第5話 空の目と宇宙の目 (改)
第5話を投稿します。
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2020/05/29 改訂
長い安全保障会議を終えて、当壁総理は執務室でその他の問題、特に保守党、野党の対応を考えていた。
「磁気嵐1時間後に佐野官房長官からの政府発表はしたが、そろそろ私の番だな」
自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
そこに、佐野官房長官と高野防衛大臣が入室してきた。
「詳細は分かりましたか?」当壁は高野大臣に向いて言った。
高野大臣は答える。
「はい、ビデオが故障してしまったために、続きを見ることはできません。
ただ、壊れる直前に写っていた、赤い動物の様な物は捕獲し、札幌自衛隊病院にて未知の細菌保有を考えて隔離しています。同時に細菌検査をしております。
どうやら「うさぎ」の様な形態をしていて、毛は赤く・・その皮膚も赤いと判明しました」
「赤いうさぎですか・・・ある意味縁起が良いが・・」当壁は目を見開いた。
「また、うざきを追っていた「いのしし」の様な動物、姿は後から判明したのですが。
牙以外に角も生えていたとか。その3本の角と牙があり危険度は我が国に生息する「いのしし」の比ではありません。
捕獲は対応が間に合わず、と言いますか、捕獲できず。
射殺しようとしましたが、小銃の5.56mm弾を受けても死なず向かってきたため、最後は銃剣により止めを刺したとの事です。
なお、隊員の負傷は比較的浅いのですが、未知の感染に対処する為、一時的に札幌自衛隊病院にて隔離、観察しています。細菌培養で発見できなければ原隊復帰できる予定です。約1週間後ですが」
「状況は分かりました。そして赤うさぎといのししは?」
高野大臣は続ける
「はい現在、北部方面隊の札幌駐屯地に輸送しております。
市民には見せられないですから。
現地に到着次第、いのししは自衛隊病院関係者により細菌培養と検査診断を行いますが、動物は専門外なので、大学等に協力を仰ぐ予定です。
もちろん機密保持契約締結を前提にしています。
こちらが捕らえたうさぎといのししの写真です」
「うーん、新種か?」佐野官房長官が言う
「わかりません。動物には詳しくないので」高野大臣が頭をかいた。
「どちらかと言うと、いのししは害獣等にあたるのではないかと思います。
であれば農林水産省と思いますが」
「うん検討しよう」佐野官房長官が代弁した。
「次に高野大臣、他国への呼びかけだが」
「はい、現在23時45分ですので、翌朝目視できる時間に実施する予定です」
当壁総理は時間を聞き焦りだした。
「佐野官房長官。25時から記者会見はできるかね。政府発表として現状を説明したい」
「当壁総理。大丈夫と思います」
「高野大臣、自衛隊機による呼びかけを頼む」
「はい。翌朝実施いたします」
その後、首相官邸は政府発表を控え慌ただしく動いていた。
・・・・
翌朝、2022年4月19日午前6時 P-3Cが海上自衛隊各航空基地5ヶ所から2機ずつ。またE-767 2機が侵入警戒に、F-15Jが14機、P-3CとE-767護衛に飛び立った。
他に岩国飛行基地からは「OP-3C」が2機、画像データ収集に釜山に向かった。F-15Jを4機、エスコートとして同行させる。最悪領空侵犯による攻撃を避けて日本に帰還させる為である。
「OP-3C」は海上自衛隊において多用途機として公表しているが、その実、レドームを備えた、画像データ収集偵察機である。国内に数機しかない。
その役目は、本来は災害地などの地形変化をいち早く収集して情報として発信する為である。
今回は、各国からの応答がない場合、画像解析とデジタルマップ作製の偵察飛行を実施するものである。
なおデジタルマップ作製は地形監視レーダーが行う。
岩国から向かった「OP-3C」は巡航速度約600km/hで20分後には釜山沖まで到着。
釜山海上管制センターに向けて、船舶用国際周波数での呼びかけを行った。
まったく応答を得られず、陸地も見えない。
基地を通じて統合幕僚監部に連絡し、第二段階に移行する。ここでエスコートのF-15Jは安全確認して引き返す。
しばらくは海であった。
日本列島の最北部が西へ90度回転をしている為、「OP-3C」の釜山に向けた進路は本来、北西なのだが、実際には南西方面に飛行している。
第二段階移行後、約1時間後、日本から約1,000km前後の距離に島影を発見した。
基地から1,000kmは本来韓国を超えて、中国大連に迫る距離である。
呼びかけと画像解析を開始。
大小さまざまな島影があり、大きい島では台湾ほどもあり、中央に高い山がそびえている。
高度を落とし、レドームのカメラの他に、手持ちの一眼レフでも撮影を開始した。
集落らしき物が確認でき、住民は一斉に森に逃げ込んでいる。その姿も撮影した。
「OP-3C」も「P-3C」も燃料満タンで6,000km以上飛行できるが、この地区のデジタルマップを作製して帰路についた。
6時45分に第一報を受け取った統合幕僚監部は、海上自衛隊岩国航空基地から「OP-3C」をさらに1機、接続大地から進行させデジタルマップ作製の指令を出した。
なお、第一報はほほ同時に当壁総理、佐野官房長官へ高野防衛大臣から連絡が入っていた。
当壁総理は、佐野官房長官から同時に、単機能のマイクロ衛星ならイプシロンロケットで1ヶ月もあれば打ち上げられる、との報告を受けていた。
当壁総理は8時から衛星について説明を受ける旨指示を出す。
8時になり、文部科学大臣、JAXA理事長、宇宙科学研究所代表に国立天文台代表がそろった。
対するは当壁総理、佐野官房長官、経済産業大臣、国土交通大臣、防衛大臣。
佐野官房長官「さっそく説明してほしい」
引き続きよろしくお願いします。