第63話 チロルの森駐屯地3
第63話を投稿します。
かなり短めです。
冒険者ミソラ・ロレンシアは帰国の船を降り、日本国に協力すべく外務省担当官と一緒に霞が関の外務省本省に来ていた。もちろん6人の仲間も一緒に残っていた。
「ではみなさん、こちらが特別滞在許可証となります。有効期限は6ヵ月ですから、期限が切れる前に本省か大阪、沖縄、成田などの分室か出張所にて延長手続きをお願いします」
「最近ですと「宗谷特別行政空港」に出張所が、各国境検問所には担当官が1名はいますからそちらでも届け出は出来ます」
「手続きは解りました。私たちにお手伝いできることは、例の翻訳ですか」
「ええ、それは是非お願いします。ただし翻訳作業は民間業者が行いますので、みなさんは外務省の職員宿舎にお泊り頂き、外務省の協力者として民間会社に行き作業をお願いします」
「ミソラ少しいいかな、わしは大森林に行きたいのだが」と冒険者の一人が言う。ミソラが大陸語に通訳する。
「伺っていますが、先に協力をお願いできますか。その後でしたら日本の行きたいところをどこでもご覧いただけます。それに、民間会社に協力すると謝礼がでますので、旅にお金は必要でしょう」
「わかりました」とミソラは言い、アトラム王国公用語に通訳する。
「なる程、お金は必要だ」と納得したようだった。
この日から約2か月間、アトラム王国公用語を翻訳機に入れる作業をミソラ達冒険者7名で分担しながら入れていった。
少し難航したが、大陸語が喋れる者がミソラを含めて3名いたのでトラブルは無かった。
「そろそろ翻訳作業も終わりとなる頃だが、大森林にいつ行けるのだ」と冒険者の一人が言う。
ミソラは少し考えてから、「お話してみますね」と言い。外務省から渡されたスマホで担当官を呼び出していた。
「もしもし、ミソラです。お話よろしいですか」と大陸語で話をする。
「あっはい大丈夫ですよ」
「そろそろ翻訳も終わると思いますが、旅にはいつ頃行けますか」と尋ねる。
「ええ、民間会社からも言われていますので最終打ち合わせをしてから、決めます」
「早めにお願いします」
「わかりました」と切られる。
仲間に最終打ち合わせをしてから決めると伝える。
「なら荷造りを始めるか」
「それが良い」
「ミソラはどうする?」
「私も冒険したくなってきた」と毎日机か収録でつまらない日常であった。
「大学はどうするの」と女性の冒険者が聞く。
「どうも話ではいつでも入れるらしいのよ。なら冒険や日本を見て回ってからでも遅くはないかなと思うの」
「若いうちに見ておいた方が良い物もある」と最年長の冒険者が言う。とは言え彼も22歳なのだが。
アトラム王国では15歳で成人となるので22歳はかなり年齢が高いのだ。
一方アトラム王国本国では・・・
「国王陛下、第2艦隊からの連絡が途絶えております」
「なに、連絡が無いとは如何なる状況だ」
「はい、連絡が届かない状況が続いております。まさかと思いますが、沈んだのではと心配しています」
「ばかな最新艦『エコーリア2世』は無敵のはずではなかったのか。それにスルホン帝国に忍ばせた密偵からは何も報告はない。まさか日本と言う国に負けたと言うのか」
「いえ陛下、我々は何も情報をつかんではおりません」
「密偵からは日本国に帝国の一部を割譲すると言う戯言が入っているが、あの強欲なガリルがそんな事を言うはずもない」「いやまてよ、もしかしたら帝国以上に日本は強敵なのかもしれん」
「王よ、もしそうなら日本は帝国を攻め滅ぼすつもりなのかも知れません」
「お前達、冒険者に忍び込ませた軍属者からは何か連絡はあるか」
「王よ軍属者には魔道通信の道具を渡しておりませんので、戻るまでなにも判りません」
「なぜ大事な役目なのに長距離通信できる道具を渡さないのだ」
「王よ、魔道具は持っているだけでその魔力により所有が判明してしまいます。ですから万全を期す為に持たせず送り出しました」
「うむ、それは儂も認めたが、こんなに連絡がないとは不安になる」
「冒険者達が戻るまでご判断を保留に願います」
「それしか無かろう」
「王よ賢明なご判断傷み入ります」
「その代わり、冒険者どもが戻ったらすぐに報告をせよ」
「かしこまりました」
チロルの森では相変わらずの工事騒音が響き、その為だけではないが、時間を見つけて村の作物育成を手伝っていた。インターネットで農業専門家の意見を聞き、村に伝える。
帝国の監視は続いている様にも思えるが、特に変な事は起きていない。
ただ、バーグの街にまた冒険者が増えたような気がする。
実は駐屯地については工事用養生シートを高さ7mまで覆い、周辺の村人からも隠して工事を続けていた。
工事は殆ど完成をして、第2師団の主要部隊は移り住んでいた。特科の分屯地は駐屯地に先んじて完成して既に特科の布陣は終わっており、細かい防御施設の構築を残すのみとなっている。
具体的には駐屯地と分屯地では違うが、先に完成した五稜郭を模した分屯地には五角形の各角に12.7mm重機関銃M2を設置して防御を高めていた。また、対空砲陣に監視櫓も完成して分屯地は機能し始めていた。
ここには第26普通科連隊と第2特科連隊、第2高射特科大隊の半分が駐留する。
一方日本山飛行場もその大半が完成して、元迫撃砲陣地に第1特科団から第1特科群、第4特科群のM110 203mm自走榴弾砲やMLRSが並んでいた。壮観である。
第1特科団の団本部中隊は麓を測量などして特別の砲撃用地図を作製している。
M110A2は約21kmの有効射程を持つが、日本山特科陣地は標高3000mの山頂を削った砲撃陣地であるから、計算が複雑である。特に風の影響を受けやすい山頂である為に、山頂の天候や湿度温度に風速と麓に置かれる駐屯地の気温湿度風速などの情報が不可欠である。
これを本部中隊の測量班が丹念に調べ地図に落としていく。
特にMLRSに採用されているM31GPS誘導ロケット弾はGPSが不可欠の為に、チロルの森の西側200m、バーグの街から西に150km地点の丘陵地帯に3本のGPSアンテナを建てる事を計画していた。なにしろM31GPS誘導ロケット弾は40km以上も飛ぶことができる為不可欠であった。
距離40kmは日本山からバーグの街を狙える距離である。
日本山飛行基地に配属された、A-1軽爆撃機は習熟飛行の最中であり、第2師団の第2偵察隊が協力して模擬目標の設置を行っていた。
飛行隊は日本山飛行隊(第1爆撃隊)と呼ばれ、A-1軽爆撃機20機を配備されていた。
5機で1飛行中隊を作り、第1から第4飛行隊となる。
なお、予備機体については日本本土より搬送されるが、まだ真新しい機体なので数が揃っていない。
最終的には3機の予備機体が配属される予定であった
ところで一度失敗した帝都防衛隊第1中隊偵察隊は北の街道からチロルの森を大きく迂回して南側のバーグの街に冒険者を装って潜入していた。
最初に失敗した5名と看護兵は同行していない。顔を覚えられている可能性があるからだ。
バーグの街に冒険者として潜入した帝国兵はハイデルバーグや冒険者、商人などの話を総合して、日本軍、ここでは陸上自衛隊と言うらしいのだが、の情報を集めていた。すでに冒険者としてギルドに登録を済ませていて偽装の為に狩りなどを行っていた。
だがそんな小細工すぐにバレそうなものなのだが、街の人はおおらかなのか特に問題もなく溶け込んでいた。
ありがとうございました。
次は駐屯地が完成して足場を取り払います。
チロルの森やバーグの人々の反応が気になります。