第48話 ドーザ大森林三角州国境検問所2
第48話を投稿します。
怪獣退治は自衛隊のお仕事♪なんですかね。
大森林南側調査が下命された事で、「ドーザ大森林三角州国境検問所」の分屯地は騒がしくなってきた。
やがて第2偵察隊と施設作業車が2台、分屯地に合流してきた。
偵察の主目的は第2偵察隊が中心となって行うが、支援火器として第1戦車中隊から74式戦車が各2両の計4両が同行する。1隊が施設作業車を先頭に、74式戦車2両、偵察隊の87式偵察警戒車が2両、73式中型トラックに各10名の偵察隊員と器材を2台分の隊列を組んで偵察を実施する。
大型魔獣と遭遇した場合には、74式戦車などが対応すると決められていた。
いよいよ出発だ。無線で師団司令本部に連絡し静かに出発した。1隊は海から10kmの距離を維持して進行する。もう1隊は山岳に沿って5kmの距離を保ちながら進行ルートを設定していた。
今回は速度15km/h程度でゆっくり進む。
大きな木をなぎ倒して施設作業車が道を作っていく。切株などが残っていれば74式戦車が重さを利用して砕いて行く。山側ルートを進行している隊は20分程度で「エルフの隠れ里」近隣に到着した。
73式中型トラックから村長の娘エルフを降ろし、第2偵察隊第3偵察小隊隊長が村長に挨拶をする。
「私たちは日本国陸上自衛隊です。娘さんの要請で「森の悪魔ドラフマ」退治をしにまいりました」
「娘から思念で連絡は貰っています。「ドラフマのぬし」を倒したと聞きましが本当ですか?」
「ええ、先に倒した「ドラフマ」がぬしならば、そのとおりと思います」
「早速ですが、あの山の中腹あたりで古代の遺跡があり、そこに「ドラフマ」が生息しています」
「倒せますか?」
「大丈夫だと思います。他に強い魔物はいないですか?」
「闇の夜に海からくる魔物がいるが当分は来ないと思う」晴れていれば暗闇にはならないのだ。
「そうですね、来ない事には対応のしようがありません」
「先に「ドラフマ」をかたづけましょう。我々の安全の為にも」
「そんな簡単な事ではないと思いますが?」
「お母さんこの人たちは大丈夫ですよ。目の前で見ましたから」
「なら早速案内します」
87式偵察警戒車に村長を乗せて山岳の方向に向かって行く。
切り開いた道を74式戦車と87式偵察警戒車がついて行き、やがて山の麓についた。
「あの遺跡からこの道を下って「ドラフマ」は村まで来ます」
「先ほど遺跡と言いましたが、どのくらい昔の物なのですか」
「我々もここに来るまで聞いた事もない遺跡なので古さや誰の遺跡なのかもわかりません」
「スルホン帝国以前の王朝なら知っている者もいたと思いますが、今となっては謎です」
「そうですかわかりました。なるべく遺跡を壊さないように対処します」
そう言って、施設作業車に山の麓に展開できるだけの広場を作らせた。
「では我々が誘い、出てきたところをこの機械で排除します」
偵察隊員が静かに山道を登り、山の中腹と言っても標高は500m程度の所にある古い遺跡にたどり着いた。
発煙手りゅう弾を2発、洞窟状の遺跡に投げ入れ後退する。
大人と思われる「ドラフマ」が4匹に、子供と思われる「ドラフマ」が2匹出てきた。
大人「ドラフマ」は怒っている様だ。
偵察隊員は少し距離を取って、閃光発音筒を2発投げた、これが合図である。
出てきた「ドラフマ」に対し、74式戦車は91式105mm多目的対戦車榴弾を左側の「ドラフマ」に向けて撃った、右側にある山道に誘導する為である。87式偵察警戒車は25mm機関砲KBA-B02から25x184mm弾を正確に「ドラフマ」に当てていた。施設作業車の上に取りつけていた12.7mm重機関銃M2も参戦していたが撃っているのは偵察隊員だ。3匹の「ドラフマ」が倒れたところで1匹は巣に戻り始めた。偵察隊員は89式5.56mm小銃で残った「ドラフマ」に対し連射を行い、隊員に向かってきたところで、MK3手榴弾を投げつけた。小規模な爆発が起きて一瞬「ドラフマ」が倒れたが、再度向かってきた。
その隙に偵察隊員は左右に別れ道を開けて、施設作業車の12.7mm重機関銃M2が咆えた。
「ドラフマ」は咆哮と共に動かなくなった。子供の「ドラフマ」はその最後に倒れた「ドラフマ」に近寄って来た。母親だったのだろう。
子供「ドラフマ」は隊員たちに向かってきたが、89式5.56mm小銃を連射すると動かなくなった。
子供はまだ皮が薄く5.56mmの弾頭でも内臓に達した様だ。その「ぬいぐるみ」の様な容姿に多少の罪悪感はあるが、ほっといて大人になっても同様に駆除対象となるのでここで仕留めたのだった。
偵察隊員は遺跡にまだ潜んでいる「ドラフマ」がいないか戻って確認をしていた。
ついでにその古い遺跡を写真に撮り後に分析して貰うように、連隊本部の三角州国境検問所に送った。
いろいろ遺跡内部を見て撮って回ったが、遺跡と言うより幾何学模様が一面に描かれており、元「地球」に共通する絵や文字は見つからなかった。しかもほんのりと明るい。
「遺跡らしいのですが、象形文字や絵が見つかりません。それどころか幾何学模様らしい図柄がいたるところに描かれていてわかりません」考古学好きらしい隊員が漏らす。
「なら余計に触るな、崩れてきても困るからな」
隊員は少し奥まで進んだ。「ここに何かの図柄とはめ込むようなくぼみがあります」
「よし写真に撮ってくれ」
「ドラフマ」は奥までは巣にしていなかったようだ、入り口から50メートル程までに糞があるが、その奥にはなかった。その遺跡は奥行きが150メートル程度で、何かをはめ込むような窪みのある1メートル程度の石柱があるだけで行き止まりであった。だが何かがおかしい。
通常行き止まりの洞窟などで糞がある場合は匂いが充満して息苦しくなるものだが、偵察隊員は苦しくも匂いに悩まされることもなかった。事前に「遺跡の洞窟」と聞いて、通称ガスマスクと呼ばれる防護マスク4型とガス検知器2型を持ってきていたのだが、徒労に終わっていた。
不思議ではあるが新鮮な空気とそよ風が洞窟にあふれていた。上に穴や通風孔などは見当たらない。
後に「不思議な洞窟」と呼ばれる古代遺跡は発見されるのだった。
村長を隠れ里まで送っていき話をした「ところで「ドラフマ」の巣はあの遺跡だけですか?」
「ええ他は知らないですが、ここに現れる「ドラフマ」の巣はあそこだけです」
「この隠れ里ですが、家が見えませんがどこに暮らしているのですか?」
「ええ、地上の家は魔獣などに弱いのです。我々は木の上に住み、木の上に家を作り生活しています」
小隊長は木の上を見上げたら枝に家らしき物があるのが見えた。
「木の上ですか……木は腐らないですか?」
「ここの木は丈夫で腐りません。ただここに隠れ里を作ってからまだ40年程ですので先は判りません」
「もし宜しければ我々の住む地区がこの北にありますご案内できますよ。魔獣もいなくて安全は保障します。それにお仲間かはわかりませんが、獣人や同族のエルフが既に住んでいます。そうそう、ハイエルフの皆さんも住まわれていますよ」
「えっ帝国で迫害を受けたもの達を匿っているのですか」
「結果的にそうなります」
「それに女神様と言われるハイエルフの皆さんもいらっしゃるのですか?」
「ええ、そうです」
「少し皆で話をさせてください」
「今決めなくてもよろしいですよ。ただ、闇夜に来る魔物は退治できていませんので危険は続いていると思っています。我々の管理する地区ならばお守りする事は可能です」
「もし移り住むと言うのであれば、先にある国境検問所に出向いて話を聞いて来たと伝えてください」
「移り住めるように手配しておきます」
「わかりました。あなた方の親切は我々が語り継ぎます」
「そうですか、連絡しておきますので行く気になったらいつでもいらしてください。私たちはこの先を南に向かいますので」
「途中魔物が沢山いますよ」
「それも想定済みです」
「では我々は先を探索しますのでお別れです。闇夜の魔物が襲ってくる前に避難されることをお勧めします」村長から話を聞くと闇夜の魔物はエルフの住む木を匂いで嗅ぎ当てて、突進して木を倒すらしい、その後エルフを捕食するとの事。
「有難うございます」と村長が礼を言い。偵察隊は目的の入り江目指して進むのであった。
無線にて連隊本部の国境検問所に一連の流れを説明しエルフの事を頼んだ。
施設作業車は本来のルートに戻り、時速15km/hで道を作り始めた。
今回の深部探査は海側ルートが第2偵察隊第1小隊と第2小隊が担当する。山側ルートは第3小隊と第4小隊の担当。
遺跡調査をしたのは第3小隊と第4小隊の混成チームだ、序列により第3小隊長が混成隊長を務めている。
施設作業車は燃費が悪い。車体となっている73式装甲車なら300kmは走行できるのだが、木を倒しながら進む施設作業車はドーザーブレードやクレーンを搭載しているので73式装甲車の倍以上の重量になっている。
よって120km程度で燃料切れが心配される。
前回の深部探査も100km毎に補給を行っていたが今回も同様である。
山側偵察調査隊は比較的順調に進めていた。
海側偵察調査隊は、途中3mの「ぞう」のような魔物に遭遇して、戦闘になっていた。
昔大三角州で見た魔物らしい。
「ぞう」の様な魔物は長い鼻から水や海水を吸い、ジェット水流の様に噴射してくる。
施設作業車や戦車、偵察警戒車は全くと言って損傷はないのだが、後方のトラックなどはひとたまりもない、ジェット水流の当たり所が悪いと横転してしまう。
74式戦車の105mm砲や87式偵察警戒車の25mm機関砲から1発で魔物は制圧できるのだが、数が多く全部で30頭もいたのだ、ただし動きは遅い。しかも12.7mm重機関銃からの弾では最低数発当てないと動きは止められない。
海側偵察調査隊はいく手に少し大きな水たまり・・・「湖かも知れない」に差し掛かったところで「ぞう」もどきと遭遇をしてしまったのだ。
73式中型トラックが2台とも横転してしまい一部の器材が壊れてしまった。
施設作業車のクレーンで引き起こし走行できる事を確認した。多少はゆがんでいる様にも見えた。
無線で連絡をして、少し早いが休憩を取り燃料補給と壊れた器材の交換を待っていた。
ありがとうございました。