第211話 国家安全保障会議8
大変遅くなりました。
どうも手術をし、腎臓片方摘出してから寒暖差が体に負担をかけて、なにもできなくなり途方に暮れていたのですが、気温も寒くなって来て体調も良くなってきました。(うつかもと思ったのですが違いました)
ご心配おかけして申し訳ありません。復活したと信じたいです。
日本が転移した後に開かれた8回目の国家安全保障会議が開催されて各大臣がここ首相官邸に集まってくる。
各大臣は首相官邸内の控室に集まり、マスコミの撮影に晒されていた。
当壁総理が入ってくると、各大臣は一斉に立ち上がり、首相は慣れた様子で中央の椅子に座る。
各大臣は遅れて座り、一斉にマスコミのフラッシュがたかれまぶしくなる。なおテレビも入っていた。
出入り口に一番近い佐野官房長官が「そろそろ時間です」と伝える。
「行きましょうか」当壁総理が一声発し立ち上がる。各大臣も一斉に立ち上がり奥の部屋に入っていく。
佐野官房長官がマスコミ各社に「国家安全保障会議に入ります。結果は後程、記者会見を開催します」とだけ言い、佐野官房長官も奥の部屋に入っていく。
日本が異常な事態に巻き込まれてから8回目の安全保障会議である。
内閣を形成する各大臣、副大臣と政務次官が一堂に集まる。
「では国家安全保障会議を開催します。まずは総理お願いします」最後に入って来た佐野官房長官が皆を見回し、揃っているかを確認してから発声した。
「佐野官房長官ありがとう。
さて皆さん緊急の招集に対しお集まり頂き感謝する。
日本が未曽有の状態に巻き込まれてから行う国家安全保障会議としては8回目となります。
本日は知らせていない者もおると思いますが、我が国として重大な局面を迎えようとしている為に緊急招集をしました。
(皆を見渡し一呼吸おいて)
そこで各大臣並びに副大臣及び政務次官に重大内容を告げると共に、今後の方針について検討頂く事を予定している。
非常に重要な案件であり、秘匿条項については順守をお願いしたい。
では概要から説明します。
佐野官房長官お願いします」
「はい、ではこれまでの経緯を説明します。
南大陸への遠征については第7回国家安全保障会議に検討され、結果南大陸への派兵する事で結論としました。
それから1か月後に南大陸遠征隊は移動を開始、こまかい戦闘は端折りますがドルツ国に潜入浸透し、敵首都「ハイデルバーグ」にある敵司令部およびダークエルフ居城を占拠、続いて軍港「ボン」並びに軍需産業渠底「クルプセン」占拠し、ドルツの戦闘継続能力を粉砕し、ドルツ側と交渉、ドルツ首相ハインリッヒ・ベトーラゼ氏と停戦合意を経て、武器弾薬の供給源であるボン港に進軍し、これを占拠しドルツ拠点としてドルツ国民が避難していた、「ハイリン」及び「ドルツムント」に進軍し、人道支援を実施しておりました。
これはドルツ国民に対して、食生活などの食料支援に灌漑整備、街道整備などを至急実施しました。
本来であれば、これで事足りる筈でしたが・・・
そののちハイリンにある通称「ダークエルフの塔」にて、遠征隊の南司令と吉田参謀、そして協力頂いたハイエルフ達が神に会うと言う事で、首相指示の元に「元の世界への帰還」を要請しました。
会談自体は成功し、「神」の記録もとれましたが音声や画像動画については全て消えており、吉田君が残した議事録のみが、その会話を証明するものとなっています。
ここでの会談を元に、1か月後ドルツは元の世界に転移していました。
これを南大陸遠征隊が再上陸し、無事な転移を確認しております。
次は日本の番となっていますが、ここに来て問題が顕著になっています。
1つは神との会談時確認したのですが、我々がいた元の世界「ワールド」において武力衝突が発生している点、特に我々の住む日本列島が転移によって日本海と太平洋を繋ぐ広大な海となり、ここに海底基地を中国や北朝鮮が設置した事。これは神が何とかすると明言されており、手段は判りませんが解決する物と期待しております。
して2つ目の問題として、この現世といいますか旧帝国に併合された諸小国の独立運動が活発化しています。
現に、ドーサ大陸北西に位置するトライト島及びリル島はマーリック魔法王国として王政がありましたが帝国の侵略により壊滅し、併合されております。
その時に人質として王女を帝国は捕えていましたが、日本によって救出され、トライト島に戻されております。
そのマーリック魔法王国勢力が、王女を女王に奉じて「トライト国」として独立宣言をし、アトラム王国は直ちに批准しております。しかし我が国も批准し正式王朝として認める予定であります。
この新生トライト国については女神教としてハイエルフがバックについており宗教改革は成功するでしょう。
トライト国については比較的うまく行っているのですが、困った問題としては、宗谷特別行政区に住む獣人やドワーフ・エルフ達は日本の保護がなくなれば旧帝国勢力が攻めてくると本気で信じている点です。
しかも何やら独立の話まで出ている様で、住民たちは団結している様です」
「はい総理」
「高野防衛大臣、最新状況を説明して欲しい」
「はい説明させて頂きます
宗谷特別行政区については我が国が最初に開発し、我が国の領土であると宣言し、旧帝国も承認しております。
そして、帝国に迫害を受けていた獣人、エルフ、ドワーフ等並びに奴隷となった人間を含め保護し、住居と仕事を与え生活を安定させています。今では宗谷特別行政区の労働は彼らにかかっています。それだけ貴重な労働力と言う事です。
そして彼らの言い分である旧帝国勢力が侵略するとの考え方は極端だと思いますが、ドーサ大陸東の南側は旧帝国軍人が夜盗化し、村を襲っている記録があります。
その為に宗谷特別行政区では獣人を選抜し警察官として、夜盗鎮圧を実施しており大きな成果を上げております。
実はそれが、それこそが独立運動の起点であり、大変頭を悩める事態となっております。
ですが、彼らが思うのも無理ではなく日本の保護下で侵略されず生活できている事も、日本が転移してしまえば脅かされると言った状況に入る事は、想像しやすい事だと考えております」
「ではなにかね、旧帝国勢力が「宗谷特別行政区」を占領するべく動いていると言うのですか」
「ええ、外務大臣、すぐにと言う事ではないでしょうが、新大島から日本への中継地点として宗谷特別行政区は重要な物流拠点であり、日本とドーサ大陸両方にとって物流の要です。
問題は労働力もお金も、宗谷特別行政区には集まっており、旧帝国からしたら喉から手が出る程に欲しい地域である事、そして旧帝国では武人優先の考えが根強く、「魔法」を軽視する風潮が見られることにおいて、長距離通信手段は奴隷「エルフ」に頼っていました」
「ですが現在は日本の技術による無線網を確立していると聞いているし、一部は電話回線も」
「はい、経済産業大臣その通りであります。ですが我が国が転移し、それらのメンテナンスが出来なくなった時、旧帝国の技術レベルは以前同等に戻るとの試算があります。そうですよねドーサ大陸特別大臣」
「遺憾ながら、高野防衛大臣の言う通りです。どれーつ大陸には我々の技術に対するメンテ等技術者はおりません。全て我々が中心となって工事、調整、メンテナンス及び運用を実施しております。
我々が転移してしまえば残された技術継承できる技術者はおりません」
「そうですか、我が国が転移してしまえば、あたりまえですがこのされた者達は、日本転移以前の状態に戻る・・確かに考えてみればそうですね」当壁総理は頭をかかえる。
「ええ、総理、我が国が転移していなくなる限りにおいては、後の態勢についてきちんと筋道を付けないと混沌としてしまう事は容易に想像できます」と高野防衛大臣は説明する。
「そうか、ハイエルフ達に「女神教」として平和宗教の布教をお願いしたが、無理なのか」
「それですが総理、今のところはアトラム王国と新生トライト国に国宗教としての女神教は定着を始めています。ですが旧帝国領としては、現在まで無宗教であったために「女神教」の浸透は一般市民の間にも少ししか浸透しておりません」
「してドーサ大陸への女神教布教にどの程度時間がかかると推測しているのか」
「はい、早くて3年・・遅ければ10年と試算しております」と佐野官房長官。
「そんなにか・・・1か月後転移は無理なのか」
高野防衛大臣が言いにくそうに発言する。
「総理、神との対話でもありました通り現世での対立に我々が戻れば拍車をかけて状況変化は著しくなります。神が対応すると約束していましたが、多分中国や北朝鮮の海底軍事を何らかの方法で壊滅させると思いますが・・・ここからは推測ですが、各国は日本が戻り次第我々に対して言いがかりをつけて、世界情勢を混乱させる事が想像できます。それにより自分達の軍事能力を一気に引き上げて、EUや米国を巻き込み、アジアを中心とした混乱を呼び起こすと試算しており、我が国はその渦中に入ると思っています。
神がどの様な手段で、中国や北朝鮮を抑えるのか想像もできませんが・・・
神と名乗る「管理者」が細かいことまで考え、実施するとは思っていません。
それはドルツや我が国に対して行った事を分析すれば推論は容易で、管理者が出来る事は天変地異を引き起こし、各国基地を壊滅に追いやる事ではと思っています」
「高野大臣、それは理解できる」
「でしたら総理、1か月と言う期限は現実的では無いと申し上げます」
「うむ・・・そうだな。今は戻る時期ではないのかも知れないな」各大臣は口々に発言をしてる。
「悩ましいな。ドーサ大陸旧帝国問題、ドーサ大陸我が国領土問題、そしてなにより元の世界の軍事バランス、どれをとっても重大な問題だらけだな」と当壁総理。
結局方向性を見いだせないままに国家安全保障会議は終了したが・・・
後日、高野防衛大臣が当壁総理に呼ばれ、密命を受けた。
「高野防衛大臣、愁いの一つを解決させる為に、旧帝都にて初めてのドーサ大陸会議をお願いしたい」
「はい、状況は理解していますが日本が転移する事を隠しての会議ですよね。成果は期待できないと思いますし、日本がなくなる事は既に公然の秘密とされています」
「そんなに早く伝わっているのか」
「ええ、新大島に遠征隊が逗留した際に感の良い者が・・・」
「だがその時点でドルツが戻った事は秘密だったのだろう」
「はい、その様にかん口令を敷きましたので漏れていない筈なのですが」
「そうか、自衛隊が漏らすとは考えられないな」
「はい」
「とすれば新大島の港湾労働者か」
「民間人ですので」
「うむ」
「とにかく、旧帝国の動きをけん制する為に、ドーサ大陸における各県知事を集め、意思の統一を図ってほしい」
「意思は理解しました。ですが」
「まだなにか」
「はい、知事の大半は旧都市領主で我が国の侵攻に快く思っていない者も多数です。
表面上は武力で敵わないので仕方なく従っておりますが」
「そうか、詳細は任せるがうまくやってほしい」
「でしたら私からもお願いが」
「なんだね」
「はい、アトラム王国とトライト国なのですが、トライト国の承認とアトラム王国からの自衛隊引上げを実施しませんと転移に間に合わなくなります」
「そうだな、それは考慮していた。外務大臣に交渉をお願いするとしよう」
「是非お願いします。私はドーサ大陸会議の準備に入ります」
「よろしく頼む」
ありがとうございました。
風雲急を告げるドーサ大陸、現世での軍事バランス・・・台湾はどうなっているのでしょうか心配です。