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戦闘国家日本 (自衛隊かく戦えり)  作者: ケイ
第1章 日本転移と自衛隊激闘編
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第71話 ドーザ大陸大戦 その2 開戦

いよいよ帝国が動き出すようです。

10万人対260万人の戦い、ランチェスターの1次法則と2次法則の差で勝てるものなのでしょうか。

 陸上自衛隊にとって状況は極めて不利である。

 駐屯地から西に向かって、斜め右250kmには帝国第3師団、同じく斜め左200kmには帝国第4師団。これだけでも200万人からなる大規模歩兵団に約15km飛ぶ砲撃隊と臼砲を備える攻城隊。攻城隊は建物破壊に特化しているので、近づかせると脅威となる。帝国第5師団は40万人の規模ではあるが、砲撃隊と攻城隊の半分は健在であり、しかもハイデルバーグ郊外に陣を構えているのでハイデルバーグの石畳を通ると、砲撃隊も攻城隊も移動速度があがるが、帝国第5師団については駐屯地まで約300km地点から動く気配はない。なんども陸上自衛隊第2師団第2偵察隊が接近して偵察を実施しているが、動かない。動く気配がない。


「中野一等陸佐入ります」作戦指令室に中野幕僚長が入ってきた。


「中野幕僚長、今のところ帝国軍に動きはない」と副師団長の佐藤陸将補が説明する。


「それについてなのですが、ハイデルバーグの街で噂になっています」「具体的に申しますと、チロルの森を奪還する為に帝国第3師団、第4師団、第5師団を送り込み、総指揮官であるドメスアルム領主長公爵の到着を待っており、命令がでれば三軍同時に奪還作戦に入ると・・・」と中野幕僚長は「あくまで噂ですが」と言う。


「奪還って、帝国から正式に割譲されているのに不思議な話だ」と師団長の平沢陸将は正論を言う。


「もう理由はなんでも宜しいのでしょう、帝国民に説明できれば多少の嘘も良しとしている節があります」と中野幕僚長が呆れている。


「この一連の流れを儂なりに整理していたのだが、最初は冒険者の生き残りが、次は帝国第5師団の第2中隊がつぎは第3中隊と続けて戦闘になってはいるが、相手の戦闘を見ていると山岳戦は慣れていない様に思ったのだが、中野幕僚長はどう思う」と平沢。


「はい、おっしゃる通り山道にあれだけの人員を配置したら動けなくなるは道理です。その点からして平原での陣形突撃が得意なのかもしれません。現に山岳戦では第3普通科連隊+戦車や特科で排除しましたから」

 中野幕僚長も思っていた疑問を吐き出した。


「私も具申宜しいですか」と佐藤陸将補。「うむお願いする」と平沢。


「私も今回の展開を考えていたのですが、帝国はワザとチロルの森を割譲して、平地におびき出して殲滅戦を仕掛けてくるのでは思います。その為の壮大な策謀ではないかと」佐藤陸将補も思っていることを言った。


「佐藤陸将補、案外そうかも知れない。しかも割譲の後におびき出して殲滅を考えられる、いや実行できるのは帝国にただ一人と思う」「だがな、最初から統合幕僚監部は読んでいたのだよ。だから戦況に合わせて法律違反にならぬ兵器武器の開発を最優先していたのだと思う」「なぜなら在日米軍が保有するMLRS用M26でも買っていれば事態は急速に動くのだが法律化しているから、それ以外での解決策を探した結果だろう」

「いまさら焼夷弾とかフレシェット弾とかプロペラ爆撃機など密かに開発していたことが証拠だ」


「なるほど納得しました。なぜ第二次世界大戦当時の武器兵器を開発するのかと思いましたが、その様な背景があるのですね。おおいに納得です。なにしろ10万対260万ですから数の上では不利です。不利を有利に変えるには地形、兵器、武器、そしてなにより士気の高い兵士が不可欠です」と佐藤陸将補は納得していた。


「そして、それを指示した人物は皇帝陛下しかいないですね」と中野幕僚長が補足する。


「それであっていると思う。だがだ、その後どうするのか統合幕僚総監部の戦略が見えてこないのだよ」と平沢。

「まさか、勝って帝都まで攻め込めとか・・・ないですよね」と佐藤。


「いくらなんでも我々だけでは荷が重いだろうよ」この時点で平沢は勝つ見込みはあるが、その後の戦略には入っていないのではと思っていた。なぜなら第二次世界大戦の局地戦以上の戦況ではあるから、各員の消耗を考えると追撃戦は不可能であったからだ。


 指揮指令室にブザーが鳴った。


「衛星データ監視担当から報告します」

「現在馬車車列がハイデルバーグ方面に向けて移動中です。少なくとも馬車は22輛あります。護衛の騎馬も30騎はいます」

「進行方向は帝国第4師団野営地と思われます」


「了解した」中野が続ける。「現在の移動速度で合流までの時間は幾程か」


「はい残り合流までは900km程度の距離となり、宿泊しないでと考えて6日となります。ただし馬を交換して走らせた場合です。休憩を入れると9日間、となります」


「よくわかった」中野幕僚長。


「師団長少なくとも6日後から9日後に開戦する事となります」と中野幕僚長が報告する。


「よし5日後から周囲厳重警戒発令、偵察隊については迂回して各軍団の動向観察を命令」「続けて3日後に大隊長呼集後分析結果の報告と各隊への戦術指示、そして撤退条件指示を行う」と平沢。

「佐藤副師団長、帝国各軍の進行ルートの検証と確率を算出してくれ」


「了解」


「中野幕僚長、航空自衛隊に敵の航空写真を全て撮ることを指示。ついでにドメスアルム領主長公爵なる人物の写真も欲しい。それは偵察隊から志願で頼む」


「了解しました」中野幕僚長。


 この後チロルの森上空ではOP-3CやA-1軽爆撃機などが飛び回り、写真を積み重ねていった。


 突然チロルの森上空に甲高いジェットエンジンの音が響き、写真偵察に米軍のF-16Fが参加した。

 このF-16Fは近代化改修された機で、三沢から大三角州の空港基地経由で作戦に参加していた。


「中野幕僚長はいるか」と平沢が走って指揮指令室に来た。


「はい、ここに」


「航空自衛隊から要請だ、各基地のF-15が参加を要請してきた。首都圏や九州、大南海等や東海諸島を除いた全ての航空基地から要請があり、航空幕僚総監部で調整した結果、大三角州基地にF-15が20機と輸送の為のC-2が5機、日本山に武器を届けるC-1が12機到着している。これを戦術に組み入れてくれ」

「あっ救難ヘリ隊も志願してきたので、救護は任せる。師団の航空隊も観測ヘリ以外は輸送と救助に向けようと思う」

 当初救難案件は師団の第2飛行隊UH-1Jに輸送と救助を割り振っていたが、駐屯地分屯地の近くしか救助に行けない事が欠点ではあった。

 そこに各基地から救難ヘリが計5機集まることになり、ついでに全国の自衛隊病院からも交代で医師資格を持つ者が15名、看護資格を有する者が50名、駐屯地、分屯地、日本山基地に別れて集まってきた。


 日本国も大規模戦闘に対して本気を出してきたと見える。平和な日本の隣で戦闘の危機が起こったのだ。

 いや名目上は日本の領土である。


 日本側の作戦は出来上がっていた。


 帝国軍は魔道通信により全歩兵軍同時に駐屯地または分屯地に到着して、その圧倒的な戦闘力によりチロルの森を破壊し進む道を作り、砲撃隊により自衛隊を基地に張り付けさせて、攻城隊が到着しだい本格的に破壊に進むと予測されていた。


 この作戦に対し、全歩兵同時攻撃ならば、第3師団、第4師団の距離差を考えると、第4師団が先に動くはずと見ている。第5師団は挙動が良くわからないので、遊撃隊なのかもしれない。 

 第4師団は必ず動くから、ここを合図にするつもりであった。

 

 第1撃は、帝国第4師団が動いたその時、帝国第3師団歩兵軍に対して爆撃によるフレシェット弾や焼夷弾による焼き討ちを実施する。

 第2撃は、分屯地から第25機動化普通科隊と第7師団第71戦車連隊を同時に帝国第3師団後方に迂回して向かわせ、無傷であろう砲撃隊と攻城隊を壊滅させる。その後帝国第3師団歩兵軍に対し後方から圧力をかけ、特科と打合せしている範囲に追い込み追砲撃するものとする。


 第3撃は、第4師団の砲撃隊、攻城隊に対し爆撃を行い壊滅させるところまで行きたい。


 帝国第4師団の歩兵隊は、第3普通科連隊が駐屯地防御を担当し、陣地砲の12.7mm重機関銃M2およびAH-1Sコブラにて時間を稼ぎ、チロルの森に待機させた駐屯地の第26機動化普通科連隊と第2戦車隊により側方から圧力をかける。

 そこまで近寄ると日本山特科陣地の射程となるので、駐屯地、分屯地の特科大隊と連携しながら範囲殲滅を目指すものである。

 大まかにはこの様な作戦であり、そのタイミングは各大隊長に任されている。


 運命の日。「衛星データ監視担当から報告します。馬車車列が帝国第4師団野営地に到着しました」

 いよいよ開戦が迫ってきた。明日か明後日の筈だ。


 陸上自衛隊第2師団駐屯地、チロルの森駐屯地およびチロルの森分屯地には緊張が走る。


「陸上自衛隊第二師団師団長の平沢だ。諸君いよいよだ、戦後初の大規模戦闘を日本は経験する。よいか相手は死に物狂いで向かってくるだろう。この損害では相手は壊滅だとか、相手にとって戦況は不利であるとかは相手には関係ない。戦うことが使命と思う兵士たちだからだ。少しでも疑念が生じたら負ける、死ぬと思って良いほどだ。そうならないためには実際に相手が降伏するまで攻撃の手を緩めてはならない。セオリーなど戦場では何の役にも立たない。ただ戦うことだけが生き残るために必要な最善の手だ、その為に諸君らは日々の訓練を積み重ね、ドーザ大陸では死闘を3度も経験した。負けるはずがない。心を無にして所定作戦行動に臨んでほしい。以上だ」


 指揮指令室から無線をオープンチャンネルにして今回作戦に参加する全隊に対し訓令を行った。


 少し経ってから

「第2偵察隊から報告、第5師団が野営地を片付けており移動の為の準備と思われます」


「早いな、タイミング的にはまだだろう」と中野幕僚長。

「第5師団の砲撃隊、攻城隊は動いているか」


「第2偵察隊第1偵察小隊隊長の田中です。歩兵隊が攻城隊や砲撃隊を押しながら移動するようです。向かう先は、今のところはハイデルバーグの中心方向です。変化あり次第報告します」


「うむ頼む。」平沢は言う。「中野幕僚長どう見るか」


「はい師団長、やはり当初のとおり遊撃隊と見て間違いないでしょう。しかも少し突出させて「おとり」にするつもりかもしれません。セオリーどおりではあるのですが」と中野。


「ははは、40万人の壮大な「おとり」だな。これだけを見ても帝国兵士の人命は軽いようだな」

「ともあれ、放っておくわけにはいかないぞ」


「はい師団長、ハイデルバーグを出ると街道がなくなり、森の道を進むことになります。つまり移動速度は極端に遅くなると思われます。砲撃隊や攻城隊を置いて歩兵だけで先行されると厄介ですがこれなら特科の射程に入り次第、範囲殲滅できるでしょう。それまで第2偵察隊第1偵察小隊にストーキングしてもらいます」


「よし第26機動化普通連隊に第2戦車隊が見つからない様に注意してくれ。虎の子だからな」


「はい、虎の子は少し後退させて見つからない様にします。ほかは近寄るまで気づかないふりをします」


「それで良し」


「それで帝国第3師団の動向はどうか」


「はっ今だ動きがありません」


「中野幕僚長、やはり第5師団が「おとり」の役目を果たすまで動かないのだろうか?」


「ええ、その可能性がありますね」


「なら帝国第5師団へ第2偵察隊から圧力をかけさせてどう出るのか見るのも手だな」


「ええ、このままでは膠着するだけですから、帝国第5師団がハイデルバーグを抜けたら、第1偵察小隊の班レベルで圧力をかけて見るのも良い手かもしれません。しかもこちらから先に手を出せない状況ではありますから、状況を変化させても良いでしょう」


 このアイデアを元に偵察小隊に対し、帝国第5師団がハイデルバーグを抜けると同時に偵察バイク2台による圧力をかけるように指示をだした。逃げ足も速いからだ。


 帝国軍人達と違って自衛隊は思考が柔軟だ、一度決めたが状況によって次の手を考え打つことができる。

ありがとうございます。

かわいそうな帝国第5師団。「おとり」だと知っているのでしょうか。

いや帝国の事ですから言うわけないと思いますが・・・

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