第221話 邦人救出作戦その3
お待たせしました。
早めに投稿しようと準備していましたが、結局1週間経過してしまいました。
本当にすいません。
男たちは・・・
「お前達、帝国ならどうする」
「そうだ、どうするんだよ」一部の漁師は屈強な体に似合わず涙が流れる。
「少し待て」首謀者達は集まり何事か話始める。
「早くしろ、あいつら5分と言っていたぞ」
「静かにしてくれ、対策を考えている」
「時間が勿体ないぞ」
「いやだ、俺は逃げる」「そうだ降参してお前らだけ罪に問われろ」
首謀者以外の男たちは一斉に集会場から走って逃げだした。
「お前達待て」
男たちの逃走は止まらない。
「まずいな、仲間がいなくなれば5人で何とかなる問題ではないぞ」
「そうだな、まずいな」
「みんな覚悟してくれ。人質と共にうち死ぬ事も考えないと」
「まて、ここは岬になっている。このまま海に飛び込み逃げると言う手はある」
「そうだな、何かあれば逃げ道として想定した通りに」
「人質はどうする」
「こちらには武器が剣しかないから足手まといだ」
「なら殺すか」
「生かして、あいつらに確保させれば時間が稼げる」
「だったら時間が稼げる方法がある」
「どう言う事だ」
「ここの地下墓地に閉じ込める」
「そうだな、地下墓地に入れて鍵を閉めれば」
「その間に裏から海にいくか」
「そうと決まれば行動だ」
元漁師や港湾労働者達は、ほぼ全員集会場の前に並んで腹ばいとなる。
懐かしい帝国軍の降参姿勢だ。
「自衛隊である。お前達の降伏意思は認めよう。だが人質がいない」
男たちの一人が立ちあがり説明をする。
「俺たちは漁師だ、中にいる元帝国軍人に誘われて加わっただけだ。日本に逆らう意思もない」
人質を取って日本政府に要求をしていたのに形勢が悪くなると手のひら返しをする。
第101特殊普通科連隊第2中隊は降伏した男たち全てを捕らえ尋問を開始した。
偵1小隊長とマラル参謀は野田隊長に報告し対応を検討する。
「集会場には元帝国軍人達と人質だけの様です」
「元帝国軍人の人数は確認できたか」
「捕虜達の言うには5名との事」複数の捕虜に証言させて得た情報である。
「了解した。なら人質を連れて逃げるか」
「可能性はありますが、荷物になるだけなので立てこもりも検討対象かと」と偵1小隊長。
「だが5名で集会場を守るのは困難だろう。逃げ道を確保していると思って間違いない」
「混乱を突いて東の森に逃げ込むか、南の海に飛び込むかでしょう」とマラル。
当然偵察隊によって西側北側から圧力をかけ続けているので東か南にしか逃げ道はない。
だが、南の砲台跡には狙撃隊が・・そして東の森には回り込んだ偵察隊の73式装甲車が6台も潜んでいる。
「状況判断すると元帝国軍人達は戦力差から逃走を選択すると言う事だ、そして人質については置いて行く可能性が高い。殺害もしないだろう。殺害したなら我々は火力で焼き払うと思うはず。そして過去の戦闘で威力は確認済みの筈だ」と野田隊長は分析する。
「はっでは90TRで圧力を強めます」
「それが良い。マラル参謀更なる勧告を頼む」
「了解いたしました」マラル参謀は元帝国軍人だけに丁寧だ。
再び90式戦車は前進する。ライトを煌々と照らして。
90式戦車の後ろについて行く82式指揮通信車からマラルが再度勧告する。
「集会場に隠れている者達、速やかに投降しろ。時間切れである」
90式戦車の轟音が集会場に迫る。
元帝国軍人達は慌てて杉浦を地下墓地に連れて行き、鍵を閉め閉じ込める。
その後に5人はそっと集会場裏口から外に出て、建物沿いに南に進む。
狙撃班の偵察小隊から連絡が入る。
「建物東側に5名確認」スポッター役の隊員が暗視スコープで確認した。
「フランカー準備」砲台跡1階に陣取った側面防御役の隊員2名に伝える。
フランカー達も暗視スコープを装備している。
スポッターが伝える。
「距離200風速3北、対象AからEまで5名」
「了解」
狙撃手はスコープのクリックを調整し初弾を装てんする。
照準眼鏡は夜間用を装備している。
「完了」
「こちら狙撃班対処準備完了」
「本部まて」
「了解」
「殺害は不許可。行動不能にせよ。発砲許可」
「了解」
「距離150で狙撃開始」
「本部了解」
スポッターが指示する。
「距離150、行動不能許可、対象E」
「了解」
狙撃手は5名の最後Eを狙う。
「距離180・・160、今」
狙撃手はレミントン社のM24A2 SWS(Sniper Weapon System)のトリガーをゆっくり引き絞る。
窓から2m下がって発射された7.62mm弾はサプレッサー特有の音を響かせて対象Eの太ももに突き刺さる。
「うっ」
「どうした、なにが有った」首謀者代表のテリーは仲間が倒れた事によって声をあげた。
暗闇の中でテリーは状況判断しようと見渡す。音は波音に隠れて届かない。
「フリオがやられた」
「この暗闇でか」
もうすぐ夜明けの一番暗い時間である。
「フリオ立てるか」
「・・・む・りだ」
「フリオは無理だ」と参謀役のムリエルが言う。
「判った。日本軍は殺さない、すまんフリオ」テリーはフリオを残していく覚悟をして進もうとした。
「次目標A、距離140風速風向変化なし」
「了解」狙撃手は次弾装填するべく遊底を操作する。
再び7.62mm弾が発射される。
声を発さずテリーが倒れる。「どさ」と言う音だけが響く。
「皆しゃがめ」ムリエルが指示する。
「テリー大丈夫か」
テリーは声がでない。
明かりを持たないムリエルは手でテリーの足を探る。
手に生暖かい感触が伝わる。「血か。狙われている」
残ったマギとロンは息を飲む。
「マギ、ロン、三人で走るぞ」小さい声でマギは「おぅ」と言う。
「今だ」三人は走り出す。
「フランカー対象急速接近、距離100」
フランカー役隊員は扉を開き、フラッシュライトを光らせて片言の大陸語で「止まれ」と怒鳴る。
ムリエルは砲台跡の方から強力な二筋の光に照らされて、初めて監視されている事に驚く。
「斥候分隊報告、対象停止、降伏姿勢」
「本部了解」
「捕虜確保」
「了解、本部指示、偵2、偵3保護対象捜索、偵1小隊長首謀者確保」
「偵1了解」「偵2了解」「偵3了解」
斥候小隊隊員は降伏姿勢の首謀者達を監視している。
1台の82式指揮通信車がライトを付けて近づいてくる。
「偵1小隊、砲台跡に集合」「了解」東の森に潜んでいた73式装甲車が2台砲台跡にやってくる。
82式指揮通信車の後部ハッチから偵1小隊長とマラル参謀と隊員が飛び出すと降伏した元帝国軍人に尋問する。
「陸上自衛隊だ、人質は何処だ」とマラル。
「地下・・地下墓地だ」かろうじてムリエルが声を出す。
偵1小隊長は82式指揮通信車に戻り報告する。
「偵1報告、保護対象は地下墓地、繰り返す地下墓地」
「本部了解。地下を探索」
「偵2了解」「偵3了解」
「たったのむ。フリオとテリーを」
「勿論救助する」マラルは答える。
「偵1報告、首謀者2名大腿部負傷救助要請」
「本部了解」
偵察隊から報告を受けた「ひゅうが」から救難機のUH-60Jが飛び立つ。
負傷した2名を収容してブラックホークは「ひゅうが」に戻る。
手術室に一人ずつ運び込まれ治療を開始する。
偵察隊によって止血処置されているが失血は多い。
・・
「偵2報告、地下に保護対象発見、確保」
反乱は、投票当日の午前5時までに解決した。
「7偵から師団本部、状況終了」
「師団本部、保護対象を師団本部へ」
「7偵了解以上」
こうして反乱は鎮圧された事を防衛庁経由で総理に報告された。
ありがとうございます。
次はいよいよ国民投票です。