第41話 ドーザ大陸東海海戦その3
第41話を投稿します。前日の地図影響もあって短めです。
誤字脱字報告ありがとうございます。
ただ、大三角州南の川幅は20Km深さ70cmで間違いないです。自然摂理ではありえない事ですがファンタジー世界ならではですね。
統合幕僚監部立川統合幕僚長は会議中であった。
「国境検問所での戦闘は2回にも及んだが、兵器や武器を考えると今回の攻防戦が限界だな」
「ええ、どうしても帝国軍の言う「人の波」に対抗するには難しすぎます。特に2回の戦闘は1個中隊規模で10万人が2回も攻めてくるとか信じられない人数です」
「1個師団規模で100万人とか、まさに「人の波」です。現在の陸上自衛隊では効果的な対応策はありません」「禁止されていますがクラスター爆弾や焼夷弾などでしょうか」
「だが無理だろう」
「ええクラスター弾は法制度化されていますから無理とは思います」「砲弾はもちろんですが、多連装ロケットシステム(MLRS)も現在はM31単弾頭型GPS誘導ロケット弾を使用していますから、クラスター弾は昔に廃棄していますし、研究開発用しか残されていません」「イギリスやドイツでは不活性爆弾や自爆機能で対応していますが、日本では一定以上の子爆弾を持つことで法律違反となります」
「焼夷弾はどうなんだ」「これは国際条約にて民間人への無差別使用は禁止されています」
「在日米軍は保有しているらしいですが現在は不明です」「自衛隊は保有しておりません」
「ほかに有効な手段としてはフレシェット弾、つまり金属の矢を持った砲弾等が考えられます」
「コブラやアパッチのハイドラ70用に少し保有していますが本格戦闘には無理です」
「砲弾としては過去に60式自走無反動砲用はありましたが、現在は廃棄されて存在していません」
「焼夷弾、フレシェット弾の開発はできるのか」「可能です」
「構造自体は第2次世界大戦にも使用された程ですから簡単です」
「防衛装備庁に研究開発をお願いしようか」
「対象を明確にすると時間かからず開発できると思います」
「そうか、なら有効な手段として99式自走155ミリりゅう弾砲弾と航空機用の投下型爆弾はどうかな」
「妥当ではないでしょうか」
会議室では人の波に対抗する、大量殺戮兵器の相談が行われていた。
一方、「大南島」海戦の現場は海上自衛隊の一方的な展開で進んでいた。
P-3Cは「大島」に戻り再兵装していた。往復2時間半はかかる。
第2護衛隊及び第5護衛隊は対艦アウトレンジ攻撃を継続しながら帝国艦隊の前方に進む。
艦砲と短魚雷を起動して敵艦接近に対応する。
SH-60Kは12式短魚雷を2本抱えて飛び立つ。SH-60JシーホークもMk46魚雷を抱えて飛び立つ。
陸上自衛隊の飛行隊も戦闘参加を依頼されたがAH-1SコブラはSH-60Jより航続距離が短く、今回はTOWの装備が無い為に今回は「大南島」の警護についてもらうよう説得した。
第8護衛隊は「大南島」を南周りで帝国艦隊の右側面から対艦アウトレンジ攻撃を継続しつつ、こちらに向かってくる艦艇に対しては艦砲や短魚雷で対応する。小型の150m級に対しては効果があるが、200m級砲艦には効果的な攻撃ができないでいた。艦砲にて喫水域を狙い何発かで誘爆と浸水により沈んだ。鉄艦は手ごわいと感じた一瞬であった。
帝国艦隊は救助もしないで逃げに入っており、護衛艦隊も対艦ミサイルの在庫が少なくなってきた。
戦術情報処理装置からの情報では368隻の沈没を確認。大破して動けなくなった艦艇は200隻を確認し、約28%の艦艇を排除した。
帝国艦隊は殆どが対艦ミサイル1発を受けると誘爆して沈むか大破するかであった。
防水区画と言う概念が無く、水密扉さえ無い様だ。
「艦隊司令、そろそろ納め時かと思います」と椎名主席参謀提言をする。
「そうか」と遠山海将補が答える。
「各艦の兵器在庫はいか程か」「ほとんどの対艦ミサイルは消耗しました、現在は少しの砲弾でしょうか」「では予定通りは進めないな、補給を待つことにするか」「それが良いと思います」
椎名主席参謀は統合幕僚監部と海上幕僚監部に戦況と補給要請を連絡した。
C-2輸送機にて「大島」に物資を補給しようとしたが、補給艦「ましゅう」は戻ってしまっており輸送手段がない為、日本より「ましゅう」と「おうみ」に「大南島」まで届けて貰う事が決まった。
「ましゅう」と「おうみ」は燃料、食料、武器兵器を満載して「大南島」まで佐世保から向かう事となった。
この2艦は南西諸島の補給支援用に佐世保港に転進していたのだった。
なお、補給艦「とわだ」型の3艦は大三角洲と北海道や酒田、新潟を往復して人や荷物を届けていた。
しばらく補給の為に「大南島」に停泊する事になったドーザ大陸交渉艦隊は現地の人間や獣人から情報を得るべく上陸をしていた。大きな島ではないが4集落もあり、比較的文明的な生活をしている彼らからの情報は先のエルフや難民の獣人や帝国兵士の話を補完するものであった。
ドーザ大陸交渉艦隊の停泊地に近い漁村の村長が歓迎の祭りを4村合同で開いてくれた。
帝国が嫌で逃げてきた人や獣族(ねこ族)にとって帝国艦隊を打ち負かした日本の自衛隊は神様の様な存在であった。まるでロシアバルチック艦隊を撃退した当時の日本の様な歓迎を受けていた。大陸側の村では遠くに戦闘の様子が見えていた様だ。
3日程停泊していたのだが、その間もEOP-1による先行偵察は定期的に実施しており、帝国第3艦隊の生き残りは港町ドルステインを経由してどこかに行ってしまったらしい。
戦争当時、地方艦隊は白旗をあげて速度3ノット程度で漂っていたので、第8護衛隊が旗艦らしき船に近づき連絡をした。「我々は日本海上自衛隊である。前回戦った者達であると確認した。直ちに救難活動を行い、のちに本拠地に戻る事を提案する」と言われてもDDG-172「しまかぜ」や他の艦2艦も艦砲を木造艦隊に向けて言っているのだから、脅迫以外の何物でもない。
旗艦「エミリア」のトーマス2世司令は「やれやれまた救助か」と文句を言いながら乗組員を救助していった。途中、帝国第3艦隊旗艦「セントナムラム」のドミニク男爵らしき人物も見かけたが、気づかないふりをして救助しなかった。これがトーマス2世の仕返しなのか……
ドーザ大陸交渉艦隊の海上自衛隊隊員は現地の人から不思議な話を聞いた。
「島の中央にそびえる山に古い遺跡があり、時々遺跡が光っていると噂があります」と聞いた。
停泊は補給船から補給を受けるまでなので、探検するつもりも予定もなかったが何か頭に残った話であった。
やがて佐世保から大型補給艦が到着して各艦に補給を開始した。外海ではあるからうねりや波が通常は大きい物なのだが、「大南島」近海は穏やかでまるで湾内かと思うくらい静かだった。
「いせ」より大きな船体を持つ「ましゅう」と「おうみ」に各艦が並ぶと小型護衛艦かと見間違えてしまう。それでも護衛艦は150m前後の全長を持つのだが。特筆すべきは佐世保から第13護衛隊の3艦も合流した事だ。艦隊は10艦に3艦が合流して13艦となった。合流艦はDD-132「あさゆき」DD-157「さわぎり」DE-230「じんつう」の一回り小さな船体を持つ1990年代就役の地方艦隊だ。
「大南島」の状況については、防衛省に報告済みであった。
日本でも「大南島」の領地化の話は出ていない。
それより気になるのは「大南島」の東南1,600kmにある大きな2つの島である。今は確かめる時ではない。
補給が完了したドーザ大陸交渉艦隊は、予定通り港町ドルステインに向けて発進するのであった。
特に港街周辺に展開する帝国陸軍第5師団第1中隊が気になる。
交渉団は無事で済むのか不安である。
ありがとうございました。
次回は港街でいよいよ交渉ですね。
うまく捕虜返還できると良いですね。