表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦闘国家日本 (自衛隊かく戦えり)  作者: ケイ
第1章 日本転移と自衛隊激闘編
31/251

第30話 油田と鉱山

第30話を投稿します。

なにやらいろいろ動き出したようです。

 突然、『ストーンゴーレム』の村広場が爆発した。しかも8回もハイデルバーグと参謀と小隊長2人はたまたま『ストーンゴーレム』の住処跡で伝令がくるのを待っていた。

 轟音と共に、ものすごい爆風が吹き荒れ、5人は横穴の奥に飛ばされた。耳も遠くで金を鳴らしている様に聞こえて、近くの声も聞こえない。

 息も苦しく、だが息をすると、ものすごい匂いの空気が襲ってくる。息ができない。

 ハイデルバーグはこの世の終わりかと思った。少しでも逃れるために横穴の奥まで這って進み、一番奥について膝を抱えて蹲った。何も考えられない。何も考えられない。ただ震えていた。


 爆発が収まったらあれだけいた兵士がいない。


 残るは手足や胴体。そして帝国兵お揃いの武具が散乱している。


 生き残った参謀2人と元小隊長2人。顔を見合わせると一目散に山を下って行った。

 途中で糧食隊と思われる荷車もあったが、気にせず地獄から逃げたい一心で下り坂を駆けだしていた。

 途中何度も転び、服はボロボロになっていたが、気にしている場合ではない。

 参謀も小隊長も走っている。歴戦の勇士だったはずだが、逃げ出している。


 チロルの森に着いた時には肩で息をしながら、口から「心の蔵」が出ない事を祈った。

 ハイデルバーグは居城になんとか戻った。参謀と小隊長も付いてきた。

「領主殿エルフをお借りしたい。師団に連絡せねば」と言っていた。


 エルフを探した。執事が「兵が連れて行った」と報告した。


 そうだ、中隊長に貸したのだった。エルフはもういない。一人しか飼っていなかったのだ。

 参謀と小隊長には馬を貸して、「要塞都市ドミニク・フーラに行き報告します」と言っていた。


 ハイデルバーグはもうどうでもよかった。彼らが去った後、ハイデルバーグは寝室にこもり震えていた。

 食事もできない、寝ることもできない。ただ震えて、ベッドの上で膝を抱えていた。

「領主なんかやりたくない」と独り言を言い、そしてまた震えていた。

 あの『ストーンゴーレム』の村広場で起きた光景が忘れられない。

 祖父が元気な時、西の海岸でアトラム王国上陸を阻止する為に戦闘に参加したが、領主になってからは戦闘からは遠ざかっていた。

 戦闘している時は高揚感で、アトラム王国の兵士を何人も殺した。罪悪感も背徳感もなかった。

 なのに、あの一方的な爆発は心に焼き付いて離れない。


 思い出すと震える。


 もうあんな戦場はいやだ、もういやだ。ハイデルバーグは人前に姿を現さなくなった。


 ハイデルバーグから馬を借りた参謀と小隊長は休憩を入れて馬が潰れない様に走らせ要塞都市ドミニク・フーラに着いた。すでに4日が経過していた。

 キマイ将軍以下師団付き参謀に顛末を報告した。


「まずいな、本当にアトラム王国が上陸してきたか」とキマイ将軍。

「日本と言う聞いた事が無い国が来たらしいですな。アトラムの衛星国でしょう」

「やる事は簡単です。潰すのみ」「帝国の背後から忍び寄る不心得者は死んでもらいましょう」


 キマイ将軍「南の半島からもアトラム王国がくると仮定して、出せる兵力はいかほどだ」

 参謀が「中隊1隊が押されたのですから、2隊は欲しいところであります」

 別の参謀が「山頂めがけて大砲を撃ったらしいから、こちらもそれなりの準備が必要でしょう」


「では、第3中隊に第5師団支援中隊(砲撃部隊)の半分と第5攻城中隊(攻城兵器部隊)の半分を出しましょう」「心配はいりません。第5師団支援中隊(砲撃部隊)には帝国の最新20センチ砲が配備されました」「有効射程は8キロとなります」「問題は、進行速度が極端に遅い事です」そう、この最新砲は重く砲身も長いのだ、馬で牽引しても1時間に3キロも進めばよい方である。

 チロルの森まで、要塞都市ドミニク・フーラから約5百km。その後上り坂を登らなければならない。

 とてつもなく時間がかかる。でもこの最新砲50門を抜きに考えられない。それでも半分の数なのだが。


 もし山頂に砦が作られていた時の為に第5攻城中隊(攻城兵器部隊)の半分も連れて行こうとしていた。

 木製の攻城兵器は現地で組み立てできるが、麓で組み立てて山を登らなければならない。

 またこの部隊には5門の口径30cm臼砲きゅうほうが配備されていた。砲長は短く射程も短いが、迫撃砲と同じように曲線を描いて攻撃をする。20cm砲も30cm臼砲も製鉄技術が未熟で、火薬に負けないように砲身が厚く重い。30cm臼砲は直径70cm長さ約2mの鉄の塊に30cmの穴が開いている。底に火薬を詰めるように内部が太くなっており火薬を先に入れ、横から導火線がわりの火薬線を差し込み火をつける。重さは約3トン以上ありそうだ。これを運ぶとなると1時間に2km進めれば早い方である。

 歩兵だけ先行するわけにもいかないので、全ての兵器を第3中隊と支援中隊、攻城中隊が分担して運ばなければならない。かくして大移動は始まった。砲の数に対して支援隊の方が大人数である。全ての弾と弾薬を運ばなければならないからだ。特に30cm臼砲の弾は1発300kgもある、1発分の火薬も質の悪い黒色火薬であるから30kg以上もある。2発撃つのに樽詰め火薬を1つ使う計算となる。

 現代の迫撃砲に使用する成形発射薬などは夢のまた夢である。


 山頂の広場に来たエルフと獣人は第2師団司令部で面倒を見ていた。獣人やエルフ用に、簡易宿泊所を作り家族はプレハブ小屋だ。隊員がポケット翻訳機を駆使して、着替えや日用品を用意していく。

 防衛省は外務省と相談の上、やはり難民扱いにするのが一番早いとの事で、難民村を作った。

 獣人に簡単な日本語を覚えてもらい。港湾施設で働いてもらう。エルフは港湾用の食堂や事務を手伝ってもらう事にした。

 獣人は日本人の2倍の荷物をいとも簡単に運んだ、港湾勤務の自衛隊からも称賛されていた。

 エルフも食堂で簡単な日本語でメニューを給仕していた。大人気だった。陸上自衛隊が設置した食堂で、隊員は無料であるから、エルフ会いたさで休憩となると大勢が押し掛けた。

 陸上自衛隊もエルフが好きなのである。ハイエルフを保護した第2偵察隊の第3小隊長に聞いてみたいものである。

 いずれ港湾施設も街も民間人で溢れるはずなので、有り難い労働力だった。

 初めての給料がでた。獣人もエルフもみんな大喜びであった。獣人はおやつを中心に買いあさった。

 食事は自衛隊が支給しているが食べ放題になっていた。それでも足りないらしい。

 エルフはおしゃれ用品とおやつだった。

 なぜか、エルフには「エビ味の軽いせんべい」が大好評であった。ほらあなたも好きでしょう。

 子供のエルフには自衛官が交代でいろいろ教えていた。日本語だったり英語だったり、日本の国や自衛隊について教えていた。もう少し日本語がうまくなったら、北海道の学校に入れようと計画していた。

 一方自衛隊はエルフや獣人から帝国について、特に魔道通信や魔法について教えてもらった。帝国で流通している硬貨も提出してもらった。もちろん奴隷紋や呪いのある者は全てハイエルフ族長に解除してもらった。

 これらがのちのち生きてくる事となる。


 第5旅団の受け持ちである油田や鉱山では作業が難航していた。

 経験のある者が少なく、第2師団第2施設大隊に比べ第5施設隊は小規模である。

 大隊に対して1個中隊程度の規模であった。

 公開入札で決まった業者と打ち合わせを行い。資材や宿泊地の広場を整備していく。

 第7施設大隊から借りた坑道掘削装置を駆使して、鉱山に坑道を堀りサンプル採集していく。

 また民間の企業が持ち込んだ機材設置を手伝い多忙を極める。

 大きな音を立てているので、『いのししもどき』も他の「もどき」もあまり来なくなった。

 唯一パンダカラーの『カピバラもどき』が餌目当てで工事現場に出入りしている。

 誰かが言った「ここの動物、旭山動物園に持っていったら大人気だろうに」

「いや全国の動物園から欲しいと要望がくるな」「自衛隊の仕事ではないけどね」

 のちに民間業者が罠を複数設置して、旭山動物園で「ドーザ大森林の動物たち」と言うフェアーを開き、旭山動物園の過去最高入場者数を軽く超えてしまうのであった。

 他国からの動物輸入はもうできそうにない。そこで政府の許可を得て「生態観察」名目で、捕らえた動物を展示したのだった。どこかの水族館でも「新地球の生き物」と言う展示を行っていた。

 東京の国立博物館では、先の『ドラゴン』や『ブルードラゴン』に『うみへびもどきの頭』を剥製展示、これは博物館から上野駅まで入場者列が伸び、東京文化会館は休憩所となり国立科学博物館も臨時閉館、藝大生は上野や鶯谷から大学に行けずに日暮里駅から歩いた。見学の列は最長5時間待ちになった。ドラゴンは相当部分修正している。なにしろ穴だらけだったからである。


 一方、第5旅団に動きがあった。

 石炭鉱を試掘していたのだが、途中から真っ黒で透明感のある鉱石がでてきた。

 大きさ60cm級もある。「なんだこれ」第5施設隊長 二等陸佐 殿崎は旅団司令本部に連絡した。

 この頃には大三角州から、最初は資材や機材を搬入する為に、後にパイプラインを設置するための、大森林を縦断する道ができていた。もちろんまだ根がいたるところに出ている。


 そこをバイクを飛ばし、エルフの里からマリアが飛んできた。


 鉱石を見るなり、「あっ魔法石」隊長が聞く「これは魔晶石とは違うのですか?」

「魔晶石は結構とれます。いろいろな魔法を強化してくれるものです。例えば「ファイヤー」とかに使うと、1回で1つ使いますが、炎が3倍くらいになり、魔力が抑えられます」「魔力と魔素は比例します」

「強い魔力には沢山の魔素が必要ですが、魔晶石があれば魔力を増幅できます」

「それは魔道通信もですか」「ええ1街間だったのが2倍から3倍になります」「でも1回で1つ使うから非常事態以外は使わないと思いますよ」


「でこの魔法石は何です」「簡単に言うとゴーレムの元です」「この魔法石をいろいろな岩に押し付けると溶けるように中に入って、1年経つとゴーレムが生れます」「押し付ける岩によって種類が変わります」「一番多いのは、よくある灰色の岩で「ストーンゴーレム」が「黒い硬い岩でアイアンゴーレム」が、溶岩に入れると「溶岩ゴーレム」となります」「この中では溶岩ゴーレムが一番厄介ですね」平然と言う。

「「溶岩ゴーレム」はほぼ無敵です。攻撃されても元に戻るし、溶岩は投げるし」「はははは」マリアは何か見たのか笑いだした。「でも「溶岩ゴーレム」はすごくおバカなので、攻撃するよりだます方が楽よ」

 うわーこのハイエルフ・・・


「で魔法石の他の使い方はありますか」

「魔法石は魔素が固まった物ですよ。何にでも使えます」

「例えば永遠に水が出る道具とか」「便利よ」

「沢山取れれば武器にも使うのだろうけど、多くは取れないから英雄とかの剣に埋め込むくらいかしら」

「そうすると剣で相手の体がバターの様に切れますよ」


「そうそう、この「ジェットモグラ」と言いましたよね、これ先に付けると、これで鉄も溶かしながら穴があけられますよ」「鉱石なんか簡単ですよ」


「とにかく厳重に管理します」殿崎二等陸佐は信じていないようだった。


「あら信じてないですか、ちょっと失礼」マリアは小さな黒光りする石をつまむと何かをつぶやき、工事用の重機用鋼板床材にポトリと落とした。途端に赤く溶けた。直径1cm以下の石で直径30cmの穴が開いた。

 大きな脅威である。

「私たちハイエルフは思念以外の魔法は使えないけど、この魔法石があると魔法らしき事が出来るのよ」「怒らせない方がいいわよ」誰も思念に勝てるものなどいないのだ。

「はい、肝に銘じます」殿崎二等陸佐は逆らうまいと思った。だが一方でこんな報告信じてもらえるか不安であった。一応旅団本部に連絡しておく。


 石油の掘削は、政府入札で、石油会社と国際石油開発会社のジョイントベンチャー(JV)となった。

 計画は、油田と離れた位置に発電施設を建設し、原油発電を行う。有害な硫黄成分をほとんど含んでいないので、そのまま発電に使え、なおかつ排気も5段12層フィルターにより綺麗である。

 掘削用の水路もパイプで近くの山から取り込んだ。使用後は温度60度のお湯になるので、4km離れた場所に従業員用の温泉施設と温水プールと露天風呂をついでに作った。これは「ドーザ大森林の湯」として大森林の中に作られた。もち論周囲は5m程かさ上げして、頑丈な柵とサファリパークの様な2重3重の門により守られている。こうして油田の採掘は始まった。引いてきた水によってドリルを常に冷やし発火しないようにゆっくり掘り進めていく。資源探査によって、日本で使う原油の500年分が埋蔵されている。手つかずの資源だ。

 原油周囲に5本の掘削装置が稼働している。圧力の高い地中油層まで掘る計画だ。

 1基が原油を噴いた。成功だ。周りの作業員は服や顔を真っ黒にして喜んだ、手伝っていた陸上自衛隊員も大喜びである。これで精製装置が出来れば軽油やガソリンが使い放題である。作戦行動の範囲も大きく拡大する。作戦の内容もいろいろな手段が取れるのだ。

 日本に明るいニュースが流れた。原油枯渇に悩まなくてすむ。経済界特に産業界は大騒ぎとなった。

 この時、日本の原油枯渇まで3ヶ月分を切っていた。(実質である)

 1ヶ月後には、大森林を縦断するパイプライン(動物に壊されないよう地中2mに埋設している)を通じて大三洲に作られた原油タンクにつめ始め、小型タンカーで日本の原油精製工場に運ばれた。巨大タンカーによる搬送はもうすぐであった。


 この頃になると「みちびき」は2基追加で打ち上げられ、計5基になった。

 ドーザ大森林の山岳4千m級にGPS補完アンテナを5基設置した。

 GPSは衛星でなくとも設置できるのであった。正確な時間と位置情報の信号があれば、他との位置情報と時間によって、衛星が足りない分の補完は可能である。

「みちびき」を打ち上げる前、昔の日本は、各地の岬に船舶用のGPS補完アンテナが多数存在していた。


 GPS補完アンテナや衛星からはL1L2の周波数でコードを発信している。一般的にはL1が民間用、L2が軍事用である。軍事用周波数のコードには解析不能のPコードが使われており、受信したとしても意味をなさないのであった。

 この補完アンテナのお陰で、大森林であればGPSが使えるようになり、全ての施設をGPS座標に置き換える作業が発生した。海上も衛星からの信号により日本の約1千km範囲であればGPS信号を受信できる事になった。


 政府は最終的な打ち上げ衛星数を決めてはいなかったが、大陸を通行する事があれば、その必要性は高まると感じていた。

ありがとうございました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ