第228話 元の世界へ その1
お久しぶりです。
何とか書ける様になり、続きを作りました。
書けなかった理由はあれこれ説明しても見苦しいので簡略しますが、利き腕と腰(左右)が痛く動けない状況でした。完全にリハビリ不足です。
宗谷特別行政区から戻った遠山特別事務次官は防衛省の自室に戻っていた。
「遠山特別事務次官、本日1500(ひとごーまるまる)に外務省にて帰還者の打ち合わせがあり、
大臣も同席しますので同行をお願いします」大臣秘書官に告げられてしまった。
遠山は嫌な予感がする。
そもそも北極大陸の基地で神との対話をコーディネートしたのだが、いろいろ情報が多すぎて整理できていない。
ひとり呟く「そうだよな、元の世界にも終末兵器が、いや地殻変動兵器がコアを回っているなどと、他国の首脳は信じないだろう。各国大使はどう説明するのだろう・・それに関して嫌な予感がする」
おそらく遠山の予感は当たっていると思う。
ロシアや中国、英国、フランス、そしてブラジル、インド、ノルウェーと米国以外は神話の時代の事を信じてはいない様だと感じている。
米国でさえ、ハイエルフや神と言う管理者について在日のCIAあたりが全力で調査しているのだと感じている。
だからある程度は話を信用していたと思っている。
「だから、各国どの様に対応するのか・・・」
神の洞窟で経過した時間はわずか1分なのだが、記録媒体に録画された動画は48分もある。
今回は神の許しを得ての記録だった。それ以前の記録は1分程度の何も映らない動画が繰り返された。
そして過去洪水を起こした事、大地が一斉に噴火した事など管理者が以前行った地殻変動がおまけについてきたが、どうみても映画かCGにしか見えない。それで信じろと言うのは無理があると思っている。
例の洞窟後、高野防衛大臣に記録媒体を渡し、急いで参加しなかった各国大使を集めて動画を見て貰った。
担当の外務省もびっくりしているだけで、何の話もしないまま解散となった様子。
無理もない、遠い過去に地球でおきた大噴火や世界規模の洪水など、旧約聖書の中の神話なのだ。
信じる者はユダヤ教信者とカトリックの一部であろうと推測できる。
高野防衛大臣と遠山特別事務次官は外務省の会議室に入っていく。
すでに会議室には首相補佐官と外務大臣に佐野官房長官が座っていた。
「遅くなりました」と高野防衛大臣は挨拶する。
「いや今来た所だ」と佐野官房長官。
「本日の議題は・・」と遠山が言いかける。
「まっ座ってくれ」と佐野官房長官。
「ではお集まり頂いたので始めます」と佐藤外務大臣が始める。
「本日集まって頂いたのは、例の動画を各国大使に見せたのだが、在日外国人の中に日本に残りたいと希望を出す者がいた事です。問題なのはドーザ大陸の一部を日本国領土にした際に、米国をはじめとする英国などに領土の一部譲渡を行い開発を共同して行っていくと言う取り決めが交わされた」と佐藤外務大臣。
「ええ、それでその租界は有効なのかとの問い合わせが来ています」と佐野官房長官。
「つまり在日外国人の方が、租界を祖国として開発したいと言う事ですか」と高野防衛大臣は聞く。
「簡単に言うとそう言う事だ」と佐野官房長官。
「そうですか、気になってはいました」と高野防衛大臣。
「つまり元の世界に戻らず、租界として割譲された領土を開発していきたいと言う者が現れたと」遠山はびっくりしている。
「ですが、国籍はどうするのですか、戻らなければ国籍は無いと思います」遠山は更に確認する。
「そこなんだよな」「うむ。在日朝鮮人とか韓国人とか中国人などは残るなら全て日本国籍を与えるつもりであったのだが、在日米国大使館の副大使が言い出しているのだよ」
「それは」
「それと、まだ情報だけなのだが、在日ロシア大使館と在日中国大使館からも何人かが残りたいと人伝に伝わってきている」
「まるで亡命ですね」
「そうなのだよ。こちらは帰還する事で一部大使館の土地を適正価格で買い上げる手筈までしていたのだが」
「買い上げと言っても、日本国は国際社会から消えるので日本円は使えないのでは」
「うむ。そこで金で換算するつもりであった。多くの在日公館は賃貸なので問題ないのだが」
「それに大使館や公館なら外交特権を認められますが、残る方となると・・・」
「重大な問題である」
「それに保護の問題もあるので、一律日本国籍を取得させると言う事では如何ですか。
例えば租界にて魔獣に襲われても日本人なら警察や自衛隊が害獣駆除の名目でいけますけど」
「やはりそれしかないか」
「ところで米国副大使はなんと」
「租界に新アメリカを建国したいと言っておる」
「租界をと言うならパスポートが必要となりますね」
「困ったな。日本国民なら租界を日本領土に戻し貸与も可能なのであるが」
「どちらにしても租界含め大きく領土主張したもので、詳しい区割りはできていない状態なのだよ」
「現在租界の開発状況は如何ですか」
「米国が一部建機を借りて開墾をする準備だけ進んでいたが、現在は止まっている様子」
「そこを本格的に開墾して建国ですか・・・無理があると思いますがフロンティアスピリットですな」
「新開拓史ですな。夢はある」
「いや大臣、夢だけですよ」
外務大臣が提案する。
「ではこうしましょう。残留開拓も租界も認めます。当面は開拓依頼を出して日本人同様の保護を、そして経年により、新国籍を認めると言うのはどうですか」
「ドーザ大陸人の扱いと同等と言う事ですね」と遠山。
「そのイメージだ」
「了解しました。ですが通信手段と基礎インフラは揃えないと生きてはいけないと思います。そして最大の問題は魔獣等の対処の為に開拓人に武器供与は必須かと」
「防衛省としての考えは」
「ふむ。武器供与は一部ドーザ大陸の各国にも実施しています。できればその範疇で」
「宜しい。その方向で行きましょう」
「まっ待ってください。アメリカの副大使と租界があるので可能ですが・・中国、ロシアやその他共産圏はどうするのですか、租界も設定していませんし、この世界に共産社義など・・」
「それは希望者と話し合いをしませんと、かれらの希望がどの程度か判断できません」
「それですが・・米国同程度と言い出すと思います」と遠山。
「それは無理だ、同盟国とそれ以外では大きな違いがある。いっそ彼らが日本か新米国にでも亡命してくれるのなら」
「それは良い考えです。その線で行きましょう。それを踏み絵にして将来の租界も希望を残すと」
かなり難しい話であったが、一時的に方向性は決まった。
官房長官から移転に伴う詳細なデータが提示された。
「高野防衛大臣、可能かどうか判断をお聞かせ願いたい」
「はい」
「では説明する。現在日本人で移転を希望している者は4万名に上る。次に在日外国人は約8万人、そして各国大使館職員は約2万名、合計14万人の送付計画が必要である。続いて在日米軍は約3万人、これは米国輸送隊で大丈夫でしょう」
「14万人の民間人ですか・・・それと資産や車などがあると思いますのでフェリーも家族分は必要ですね」
「遠山さん、客船の調達ですが、余裕ありますか」
「客船は大手船会社に外洋航行可能な客船手配を進めておりますが14万人は無理です。
どう頑張っても1隻当たり5百名でしょう。飛鳥2や日本丸は大使館職員用に考えていました」
「たしか飛鳥2程度で470名程度では、だとしたら客船が足りん」
「一般民は「おおすみ」や「いずも」を不足分は外洋航行可能なフェリーでと思います」
「それにしても1度では無理ではなのかね」
「その通りです。不足しています」
「たのみの外洋フェリーで1隻800名程度、積荷が自家用車であれば多少余裕がありますのでそこにも客室を作る事で1000名は見込んでいます」
「了解した。しかしこの転移作戦は1回限りのミッションとしたい。よって14万人と米国軍人の一部(米国艦船に乗りきらない分)を対処して欲しい」
「そうですか・・・陸に集めて一度に米国に送られると便利なのですが・・・」遠山は独り言を言ってしまう。
「ん。遠山特別事務次官ナイスだ。その線も検討して欲しい」
遠山はしまったと思うが、皆が聞いてしまった以上検討するしかなかった。
ありがとうございます。
しばらくぶりですので誤字脱字あれば報告をお願いします。
何度もキーの打ち間違いがあり書き直しています。