第67話 ミソラ・ロレンシアの冒険 その1 出発編
どうにか続きを掲載しました。
よろしくお願いします。投稿間隔は短くするつもりです。
ドネルグとミルネ、ソラ、トムスの4人はドーザ大陸に向かうための準備に出かけた。
「ねえドネルグゥ、何日くらいの食料を考えているの?」と魔導士ミルネが甘い声で尋ねる。
「ねえさん、何か欲しいものでもあるの?」と同じ魔導士のソラが聞く。
「ソラ流石ね、実はあの良いにおいのする石鹸が欲しいの、あれがあれば毎日顔を洗えるし、お肌に良さそうだなと思うの」と21歳で最年長のミルネが言う。
ミソラ達のパーティーは7名で、ミソラ・ロレンシアが18歳でリーダー、剣士のトムスとタトルは共に男で19歳、魔導士のミルネは21歳で風魔法が得意である。
同じく魔導士のソラは16歳で水魔法、ヒーラーのミリナは15歳で治癒と聖魔法が使える。
荷物持ちのドネルグは20歳男で収納魔法が使える。女4名男3名のパーティーであった。
「うーん何日になるかはわからないけど、日本国はアトラム王国と違って、至る所にスーパーやドラッグストアーにコンビニと言うお店があるから、最初はそんなにいらないと思っているけど、それに物価も高いしね。でも石鹸なら買いましょう」
「うわーい」ミルネではなく、ソラが喜んでいる。
「なに、ソラも欲しかったの?」とミルネ。
「うん、お肌がつやつやになるから欲しかったの」とソラ。
「これだけ言われれば、買わないわけにはいかないよね」とトムスが入ってきた。
「ええいいですよ、買いましょう」とドネルグが言う。
買い出し一行4名は、スーパーにドラッグストアーを回って買い出し準備を終えた。
荷物はすべてドネルグが収納している。
「さっ早く戻って、テントを修理しましょうね」とドネルグ。
ああそうだったと言う顔をみながしていた。
なにしろ王国を立ってからテントは使っていなかったのだ。船旅+外務省で3か月近く屋根のある暮らしをしてきたから、テントが如何なことになっているか不安であった。
ミソラと剣士タトルとヒーラーのミリナの3名は外務省の担当官と話をしていた。
「私たちは、明日冒険の旅に出ることにしました。『しんかんせん』にも乗りたいと考えています」とミソラは本題を切り出した。
「承知しました。ただし大陸に渡ったら、ハイエルフの里に行ってください」「ドーザ大陸では戦争が起きる可能性があります。ハイエルフの里で情勢を聞いてから大陸の山越えをしてください」と担当官。
「まさか、日本国とスルホン帝国が戦うのか?、なら世話になったから助太刀を・・」とタトルが言い出したがミソラが止めた。
「タトル、多分だけど日本国の戦い方は王国と違うと思うの、神々の洞窟で見たでしょう。行ったら邪魔になるだけではないかな」とミソラ。
「それに、徒歩で行くから開戦には間に合わないと思うの」とミソラは続けて言う。
「そのとおりと思います。お心づかいはありがたいですが」と担当官。
続けて「ではこうしましょう。お手伝い頂いたことですし、日本国の見学と言うことで、外務省で新幹線のチケットを取り、私も仙台までご一緒します。仙台から冒険を始めてください」と担当者は提案した。
「それはありがたい」とタトルが言う。
「なあ俺たちだけで「しんかんせん」の手配とか乗り方とか不安があったのだけど、一緒に行ってくれるなら安心だぞ」とタトルがミソラに提案した。
「そうね、仙台までは冒険ではないけれど、いい考えかもしれないわね。お願いできますか」とミソラ。
「喜んで手配します。それに日本国は勝手に空き地にテントは立てられないから、その辺もお教えしますね」と担当官が言う。
「では明日9時に、官舎に迎えに行きます。よろしいですか?」
「わくわくして眠られないかもな」とタトル。
「ミリナこれで大丈夫?」とミソラは無口なミリナに尋ねる。
「ミソラに付いていくだけ」とミリナは小さな声で答える。
「これで決まりだ」とタトルが大きな声で言う。
「明日お迎えに行くときに、日本国の地図も渡しますね。それと前にお渡ししている外務省の証明書と滞在許可証は携帯してくださいね」「全国の警察には通達しておきますからね」と担当官が次々と説明しながら言う。
「よろしくお願いします」とミソラ。ミリナもちょこんと頭を下げた。日本国に1ヵ月以上もいるので、日本の礼儀が身に付いたようだ。
3人は官舎に戻り、買い出しの4名と合流した。
ミソラは外務省での話を、買い出し組の4名に説明して、翌日の準備に入った。
テントは心配したほどではなく、穴が数か所あったが、前にドネルグがアウトドア用品店で買った、テント補修キットで補修をして、再度収納した。
「これすごいよね、補修なのに雨も通さないとか、アトラム王国で売り出したら大儲けだ」
「ねぇドネルグ、いくつ仕入れたの?」
「えっっ聞こえてましたか。ははは」「10個」
「買いすぎ」と最年少15歳のミリナに怒られた。
ドネルグは少し反省した。
ミソラとドネルグは旅の準備品を確認していき、「あねさん、日数はどのくらいになるのです?」
「うーんわからない。けど距離は仙台まで「しんかんせん」を使うとして、残りは日本国をでるまで直線で約550km程度かな。日本国内なら明るいから夜遅くまで歩けると思うの」「ざっと14日で行けるといいな」
「結構強行軍ですな」
「うんあくまでも直線で計算したからね」「実際は6日加えて20日というところかしら」
「道中なにも起きないと、その位ですかね」
「日本は平和だから大丈夫よ」
「ドネルグ、もう確認は終わったから寝ましょうよ」
「はいあねさん、久しぶりの冒険に寝られそうもないですが。ははは」
「途中でへたばったら置いていくからね」
「はいあねさん」ドネルグは心の中で荷物持ちは俺だから置いていけないだろうと、つっ込んだ。
「さぁみんなも寝るよ。それぞれ部屋に戻ってね」とミソラ。
各メンバーはあてがわれた部屋に戻っていった。ミソラも部屋に戻っていった。
「屋根の下で寝るのは最後だね」と独り言を言いながら歩きだした。
翌日も快晴ではあるが、気温は25度程度であまり暑くはない。
約束通り担当官が9時に迎えに来た。マイクロバスも一緒である。
「ミソラさんおはようございます。お迎えに来ました」
「おはようございます。その「まいくろばす」とか言うので移動ですか?」
「ええ、東京駅までこれで行きます。さっ乗り込んでください」
ミソラ達7名はマイクロバスに乗り込んで、「しーとべると」を締めていた。安全のためらしい。
「ではみなさん、出発します。東京駅では迷子にならないように私についてきてください」
みな頷く。
外務省官舎から20分程度で東京駅の八重洲口に到着した。
次々メンバーが下りてくるが、ミリナが出てこない。シートベルトの金具が外れないようだ、担当官が乗りこんでミリナのベルトを外す。
「留守番かと思った」とミリナ。
「そんなわけないでしょ」とミソラ。
「そうだミリナがいないと大陸には行けないからな」とトムスが言う。ヒーラーは貴重な存在だ。
アトラム王国でも冒険に出られるヒーラーは5人といない。
ほとんどのヒーラーは教会か治療院にいるのだ。で人数は30名もいない。
如何ほど貴重な人材か。
ミソラ達はドラゴン退治に向かった時、途中の村でミリナにあったのだ。
ヒーラーとしての能力には気づいていなかったのだが、ミリナの親がドラゴンに殺され、孤児院も満員なので、半ば強引に付いてきたのだが、ミソラ達がドラゴンと対峙して負傷した時、ミリナは自分も何かできないかと祈ったのだ、その時能力が突然発動して治癒できた。ドラゴンを倒してからは、昔ヒーラーになりたかったソラからいろいろ教わり、ついに聖魔法までも会得できたのだ。
普通の少女ではありえない能力だった。
日本国は魔法と言う概念はない。小説や漫画では一般的ではあるが、手品以外で見たものはいなかった。
それがここに、魔導士2名にヒーラーが1名、魔法剣士が1名に収納魔法使いが1名いる。
どうやら、魔法使いは遺伝の様だ、一般人が努力しても使えない。
日本国にはいない、ある意味最強のチームだった。
ミソラ達一行は担当官の案内の元にあこがれの新幹線に乗り込んだ。
「出発したら約2時間で仙台に付きます」「一応日本国の見学と言う名目ですから、仙台で昼食と日本国冒険の為のレクチャーを行います。約1時間くらいですから聞いてくださいね」
「それから皆さんにはスマートホンをお渡しします。外務省の番号をいれてありますから、なにかあれば電話をまた外務省からかかってきたら必ず出てください。忙しければ後ほど掛けてくださいね」
「それからこれが地図とコンパス。地図は上が北になっていますから、コンパスで北を見つけて地図と見比べてくださいね」
「コンパスってなんだ」とトムス。
「方位磁石の事です。アトラム王国にはなかったのですか?」
「船乗りが使うあれか、ずいぶん小さいな」とタトル。
「私たちは、ソラがいるから方角は解るのよ」とミソラ。
「ですが、ほかのお仲間はコンパスを持っている方が便利ではありませんか」
「それはそうだな」タトル。
「コンパスは3つありますので、無くさないでくださいね」「スマートホンは2台、充電器とこれが太陽光で電気を作るパネル」「野宿でも充電できますからね。それとポケット翻訳機、これも充電できます」
「昼食後に説明しますね」
「あと、各地の警察には連絡していますので、必要ならスマートホンで110番にかけると繋がります」
「ですが、各地の警察にはあまり連絡しないようにお願いします」
「大宮を過ぎましたので、あとはご自由にお願いします」
「ねぇミソラ早いよー」とミリナがはしゃぐ。
「ほんと早いね、ワイバーンの3倍位かしら」アトラム王国でも列車を作る計画はあったが、魔法石を原動力としたゆっくり走るものだ。自動車でさえ時速20kmでれば早い方だった。つまりこの世界で一番早い鉄道は新幹線であった。
ミリナ、ソラ、トムスの3名は窓から景色をずーと眺めていた。お子様なのだろうか。
仙台に東北新幹線は静かに滑り込んでいった。
1行8名は仙台で降りた。
「あっ言い忘れてましたが、スマートホンで写真が撮れますよ、撮りますか?」
ミソラ達一行は担当官に促されて、新幹線の前に並んだ。
「はい、撮りますよ」
「こんな感じで写りますよ」と担当官は画面をみんなに見せた。
「おおおおおー」皆がうなる。
「気に入った景色があればこうして写してくださいね。後でどのルートで行ったか分かりますから」
「写し方も後ほど教えますね」
一行は駅ビルに隣接しているホテルの宴会室に入り、仙台で有名な食材の食事をとった。
ありがとうございました。
次は仙台-盛岡の冒険となります。お楽しみに。