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戦闘国家日本 (自衛隊かく戦えり)  作者: ケイ
第1章 日本転移と自衛隊激闘編
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第44話 フローダ半島の交渉3

第44話を投稿します。


交渉の様子を描いていると長くなってしまってすいません。

 翌日の昼前頃となり、昨日同様に港を監視していた遠山海将補と、となりで同じく双眼鏡を覗いている椎名主席参謀に話しかけた。

「今日は大丈夫なのかな」

「そうだといいのですが」

 ちょうど1時間前にEOP-1が周囲を偵察して戻っていった。赤外線写真を見る限り野営地に帝国兵士は居るようだった。だが、建物内部に隠れていたりすると見つからない。

「では本日は豪華に行きますか」

「豪華?」

「ええ、F-35B 4機とAH-1Sコブラ2機にSH-60K 5機で交渉団を送り出します」

「脅しだな。面白そうだ」

「ええ、しかも相手に安全確認させます」


 椎名主席参謀は「いせ」艦長に言う。

「艦長、スカイキラー航空機隊を手始めに2機対地装備で準備して、敵駐留地を含め偵察をお願いしたい」

「了解しました」「スカイキラー隊1及び2即時待機に入れ」管内放送が流れる。

 続いて椎名主席参謀が無線で「各艦打ち合わせ通り港地区特別警備班の準備をせよ」

 各艦は特別編成の上陸交渉団警備隊を1艦から10名程選抜して、SH-60Kを4機準備した。合計40名が乗り込む。


「いせ」に管内放送が流れる。

「まもなくF-35Bが発艦する、甲板要員は注意せよ。飛行甲板解放」「F-35B発艦用意良し、発艦。発艦」「スカイキラー1発艦。つづいてスカイキラー2発艦」2機が甲板を飛び出して行く。

 伝えられた通り港から野営地に向けて偵察していく。「いせ」CICを通じて艦橋にも画像が表示される。

「赤外線画像で見る限りは1時間前と同じですね」と椎名主席参謀。

「その様だ。いけるかな」と遠山海将補。


「いせ」管内放送が流れる。「まもなくAH-1Sが発艦する。甲板要員は注意せよ」

 続いて管内放送が「交渉団は飛行甲板に集合」

 外務省担当官2名と「ひなた」が飛行甲板に降りてくる。

 警備担当の隊員4名も同行する。

「いせ」の飛行甲板にSH-60Kが1機準備されている。交渉団の前にSH-60Jも飛び立つ。

「続いてスカイキラー3及び4即時待機」とF-35Bを2機準備待機にさせる。


 F-35Bが2機とAH-1Sコブラ2機が港町ドルステイン上空を旋回し威嚇する。


 港町ドルステインの市民や港湾関係者は建物に隠れて、人通りがない。


 SH-60Jスカイバードがスピーカーで放送する。「こちらは日本国海上自衛隊である」

「只今より交渉団を港に向かわせるが、交渉相手は速やかに港に集合せよ」


 旗艦「エミリア」の船上で待機していた。トーマス2世と領事が港に降りていく。

 帝国陸軍の第1中隊長はまだ来ていない。F-35Bから連絡が入りライブ映像が流れる。

「いまから馬で来るみたいですね」

「遅いな」

「まっ来るだけ良いとしましょう」「んっ2名みたいですね」

「その様だ」

「では、各艦の護衛隊を発艦させましょう」

「ようやくここまで来たか」「昨日は発艦も取りやめたからな」

「ええ、このまま交渉が進むと良いのですが」


「短期で決めたいものだな」

「まったくです」「余計な話ですが、ここからだと無線中継が日本山を経由して防衛省に入ります」

「そうか良かった。HF帯だけでは、音声だけだからやり取りに不安があったのだが、ならライブカメラ中継を日本に放送しよう」

「はいF-35Bの画像を中継します」


 管内放送が流れる。「SH-60Kは乗員揃い次第直ちに発艦せよ」交渉団を乗せたSH-60Kは飛行に入った。

「続いてF-35Bが発艦する、甲板要員は注意せよ。飛行甲板解放」とF-35Bが2機飛行に入る。


 F-35Bが4機にAH-1Sコブラが2機、港町ドルステインの上空を飛び回る。

 そこにSH-60Kが4機着陸して、警備隊を40名配置した。SH-60Kは飛び立ち交渉団を乗せたSH-60Kが降りる。


「やっと上陸できたか」と外務省担当官2名が安堵のため息を流す。

「ひなた」は外務省担当官の秘書役である。交渉中に「うそ」があればメモを担当官に渡す役目だ。

 警備隊40名が港を背に半円陣形で交渉団を迎える。

 やがて交渉団のSH-60Kが着陸し、警護役2名が先の40名と合流する。

 安全確認した後に交渉団をSH-60Kから降ろし、続いて警護役2名も続く。


 その時、郊外から馬が2頭向かってきた。

 帝国陸軍の2名らしい。

 交渉団は領事と艦隊司令のトーマス2世に挨拶をして、大陸語で書かれた名刺を渡した。

 領事とトーマス2世は目を丸くした。そんな物見た事ない。

 ついでに馬で来た2名を交渉団に紹介する。

「こちらは帝国陸軍第5師団第1中隊長と小隊長です、交渉の場に同行します、なにしろ陸軍の捕虜ですからね」とトーマス2世は少し皮肉に言った。

「初めまして」と中隊長と小隊長にも名刺を渡した。「ふん」と受け取る。


「では早速交渉を開始しましょう。では旗艦「エミリア」にどうぞ」とトーマス2世は紳士的にふるまう。


「はい護衛は4名同行します。よろしいですね」と担当官。強気だ。

「ええ、船上に我々の仲間もいますので、問題ないですよ」とトーマス2世。

 

 港にAH-1Sコブラ2機が警護隊40名を挟んで左右に着陸したが、エンジンは切らない。

 それぞれ道の方向を睨んでいる。住民は生きた心地がしない。


「いせ」からの警護役2名に続き交渉団が「エミリア」にかけられた階段を上る。


 船上に着くとトーマス2世は「ではこちらに」と艦隊司令室に案内した。

 護衛役が室内を見て確認し、交渉団に合図を送る。

 交渉団も室内に入り、進められた椅子に座った。

「飲み物でも如何ですか」と勧められたが断った。

「時間が惜しいので、早速交渉に入りましょう」担当官2名が並んで座り、「ひなた」は担当官の後ろに控えた。

「先に昨日の謝罪をもとめる」と中隊長。

 トーマス2世は慌てて、「謝罪とは何ですか、あなた方が勝手にした事でしょ」と立場の正当性を訴える。

 小隊長は続けて「昨日は我が兵士47名が死亡し6名が重い傷を負った」「おまえ達に責任はある」と言い放った。

 担当官は「責任? 何の責任です?」「交渉できない環境を作り出した事への謝罪が先でしょう」

 と強気で交渉する。


「その通りだ、私の預かっている街で戦闘など認めていないのだが」と領事が言う。

 中隊長は「我々は司令部の指示通りにしたまで、言われる覚えはない」と言う。

「いやそれはおかしい。交渉団を捕まえろとでも言われたのですか」とトーマス2世。


 中隊長と小隊長は言葉を濁す。


「やはりな」とトーマス2世。

「ここは交渉の場だから何を言っても良いが、責任を持った発言をしないと自分達に返ると知れ」と領事が後押しする。

「ひなた」がメモを渡す。「交渉団を一人残らず捕えて要塞都市ドミニク・フーラに連れてこい」と書かれていた。

「我々を捕らえますか、本気で思っていますか?」と担当官。

 中隊長と小隊長は狼狽えた。


「まあ良いとして、状況をお伝えしましょう」と担当官。

「我々が駐留しているチロルの森の山にあなた方の同胞、帝国陸軍第5師団第2中隊と第3中隊が押し寄せてきて、ほとんど全員を打ち負かしました」「相手の戦力を知らずに攻め込むとは帝国陸軍は無能者の集まりですか」と相手を挑発する。

 中隊長、小隊長は真っ赤に、領事とトーマス2世は真っ青になる。

 中隊長に向かい言う。「あなた方もそうだ、我々は交渉に来たのに力ずくで捕らえようなどとは、相手の戦力を計ることもなく実行できると考える愚かさは帝国陸軍の物ですかな」

 中隊長は立ち上がり拳を震わせる。担当官は続ける。「私たちは文官です。この場で死ぬことがあればこの街を、領事館に駐留地を全て灰にします」と脅す。

「どうぞお座りください」「なんなら試しますか? あなた方の兵士を灰にしますけど」と最大級の脅しをかける。


 中隊長は怒りに震えながら、取りあえず座る。

「早速話をしましょう。先ほど言いましたが、帝国陸軍第5師団第2中隊と第3中隊が押し寄せてきて、我々は排除しました。その際に捕虜を捕らえています。彼らの希望は帝国に戻る事です」

「捕虜以外の者の生死は判っていませんがほとんど死んだと思われます」

 聞いた中隊長と小隊長は同時に叫んだ。「うそだ、帝国兵士が負けるわけない」

「交渉しに来たのですが、あなた方は確認していますか? 生き残りの隊を」

「それは・・・確認できていない。師団も判れば連絡が入るはずだ」

「なぜ確認できないか考えましたか?」「一人として生きていなければ確認のしようがないと思いますが」


「ぇっ」小さな声だ。


「強く出るのは良いですが、話を聞いてから判断してくださいね」と担当官は今までと違い優しく言う。


「続けますね、我々の居留地に帝国陸軍第5師団第2中隊と第3中隊が押し寄せてきましたが、両隊合わせて20万人で間違いないですか?」

「間違いない」と小隊長は力なく言った。

「ほとんどの者は我々が集め火葬にしました。骨はチロルの森に埋めています。これが確認できない原因と思いますよ」

「では本題です。帰還を望む兵士2,412名をこの港町ドルステインにて返還したい。その為の交渉です」

「それだけしか残らないのか・・・」と小隊長。


 担当官は「我々の戦力では手加減が難しいのですよ」「なので差引19万7千人もの命が失われると言う痛ましい結果となりました」

 続けて「我々は勝利したので戦時補償を求めても良いのですが、帝国には補償するだけの戦費は無いと思いまして今回は返還のみ求めています」「いかがですか、帝都を灰にしますか?」と更に脅す。


「そっそんな事できる筈がない」と中隊長。

「先ほどから言っていますが、試しにあなた方の駐屯地を灰にしますか?」「死亡者数がふえるだけですよ」


「ううっ」


 トーマス2世は中隊長の姿を見て、少し溜飲が下がった。がしかし帝国陸軍は強いと思っていたのだがこんなにもあっさり負けてしまうとは想像できなかった。


「ひなた」からメモが来る。「成功みたいです」読んだ担当官は締める。

「本日はこちらの希望をお伝えに来たのです。明日の同刻に再度伺いますのでお返事をお願いします」


「あっ言い忘れていました。我々の日本国は言ってもお伽話しと思われると思いますが、この世界に転移してしまった国です。どうも次元を超えたと言うか。信じられないと思いますがアトラム王国とは無関係です」

 領事もトーマス2世も中隊長もビックリした。アトラム王国の衛星国と思っていたからだ。


「なので我々の艦隊やチロルの森の駐屯地に手出しすると次回から報復が待っています」

「お忘れなきように」と締めた。


 担当官は立ち上がる。脱力をした4名を残して退出する。廊下に控えていた警護4名と旗艦を降りる。

 港でアイドリングしていたAH-1Sコブラ2機が飛び立ち上空警戒に入る。


 やがてSH-60Kが飛んできて着陸し、担当官と「ひなた」4名の護衛を乗せて飛び立った。

 次々にSH-60Kが戻ってきて港に展開していた特別護衛隊を回収していく。


 上空を旋回していたF-35Bもヘリコプター隊を警護しながら「いせ」に戻る。


 SH-60Jが1機戻って来た。

「明日の交渉は13時にお迎えに上がります。港で待機をお願いします。なお武器類は持ち込み禁止でお願いします」と放送する。


 しばらく脱力していた領事とトーマス2世に帝国陸軍は気づいて打ち合わせに入った。

「そんな19万人も死んだなんてとても信じられん」と中隊長。

 トーマス2世は、「だからたった6艦に我々840隻も沈められたと言ったではないか。しかも第3艦隊まで大型艦を全て失ったのだぞ。言ったとおりだ」

「あまりにも圧倒的な力。確かにアトラム王国の比でなさそうだ」と領事。

「そう思います」とトーマス2世。


「ありえん」この後に及んでも小隊長は認めない、いや認められない。

「帝国陸軍が負けるなどと、あってはならない事だ」と中隊長。


「なら、あの者達を殺しますか、帝都に被害が及んでも良いのですか? よく考えてください」とトーマス2世。

「明日はあの者達の船に行くことになった。あの者達の実情が見える良い機会ではないか」と領事。

「しかも攻撃や捕えることは何時でもできる。今は相手の分析をする時期と思うが」とトーマス2世。


「どちらにしろ捕虜返還のみらしいから、我々が攻撃される要素はないでしょう。攻撃しなければ」「中隊長は野営に戻り師団や帝国陸軍と打ち合わせをお願いしますね」「変な事は考えないでください」と領事が釘をさす。


 急ぎ中隊長と小隊長は野営地に戻り、師団本部と連絡を取っていた。

「帝国陸軍第5師団第2中隊と第3中隊の生き残り兵士2,412名を返還したいとの事です」

「なに、兵士2,412名も捕虜になっていたのか。使節団は捕えられそうか」

「いや無理です。強力な魔道により捕えようと港に送った兵士の内死亡47名死亡重傷者6名です」「捕えようとすると損害が増えます」

「お前もアトラム王国に対し弱腰なのか?」

「いや参謀長違います。あ奴らはアトラム王国と無関係と言っています」

「そんな筈はない」

「いえ参謀長、以前東海岸でアトラム王国と戦いましたが、あんな物ではありません」

「空飛ぶ機械からの魔道に爆発魔法。近寄る事も出来ません」

「そんななのか。第2中隊と第3中隊が全滅するはずだな」


「ええ、我々も最初強気で攻めようとしましたが、あっという間に兵士が倒され、なすすべもなく無念です」無念など思ってはいないが言ってみた。

「明日はあいつ等の船での交渉になります」

「兵士を送り込めるか?」

「泳いでいくしかありませんが、見つかったら全滅します」

「なら明日は出方を待つか。それに返還だけなら直ぐ済むしな」


「第1中隊に命令だ、捕虜が返還され、奴らに侵略する意思が無ければ直ちに中隊毎捕虜を連れて要塞都市ドミニク・フーラにて合流しろ。捕虜の尋問を行う」

「かしこまりました」連絡は終わった。

「明日は重要だな」と中隊長、隣で聞いていた小隊長も頷く。

ありがとうございました。

次回は「いせ」艦上にて最終交渉の様です。

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