第43話 フローダ半島の交渉2
第43話を投稿します。
今時プロペラ爆撃機ですか・・面白そうですね。
高野防衛大臣執務室に高野と立川統合幕僚長が打ち合わせをしていた。
「大臣、昨日ドーザ大陸交渉艦隊が予定地の港町ドルステイン沖に到着し、本日昼頃に交渉を開始します」
「やっとここまできたか、長かった気がする」
「ええ、やっと捕虜返還交渉が始まります」
「でっ結局返還対象の捕虜は何人になるのかね」
「はい、本人たちの希望を聞き、2,412名で変わらずです」
「交渉がうまく行ったとして手段はどうする」
「はい、「ましゅう」大型補給艦で一度に千名運べますが、増床して雑魚寝させれば全員行けます」
「危険はないものかね」
「それについてはドーザ大陸交渉艦隊を護衛に付けます」
「ではそれで行こう」
「東千歳の90名と富士演習場の2,322名を新潟港から「大島」経由で送り出します。「大島」にてドーザ大陸交渉艦隊と合流させます」
「それから最新の話が2点あります」
「まず1点は、日本近海の海底地形再測定が完了しました。潜水艦隊が日本EEZ内は安全に航行できます」「海洋観測艦3艦を次は南西諸島から「大南島」経由して大陸南部に行かせたいと思います。護衛付きで」
「これで南西諸島から南でも潜水艦隊は活動できます。基本外洋も大丈夫なのですが安全を図るに越した事はないと思いして」
「そうだな、未知の「地球」なのだから安全の担保は必要と思う」
「そうそう少し話は変わるが最近海中生物や飛行生物は現れているのかね」
「はい最後にお話ししようと思いましたが、あれ以来現れていません」
「だとしたら我々としては不幸な遭遇だったのか」
「そうかもしれません」「ただハイエルフや獣人の話では、東の大海では活動しているようです」
「そのなんだ、スルホン帝国とアトラム王国の海戦区域だな。まさか・・・餌が豊富とかではないよな」
「餌が豊富なんだと思います」
「痛ましい事だ」
「ドラゴンも捕虜や難民の話を総合すると、日本の北にある北大陸は氷に閉ざされた大陸らしいのですが、そこにブルードラゴンの生息域が、また大陸の北、日本から北西にある島にてドラゴンが生れるとか言い伝えがあります」
「北の大地とドラゴンの島か、どちらも近づきたくない場所だな」
「ええ資源等確認されない限り捨てておきましょう」
「人命が一番だな」
「そうですね」
「そう言えば、日本に協力すると言っていた帝国兵士はその後どうなった?」
「はい、最初の50名は訓練課程も終わり使えるようになりました」
「後の500名はどうだ」
「はい、正確には510名ですが、現在教練の真っ最中です。そして元小隊長は防衛大学にインターンとして入学し最新の戦術や戦略を学んでいる最中です」
「そうか大丈夫なのか?」
「多少不安はありますが、帝都潜入要員として訓練を追加しています」
「なるほど」「使い時を見極めるのが難しそうだな」
「その点はお任せください」「全員冒険者として潜入させる計画を立案中です」
「その後アトラム王国についての情報はあるか?」
「偵察衛星1基に地球を回らせていますのでまだ詳細は難しいです」
「大雑把に我々の東2万キロ程度にある大地としか判っていません、またドーザ大陸の西から5千キロ程先とまでは判っています。なにしろドーザ大陸だけで日本も含めて幅は4千5百キロもありますから。幅だけならアメリカ合衆国と同等位です。ドーザ大陸の方が少し大きいですが」「アトラム王国はいくつかの島と言うか大陸と言うかに分かれていまして、大きな大陸が2つ、1つが幅3選キロ程で間には島と大海があります」
「「地球」は円周が約4万キロだったな、同じなのか?」
「はい元の「地球」とほぼ同等の大きさです」
「それにしては半分の2万キロも海なのか」
「ええ、残りの2万キロに大陸が3つと比較域大きな島々があります」
「差し詰め大西洋を挟んだヨーロッパとアメリカの様な姿です。少し海が広いですが」
「とすると日本はヨーロッパにくっ付いているのだな」
「ええ、しかもアメリカは1つの大陸ではなく2つで間にオーストラリアがあります」
「よくわからなくなってきた」
「偵察にはしばらくかかります、まだ1基ですが偵察衛星を合計5基打ち上げられれば最低の地形情報は入ります」「言い忘れましたが南の極には氷だけの様です」
「北極の大地と氷の南極か、地球の反対だな」
「ええその様です」
「不思議な星だ」
「で最後の2点目なのですが、装備庁で人の波に対抗する兵器の開発が進んでいます」
「殺戮兵器か、印象悪いな」
「ですが日本本土に向かわれると、どれだけの被害になるか予想できません」
「一般市民は剣や槍でも充分に凶器ですから」
「そうだな。市民の生命と財産を守る為の自衛隊だから、言ってもいられないか」
「簡単な面制圧兵器として、焼夷弾とフレシェット弾を開発致しました」
「焼夷弾は判るが、フレシェット弾とはなにか?」
「はい、子爆弾を積んだ爆弾やミサイルは一般民に損害がでる可能性があり、「クラスター弾等の製造の禁止及び所持の規制等に関する法律」との法律が日本では成立しているのはご存じですよね」
「うむ」
「実はフレシェット弾は砲弾内に無数の金属矢を仕込んだもので、クラスター弾には当たりません。第二次世界大戦前から作られ、大戦にて使用されています」
「要は散弾銃の散弾に鉛粒の代わりに釘が入っていると思ってください」
「解かりやすいな」
「これを高度100メートルや300メートルで爆発させて、金属矢を地上に降らせるものです」
「想像しただけで痛いな」
「ですが、1発で500人規模の矢雨を降らせると同等の効果があります」
「でそれがどうした」
「ええ、航空機搭載型の開発を終了しました。地上りゅう弾砲弾頭は遅れていますが」
「コストも安いので使えると思います。予算承認いただければ直ぐにでも量産できます」
「どの程度期間はかかるものだね」
「1ヶ月で100発程は出来ます」
「随分早いな」
「構造が簡単だからです。町工場レベルでできます」
「しかも爆弾その物は従来品の設計図で済みますので、炸薬の代わりに金属矢をいれたキャニスタを内蔵します」「焼夷弾も同様です」
「焼夷弾は2つモードがあって、1つは高度50メートルで散布しながら炎上するモード、もう一つは、高度150メートルで散布しながら接地しだい信管が爆発して燃えるモードとなります」「気化爆弾に近い性能があります」
「気化爆弾は禁止対象ではなかったかね」
「焼夷弾自体が無差別使用禁止ですが、新型焼夷弾についても同様と判断しています。ただし大量殺戮兵器としてはグレーですが」
「うむ。世論が難しいな」
「使い時を判断しましょう」
「それと朗報なのですが、戦闘機を購入できない現在、代替え案として、プロペラ式の軽爆撃機構想があります。制空権が我々にある以上問題ないと思います」
「これの最大のメリットは基地を作らなくても、野原や砂利道から飛び立てることです。距離も千メートル程度あれば離着陸できます」「しかも全て国産でできますし、性能は申し分ないです」
「そんな物ができるのか?」
「ええ、アメリカでも2020年から導入しています。A-29と言ったか、エンブラエルと言うブラジルの航空機会社です。1機20億くらいですね。日本でも100機以上量産できれば同等の価格になると思われます」
「しかも小型機の操縦資格で済みます。習熟に50時間、対地攻撃に30時間で物になります」
「500ポンド爆弾や焼夷弾、フレシェット弾などを3発に空対空ミサイルを2発積み込み飛び立てます」
「いかがですか、F-35A 1機分の価格で5機揃えられます。操縦資格も短期間で習得できますし」
「逆に事業用小型機の免許があれば機種変更講習と対地攻撃だけ習えば良いという事になります」
「そうだな戦闘機パイロットは時間と費用が掛かるから攻撃力強化は望めるな」
「よし、今言った物は総理と相談して、付けてくれた特別予算から捻出しよう」
「有難うございます。早速配備計画を策定します」
「よろしく頼む」
恐ろしい話は密室で行われるのだった。
ドーザ大陸交渉艦隊の話に戻そう。
「いせ」艦内放送及び僚艦への無線の両方で放送がされた。
「特別艦隊司令の遠山である、本日ヒトサンマルマル時に交渉団は港町ドルステインに上陸する」
「何があるか判らないので、各員十分に警戒を怠らない様に願う。なお、当初手順として内火艇にて上陸を予定していたが、港付近には帝国兵士が多数おり、危険を感じるので急遽SH-60Kを5機とAH-1Sコブラ2機により警備隊を送り込みその後SH-60Kにて交渉団が行くものとする」「各要員は待機せよ。以上だ」
各護衛隊に連絡してSH-60Kを乗せている護衛艦には上陸警備隊の組織とSH-60Kの用意を頼んだ。
第5師団第1中隊長は昨日師団本部と連絡して、「使節団を捕らえよ」と指令を受けていた。
第1中隊長は残した5万人の兵士に港で上陸時に捕まえろと指令を出した。
旗艦「エミリア」のトーマス2世は、昨日から帝国兵士が野営地に戻らない事に不安を感じていた。
夜に要塞都市ドミニク・フーラに早馬で使いを出して、昼までに書簡を受け取って帰ってきた。
連絡だけなら旗艦「エミリア」のエルフからでもできるのだ。
「ソミリア伯爵の書簡があれば、馬鹿な帝国兵士も手出しできないだろう」とトーマス2世。
だが予想に反して帝国兵が港にあふれてきた。
監視していた遠山海将補は「まずいな、兵士が増えている様に見える」
「ええ、その様ですね」と椎名主席幕僚。
「多分ですが、使節団を捕まえるつもりでしょう。野蛮そうですから」
「それはいかんな、時間は1時間程あるな」
「では仕方ない、椎名君のBプランを発動するとするか」
「司令、了解しました」
椎名主席参謀は各艦に連絡する。「出立は60分待てと」
「艦長、急いで例のSH-60Jを用意させてくれ」「了解」
「艦長、F-35Bを対地装備で上空待機をお願いする」
「スカイバードにて私が直接交渉する。一時航空隊の指揮権を預けてくれ」「了解です」
椎名主席参謀はフライト甲板に降り、昨日連絡に使ったSH-60Jスカイバードに乗り込んだ。
無線で連絡する「行ってまいります」スカイバードは飛び立った。
F-35Bも2機威嚇する様に港上空を旋回する。
やがてSH-60Jスカイバードが港上空に来た。
椎名が喋る。「こちらは日本国海上自衛隊である。交渉団到着の時間となったが帝国兵士がこれだけいるのは何故だ、答えよ」兵士達は見合って誰も答えない。
「では直ちに帝国兵は港から駐留地に戻りなさい。戻らない場合は敵対意思があるものとして対処を開始する」
旗艦「エミリア」船上ではトーマス2世が叫ぶ。「兵士よ戻りなさい」と。
さっきから探しているのだが、第1中隊長が見当たらない。いればソミリア伯爵の書簡を見せるのだが・・・
兵士は上司からの直接命令が無い限り戻らない。
F-35BがSH-60Jスカイバードの横にホバリングモードで並んだ。再度警告する。
「直ちに戻りなさい、再度警告する」カウントが始まる「5、4、3、2・・・1」
F-35Bの25mm機関砲ポッドが吠える。F-35Bは機体にGAU-22/A25mm機関砲を積むスペースが取れない為にポッドでハードポイントに25mm機関砲を積むことになる。
初期のF-104やF-4などの様に格闘戦は不要との理由(ベトナム戦争時)から機関砲を付けずに機体製造されたり、機関砲の性能が不十分で取り外して運用されたりした当時とは違う。
F-35シリーズの最新ヘルメットはバイザーにイルミネーターと呼ばれる画像投影装置により、機体後部もカメラ映像やレーダー表示が出来て、最新AIM-9Xサイドワインダーなどを真横や後ろにロックオンして撃墜する能力がある。
帝国兵士が何人か、多分50名位だと思うが死んだ。
F-35Bは再度上空に上がり、逃げる兵士達を監視していた、突然弓矢が飛んできた。方向を確認すると、さらに上昇してSH-60Jに警告を出す。SH-60Jも後退して上昇した。
F-35Bは高度5千mまで後退上昇すると、GBU-12ペイブウェイを1発、計2発を弓矢隊に向けて放った。
大きな爆発が起きた。距離はあるがまるで1発の様に同時に着弾した。弓矢隊は誰も立つものは居なくなった。
この時になって慌てて領事が息を切らせて飛んできた。
「なにをしている。港での戦闘行為を認めた覚えはない」兵士達に言い。帰るように促した。
領事が「本日は大変申し訳ない。明日の昼に改めて交渉したい」「よろしいか」とSH-60Jスカイバードに向かって叫んだ。
椎名主席参謀は「了解した」「明日交渉できない場合はこの街を破壊する」とだけ言い戻っていった。
破壊する意思は無い、ただの脅しだ。
ありがとうございました。
帝国相手では交渉も素直に始まりませんね。