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戦闘国家日本 (自衛隊かく戦えり)  作者: ケイ
第1章 日本転移と自衛隊激闘編
26/251

第25話 宗谷特別自治区の戦い3

第25話を投稿いたします。

ご評価ブックマークありがとうございました。



今回は大衝突の前哨戦となります。


 第2歩兵中隊長のストロスキー男爵は、頭の中で攻撃プランを組み立てた後に各小隊長とハイデルバーグを呼び、プランを説明していった。解体した第8小隊長、第9小隊長は中隊付き参謀として、元からの参謀2名と結構な人数で打ち合わせを行っていた。その後に地形と計画が合っているかを検証する為、皆で山道を下り途中まで行きその都度指示をだした。「つづら折り」の手前まで来て各小隊長と作戦プランの組み立てを終えたストロスキー男爵は崖下を確認しながら『ストーンゴーレム』の村広場まで戻っていった。


 監視所から様子を見ていた隊員から報告がもたされた。


「敵隊長と思われる人物と12名が下見に来ているようです」


 第3普通科連隊長「実戦経験のある隊長と部下か、食えないな」参謀が「ええ、やみくもに突っ込んできませんね」「苦戦しそうです」不吉だった。


 『ストーンゴーレム』の村広場に戻ったストロスキー男爵は下りていく途中に歩数を測って、だいたいの距離を計算していた。夜となった。


 幹部達に最終連絡していた。「攻撃は明日の朝行う。地形が解らない兵たちばかりでは勝てるものも勝てまい。地形が見えるようになったら開始とする」


 ストロスキーのプランはこうだ。

 まず各小隊の弓矢隊が先頭に山道を下り、魔道杖が届かない距離で山の上から横一列で一斉に矢を射かける。もしも撃たれて戦闘不能になったものは、崖下に落として道を確保する。

 第2小隊は山の中腹から、下りて行って、隊列の左側を第4小隊はさらにその外側を、隊の先頭が最後の折り返しにかかったならば、第1小隊と第3小隊が駆け足で林の中を下り、日本の簡易建物の右から波で押し寄せ叩き潰す。中腹から降りていった第2、第4小隊は、下まで行き、山道を戻って、あの者たちを反対側から強襲する。

 第5小隊はそのまま山道を進み、正面から広い道に出たら走り突入する。第6小隊、第7小隊は予備投入として『ストーンゴーレム』の村広場にて待機。


 ストロスキーは送り出した遺体搬送隊(糧食隊)に埋葬が終わったらハイデルバーグの居城にいるエルフを連れて戻るように言いつけてあった。状況連絡をする為だったが「戦闘となると詳細な報告は必要だな」と手配していたことに喜んだ。(さすがだ自分)


 夜になり、第3普通科連隊長は「夜襲はないな、地形確認もできまい」

 第3普通科連隊参謀は「おそらくその通りと思います。事前に作戦の為に地形確認していたので、夜が明けて同行していた者たちが受け持ち地形を解るようになって初めて来ると思われます」


 「相手の攻撃手順はどう思うか」「はい、もし長距離の弓矢があれば真っ先に使うでしょう、それから時間を合わせて全ての山肌からなだれこむのではないかと。事前ルートとして1、3、4とオーソドックスな戦い方ではないかと思います。問題は人数ですが、山道は細いのでそんなに来られないのではと思います」「途中で『ストーンゴーレム』と戦ったはずですし、相当な人数が死んでいるのでは思います」

「そうだな、師団と相談して、明日の朝に攻撃支援を要請するか」「規模が判らないのが一番不安だな」

「夜間の強硬偵察を出すと言ってもほとんど1本道だしな、きついな」


「でしたら夜間の間に『ストーンゴーレム』の村とかいうのに、航空機偵察支援をお願いしてみるのも良いと思います」「だが赤外線カメラを積んでいる機種など、陸自のヘリコ以外そんなにないだろう」

「F-35に前方監視型赤外線カメラ(FLIR)がついていると聞いた事があります、確証はありませんが」

「それも含めて師団司令部と要相談だな」


 連絡を受けた第2師団司令部は、無線で北部方面隊と連絡していた。

 結果、夜間ではあるが稚内臨時航空自衛隊基地からOP-3Cを1機飛ばし、山頂付近を赤外線カメラで撮影をする事となった。


 OP-3CはRF-4Eに搭載していたAAS-18A赤外線偵察装置の改良型を搭載しており、夜間監視も可能となっていた。地形監視とデジタルマッピングが主の任務だったので、夜間偵察は行っていなかったのだ。

 しかし、ハイエルフの里と一帯の山岳は既にマップ作製済みであり今回は夜間偵察に出撃した。


 第3普通科連隊のいる野営地に暫くして、ターボプロップ独特な音があたり一帯に響いてきた。しずかな夜間だからこその騒音であった。

 OP-3Cは大森林で旋回しながら高度を上げていき、高度4千m(約13,100feet)にて山頂目指して進んだ。両隣の山は6千m(2万feet)クラスなので、常にデジタルマップと照合しなければ事故となってしまう。慎重に進んで行った。


 大森林側の山道らしきところに20人以上の熱源が確認できたので、それを撮影し送る。

 OP-3Cは山頂付近に多くの焚火を確認した。その数約千。しかも大森林側から見えないように山の向こう側まで続いている。無線で報告し監視映像を送った。焚火の赤外線量がすごくて、人らしき者は判別不能であったが、大人数である事は間違いないと思うとコメントを付けて送った。


 受け取った第2師団司令部は情報を第3普通科連隊本部に転送した。


「夜間に3千m級の山頂で焚火があるとはいえ宿泊できるとはたいしたもんだな。富士山なら凍死確実だぞ」

 参謀が続ける「しかも途中まで偵察監視隊を出しています。これは慣れていますね」「いままで相手にしてきたのは冒険者だけですが、この相手は訓練が行き届いています」「監視所からの連絡では、前回見た者たちは統一された防具に指揮官らしき者と約千人だったと言います。今回はそのおそらく10倍以上でしょう。いやもっとかも知れません」

「そうだな、作戦を変える必要があるな」


 第3普通科連隊は引き付けて一斉射撃で殲滅する作戦を立てたが、それでは人の波に勝てない。

 最初の偵察は1千人だから多くても8千人程度と思っていたが、焚火1千なので1万人を超えているとは思っているが、はっきりとしない。ただそんな人数であれば爆弾投下してもらい。山道を完全に崩してしまう事も考えた。


「参謀、予定の作戦は無理だな、もっと事前に数を減らさなくては」

「ええこれ程とは思いませんでした。せめて1万人とかでしたら対処もできるのですが、多いですね」

「司令部も早朝偵察を再度行うと言っていますし、人数が多ければ引付は無理ですね」


「コブラかアパッチがあればな」「ええ、ハイエルフと「トメス」を倒した時、族長から「ドラゴン」以外にこれ程の大きさの魔物はいないと聞いていたので、北部本面隊は第1対戦車ヘリコプター隊を帯広から旭川に転進しましたが、航続距離4から5百キロでは大森林横断するだけで燃料切れです」

「そうだな、ない物は仕方ない」「航空支援がある前提でプランを作り直そう」


「徹夜ですね」96式装輪装甲車に通信指揮系統を充実させ、82式指揮通信車の代わりに配備された96式指揮通信車の中で、連隊長と参謀は覚悟した。


 夜が明け、再度稚内からOP-3Cが偵察任務で飛び立っていった。


 緊急通信が第3普通科連隊と第2師団司令部に直接入った。

「こちらスカイアイ2、敵は移動を開始した。戦術監視装置を見る限りものすごい人数が移動しています」

 OP-3Cは偵察機では無いので、可視光カメラ映像や赤外線カメラ映像を見て記録はできるが、分析はできない。任務が違うからだ。主な任務は、領海や公海に現れる新たな艦艇等を撮影し、記録する事である。その場での分析はする必要なく、基地で分析は行う。

 それでも無線によりデジタルデータを近距離なら送受信できるので、RF-4Eの様に撮影したフィルムを現像する必要がない。


 第2師団司令部は、北部方面隊から統合幕僚監部を経由して三角州沖で作業している揚陸隊に対地支援攻撃の要請をした。「ブルーリッジ」で指揮をしていた早良一等海佐は第7艦隊第11揚陸隊司令に直接伝えると共に、横須賀海上自衛隊司令部から第7艦隊司令部を通じて第7艦隊第11揚陸隊の強襲揚陸艦「ワスプ」に正式な攻撃要請を行った。「ワスプ」はF-35Bを6機搭載して対地攻撃も想定している。一番適任と言えた。


 稚内臨時航空自衛隊基地のF-2については、前回対空装備ばかりで、80式空対艦誘導弾(改)を8発だけテスト目的で航空装備研究所から渡されていたが、本装備のGBU-38/B精密誘導爆弾を持ってきていなかった。

 今回は用意している。もちろん前回の残りの80式空対艦誘導弾(改)も6発持っていたが、今回はGBU-38/Bで行く様だ。


 交戦規定が改定になったとは言え、対人での先制攻撃はできず、相変わらずであった。

 よって今度は大三角州から第2師団第2飛行隊のOH-6Dにスピーカーを付けて飛ばし、警告を山の上で行う作戦とした。高度は4千4百m程度まで上昇できるので問題ない。警戒の為に89式5.56mm小銃を持ち操縦士以外に2名乗り込み出発させる。


 約20分後、OH-6Dは事前に録音していた音声を流す。

「こちらは陸上自衛隊だ、ここは日本国の領土である。速やかに引き返しなさい」これを3回繰り返した。

 そして

「引き返す意思がなければ攻撃意思があるものと見なし、我々も攻撃する」と3回繰り返す。

 ストロスキーは意味が解らなかった。

 なにか飛んできたと思ったら、大陸語を話している。偵察隊の話と同じ「日本国」なる国からの警告らしい。ストロスキーは思う、自分なら警告なぞせずに、いきなり強襲するのに、変な国だなと思う。


「まっ気にしても仕方ない」帝国軍は強いのである。陸戦では負け知らずであった。

 伝説の『ストーンゴーレム』を倒したのだ、帝国ではこれだけでも英雄である。


 ストロスキー男爵は第2歩兵中隊長の顔になり、命令を出した。

「各小隊予定の作戦に入れ」


 号令が繰り返され、強襲弓矢隊を先頭に進んで行った。予定どおり第2小隊と第4小隊が山腹を横断して、敵の背後に回り込む為に最初に別れた。ただし人数が多すぎるので渋滞している。1千人程度の小隊なら話も分かるが、山岳で2万人程の遊撃とは聞いた事もない。第2第4小隊は急な斜面から次々に滑落していった。

 何人かは生きている様だが、すこし哀れだ。結局第2第4小隊は1万5千人程が残った。5千人も滑落したのである。第2第4小隊は人数を確認し、横に移動する準備に入った。


 と言うのも、ストロスキー男爵は将校養成の陸軍学校を比較的良い成績で卒業したが、帝国での教えはもっぱら広い平野での戦いであり、山岳戦など今回帝国軍唯一の戦いであった。戦術セオリーに乗っ取ってはいるが教科書通りの感が否めない。

 

 伝令が走るが下りてくる兵士たちで進めない。


 強襲弓矢隊が位置につき、第1第3小隊2万人が長い列になって控えていた。

 弓矢隊の合図と共に突入する計画となっている。

 

 合図がなされた。


 弓矢隊は、かすかに見える検問所に対して弓矢攻撃を行っている。ほぼ90%が届いていない。

 帝国軍第2歩兵中隊の第2第4小隊が山を横に移動していた。

 もうすぐ監視所の警戒区域だ、監視所には第3普通科連隊の隊員の他に、第2特科大隊から本部管理中隊の監視員2名が来ていて、それぞれ座標指示と効果判定を行う予定である。監視所には12.7mm重機関銃と周囲に指向性散弾を仕掛けており、ある程度防衛はできるが、弾数は限られているので、抑えられない場合は、手りゅう弾でけん制しつつ後退を指示されていた。


 帝国軍第2歩兵中隊第1小隊第3小隊も突入した。

 林のいたるところで爆発が起きたが、後ろから押され立ち止まれないでいた。

 山の崖上では帝国軍の監視員が仕掛けた手りゅう弾で崖に飛ばされ10人程が落下していった。

 真下にいた、第3普通科連隊第3中隊が隠れている崖下に死体が落ちてくる。声は上げない。

 やがて林の中で爆発音がしてきた。第3普通科連隊第3中隊は林を迂回して所定の位置についた。


 爆発音と悲鳴、なにか叫ぶ帝国軍。林の中では後ろから押されて固まったところを80式対人地雷と指向性散弾にて次々と死体になっていった。

 本来80式対人地雷は1997年に「対人地雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約」を日本が署名し、翌年1998年に国会審議を通じて「対人地雷の製造の禁止及び所持の規制等に関する法律」を国会承認後施行され、多くの対人地雷は破棄されていた。

 しかし、法律にも抜け穴がある。


 第四条 何人も、次の各号のいずれかに該当する場合を除いては、対人地雷を所持してはならない。


 とある。つまり通商産業大臣(当時)の許可を受けなければならないが保有は可能である。


 第三条 何人も、対人地雷を製造してはならない。


 と製造に例外を設けてはいないが、所持については許可があれば認められているのだ。本来の目的は、破棄と輸送に伴う許可なのだが、処理場は青森県の猿が森に決めた。

 つまり最終処分場は下北試験場なのだ。ここで爆破処分を行うが、防衛装備庁や研究施設からある程度実験用に残してほしいと防衛省に入り、経済産業省との協議の結果、最終的に処分なされるのならある程度の保有は認めると言う言質をもらった。経済産業省も武器としての対人地雷は全て処分したと国に報告していた。


 ある自衛隊関係者は言う、「世界全部が批准して期限を決めれば研究もしなくて済むが、期限を設けず批准したロシアに中国がある限り研究は続ける。研究も禁止と言われていない」とうそぶいた。


 今回も対人ではなく対害獣だと理由を付け下北試験場から運び入れたのだった。

 しかも報告先の国際連合事務総長はいない。

 確実に後で責任追及される筈。ただ、害獣用に仕掛けた罠に、帝国軍人がかかっただけと言う言い訳は通用するのか。微妙である。


 弓矢隊は届かない矢を射る。よくわからない戦術である。


 監視所は来る帝国軍を数えてはいたが、2万人を超えたところで正確に数えるのはやめた。

 見えた時から第3普通科連隊には連絡済みである。


 稚内からF-2が2機飛び立った。「ワスプ」のF-35Bは調整が遅れていてまだ出撃していない。出れば鼻の先の2百kmしかない。


 戦闘は、いや帝国軍の悲劇は続くのであった。


ありがとうございました。


これからもよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 1万5千人程が残った。5千人も滑落した アホだ。あはは
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