第1偵察小隊が駐屯地に戻ったら差し入れを頼む。今回の大戦最初の武功だからな」と平沢陸将が続けて言う。


 これで陸上自衛隊も交戦権を得たことになる。


 結果として、帝国第3師団に対する先制空爆を発令していた。

ありがとうございます。

第3師団への空爆が続きます。お楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 話がとても面白い。そそられてしまう。 [気になる点] どっち視点で話してるかわかりづらい部分がある。 [一言] 更新頑張ってください。
[良い点] こんにちは、いつも更新を楽しみにしております。 此方の作品の仮想戦記として必要な戦闘はきっちりとこなしつつ、どこかほのぼのとした感じがお気に入りです。 いよいよ大陸での大規模戦闘開始ですが…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ