第202話 ハイエルフ北極会議 その1
遅くなりました。
私事ですが、悪い時には重なる物で1mの場所に乗って高い物を取ろうとした所、ふらついて頭から落ちてしまい、頭は保護したのですが、どこにぶつけたのか右足をぶつけてしまい。
足を引きずっていました。はぁーダメだ。
「族長殿、吉田の報告を受けました。説得ありがとうございます」と南司令。
『いえ、皆は戻れることに喜んでいましたよ』
「それですが、私個人としてはハインリッヒ・ベトーラゼが首相に戻る事を承知するのか心配していました」
『戻れると聞いて、ベトーラゼさんの揺れ動いていた感情が一つの方向に向いたようです』
「そうですか、吉田から報告は受けていましたが心配していました、ありがとうございます」
『南司令、ドルツ国民は元の世界に戻る事を好意的に受け止めていました。たとえ6000年経過していようと故郷に戻れる事自体は嬉しい事なのだと思います』
「そうでしたか。それなら安心ですね」
『南司令、お聞きします。ドルツの負傷兵などは、いつ戻せるのでしょうか』
「そればかりは、医官の判断が優先されます。ですが・・1か月間で戻す様に指示はしています」
『そうですか、もし完治が間に合わない負傷兵に対する医療支援が必要かもしれませんね』
「そうですね。医療支援か・・必要だと思います。もし元のドルツ国に受け入れられない場合も考慮して、自立できるだけの食料と資材に医療品支援は行います」
『それはお願いします。それと・・例のハイエルフ族族長を集めた会合はどうしますか』
「はい、それについても早急に開き、各大陸の統治を宗教面から支援する様にしたいと思います」
『その為に、神よりダークエルフの知識を受け継ぎ、操作盤によって全ての地域に扉を開け通路を作れます。ついでに言いますと操作盤を通じて念話を各地の操作盤に伝える事ができます。
北極大陸にも行けますので時期だけ決めてください』
「はい、吉田と共に日本国代表として提案を持参する予定です」
『そうですか。ハイエルフにとって人間達に関わらない事が今までのルール。それを変えるのであれば説得が必要だと思います』
「族長殿は如何思いますか」
『私たちにとっても、人間は関わりを持つと面倒な事だと思っています。この考え方、いや神からの指示を変えるのは大変だと思います』
「ですが、神との約束もありますから、各大陸が平和でなければ我々も強い愁いを残す事になります。
それを考えるとハイエルフの皆さんには是非「女神」として平和の象徴になって頂きたい」
『何度も言いますが、私たちにとって非常に面倒な事です』
「理解はできますが、宗教としての平和維持は強力です。問題は何千年も経過すると趣旨が変わってしまう事です。ですが「生神」としてのハイエルフ族の存在があれば、アトラム王国の例はありますが自由に信仰内容を変える事は無くなると思います。またその傾向があれば族長が神から受け継いだ管理者としての権限を行使すると脅せば維持できると考えています」
『そうですね、私たちハイエルフは、過去は故意に介入していません。それが間違った行いが横行していた事だと反省しています』
「本来、ハイエルフ族は崇められる存在だと私は思っています。元の世界で日本は古来より、その様な能力を持つ人々を崇め宗教頂点としていた歴史があります」
『わかりました。私たちの為にも、この世界秩序の為にも人前に姿を現す覚悟をします』
「是非よろしくお願いします」
・・
吉田海将補が司令執務室に入って来た。
「司令報告書と神との会話を文書化した物をお持ちしました」
「吉田海将補、ハイエルフ他種族との会合を早急に予定したい」
「はい、すでに案はできています」
「宜しい、では報告書と会話議事を早急に防衛省に送って環境を整えてほしい」
「はい、すぐに手配いたします」
・・
防衛省統合作戦本部(南大陸上陸作戦の為の特別本部)
「立川統合幕僚長、現地より報告書が届きました」
「宜しい、(特別防衛機密)に指定の上、大臣に渡して欲しい」
「了解しました」
「後ほど私が説明に伺うのでよろしく頼む」
「その様に手配いたします」
・・
防衛省内、防衛大臣執務室
「立川入ります」
「お待ちしていました」と高野防衛大臣。
「はっ」室内には複数の職員が待機している。
「では傍聴室に行きましょう」
「はい」「そうそう朝日防衛副大臣も同席お願いします」「同席します」
三人は大臣執務室の後ろにある傍聴室(厳重に盗聴防御された部屋)にて打ち合わせを始める。
「立川統合幕僚総監、事前に書類は読んでいますが副大臣は初めてですから、最初から説明をお願いします」
「はい(特別防衛機密)に指定させて頂きましたので、そのつもりでお願いします」
「心得ました」と副大臣。
「では説明します」
「うむ」
「現地ハイリンにあるダークエルフ塔に対し調査を行った所、内部に転移門を発見。
ハイエルフの協力により回廊を繋げましたが、神と称する人物の意思であった事。
報告によりますと、この世のどこでもない空間に呼ばれ、そこで直接「神」と称する人物との会話がなされたとあります。ここまででご質問ありますか」
「神ですか、それは人物だったのですか?集団催眠とか考えられませんか」と副大臣。
「その実態については不明としかお答えできません。神を観察した記録はありますが本物だと推定する証拠はありません。ただし後ほど出てきますがハイエルフとダークエルフは、その人物を神または管理者と呼称しており、我々はじめドルツもこの世界に召喚した事を認めていたと報告にあります」
「神ですか・・・」
「そうですね。朝日君、総理はじめ内閣への説明や国会への説明が思いやられます」
「防衛大臣としてのご心中ご察します。神の存在自体を肯定しないと話は進まないと思います」
「そうだな。それが最大の問題だな。無神論者が多い議員に通用する話ではないな」
「あっ失礼、立川統合幕僚長続けてください」
「はい続けさせていただきます」
「そこでの会話は全て報告書にある通り進んでいます。簡単に説明しますと、神と呼ばれる人物がこの世界に日本国を呼び出した。その目的は世界秩序の再構築と言う事です。神やハイエルフの話を統合しますと、この世界秩序が乱れ大陸間戦争に発展した時に、神の命令によりハイエルフが「ヘルゲヘナ」と呼ばれる最終兵器で生物全てを壊滅させ再構築を繰り返したとあります。
そしてその「ヘルゲヘナ」はこの世界に存在すると言う事です」
「最終兵器ですか・・・」
「どんな兵器か判別はできますか」と朝日。
「その内容については報告にはありません。ただし、この世界に存在する全ての生物を消滅させるだけの武器だと聞いています」
「核では無いのですね」
「元の世界でも神話としてソドムとゴモラの例や、世界的大洪水の例もあります」
「あのノアの洪水の事ですね。元の世界にも「ヘルゲヘナ」はあると言う事ですか」と朝日。
「その真偽は判りません。ですが神と言う人物が各世界にその様な物を用意している事になります」
「立川幕僚長続けて欲しい」
「はい。神との会話については議事録が資料として添付されています。
その話の結果、先にドルツを元の世界に戻す事を約束しています。
その手順についてはハイエルフ族長より神に連絡して、戻すらしいですが、この手順は日本を戻す際にも同じだと言う事です」
「えっ、日本も戻れるのですか」
「そうなんだ。それが、これを最高機密に指定した根拠でもある」
「国民が知ったらパニックになりますね」
「朝日副大臣、それもありますが、秩序を取り戻しつつある各大陸国家が、日本転移前の状態に戻る事が懸念され、それは神と言われる人物の意図と違う事になります」
「そうか・・確かに国として確立したドーサ大陸の各国としては、舵取りが厳しくなりますね。
軍事力的にはアトラム王国が一番有利なのでしょうか」
「そうですね。副大臣。ドーサ大陸各国については武装解除し、現在、自国防衛の為に再構築の最中ですので軍事力なら軽戦車まで生産しているアトラム王国が有利でしょうね」
「それと懸念はスルホン帝国に吸収された国が再蜂起して、独立運動を展開する事があると思います」
「そうですね。あの魔法何とかという国がありましたな」
「報告によるとハイエルフは元の場所に戻り宗教の頂点として君臨させると言う、南司令の構想がありますがそれに、元マーベリック魔法国のハイエルフも含まれます」
「この世界で一番魔法研究が発展していた国ですな」
「ええ、魔法自体は武器としては弱い様で、人間なら盾を用意すれば無力化できるそうです」
「その程度ですか・・強力な魔法は無いと言う事ですね」
「ええ、その様に聞いています」
「ですが、エルフの長距離通信をはじめとする実用化にはマーベリック魔法国の研究成果があるそうです」
「なるほど、魔法研究にたけた国と言う事ですね。それは残党がいれば国再建運動が起きる可能性が高いと言う事です」
「それは火種が起きる前に、ハイエルフを使って先に国を再建させる事が良いのではと考えます」
「うまく行きますかね」
「旨く行かせる事が大切でと思います」
「そうですね・・・」高野防衛大臣は悩む。
「高野大臣、それも踏まえてハイエルフの協力を求めないと、我々が戻った後の秩序が想定と変わってしまいます」
「そうですね。秩序が乱れれ、神が「ヘルゲヘナ」使用を決断するいう事は、我々がこの世界を平定した意味が無くなります」
「その為のハイエルフに対する協力要請ですか・・・南司令は信じていますが、その責任はとても重い物になります・・・」高野大臣は考え込む。
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「ここは総理から全権大使に任命された南司令に協力したいと考えています」
「まさか・・大臣、北極大陸に行かれるのですか」
「それを考えています。日本の命運を南君に任せるのは酷だと思いませんか」
「ですが・・」
「総理の許可を貰わないと何とも言えませんが、そのつもりでいます」
「わかりました。その方向で協力させて頂きます」
「そうですね、全ての日本人が引き上げる予定で各国の態勢を維持する為には、宗教頂点としてのハイエルフは絶対に必要ですね」
「我々が消えた後の、世界の事を考えると必要ですね」
「その為の構想を南司令の案を元に組み立てる様にしましょう。私は急いで総理と話をする事にします」
「お願いします」
こうして防衛省としては、日本が転移した後の世界構想に全力で当たる事を覚悟した。
高野防衛大臣は急いで首相官邸にて説明し、日本移転に関する会議を総理が開催すべく内閣を招集し、日本転移に関する重要な会議を開催し、その内容について最重要機密として扱い、転移の日に向けて各省庁一丸となり支援する事に決まり、ハイエルフ族交渉の責任者として高野防衛大臣が任命された。
高野防衛大臣は至急南司令と無線による打合せの後に新大島に向かい、南司令とハイエルフ族との合流を行うべく行動していた。
南大陸からは通路を使用すると新大島まで2000kmの移動は一瞬である。
ありがとうございます。
次回はハイエルフとの会合となります。(書き始めてます)