第214話 緊急方針提言
お待たせしました第214話を投稿します。
う?日本転移について政府にも動揺が・・・
ドーサ大陸会議は日本の思惑と違い紛糾した。
それは日本が転移し元の世界に戻ってしまう事が、会議では公然の秘密として語られたからだ。
ドーサ大陸中央政府の首相でもあり日本政府総務省副大臣である島崎氏は急いで首都東京に戻り事態の報告をしていた。
総務大臣である幸山氏と副大臣の島崎氏が揃って首相官邸に報告と相談に向かった。
「ドーサ大陸会議について御報告させて頂きます」と島崎氏。
「はい、ご苦労様でした。して内容は」当壁総理が尋ねる。
「はい。ドーサ大陸会議で想定していた問題については、ほぼ政府原案通りで可決しましたが・・・」
「何か問題でも」
「はい。実は自由討議になった途端に日本が元の世界に転移する予定なのが議題となってしまいました」
「そうですか。厳重に情報統制していた筈なのですが、議題にまで上がるとは」
「総理宜しいですか。情報については新大島あたりからドーサ大陸に広まっている様です」と幸山大臣が説明する。
「うむ。広まってしまった物は、今更否定はできないだろうが、困ったな。今後の方針も左右しかねない状態に陥る事が懸念されます」
「そうですね。ドーサ大陸会議でも問題視されていた獣人や亜人達の境遇については最重要課題かと思います」
「そうですか。また迫害の歴史が繰り返されると言うのですか」
「はい。議事録にある通り帝国復興主義の者達が反乱を起こす可能性については、殆どの知事からの指摘にある通りだと思います」
「島崎さん、内乱の可能性は高いと思いますか」と総理は改めて尋ねる。日本としてドーサ大陸での内乱を放置する事は問題であると認識している。
「はい総理、その可能性は高いのではないかと思っています」
「そうですか。自衛隊の撤収は無理ですか。ですが早急に撤退させないと元の世界に戻る事が不可能となります」
「宜しいですか総理」総務大臣の幸山が提案する。
「どうぞ」
「はい、ありがとうございます。転移の時期については総理指示だと聞いております。
ならばドーサ大陸の情勢を見極めてから準備を開始しては如何でしょう。
一刻も早く戻りたい気持ちは理解できますが、今転移する事については無責任であると思います。
なので内閣を招集して、かかる問題について議論をご提案します」
「うむ。少し時間をお願いします」
当壁総理は考え込んでしまう。
しばらく考えた後に
「幸山くん、提案ありがとう。提言に従って招集をしましょう。今は解決策が思いつきませんが何か良い解決策を思いつくかも知れません」
「はい総理、招集をかけたいと思います」
早速、その日の夜間に緊急招集がかけられ、閣僚は官邸に集まってきた。
佐野官房長官か発する。
「お忙しい中ありがとうございます。緊急時案が発生しましたのでご集合頂きました。総理どうぞ」
「有難う。幸山くんより説明をお願いします」
「はい、説明させて頂きます。先日ドーサ大陸会議を開催した際に、機密事項としていた日本転移について公然の秘密となっていましてそれが討議に上がってしまい収拾がつかなくなりました。そこで緊急に討議をお願いすべくお集まりいただきました」
幸山は何とか説明していた。
高野防衛大臣が口火を切る。
「総理状況は判りました。それに「神」との転移についての約束も伝わっていたとは驚きですが、広まってしまった物は致し方ないとは思いますが、前向きに検討したいと思います」
「高野君すまない。これ程までに早く広まるとは思ってもいなかった。だがそれについて考えても仕方ない。そこで今後の方針について検討したいと思う」
「宜しいですか総理」
「うむ。佐野官房長官どうぞ」
「はい。実は我が党の支持者からも問い合わせが届いています。その内容については賛否両論であり非常に悩ましいのですが、賛成派についてはご理解できると思いますが、貿易関係の取引を再開したいと言う根強い支持層があります。一方、転移に否定的な方々の理由は、第一に、この世界には日本が必要とする資源が多数眠っており、これらは日本が独占出来ていると言う事に加え、原油すら自前で生産できていると言う事実があります。これがあれば無理に元の世界に戻る事も無く経済は発展できると言う事。それに加えて敗戦国としての扱いに悩む事もないと考えています」
「総理」
「幸山くん」
「はいありがとうございます。総務大臣として、また内閣の一員として発言させて頂きます。
ご存じの通り電波政策については国連含めて様々な制限を受けていましたが、この世界については第一国は日本であり、元の世界に戻る事も考慮して、慣例に従って運用しておりましたが、在日米軍を除いて制限などなく、日本が世界的に指導できる立場であると言えます」
「あっ、それについては国土交通省も空路など、この世界は制限がありません」
補足すると、日本の空路については米軍が実質支配しており、その隙間を縫って民間空路が設定されている為に燃費などは考慮されていない為に各航空会社は苦慮している。
同様に電波の周波数についても戦勝国に優先権があり、残された周波数帯を日本は使用している。
一例としてはVHFやUHFなどの近隣国に影響を及ぼす可能性がある周波数帯についても日本は隙間を使用している。敗戦の影響は現在も根強く残っている。
「うむ。言いたい事は理解できます」と総理。
「皆さん判断材料は出たと思いますが、これからの方針として提案があればお聞きします」
佐野官房長官は意見を調整する。
「世論としては何方なのでしょう。各国大使は戻りたいと推測できますが、ならば米国艦隊にお願いして米国経由で送り返す事が可能ではないかと思います」
「ン?どういうことですか」佐野官房長官は聞き返す。
「はい、改めてご説明します。ドルツ国については南大陸全体ではなく街を2つ含む地域で転移したとお聞きしています。ならば・・元の世界に戻りたい方々を米国艦隊にお願いして、日本国を離れ転移すれば元の世界に戻れるのは思います。ならば各大使含めた方々を送り返す事は可能ではないかと思います。
それと世論としては如何なのでしょうと思います」経済産業大臣は答える。
「ドルツ国転移してから1週間後に経済同友会と話した所、経済界としても悩んでいると聞いている。
その根拠としては、この世界における資源開発の目途が立っている事に加え、戻る事が不可能な事を前提に経済界は資源開発に注力して来た結果だと思っています」総理は非公式会談について説明した。
「つまり、日本だけで資源開発進め、その結果は良好であると言う事ですね」佐野官房長官はまとめる。
「うむ」
「と言う事は無理に戻らなくても日本の資源は豊かであると言う事と、未開発なドーサ大陸に加えアトラム王国などが経済発展すると日本としての経済発展は見込めると言う事で宜しいですか」
「ですが佐野官房長官。日本は戻る事を悲願とした筈です。世論もその様な方向に向いていると思っています」
「どうでしょう。日本が世界機関を作り恒久的平和世界を構築する事が可能ではないかと思います。
これは悲惨な経験をした日本だからこそ出来ると考えます」高野防衛大臣は提言する。
「そうですね。世論の声を聞きたいですね」と総理。
「判りました。総理早急に記者会見を設定しましょう。内容は世論を二分すると思いますが、どちらに寄るのか判明すると思います」と佐野官房長官。
「佐野官房長官。危険ではないですか」と高野防衛大臣。
「ですがこの状況では国民の声を確かめる必要があります」
「では佐野官房長官。この先はどの様に考えますか」総理は聞く。
「うーん、前代未聞ですが。今だに未整備な国民投票法を至急整備して世論をまとめたいと思います」
「なんとも壮大な」
「ですが総理。戻る戻らないの議論をしても国民感情に遺恨を残します。ならば国民が納得する方法を模索すべきだと思います」
「各大臣にお聞きします。いや副大臣も含めて意見をお願いします。
この世界に残りたい方はいるのでしょうか」
「総理。その事については条件付けが必要だと思います」
「たとえば?」
「はい、個人で残りたいと言う方々はわずかだと思います。この剣や魔獣が闊歩する世界は日本人にとっては戦国時代にタイムスリップする程の危険だと思います。非科学的ですが。
ですが日本全体が残ると言う事であれば自衛隊もあり、世界進出についても比較的に安全確保できます。
ならば残留希望も多くなると思います」
「そうですね。言われる事はもっともだと推察します」
「どうでしょう総理。意見は出尽くしたと思いますが」
「では早急に国民投票法を国会提出し、同時に記者会見をして国民に審判を付託しましょう。
その上でどちらに傾いても対応できるように施策を考えます」
「総理。野党対策が困難でしょう」
「ならば・・・解散総選挙で決着をつけるという事でしょうか」
「総理の御決断次第です」
「国難に際し、その決断は必要な事だと思っています」
「総理のご判断は支持致します。その様に手配いたします」
「よろしく頼みます。決断を国民に委ねることについては心が痛みます。政府としての無力を感じます」
日本として重要な決断する時刻が迫っている。
日本は残るのか戻るのか・・・日本にとって幸福な選択が出来るのでしょうか。
ありがとうございます。