第203話 ハイエルフ北極会合 その2
遅くなりすいません。
今回投稿した203話と次の204話と205話について何度も書き直しして整合性を取り、その後の話に流れる部分をスムースにしようと努力していました。
難産です。
旗艦「いずも」会議室
南、吉田、ハイエルフ10名が会議テーブルに並んで座っている。
「では皆さんご準備は宜しいですか。ここから新大島まで飛行します。片道1700km以上あります」
「吉田君、時間はどの位ですか」
「はい新大島より空自のC-2を回してもらいましたので、巡航速度で約2時間のフライトになります」
「そうか助かる。V-22では5時間近くかかる所だ」
「ええ、C-2を割り振って頂き助かりました。陸自のV-22を覚悟していましたので」
「防衛省に感謝だな」
「ええ助かります」
「高野防衛大臣との合流予定は決まったのか」
「ええ、明日本土から1300到着予定です。合流次第、新大島の回廊に出発する予定です」
「了解した」
「では準備お願いします。30分後出発します」
「族長はよろしいですか」
『私たちは問題ありません』
「ハイエルフの10名は直ぐにでもV-22への移動を開始できます」
「そうか、すぐに向かうとする」
「お願いします」
南司令と吉田幕僚、ハイエルフ10名は「いずも」飛行甲板に用意されている陸自V-22に急いで乗りこみ、
ボン防衛空港に向けて飛び立つ。
「C-2は駐機しているのかね」
「はい、現在は整備と給油を実施しています」
「そうか、空自の整備員もボンに待機しているので助かるな」
「ええ、緊急物資はC-2にて本国から新大島経由で往復していますので」
「旅客機も使えるのだろう」
「はい、我々が南大陸から撤収する際には、民間機を5機チャーターしています」
「ん。足りないと思うが」
「ええ、輸送艦艇や補助艦艇がありますし、米軍については先に送り出す予定となっています」
「そうか、彼らも南大陸上陸に対して大きく貢献したからな。先に送り出しても良いだろ。
ドルツに対する支援は我々だけでも大丈夫だしな」
「ええ、そのつもりで撤収順位を組んでおります」
「そうか。司令官として米国大使館に公式ルートで礼を伝えるか」
南は改めて族長に向き、「ハイエルフ各族への連絡は終わっていますか」
『はい、大丈夫ですよ。ハイリンの塔から発信しています』
「そうですか、ありがとうございます。これからが本番ですね」
『私たちも支援しますが、心を読む事が出来るハイエルフに対しては誠実な会話をお願いします』
「はい、わかっているつもりですが、更に気を付けます」
南は今から緊張してきた。
この後の予定は、新大島空港に1600到着し、空港に隣接しているホテルに宿泊する。
翌日は、高野防衛大臣を迎えて陸自の護衛により回廊に出発し、ハイエルフ族長の操作によって北極大陸に回廊を開けて、ハイエルフ全族の会議を開催する。
人間の思想を読む事ができるハイエルフ相手に、世界秩序維持させる為の協力要請をすることは最難関であると感じている。
予定通り新大島空港に到着した、南と吉田、それにハイエルフ10名はホテルの部屋をあてがわれて一旦部屋に入る。
南は吉田海将補に食事は「ハイエルフと一緒に、打合せしながら」と伝え、吉田はレストランの小宴会場を会食の場として手配した。
時間となりハイエルフ10名が集まってくる。
「族長殿、我々はこの様な会食が意見交換できる良い場であると考えています」
『先ほどから南司令官の思念が目まぐるしく動いているのを感じています。私たち相手に緊張しておられるのですね。いや明日の会議の事ですかね』
「はい、読まれてしまいましたか。お恥ずかしい。実は急遽会食とさせて頂いたのは、明日の対策と申しますか、ハイエルフの皆さまが神から与えられた役目を変えなければならないと言う事です」
『そのような事だと思いました。ですが「神」からはっきりと南に任すと言われた以上、我々ハイエルフに抗う事はできません』
「人間の話し合いでは、役目を変えるなら納得できる理由を与えなければ正確に職務を全うする事が困難です。ですのでハイエルフの皆さまにも命令ではなく、納得をして頂きたいと思っています」
『そうですね。私たちハイエルフは生まれた時から神と繋がり、神の知識によって知恵が拡大していきます。つまり我々ハイエルフは思念で神と繋がっている分、全て理解はしています。
それがたとえ遠い地に住むハイエルフだろうが、神の意思は通じています』
「つまりそれは、神が任せると言った言葉が全てのハイエルフに伝わっていると言う事ですか」
『言葉ではありませんが、その様な事です』
「それと気になっているのは、例の神との面談した際に、この世界の管理は族長殿に任せると言っていたと認識しています。それはどういう事でしょうか」
『この様に考えてください。今までダークエルフがこの世界の管理者としてドルツを保護し指揮をしていました。また「ヘルゲヘナ」起動の準備に各ハイエルフ族を北極大陸に集めましたが、それは神の命令、
ですがその起動はダークエルフの手形で行うのです。それを私に委任されたと言う事』
「つまりダークエルフが行っていた仕事と言うか管理を族長殿に移管されたと考えて宜しいのですか」
『細かいニュアンスは違いますが、概ね正しいです』
「そうですか・・・その様な意味があるとは知りませんでした」
『それは神の都合、あなた方が考える事ではありません』
「いえ、例えばこの世界が混沌した場合には、族長殿が神に提案をして北極にハイエルフ集め、族長が「ヘルゲヘナ」を起動させると言う事で間違いありませんかな」
『そうなるでしょうね』
「つまりダークエルフが行っていた部分を族長が請け負うと」
『簡単に言うとそう言う事です』
「なんとも・・・」
『うふふ、また動き出しましたね』
「あっ失礼しました。どうも頭でいろいろ要素を変えてシミュレートする癖が・・」
『司令官としては優秀です』
「有難うございます」
「みなさん食事を始めましょうか。ご意見ある方は自由に発言をお願いします」と吉田。
「そうだった。折角の新大島名物が冷めてしまう所だった」と南。
一同は一斉に食事を始めた。
前菜のスープは海老の殻から出汁を取った海老味のクリームスープ。
つづいて海老のテリーヌにステーキ。
ハイエルフには香草のサラダと根菜類の炊き込み。
豆乳ソースを使い大豆を肉風にアレンジしたステーキが出ていた。
デザートは新大島果実であるマンゴーに豆乳のアイスを使ったパフェとケーキが並んだ。
吉田が不安を述べる。
「族長殿、私は会議の様子を記録する様に言われていてます。ですが・・ハイエルフ族は思念で会話して、それは何方の会話なのか把握できません。なにか良い方法はないですかね」
『まぁ、了解しました。私たちはハイエルフ族、住んでいる地域が違うだけで族名や氏名などもありません。
記録する吉田さんには大変でしょう。更に問題は・・私たちは思念で会話しますが、族長同士は多次元思念により一瞬で考えが伝わるので、どうしましょう。
そうですね、私たちは念話の波動で、誰の発言か判別します。それと多次元会話ですと説明が出来なくなります。そうですね・・・』
「族長様」
『レイナどうしました』
「はい、多次元念話については私たちも言葉で説明できません。ですが発言者は最初に自己紹介頂ければ念話波動にて説明できるかと思います」
『そうですか、ミーナ、レイナ、リナの3人は吉田さんに会話の内容と誰の発言なのか教えてあげてください』
「はい、その様にさせて頂きます」
『他の者も一緒に北極大陸に行って貰いますが、発言等は私、族長の許可を貰ってください。よいですね』
『『『『『畏まりました』』』』』
『それと、この会議の内容は世界同時でハイエルフには中継されています』
「と言う事は出席していない族長代理のマリアさんも内容を知ると言う事ですね」
『全世界のハイエルフが知ると言うか聞くと言う事です。更にハイエルフ族長ならば会議の映像も見ると言う事です』
「便利ですが、嘘は付けないと言う事ですね」
『嘘をつきたいのですか』
「そういう事では・・・すいません」と吉田は謝る。
当日はみんな早めの就寝。
翌日は朝から新大島は快晴である。
朝食会場のレストランでは、ハイエルフ用にビーガン朝食も用意されている。
南は一人で朝食を摂っている。
「南司令おはようございます」
「おはようございます。ミーナさん」
「お顔に緊張が張り付いていますよ」
「ははは。バレますな」
「決して心を読んではいなくとも、お顔だけでわかりますよ」
南は顔を両手でパンパンと2回叩くと、「ミーナさんありがとうございます」
すでに長くハイエルフと会っているので、同じような顔でも少しの特徴を捉えて判別できるまでにはなっていた。だが南は名前持ちのハイエルフ3名と族長は判別できるのだが、他の6名についてはあまり自信がない。
「あっ南司令お早いですね。横宜しいですか」吉田幕僚も会場に降りてきた。
「かまわんよ」
吉田は座り、「いよいよですね」と言うが南は「そう緊張させるな。先ほどミーナさんからも顔に緊張が張り付いていると言われたばかりだ」
「そうですか、ですがあの戦闘でも冷静であった南司令が緊張している姿が珍しくて」
「儂も人間だと思うのでな、緊張位すると思うぞ。吉田君の方がリラックスしている様に見えるがね」
「はい、私は直前に緊張するタイプなので、今は緊張していません」
「そうか、この後防衛省との打ち合わせを衛星回線で行うから資料の用意はできているな」
「はい抜かりなく」
「そうか、1000に新大島の司令部で打ち合わせだ」
「はい、間に合うように参ります」
南は食事を終わらせ自室に戻る。
吉田は食事を終えると、近くのハイエルフに「1200まで待機をして欲しい」と伝える。
吉田は昨晩作った資料をかばんに詰めて新大島司令部に徒歩で向かう。
南司令には迎えの車が来る予定である。
この世界「ブルーガイア」の運命を決める大切な会議の前に、防衛省との打ち合わせである。
これは高野防衛大臣を乗せた旅客機でも受信できる様に機材を持ち込んで、ファーストクラスを借り切りとしていた。
事前会議を前に、吉田は新大島に広がる大きな透明の青い海と青空を目に焼き付ける様に、港に向かって歩いている。
ありがとうございます。
204話については早めに投稿する予定です。