第236話 元の世界へ その9 謀略と破滅
架橋ですね。いや佳境。
大統領・・過去に・・げふ。
お楽しみください。
遠山日本国代表が待機するホワイト・ハウスVIP応接室に入る前に、ジョン・ヒルトン大統領はトミー・シュナイダー・ジュニア首席補佐官に何かを伝える。それは回りに聞こえない様に・・・
それはジョン・ヒルトン大統領が首席補佐官の耳に直接何かを指示している様にも見えたのだ。
「了解しました。すぐに手配いたします」小声で返答する。
主席補佐官は職員に何かを指示すると大統領と共に歩き出す。大統領は満足そうだ。
同時刻、ここはサンディエゴ海軍基地の司令官室、つまりトーマス・マクレガー大佐の執務室である。
机の上、緊急報告ランプが点滅し直ぐに連絡がインターホンで入る。
緊急連絡が入ったと通信室から一報が司令官に伝わる。
ホワイト・ハウスからペンタゴン経由でサンディエゴ海軍基地司令に対する直接指令であった。
トーマス・マクレガー大佐は急いで通信室に行き、その命令暗号を解読する。
それによると「日本艦「いずも」にハイエルフなる人物が乗りこんでいる。その者を至急ホワイト・ハウスに送り込む事。抵抗するなら日本艦艇事拿捕せよ」と物騒な命令である。
が少し考えトーマス・マクレガー大佐は「いずも」と対峙しているバンカーヒルに指示を飛ばす。
「ハイエルフなる人物を至急ホワイト・ハウスに召集せよ」と。
トーマス・マクレガー大佐は支援を忘れない。FBIに対してホワイト・ハウスの指令を送り最大限の支援を頼むと・・・
FBIは待機させていたベル212-FBI仕様をサンディエゴ国際空港から直接「いずも」に向かわせる。
サンディエゴ海軍基地経由で「ブルーリッジ」に乗艦しているジェリー・マクドネル中将に届く。
「「いずも」に乗艦しているハイエルフなる人物を早急にホワイト・ハウスまで送り届ける様に」と。
ジェリー・マクドネル中将は悩む。
使徒と言われるハイエルフ殿を米国大統領とは言え簡単に呼び寄せて良い物かと、しかもその交渉を私に指示してくるなど、「どれだけ状況を甘く見過ぎているのだ」と後悔する。
もっと報告書には過激な行動は慎むべきだと強調して置けば・・・いやそれでもダメなのだろうと思い返す。
この世界で強者である米国大統領は世にも恐ろしい物があるなど夢にも、いや自分の権力の前では幼子であろうとも従わなければならない。そんな現実を夢見ているのだろうと。
ジェリー・マクドネル中将は仕方なく、「ブルーリッジ」艦橋から「いずも」の艦隊司令 南海将補に向けで短く取り決め暗号を発する。内容は「傍聴されている」の意味であった。
その後、暗号通信を「いずも」南司令宛に発信する。
「ホワイト・ハウスから指令、ハイエルフ殿をホワイト・ハウス招聘」と。
南は意味が解らない。
少なくとも遠山特別事務次官が日本国代表として取り調べもあるだろうが、ワシントンに向かい2日も経過している。
いまさら・・・・過去の知識と状況判断に洞察力をフルに回転させている。
「あっ・・・」南は思いついた・・・
「もしかして、米国は「転移」を欲しがっている・・・そして転移トリガーとしてのハイエルフ招聘なのかなんて無謀な」
南は状況を即座に理解した。本当の転移トリガーはダークエルフなのだが。米国は知らないのだ。
南司令は艦橋を降りて、至急ハイエルフ族長と話をする。
日本から乗りこんできたハイエルフは3名、元族長にヒナタとナナである。
司令の話を聞いた族長は少し笑い、ヒナタが補足する。
「心配は必要ありません。想定通りです。私と元族長が大統領にお会いしましょう。そしてナナがここに残ります」
「ですが・・・元同盟国でありますが罠だと思います」と南。
「それも含めて心配は必要ありません」とヒナタ。
思念通話なのかハイエルフの3名は少し笑っている。
「わかりました。ですがお気を付けてください。大統領は転移のトリガー、いやきっかけ者としてのハイエルフ様達を捕らえるつもりです。なにもお力添えできない我々が辛い」と南が本当に辛そうに言う。
「お気持ちだけで嬉しいです。もし何かあれば神に祈り転移で切り抜けられます。それに・・・大統領と名乗る人物にもお会いしたいですしね」とヒナタが嬉しそうに話す。
ハイエルフ達はこの展開を読んで、楽しみにしていた様でもある。
「それならば。お気持ちに応えようと思います。もうじき迎えが・・」南の言葉を遮るように艦内放送が流れる。
「不明ヘリ接近。警戒態勢」と同時に非常ブザーが艦内に響き渡る。
警戒態勢を取る為に乗組員が一斉に部屋から飛び出していく。
待機状態にあった対空兵器群が一斉に稼働を始める。
「いずも」CICでは忙しく情報が飛び交う。
「まや」CICも同時に対空戦闘準備が開始される。
南がブリッジ向けにハイエルフ待機室の有線通信機で艦長に連絡する。
「ハイエルフ様にお迎えだ。甲板で迎えるように」と。
何もわからず迎えだけ指示された、ベル212-FBI仕様は広い「いずも」甲板に配置された誘導員に従い着艦する。
ベル212は日本国でも要人送迎用に使用されている。
このFBI仕様は乗員2名を除くと12名が乗る事が出来るのだが、VIP仕様のこの機は6名の乗客の為に豪華な仕様となっている。
ハイエルフ共に「いずも」甲板に出て来た南は、「どうぞ。お気をつけて」とだけ言う。
同時にハイエルフ護衛の為に主席幕僚の吉田一等海佐を同乗させようとする。
ヒナタは言う「多分大丈夫ですよ。それに同乗者が多いと守れませんから」と断る。
結局、元族長とヒナタの二人で豪華なヘリに乗りこむ事になる。
南が何もできない事に悔やんでいる姿が痛々しい。
FBIの担当官が一人客席に同乗していた。
英語で話し出すが・・・思念を読めるヒナタ達には英語は理解できないが言いたい事はわかる。
「ここから直接サンディエゴ国際空港に向かい、プライベートジェットで直接ワシントンD.Cに向かいます」と説明する。
サンディエゴ国際空港では政府ランプに直接着陸し、向かいに待機しているプライベートジェット機に案内される。
それは遠山達が使用したガルフストリームⅢではなく、プライベートジェット機では最高速を誇るセスナ「サイテーションX+」であった。
この機は巡航速度でマッハ0.9、最高速度でマッハ0.935を出す事が出来る世界でも並ぶものがない程の高速機体である。(ガルフストリームⅢは巡航速度でマッハ0.77である)
この機体であれば、遠山達が4時間かかったワシントンD.Cのロナルド・レーガン・ワシントン・ナショナル空港まで3時間少しで到着が可能である。大統領たちが一刻も早くハイエルフ達を捕らえようとする意図が薄く見える。
ドア・ツー・ドアでサンディエゴ国際空港から飛び立った「サイテーションX+」は途中、戦闘機2機の警備が何回か付き、無事ロナルド・レーガン・ワシントン・ナショナル空港に到着する。
すると待機場には政府専用ヘリで有名な大統領専用機の「マリーン・ワン」と呼ばれる機体が待機していた。(大統領が搭乗する場合のみマリーン・ワンとなる)
「マリーン・ワン」で象徴される政府専用ヘリは幾つかの候補や試作機を受けて、2018年にS-92を改良したシコルスキーVH-92が採用され、特徴ある青と白のツートンは米国民誰もが知る機体である。
S-92は三菱重工がシコルスキーよりライセンス生産を受けており、日本でも警察や自衛隊関係で使用されている機体で何度かテレビでも放送された事がある機体だ。
ベースであるS-92は巡航速度マッハ0.23、乗員14名、航続距離1,482kmと高性能を誇っているが、そのS-92に防弾設備や通信機器、そして防御の為の兵器を積み込み、重量として大きく超過したVH-92はエンジン
類やギアなどを最高性能の物に換装しローターも変更をして対不時着性を極限まで追求したモデルである。
諸元は一切公表がない為に不明ではあるが、S-92以上に速度が出せるモデルとなっている事が判る。
米国国民なら憧れの機体に乗りこむハイエルフ2名。
すぐに同乗の職員から「直接ホワイト・ハウスに向かいます」と短く説明される。
ヒナタは頷く。
やがて「ホワイト・ハウス」に作られた大統領専用のヘリポートに着陸した政府専用機を補佐官達が迎える。
その少し前、遠山は儀礼に則り親書を交換し、日本国総理からの要望を伝える。
それは、
1.全世界に向けて、日本国は別世界で活動しており、日本国籍を持つ者全てを送り届ける事。
2.同じく全世界に向けて日本籍以外の在日外国人をこの世界に送り届ける事。
3.移転の際に要人は船舶等でサンディエゴ海軍基地に向かわせるがそれ以外の民間人及び米国軍関係者及び米国機密設備について日本国横田基地に集め、米国領土への転移を想定している為に広い場所と転移後直ちに救出と移送をお願いしたい。
4.1の方法としてサンディエゴ海軍基地に要人や大使を集め、一般人については財産を含め転移した地に集まる為の手段と方法に協力して頂きたい事。
5.日本国が異世界にて活動する為に、米国内にある軍設備をある程度買い取りたい事。
そしてそれらの対価は、FRBや各米国銀行に預入している預金を当てる事。
不足であれば日本銀行で保有している米ドルで支払う事。
以上をお願いしている。この為の交渉は大統領退席後も続けられており、主に補佐官を中心に続けられている。時間としては4時間程度・・・・
遠山が示した要望については、その全てが認められてしまう。
「もっと難航する覚悟があったのだがな」と思う。
世界各国に対する連絡は直ぐに伝えられる。
BBCも大きく取り上げられており、世界に日本が健在である事が伝えられた。
同時に遠山が持ち込んだ外務大臣特別通達によって、暗号が世界各国の日本大使館に通達され、内容は「1週間以内に米国サンディエゴに全ての希望する国民を集める事。大使館装備は破壊し第三者に渡らない処置をする事。大使、領事は船で帰還、一般日本国民は集合地点での集団転移をする」とある。
大使や領事には「転移」などおとぎ話の様に信じられないのだが、外務大臣特別通達に添えられている暗号文により、本物の本国通達である事を認識した。
各国に在住の日本大使や領事は急いで資産の保全と転移集合場所への移動、そして各国に滞在する日本国籍保有者に向けて同様な拘束性のある緊急指示を流す。
世界各国で駐在者や旅行者の活動が盛んとなる。
因みに駐在者や旅行者は、日本国が消えた影響で金銭的余裕がなくなり、一部の者は大使館や領事館に保護されていた。あれから3年が経過している。
勿論現地で仕方なく仕事をして生活している者も多くいる。
執務室で仕事をしていたジョン・ヒルトン大統領は。
「ハイエルフ」が到着しました。連絡を受けてニンマリと笑う。
これからは大統領として、いやジョン・ヒルトン個人として最大のチャンスだと、この為に遠山なる日本国代表の言う事は全て飲んでやった。これからは米国大統領として最大限の国益をいや個人の利益を手にするだけだ。
この場に副大統領であるアレクス・トルーマンJrが居れば多少の反対もあるかもしれないが、奴はフランス大統領に米国大統領の密命で3日前に飛んでいる。転移して日本艦船が来たと聞いた時に飛ばし、本人の耳に入らぬよう最高機密かつ大統領専権事項として、このチャンスを作ったのだ。
ジョン・ヒルトン大統領は執務室からニコニコしながらハイエルフを出迎えに車寄せのあるホール玄関に向かって軽やかに歩き出している。
遠山は場所を国務省に移し、会議室で詳細について話し合いを行っている最中である。
勿論、遠山もハイエルフを「ホワイト・ハウス」に呼んでいる事など知らない。
政府専用機から降りた二人のハイエルフにジョン・ヒルトン大統領は大きく驚く、知的聡明さを備えた「女神」とでも形容する事ができる二人、無論人間ではないと思わせる次元の違う生き物がいるのだ。
成人としての貴賓を備えた一人に、少しだけ幼さを滲ませた一人。
珍しくジョン・ヒルトン大統領は二人のハイエルフに吸い寄せられるように近づいていく。
「よう・・ようこそ・・「ホワイト・ハウス」に・・」とだけ辛うじて言える。
幾多の修羅場をくぐり抜け、大統領にまで上り詰めたジョン・ヒルトンにとって目の前の光景が信じられない物である事は間違いない。
突然頭の中に声が響く『お招きいただきありがとう』
「なんだ、なんなんだこれは」とジョン・ヒルトン大統領は混乱する。
見ると側近たちも「信じられない」といった様子でキョロキョロしている。
元族長は微笑む。
トミー・シュナイダー・ジュニア首席補佐官は辛うじて「・・ご案内します・・・」とだけ言えた。
大統領は先だってゆっくり歩き、その執務室にハイエルフを招き込んだ。
ハイエルフ達は優雅なしぐさで進められたソファーに座る。
キリスト教徒でもある大統領には目の前の人物・・いや明らかに人ではない高貴な生物に対し頭では警告が鳴る。「女神」と呼ぶ以外の形容しか思い浮かばない・・・のだが・・
トミー・シュナイダー・ジュニア首席補佐官だけが同席を許される。
「早速ですが、米国大統領のジョン・ヒルトンです。ご存じですか」と大統領は聞く。
思念が飛ぶ。
『名前は知っています』
「こっ・・これはどんな魔法ですか」と大統領。
『ふふ。これは思念です。私は話すよりこちらの方が』と元族長。
ヒナタが弱い思念で説明する『私どもは「異世界」とあなた方が呼ぶ世界より日本国総理にお願いされて同行したのです。こちらがハイエルフ族長、そして私が「ヒナタ」』元を省く。
「そっそうですか」とかろうじて大統領は声にした。
ヒナタが続ける。
『私たちを呼んだ理由について説明頂ければと思いましたが・・・ジョン・ヒルトンさんと言いましたね。あなた・・邪悪なのですね。一人、二人、三人も殺したのですか』
「そっそんなばかな。なぜ!!」大統領は震え出す。
『秘密でしたか?、うふふ、大統領とは言え「人殺し」を代表者とするなどこの国は・・なんとも』と元族長。
「そっそんな事が・・・大統領!」と首席補佐官。
大統領は知らない、ハイエルフが相手の記憶を読み、対応できる事に、そして肝心な・・
『大統領のジョン・ヒルトンさん、どうします?、あなたが考えている様に我々を捕まえますか、そちらの方は知らない様ですが、拷問で思い通りにするですか・・して頂ければ・・楽しみですね』とヒナタ。
大統領は言う事を聞かなければ拷問を加え言う事を聞かせるつもりであった。
その為に裏社会と連絡を取り、手筈を進めていたのだが。
「うっっっそんなばかな・・・なぜだ・・」知らない体をしていれば良い物を、素直に反応してしまう。
「この御仁達はどんな力を持っているのか分からないのに、大統領、我が国を危機的状況にしてどうするのです」とトミー・シュナイダー・ジュニア首席補佐官。
「うるさい」大統領はブザーを押す。
すぐにシークレットサービスが執務室に6名入ってくる。
「ふふ」ヒナタは楽しそうに声を漏らす。
途端に強い思念が元族長から漏れ出し、執務室にいる全ての人間と執務室外で守りを行っているシークレットサービスが気絶し倒れる。
『遠山さんに協力しましょうか』と元族長。
『御計画のままに』とヒナタが返す。
執務室にある大統領の椅子に座るように影が揺れて、それがはっきりと姿として現れる。
『やっとこの世界を壊す時か』とダークエルフ。
『壊したいのですか?』と元族長。
『私たちはこの世界に干渉を許されていないのですよ』とヒナタ。
『つまらぬ』
執務室の外で騒ぎが起きている。それはそうだ。廊下で執務室警護していた人間も全て倒れているのだから。
思念が届かなかった待機室待機のシークレットサービス6名のうち4名はホルスターに忍ばせている「グロック19」を一斉に抜き、すぐに執務室に向かう。残りの2名は待機室の「SOPMOD M4」を取り出す。SOPMODとは「Special Operations Peculiar MODification」の略で特殊作戦専用仕様である。威力はM4そのままに全長が全長803mmで重さは3480g、30発の5.56mm弾を装備する。
その短さから強靭的集中力が必要で、短いままではすぐに銃身が跳ね上がりまともに狙う事ができないが、日ごろの訓練によりシークレットサービスはこの新小銃を使いこなしている。
シークレットサービス6名が執務室手前で合流して執務室に殺到する。
執務室ドア前にダークエルフが瞬時に移動し彼らを迎える。
後ろに大統領が倒れているのが見えた。
すかさずシークレットサービス6名は正面のダークエルフに向けて無言で発射する。
一人が倒れないダークエルフに向かって「この化け物・・・」口からでる。
だが最後まで言えずに倒れてしまう。
『我より邪悪なこいつら、殺そうか』とダークエルフ。いきなり発砲したのを根に持って・・
『そこの大統領とか言う者を守っていたのでしょう。そこまで邪悪ではないと思いますよ』と元族長。
ダークエルフの体内から鉛の弾頭がコトコトと床に皮膚を伝って落ちる。血は出てない様子だ。
『でどうする』とダークエルフ。
『そこのもう一人の記憶を読みました。もう一人副大統領とかがいるようですね。戻ってきて助けて貰いましょう』
『そいつは邪悪ではないのか』
『違うようですよ。この人間の様に人殺しはしていない様です。ただし本人の記憶では無いので不明ですが』
『そうか、それでどうする』
『この人間を覚ましましょう、そして副大統領を呼んで貰います』
『これは?』ダークエルフは倒れている人物を指さす。
『大統領とか言う方ですね。冥界に連れて行きますか?』
『1分と生きていないだろうし、めんどくさい』
『では・・』
『こいつは呪う程度で勘弁だな』
『お願いします』その程度は自己防衛と言えば許されるのであろう。
『うむ』大統領は呪われる・・・
ダークエルフは米国ごと滅ぼすのが楽しみで冥界から来たのだが・・・呪うだけとは・・
その最強の呪いは意識を戻すことなく、永遠の悪夢に苛まれ、魘され、食事も摂れずに衰弱して、そして死ぬのである。猶予は3日間である。ただし並みの人間ならば1日持てば良い方である。
東京のホテルで、皇帝ガリル3世にダークエルフがかけた呪いと同質であるが、あれは軽い物で頭痛が止まらない程度である。
しかしこれは・・・
トミー・シュナイダー・ジュニア首席補佐官は呼ばれるように目を覚ました。
倒れる前に確かに聞いた・・「人殺し」だと・・
『トミー・シュナイダー・ジュニア首席補佐官と言いましたね、起きられますか』
「はい、どうにか」
『それで相談なのですが、副大統領と言う方を至急呼んで頂けますか』
「それは・・・」
『御覧の通り、大統領は呪われてしまいました。目を覚ますことなく、何れ死ぬでしょう』
「えっっっ」
外遊中のアレクス・トルーマンJr副大統領にトミー・シュナイダー・ジュニア首席補佐官から緊急報告が入る。「大統領が倒れた」と・・・
そして報告は続く、「世界滅亡の危機であると、その元凶はジョン・ヒルトン大統領である」と。
アレクス・トルーマンJr副大統領は宿泊先のフランス、パリの高級ホテルから緊急に帰国手続きを済ませると、パリ北東郊外のシャルル・ド・ゴール空港に待機させていた「エアフォース・ワン」と呼ばれる事で有名な、映画やドラマで映る政府専用機に発進準備を連絡すると同時に急いで向かっている。外遊を強制終了させて機上にてワシントンに戻って行く。
(因みに副大統領が使用する場合はエアーフォース・ツゥーとコールサインが変わる)
政府要人専用機に積み込まれた通信機材にて、「ホワイト・ハウス」の様子と大統領の対応が判ると、「なんて馬鹿な事を、そして大統領が殺人者とは」・・・複雑な思いである。人としての一線を越えたのかと。
報告を受けた副大統領が8時間で戻る事を確認した「ホワイト・ハウス」では直ぐにトミー・シュナイダー・ジュニア首席補佐官がメディア対応を始めている。
「大統領が病に倒れ、当面はアレクス・トルーマンJr副大統領が大統領執務を取ると報道した。
報道官ではないトミー・シュナイダー・ジュニア首席補佐官からの報道提供にメディア各局は緊張し、一斉に伝える。
「大統領・・危篤」と。
副大統領が「ホワイト・ハウス」に到着するまで米国政権順位3位の下院議長が代行を務める事になる。
遠山も事実を国務省で伝えられる。
「なぜハイエルフ殿が・・失策だな大統領」
多忙な遠山に更なる課題がふりかかる。
ありがとうございます。
なんかノリノリで書いてしまいました。
何時も誤字脱字報告ありがとうございます。感謝しております。
何度も書き直しに付け加えすると接続詞が可笑しなことに・・・技量がない証拠です(すいません)