第234話 元の世界へ その7
投稿しました。
いろいろな事前準備が終わった様です。
いつも誤字脱字報告ありがとうございます。皆さまに感謝しております。
どうしても一部書き直しや追加すると、接続詞の間違いなど訂正を忘れてしまうので助かります。
いつの間にか寝てしまっていた遠山は、会議室ドアーからブザーが鳴り響く音で気が付いた。
(思ったより疲れていたかな)
再びブザー音が鳴りドアが開く、それぞれ個別に聴取されている為に在日米国大使や在日米軍海軍司令官はこの場にいない。
「どうぞ」
「はじめまして、失礼します。こちらは国防省資材調達統制官であるマッコイ大佐、そして事務官のジーン大尉と申します。我が国の資材や兵器について買い取り意思があると伺いました。その事前調整をさせて頂きます。
ご存じの通り、同盟国の日本国と言えど兵器類の輸出承認は議会となります。その為の事前調整です。
ご理解をお願いします」
「はじめまして、お忙しい中ありがとうございます。物資調達についてのルールは存じておりますが、転移の都合上、最後の調達となります事をご理解願います」
マッコイ大佐が話し始める。
「転移とか小官では理解できない事であると思っていますが、あなたが日本国全権代表とお聞きし話をさせて頂きます」
「その様にお願いします。我々も戻ってしまえばこちらの世界に現れる事はありません」
遠山は少しだけ皮肉を入れて返答する。
事務官であるジーン大尉が話し出す。
「そうですか。それで日本国のご希望はどの様な内容でしょうか」
「有難うございます。時間も時間ですので手短にお伝えします」
遠山はブリーフケースから書類を出し、二人の前に並べる。
「ふむふむ、補修部品類に加え武器弾薬もありますね。そして稼働可能なAAV7やF-16ですか・・」
「はい、これは貴国と言うより、在日米軍の保有機を買い取り検討させて頂きたいと言う事です。
それに補修用と言いますか貴国で動態保存している物にも興味があります」
「いくつかは有事の際に必要なので動態保存している物もありますが・・・」
マッコイ大佐。
「はっきり言いますが、支払いはどうなります?」
少しの間、沈黙が支配する。
「貴国が消えた後に「円」は当事国が無い為に暴落しており、我々も代金としてはお受けできません。
それに慣例に従い、米ドルでの支払いをお願いしたい。もしくは金とかの共通資財でないと難しいです」
「マッコイ大佐、その点は大丈夫です。我が国が転移前まで保有していた米ドルに加えユーロでお支払いを予定していますが、不足であれば金を現在の相場で換金頂ければと思います」
「なるほど、外貨準備は転移に伴い必要ないと言う事ですか」
「お察しが良くて助かります」
「ですが・・・国際経済は得意ではありませんが、一気に日本国が有している米ドルやユーロが流れ込めば価値が暴落する可能性があります」
「もちろん市場に出せばその結果となりますが、米国資産を買い取るだけでは市場に流れないと思いますのでご心配は不要かと」
「そうですか・・ですが少し心配です」
「我が国の財務省からも買い取りに際して米ドル等の使用許可を頂いております」
「遠山さん、このリストに書かれている物ですが、我々としても各在庫確認と、今後の防衛体制強化に稼働兵器は必要となります。日本国が消えた現状では対アジア戦略の再構築を求められているのです。
それに在日米軍が健在であれば戦略体制に組み入れる必要があります」
「はい、ジーン大尉の懸念はもっともです。ですので予備兵器と言うより補修部品レベルでも構わないので、是非欲しいのです。
それと、この世界で航行している我が国の旅客機や貨物船なども連れて帰りたいと思います。
それには貴軍に協力をして頂かないと無理だと思っていますし、それの経費負担も考えています。
貴国に協力頂くためには最大限の努力をいたしますので、無理のない範疇で是非ご協力お願いします」
「遠山さん、貴殿、いや貴国の思いは判りました。ですが我々では限界もありますし世界戦略となると少し話が大きくなります。
明日か明後日にはホワイトハウスで話をされると聞きました。であれば大統領含め話をして頂いて許可が頂ければ、我々としても進めやすいと思います」
とマッコイ大佐は話す。
「理解しました。国務省での調査が済み次第、大統領への正式訪問が成される予定ですので、私も話を、と言うかお願いをしてみます」
「私は何時指令が下っても対応できるように、事前に用意させて頂きます。よろしいですか大佐」
「うむ。準備だけは進めてほしい」
「有難うございます。お二人とも感謝します」
「では我々はここまでですね。遠山さんはこちらで待機願いします。職員に話は終わったと伝えます」
遠山は立ちあがって二人と握手を交わす。
「では失礼します」
二人は会議室から出て行った。
会議室は傍聴対策されているので外からの声は聞こえない。
「本当に転移とか信じられるか」とマッコイ大佐。
「うーん。ペンタゴンも半信半疑の様子ですが、私としては目の前の仕事をするだけです」
「そうだな。前代未聞だが指示されればやるしかないか・・・」
「はい。早く帰りましょう」
「その前に大将に報告するとしよう」
「お願いします。私は「話は済んだ」と職員に言ってきます。地下の駐車場で合流しましょう」
「たのむ」
二人はエレベータで降りて行った。
現在は22時である。遠山の忙しい一日は静かに終わっていく。
その頃、大統領であるジョン・ヒルトンに電話が入った。
「はい・・そうだと思いますが・・いえそれは判りません・・・ですが・・わかりました」
短い電話である・・・
・・・・・
翌日、遠山はホテルで目を覚ます。
前日、話が終わった後に地下駐車場から再度SUVに乗せられ着いた先は「ウォーターゲートホテル」と言うらしい。深夜近くにSUVでホテル地下駐車場に入り、そのまま11階に連れてこられたからだ。
窓からは「セオドア・ルーズベルト島」が良く見える。
ポトマック川に面した高級ホテルの様だ。
ホテルの客室最上階の11階全てを貸し切り、外ではシークレットサービスなのかFBIなのか軍なのかが見張っている。
豪華なスウィートに一人の遠山は所在なさげに困っている。
「無駄に広すぎるだろう」
庶民の遠山は困ってしまう。
ホテルの施設案内を見ると最上階の12階はスカイレストランとして「トップオブ・・・」と名称がついているが、いく事は無いだろうと思い、探検したい気分を抑える。
昨日は3名がSUVで合流し、11階の部屋をそれぞれあてがわれ大人しく寝ていた。
簡単なディナーがルームサービスで運ばれ、今朝食も運ばれて来た。
持ってきたのはホテルスタッフではないだろうと思うほど屈強なボーイである。
「初めてのワシントンDCなのに味気ないな」と遠山は愚痴を言う。
午前10時前には、着替えを済ませ、荷物を持った遠山は呼びに来るのを待っている。
10時きっかりに部屋のチャイムがなる。
本来ならドア越しに確認し、警備の人間ならば開けるのだが・・・
遠山は疲れが取れないのか、すぐにドアを開けてしまう。
呼びに来た担当者は少し驚いて「お迎えにきました」とだけ言う。
遠山はガタイの良い担当について歩き出し、エレベーター前で少し待つように指示される。
1分もしないうちに、在日米国大使と在日米軍海軍司令官が合流して、一緒にエレベーターに乗り込む。
行き先は地下駐車場である。
やはりSUVに乗りこみ、昨日の国務省に向かう様だ。
ただ、前日と違うのは3人同じ会議室に通されて、現在は待機状態となった。
やがて国務省の国務次官と名乗る高級官僚が現れて、今後の予定を教えてくれた。
それは、現在ホワイトハウスで一連の報告を基に検討会をしており、危険が無い事を確認でき次第、大統領と補佐官が面会するので問題なければホワイトハウスに行って貰う旨が説明される。
遠山はやっとここまでたどり着いたと一安心する。
しかし遠山の受難は始まったばかりであった。
ありがとうございました。
次回はホワイトハウスに呼ばれれば成功なのでしょうか・・・