第223話 運命の国民投票 結果編 特別投票結果
長らくお待たせしてすいません。
中途半端ですが途中まで書きましたので投稿します。
今回は14歳以上18歳未満に実施した特別投票の結果です。
これは参考意見として政府が実施した物の集計です。
時刻は12時となり、昼食ついでに投票するサラリーマンやOLが増えていた。
東京丸の内投票場では在京各社のテレビとインターネット動画サイト「ユウツベ」の動画投稿者が独自に出口意見の集計を実施している。
この中継はスマホでも見る事が出来、投票者も見ながら意見を決めて投票している様子も見られた。
商社や銀行サラリーマン・OLの投票が一段落し、各社投票推計は平均すると在留58%、帰還42%と主婦や老人層により残留が多数になってきている。
昼のワイド番組も国民投票を特集しており、午前中の内容に対して残留が増えつつある現象に考察を巡らせている。
また投票を終えたサラリーマンにインタピューなどもされており、これをスタジオで解説する動きが見える。
「いかがですか」インタビュアの問いかけに投票を終えた方が答える。
「ええ、私は残留に投票しましたよ。なぜならこの世界では必要な資材は全て手に入ります。
無理に戻って他国の争いや経済戦争に巻き込まれる事も無いでしょう。
それと私は不思議な事が好きで、魔物にドラゴン、ハイエルフが実在するこの世界が気に入ってます。
いつか旭川の魔物動物園に行きたいです。あっ元の世界に戻ったら魔物動物園・・無くなるのですかね」
「つづいて如何ですか」とインタビュア。
「私は帰還にしました。何しろ旅行好きで、行っていない国はまだたくさんあります。
勿論この世界でも良いのですが、特にしたいのは帰還してアメリカ大陸をルート66で横断するのが夢です」
「あっアメリカ大陸横断は危険だと聞いていますよ」とインタビュア。
「でもロマンですよね。小さい頃から父に聞いて夢見ていました」
「以上両方の意見が聞けました。如何でしょうスタジオのケイさん」
カメラがスタジオに切り替わる。
「インタビュアの大友さんありがとうございまた。如何ですかはったいさん。そう言えばはったいさんはニューヨーク州弁護士資格も持っていましたね。残留すると資格が無駄になるのではないですか」
「はは。それは既に考えています。もし残留するのであれば、新たにドーザ大陸弁護士資格を取ります」
「おお、それはそれは、でもこの番組を忘れないでくださいね」
「勿論です」
「それでインタビューでは在留が多いように感じましたが、コメンテーターの松井さん、どうですか同世代の意見としては」
「私は残留か帰還か決め切れていないのです。その前提でお話ししますと、残ってもドーザ大陸やアトラム王国でヴァイオリニストとして仕事はありそうですし、なにより伝統音楽としてクラシックや現代音楽にPOPsを伝道する事が出来ます。また帰還しても今まで通りですし、どちらでもメリットデメリットはあります」
「なるほど、大陸や王国に新しい音楽文化を根付かせるか、今まで通りの公演をするか。仕事としては両方魅力的ですよね」
「それで困っているのですよ」
「ふむ。国民の中には松井さんようにどちらにしてもメリットデメリットがあると言う方もいられると言う事ですね。難しいですね」
「解説の神田さんはどうですか」
「はい、戦後日本を考えた時には、GHQや在日米軍が日本国の主要部分を決めてしまって、その隙間を日本として有功活用している状態です。
一例でいいますと、羽田空港の進入路や待機空域もほとんど米軍指導で決められ、無線周波数も米軍優先で空いた所を日本が使用しています。私はもし残留するのであれば戦後日本が受けた様々な制約が撤廃され日本が戦後初めて独立国としての主権を手にする事が出来ると思います」
「ほう、そんなにですか」
「ええ意外と制約は多いと思います。ついでに言いますとテレビ業界にいますので、アナログからデジタル放送に変わりましたが、これも数少ない周波数を有効活用する為でして、アナログ時代に使用していた150MHz帯は今や溢れている携帯電話用に再割り当てしたのです。これにより通信インフラの高度利用が果たせたと考えていますが、その実はGHQや在日米軍が割り当てた周波数をやりくりしている事に変わりはありません。
特に遠くに飛ばせる短波帯は殆ど米軍が使用し自衛隊は苦慮しています。本来短波帯が自由に使えれば、遠いアトラム王国とも衛星を介さない通信が安く出来、もっと早く通信手段が手に入ったと思います」
「そうですか、この時代でも敗戦を引きずっていたのですね」
「そうです。この国民投票は敗戦国が初めて独立国になれるチャンスだと思います」
「いやー神田さんの話は重いですね。どうですかはったいさん」
「はい、重すぎる話です。我々国民は調べなければ知らない所で敗戦国としての扱いを受けているのですね。だとすれば米国として優れた戦略ですね。知らない内にその戦略に飲み込まれていたとは・・・」
「博識のはったいさんも知りませんでしたか」
「あはは、私なんて一般国民ですし、専門は法律ですから」
「あははは」
昼のワイドショーは明るい。
やがて時間は進み、夕方の特別報道番組が始まり午後5時となった。
「午後5時となりました。これからは工場や飲食店などで働く方々、また営業で飛び回っているサラリーマンやOLが投票場に来られる時間帯です。どの様に投票内容が変化するのか楽しみですね」
「ええ、午後9時まで投票が出来るなど画期的です」
「本当にその通りです。それでは先に行われました特別投票の結果が入った様です」
女性アナウンサーが特別投票の内容を読み上げる。
「各中学、高校で実施されました14歳以上18歳未満の学生の方々による特別投票の集計が終わり、結果をお伝えします。この特別投票は本投票結果には影響しませんが、広く意見を聞きたいと言う政府の意向で実施されました。内容は無記名で残留か帰還かの二択です。また簡単に意見を書く欄もあり、意見を伝える事が出来ると言う用紙は黄色の特別投票用紙です」
女性アナウンサーは一呼吸おいて、
「では特別投票の集計結果ですが、参考と言う事を踏まえてお聞きください。
14歳から17歳まで総人口473万人に対して集計数は455万人、これは既に海外で生活している者や中学卒業後に働いている者を除いた数字となっています。あくまで中学校と高校にて疑似投票した結果です。
それでは結果ですが残留72%、帰還22%、無記入6%、以上結果となりました」
「凄い、圧倒的に残留ですね」
「ええ私もここまで大差がつくとは思っていませんでした」
「子供たちにとって、ファンタジーの様なこの世界を受け入れてると言う事でしょうか」
「その様に思います」
「では本投票結果が楽しみですね」
「ええ、子供たちとは実害も発生する大人達では考えも違うでしょうから」
「そうですね」
「私の予想としては僅差だろうと思います」
「どちらが有利ですかね」
「本当に私見としてですが、残留ではないかと思います」
「子供達と同意見ですね」
「いえ、今後の経済、資源、原油等を考えると世界経済やなにより紛争に巻き込まれる事がないと言うのが本音です」
「ですがいまだ力支配の記憶が残っていると思いますが」
「それは、文化や教育で補い、新秩序を根付かせればと思います」
「それは壮大な、いやそうでもないですか。戦後アメリカに憧れた様に、世界の住民が日本への憧れを持ってくれたら、意外と早く訪れるのではないかと思います」
次回はいよいよ本投票の集計です。