第231話 元の世界へ その4(先行交渉)
モニターを交換して良かった。
このモニター縦横回転出来るのですが、普通に使ってます。
ハイエルフ族長との話が終わった後に遠山特別事務次官は東京へと戻って来た。
初めに高野防衛大臣と計画の詳細を詰める為だ。
最初に防衛大臣補佐官と副大臣に加え統合幕僚長と情報本部を集めて、ハイエルフ村での内容を伝え、帰還について詳細意見を求めた。
最初に議員である副大臣が発言する。
「我々としては各国大使及び関係者を安全に元の世界に戻し米国から各国に戻ってもらう事が最優先だと思っている」
立川統合幕僚長が発言する。
「当初計画では全員を船で移送し、ペルー沖のポイント・ネオに転移させてサンディエゴを目指す予定だと認知しておりますが」
遠山は頭をかきながら、
「はいその計画でした。ですが高野防衛大臣から遠すぎるし、もしわれわれの転移時に国際宇宙ステーション廃棄があるなら大惨事になると指摘が入りました。そこで出来れば先行し護衛艦1隻で転移し事情を話してサンディエゴ沖への転移を認めて頂き、そこから陸で広大な転移候補地を見つけ、こちらの世界では横田基地に集まった帰還希望者を陸で送り返そうと再計画しました」
「了解しました。ですが単独で米国政府との交渉は厳しいと思いますよ。できれば米国艦隊か駐留米国司令部を連れて行くべきでしょう」
「副大臣のお話は理にかなっています。単独で乗りこんでも総理の信任状と米国への協力要請書簡だけでは弱いし時間も掛かると推測します」
「そうですか・・・」遠山は頭をかかえる。
「でしたら」立川統合幕僚長が思いつく。
「この案は如何でしょう。こちらの日本には第7艦隊の揚陸指揮艦である『ブルーリッジ』と海兵隊に在日米陸軍司令官がおります。彼らに同行頂き米国政府に詳細な情報提供する事で、日本政府の要求が間違いなく伝わると思いますが、必要なら在日米国大使も同行して頂くと良いと思います。
亜細亜圏防衛の要である日本国が突然世界から消失した非常事態だと思います。
多少の事では他国の謀略だと懸念されると思います。
でしたら同国の責任者や証拠としての『ブルーリッジ』を見せて陰謀ではなく実際に戻るだと思わせた方が得策と考えます」
「確かに立川統合幕僚長の言う通りです。我々は転移と特異な現象を受け入れ様々な解決策を実行しましたが、それを傍から聞くことは不可思議を受け入れると言う事です。米国政府としては受け入れられないと思います。それに消えた日本国を騙る敵対国の作戦だと見破る為の期間が必要で時間がかかると思います、それなら証拠含め証人を連れて行き説明するべきと思います」と情報本部長が説明する。
「情報本部長が逆の立場ならどう考えますか」遠山が尋ねる。
「先ほど立川統合幕僚長が説明した通り、策謀か陰謀ではと思うと思います。そしてそれが真実だとして裏付けの為の時間・・・そうですね各関係者を隔離して取り調べし、話の整合性を図るでしょう。そしてその範囲は帰還した全員に及びますので、人数が多ければ多い程時間がかかると思います」
「と言う事は最低でも1か月・・人数が多ければ2~3か月、いや半年かかると思っても仕方ないと言う事ですね」遠山はため息がでる。
「それを踏まえると、交渉の後1か月後の集団転移など無理と思います」
立川統合幕僚長にはっきりと言われてしまった。
「それを回避するには在日米国の要人を複数つれて行かなければならないでしょう。それでも米国政府が前代未聞の事態を理解するかどうかです」
「わかりました。在日米国関係者に協力を要請します・・」遠山の声は小さくなってくる。
要は在日米国関係者が頑張らねば日本国政府の計画自体受け入れてもらえないと結論が出ていた。
自室に戻った遠山特別事務次官は「悩んでも無駄だな、動かなければ」と気を切り替え在日米国大使館に向かい、在日米国大使に面会を申し込んだ。
在日米国大使であるジョン・トールマンに面会し転移計画を伝える。
すると在日米国大使も幾つかの懸念を説明し、特に米国政府が転移や神の存在を信じるかの話となった。
結論としては信じさせないと後の転移も米国以外の大使達の転移計画が破綻すると理解してもらった。
米国大使は現在米国全権代表となっているので状況は概ね理解できている。しかし元の地球を滅ぼす神の武器は秘匿する事になる。理由は「知らない方が幸せだから」と言うシンプルなモノであった。
遠山は次に横須賀の米国第7艦隊司令部を訪問してブルーリッジと共に米国大使や在日米国艦隊司令官の転移を要請した。
その日の内に沖縄まで飛んだ遠山は沖縄駐留の海兵隊を含めた4軍の司令官を集め、持ち帰り機材の取捨と転移の同行を依頼する。
そして翌日は相模原の在日米陸軍を訪問、次に横田基地を訪問して在日米空軍司令官に持ち帰り機材の取捨と残置機材の買取を打診する。
各司令官は概ね好意的である。帰還できる事、再度米国に編入されて活躍出来る事に希望を持っている様でもあった。
最後に防衛省に戻り、話してきた内容と計画をまとめて、転移計画書最終案として高野防衛大臣に提出し承認を貰う。その後高野防衛大臣と共に総理官邸に関係大臣を集めで頂き簡易的な閣僚会談を行う。
勿論会談は厳重な対外秘として扱われた。
遠山の計画では、横須賀から第1護衛隊群の旗艦DDH-183「いずも」、DDG-179「まや」とブルーリッジに各司令官と米国大使を乗せ横須賀沖で転移させ、サンディエゴ沖50kmに転移。その後米国艦隊司令部と交渉をお願いし、日本国は遠山が米国政府に対する親書と書簡を携えて交渉を行う安全と時間短縮を目指した。
護衛艦隊旗艦と言う概念は令和になって改編され、「いずも」が旗艦となったが防御力が弱いので「まや」と2艦体制となった。遠山は元々航空自衛隊出身であったために海上自衛隊の改編には疎く、立川統合幕僚長から指摘されて初めて分かった事だった。
全ての懸念は払しょくされ、ハイエルフを横須賀に招きいよいよ先行交渉が始められる状態にまでこぎつけた。ここまで計画変更から2週間である。
いよいよ出港まで1日となった横須賀はなにが有るかわからないので武器弾薬に燃料を積み込み航空機整備にも抜かりはない。
当日早朝がきた。
いよいよ先行交渉艦隊が点呼を取り必要不可欠な人材が乗船しているのを確認する。
3艦は各艦点呼を始めると、臨時艦隊旗艦で果旗が掲揚され「いずも」に報告が上がる。『結果は異常なしとなり出港準備が発令され。横須賀を静かに出港する。
見送る自衛隊員の他、神奈川県立観音崎公園には県民や都民が集まり交渉艦隊も隊総員か揃い、激しく手や旗をふり盛大な見送りとなった。
自衛官は敬礼で返礼する。
東京湾を抜けて50kmの位置に向かう。
横須賀の軍港を抜けて東京湾航路を南に行き三浦半島の城ケ崎を右舷に展開し。相模湾の奥に向かう。この辺りが行く約束の50km当たりである。
ハイエルフはダークエルフを冥界から呼び出す。
いずもの甲板に現れたダークエルフは遠山か高野大臣を探す。
「ダークエルフはどれを転移させるのだ」と言う。
「はい遠山です。今回は簡易艦隊を組み、この3艦が先行交渉隊となります」
「では・・・」「お待ちください。転移時に何かの紛争に巻き込まりては我々が不利になります。
そこで全ての兵器をスタンバイ状態にしてから転移をお願いします」
「艦隊司令、準備お願いします」と遠山。
「了解~艦船武器兵器のウオームアップ開始、時間1分、ソナー室、CIC室転移先の状協把握が一番。
また各航空機は転移後ただちに上空警戒実施、なるべく日の丸を見せつけてやれ」
「転移カウント1分前、カウントスタート」
「転移カウント50秒経過、転移カウント40秒経過各ヒーター加熱処理、転移カウンター30秒経過。レーダソナーの稼働開始・転移カウンター20秒前、転移カウンター10秒前、工作物に捕まり衝撃に備えよ。
9。8。7。6。5。4。3。総員注意。1。転移開始。
「ダークエルフさん、その地図のここが空いていますね。ここにしますか」と遠山。
「そうだな、問題になりそうな船は無いな」・・・「では着水させよう」「着水衝撃退避」
「着水後ただちに全ての艦船把握急げ」
交渉艦隊は転移に成功した。
サンディエゴと言うより米国とメキシコの中間に上空10mに戦艦2隻と揚陸司令艦1隻が現れ、ゆっくりと海面に降下した。艦隊自体の大きな衝撃はなかった。
(海の上に突然と現れた戦艦3隻が降下する様子はサンディエゴでもティファナでも見られた)
(町は異星人の襲来だとパニックになりそうだった)
今はサンディエゴ沖と言うよりメキシコのティファナ沖の方が近い。
この位置からサンティエゴ海軍工廠までは3時間位かと思う。
早速「まや」と「いずも」は無線傍受を行い全てを記録する。
また対潜対策としてはソナーを当てて船籍を確認していく。全て米国軍なのなら良いのだが。
ブルーリッジでは、司令艦隊用の秘匿通信が繰り返されている。
特に転移してからの報告書が空を飛ぶ。これだけで1日は終わってしまう。
艦隊司令から「全艦に通達、周囲警戒を厳とし、敵対処に備えよ」
交渉艦隊は戦時下1級の態勢となった。
サンティエゴ工廠から湾岸警備艇や哨戒艇が多く集まってくる。そして巡洋艦としての
バンカー・ヒル (USS Bunker Hill, CG-52)
モービル・ベイ (USS Mobile Bay, CG-53)
レイク・シャンプレイン (USS Lake Champlain, CG-57)
プリンストン (USS Princeton, CG-59)
が睨むように行く手を塞ぐ。移転艦隊は停止して、無線動画のデータなどやり取りが激しくなる。
「邪魔なあれ消そうか」ダークウルフは言うが、ハイエルフから「日米のお味方でしょ、いろいろ情報を集めて許可するかの最中だと思います。また呼びしますのでダークエルフ様は充電なさってください」
((早く冥界に戻れる)と思っていたみたい)
ヒナタが「途中でお呼びした時は大変な事態となっています。魔力の補充は大切です」
「そこまで言うなら戻ってやるが旨い物とかあったら後にまとめて寄こせ」
「はいはい」
ありがとうございます。交渉うまく行くと良いですね。
次の大船団転移に地上転移・・・まだ先は長いです。