第246話 元の世界へ その19 日本の行く道
大変お待たせいたしました。
何とか本作は入院前に完結させる事が出来てほっとしています。
4月22日に入院、24日に手術ですが、頑張れそうな気がします。
遠山は急いでダークエルフの腕を確認する。
「あれ、貫通創がありませんね」
「当然じゃ、あの程度10秒で元に戻る」
遠山は、前回聞いた話だと片腕が吹き飛ぶ時は時間がかかったようだが、弾痕なら10秒なのかと漠然と思う。
だが、アメリカンサイズのハンバーガーとバケツの様なコーラをダークエルフを見ていると、なぜか笑いが込み上げてくるが、必死にかみ殺す。
某国工作員の企みは失敗したようだ、だが最終転移まで、たとえ米国でも信用してはならない状況である。
第三国は話にならない。転移世界の利益しか興味はないだろう。
それは米国も同様だと思。だから転移後から実施している日本側の情報封鎖は継続している。
今回も決して襲撃などなかった・・・と。
「遠山さん、なにも見なかったと言う事で」隊員は遠山に念押しした。
「了承した」
遠山がそう答えると隊員は無線で手配を指示していたる。
遠山は転移本部がある大型トラックの荷台コンテナに向かった。
本部指揮所では青山1等陸佐が待ち受けている。
「ご苦労様です」青山1等陸佐が労う。
「予測どおりですか」ため息交じりに遠山が答える。
「ええ、FBIから襲撃計画があると聞いていますので」
「そうですか、知らせて頂けば・・」
「いえ、いくら出向とは言え、外交官身分の遠山さんにも知らせる訳には」
遠山も理解できる。現役であれば遠山も同じ行動をしたに違いないのだから。
「ははは・・・。ところで捕らえた敵工作員と遺体はどうするのですか」
「それについては、転移前にあらかじめ対処命令がありますのでそれに従って処理します」
「つまりは?」
「ああ、遺体含め一人残らず連れて帰ります。生き残った工作員も僅かな命でしょうし、それに・・」
「あっ警察とかFBIとかCIAの事情聴取ですか」
「その通りですし、引き渡しても背景までは調査できないし、しても意味なく某国と表立って対決もできないでしょう」
「それについては、ハイエルフさん達から本国のロシア工作員と在米ロシア工作員と知れています」
「それを説明しても意味ないでしょう」
「確かに、証拠もないですしハイエルフの証言を信じるかと言えば、その通りで時間の無駄ですね」
「はは、ですので事前対処命令も」
「理解しました」
彼らはその為の冷凍車まで転移させてたのだから。。。
あっと言う間に最終転移の時間となった。
青山1等陸佐は指示する。
「各員転移最終点検及び所定位置に、並びに米国空港関係者も同様に指定位置に移動開始」
「了解」オぺレーターが一斉に通信を開始する。同時に指揮車上部の拡声器から警告音と日本語で英語で警告を放送する。
転移予定のダラス・ラブフィールド空港に緊張が走る。
空港レストランの従業員達もターミナル建物の窓から手を振る。
その日、ダラス・ラブフィールド空港の上空に怪しげな雲が渦巻き、晴天のあたり一帯を薄暗くする。
突然、滑走路上の簡易テントや指揮所に使われている大型トラック、それに米国政府から買い取った武器や弾薬に予備の戦闘機などがカゲロウの様に一斉にゆれて、息を飲んだ途端に消えた。
次の瞬間、見慣れない基地に現れる転移一行、そう米軍から返還された横田基地である。
転移は成功した。あっけなく・・・
ダラス・ラブフィールド空港から横田基地。
青山1等陸佐は対処する。
「転移完了。最終確認急げ、現地連絡。防衛大臣に繋げ」
女性自衛官のオペレーターから返る。
「高野防衛大臣でました」
「大臣、青山です。転移完了。現在最終確認中」
「わかりました。ご苦労作でした。明日一番で貴官と遠山特別事務次官は出頭して報告をお願いします」
「了解しました。それと報告ですが転移妨害して工作員と遺体があります」
「予定通りですか、して人数は、遺体が15、工作員6、ただしダークエルフに工作員は呪われています」
「ははは、予想より少ないですね。了解した。予定通り処理隊に引き渡しをよろしく」
「了解しました」
「では改めて、お疲れ様でした」
「はっ失礼します」
「聞いたかね」
「はい対処します」
各秘書官と制服組事務官が返答する。
「それと首相につないでください」
「はい」
高野大臣は首相に転移完了の連絡と工作員のおまけつきだと報告した。
大規模転移によって、海外に残された国民の保護に成功し、当壁総理は異世界に転移してから長かった期間を思い返していた。
「長かった。そして安心した」
青山1等陸佐は最終移転を確認し、横田基地管理隊に捕虜を引き渡し、帰国希望者の確認と移住希望者を別けて確認作業を進めている。
日本政府は神奈川県相模原に対規模な転移者や家族用に特別住宅を建設しており、帰国者で行く先がない者や移住希望者の住居として送り込む予定である。
やがて大使と遠山は都内ホテルへバス手配され、乗りこんでいく。勿論ハイエルフも一緒である。
ダークエルフは転移確認後、冥界に戻って行った様だ。大量のハンバーガとバケツコーラも消えている。
外務省職員が遠山達と入れ替わりでバスで入って来た。
勿論、帰国者の確認と住居斡旋及び仕事の確認である。
遠山と各大使達は翌日、首相官邸に招聘され当壁総理や佐野官房長官から労いと苦労掛けたとの感謝が述べられ、各省庁に戻って行った。
遠山は高野防衛大臣と共に防衛省に戻り、大臣室へと入っていく。
「改めて遠山特別事務官、ご苦労様でした。一番の功労者です。本当にありがとうございました」
「いえ、大臣頭を上げてください。仕事でしていた事ですから」
「いえいえ、米国折衝など頑張っていたと豊田大使から報告頂いていますよ」
「それこそ豊田大使の援護がないとダメな状況でしたので、決して一人では・・」
「そう言わさんな。周りのみんなは遠山くんの仕事を評価しているのだから」
「はぁ恐縮です」
「ところで、今後についてだが、道は2つある。
特別事務官として防衛省に残り業務遂行するか、原隊復帰するか、君の意見に従う」
「有難うございます。私といたしましては原隊復帰を希望いたします」
「そうか、遠山君は自分が思うより事務裏方が向いていると思うのだが、しかたない1か月の休暇後、原隊復帰といましょう」
「有難うございます。墓参りもしたかったので助かります」
「そうですね。ただし一つだけお願いがあります」
少し間があいて。
「もし、また管理者との交渉があるとすれば遠山君に任せたいのだが承諾してくれるかな」
「あっ気が重いですが、そういう事ならば引き受けます」
「現状なにがある訳ではないのだが、任せられる人物がいなくてね。助かるよ」
「ははは」
「はは、良かった」
・・・・・・
それから約3年が経過した。
ハイエルフから高野防衛大臣宛に緊急連絡が入る。
この時期にはハイエルフ村から中継された電波が直接防衛省に入る様になっている。
「管理者からの伝言があります。内容は直接お会いしてから」最初の一文は簡潔であった。
遠山は元通り遠山海将補として第3護衛隊群司令として舞鶴に赴任していたが、防衛省からの緊急連絡により、ハイエルフ村に向かう。
「珍しい、なんだろう」感想を漏らすが、人前では言わない。
海上自衛隊舞鶴地方総監部管轄の飛行場からヘリで小松基地に向かい、連絡機のT-400(ビーチジェット400A)に搭乗して宗谷特別行政空港に向かい、そしてハイエルフ村に到着した。
「長かった」一言だけ漏れた。
マリアが出迎える。
「遠路お疲れさまでした」
「いえ、仕事ですから」遠山は過ぎた日の高野防衛大臣との約束を少しだけ後悔した。
「では、早速行きましょうか」
「あっはい」遠山はまたドーサ大陸東南にある洞窟に向かう物だと思ったのだが。
一瞬で北極大陸にあるハイエルフの拠点についてしまった。
「懐かしいですね」
「早速上に行きましょう」マリアは先頭だって階段を登る。
遠山は急いでついて行く。
懐かしい部屋に入ると早速管理者が来た様だ。
遠山の脳裏に映像が、いや思念が流れていく。
それは・・・
ロシアと中国が共同して無宣言で戦術核をインドに使用。
インドと西側各国は連合国を結成し、報復を開始する。
ロシア中国の枢軸国に東側国が次々と参加。
最初は戦術核の応酬が。やがて激しくなり・・・
戦略核の応酬に発展して第三次世界大戦となってしまった。
各国首都は壊滅し、すでに何億人が死んだのか不明である。
「懸念していた事態と言う事ですか」
遠山は辛うじて言葉を発した。
「もう少し」管理者の思念が流れて来た。
各国首都付近は大きな湖化して放射能で立ち入り禁止となる。
管理者は権限発動
地殻振動開始によりプレートの超移動を起こし世界的大地震により全ての大地が海に飲み込まれ生存可能大陸が消失。
つまり、人類リセットが開始される、
(君たちの元世界はこんな状況だな)
「状況は理解できました。それで今後はどうなるのですか」
(次に始動させた回復装置から徐々に氷河期に入るよ)
それは北極、南極から凍てつく氷の表層となり、地球全体を覆う表層が全て氷となり何万年も・・・
(まっ放射能類が人体影響小さくなれば、海水が引き始め少し変形した大地が現れるけどね)
・・
(知的生物はなぜ同じ過ちを繰り返すのか、まったく理解が及ばない、過去に学んで欲しい物だ)
「そのためにこの映像を見せたのですね」
(それだけではない、そう地球で知的に高い日本人を国ごと転移した理由でもあるのだが)
「我々を助けて頂いた!!」
(私から言うと、面倒だからね、人類誕生までね。それで使えるように優秀な、そう君たちの言葉でDNAを保存したのだよ)
「そうでしたか。前に説明された様に何度も繰り返したのですよね」
(そうだ、何の生産性もない作業を)
「伝えて頂いてありがとうございます」
(君たちは愚かな失敗をするなよ。面倒だからな)
「はい戻りましたら日本政府や各国に伝えます。ありがとうございます」
遠山は口の中が渇いてカラカラである。
(用件は終わった)
部屋が明るくなりマリアが遠山の肩を支える。
「大丈夫?」
「何とか」
「モドリマスヨ」なぜかカタカナに聞こえた途端、ハイエルフ村に戻っていた。
幾度目かの地球文明はリセットされ、また次の文明が発生する100万年をスタートし始める。
-----完-----
謝辞
拙い小説と呼べるのか怪しい文書をお読み頂いて、こころより感謝申し上げます。
皆さまが少しでも楽しんで頂けたのなら幸いです。
ありがとうございます。
本当に感謝いたします。
まだ、ミソラの完結と仕事?は残っていますが、退院後に完結させる予定ではいます。
すいません腰が痛くてノートパソコンとかは置いて行きますので、ミソラの完結が気になる方はのんびりお待ちください。では入院準備しますね。