第194話 ドルツ救済の開始 その3
大混乱のドルトムント。
一応の救済計画はスタートしました。物資配給は効率的には行えないのが問題です。
誤字脱字報告ありがとうございます。
冬から急に夏らしい温度になり体調がおかしいです。
やたら眠くて書く意欲が・・・遅くなってすいません。
ドリンク剤と栄養剤により奮い立たせています。
「急げ、救援物資を待っている人々がいるのだぞ」
「了解、出来るだけ積み込みます」
ボン港では戻って来たLCACに燃料や緊急物資の積み込みで大混乱していた。
これと別に、ボン港に隣接している航空基地からは荷物を満載したV-22(オスブレイ)が何度も荷物を運んでいる。
次第にドルトムントの避難民キャンプ前では物資が積みあがってきた。
「よし次は、炊き出しを作るぞ」野外炊具1号を使用しての炊き出しが始まる。
野外炊具1号はトラックけん引されて、かまど×6(炊飯もスープも主菜料理もできる)、野菜調理器×1(野菜カット専用)、球根皮剥器×2(皮むき器)、発電機×2で構成され、一度に炊飯含めて200人分が1時間以内にできる。
医療テントが設営され、避難民の健康診断も開始される。
やはり、子供たちの発育不良が目立つ。
「みなさん並んで、医者は複数います。軽度の方はこちら、症状の重い方は向こうのテントにお願いします」
元捕虜のドルツ兵が率先して住民を誘導する。
「全ドルツ国民を診断するのに、まだまだかかるな」
「ええ、ですがドルツでは医者も従軍していましたので、この状態でも助かっています」
「それだがな、戦勝国の日本は、なぜここまでしてくれるのだろうと考えてしまう」
「それです、私も不思議です。敗戦国の国民が死のうが日本としては関係ないだろうと思う。現にドルツが勝ったなら日本がどうなろうと関係ないと言うか、気にしないと思う」
「考えても結論はでない。なら一人でも多くの住人を診断してもらう事が先だな」
「まったくだ」
ドルツ兵のやり取りに、ドルツ住民も感謝している。
一方現地指揮テントでは、空挺団から派遣されている隊員が。
「うむ。やはり栄養状態は悪いな。食事でどこまで改善されるかだな」
「やはりそうですか。可哀そうに食べていないのですね。こんなに腕が細い」
佐渡で人質解放作戦に参加した門真美幸2等陸曹がそこにはいた。
彼女は空挺団第1普通科大隊第1中隊、第3小隊の陸曹である。
「看護資格もっている美幸が見てもそう思うか」
「はい、文明国でここまで酷い状況は、内戦状態にある国や難民キャンプ以外に知らないです」
「そうか、第一中隊は物資誘導と配給を優先して欲しい。炊き出しだけではこれだけの人数はさばけないからな」
「ええ、栄養失調の酷い国民には「炊き出し」その他の軽度の方は食糧支援を中心に実施しています」
「うむ。大変だろうが、しばらくその体制で続けて欲しい」
「了解しております」
「それと、この緊急物資を闇取引されない様に注意して欲しい」
「勿論、それを一番警戒しております」
ドルツ難民キャンプ化した「ドルトムント」は、大型の待合テントと診察の為のテントが設営されて、配給用物資は隣に積み上げられている。
ドルツ住民の長い行列が続く。
「何とか効率的に渡せる方法は無い物か」配給担当の空挺団隊員は悩む。
しかし良い結論が出せないままに、長い配給を受ける列は続く。
当初2つだった窓口は、今は8つにもなっている。
市内では警備担当の隊員が、目を光らせる。
闇市などでの物資売買や窃盗、恐喝などに警戒する。
だが、本当に困っていたのだろう、その様な傾向は今の所ない様だ。
物資渡し口の元ドルツ兵士が対応する。
「人数は」「5人家族です」「子供はいるか」「はい2人程」「ではこの5人分の食料3日分と子供達にはこれを、受け取ったら、向こうの窓口で日用品を受け取って今日は終わりです」
「日用品ですか・・・」「そうだ、日本は日用品まで支給対象にしている。洗剤にトイレットペーパーに洗顔せっけんや歯磨き用のブラシと歯磨き粉だ。体を洗う洗剤やタオルもあるぞ」
「ありがたい事です」並んでいたドルツ国民は涙を流す。
まだまだ窓口は混乱している。何しろ相手の人数が多すぎるのだ。
それでも隊員達、ドルツ元兵士は徹夜で列をさばいていた。
医療センター化したテントでは、栄養不良の子供や病気の子供達に分けられている。
軽症の子供たちは栄養剤と炊き出しを配給して、みるみる回復していく。
「入浴テント設営完了です」
「よし、衛生状態の悪い子供を優先して入浴させてくれ」
後回しになっていた入浴施設のテントも設営を完了し、近くの川から水を汲み上げ、浄化して沸かした風呂が出来ていた。
だが、住民15万に対して1つの入浴施設では不足している為に衛生状態が悪い子供達が優先されていた。
中では隊員が子供達の体を洗って清潔にしている。それは重労働であった。
ドルトムントでは48時間かかったが、一通りの住民に対して配給を終えた。
当初窓口は8ヶ所迄増え、さらに20ヶ所に受け渡し場所が増えたが、長蛇の列も先が見えて来た。
「お前達交代しろ、まだ3日分しか渡せてないから、明日か明後日に同じ様に列が出来るぞ。今のうちに交代で休め」
陸戦本部は、今や難民救済本部と化した。
橋本陸将補陸戦司令と佐々木陸戦副司令の会話。
「「367施」と「368施」の進捗はどうか」
「はい、天然ダムに到着し現地調査を開始しています。冠水した街道の復旧ができませんと輸送は効率的に行えませんので」
「そうだが、可能なのか」
「ええ、土石の滞留によるダムですので、爆破も許可しています」
「そうか、勿体ないがF-35による爆撃も視野に入れて欲しい。復旧は急がなくてはならない。陸路搬送は命題だな」
「心得ています。LCACだけの搬送は限界がありますから」
「そうだな」
・・
「発破準備」
土石流により水無川となった元の川に水を戻すための誘導路確保の為に、近隣に溜まった土砂をショベルでならし、水流を誘導している。
暴風による土石流で流れは変わってしまい、それが自然ダムを造っていたが、流れを元の川に戻すために途中の支流をせき止め、本流に流すために発破を行う。
「確認」
「回路確認・・・異常なし」
「1分後発破開始、退避、退避」
「退避完了」
「退避確認」
秒読みは続く。
「ドーン」重い音が森にこだまする。
「確認!」
「確認・・・異常なし」
いくつかの支流に別れて、本来の本流は水無川となっていたが、川底をさらい、支流を発破によりせき止め本流に水が流れ出し、一応の工事は終了した。
これで自然ダムとなった土石の取り除きに目途がついた。
・・
翌日10時より自然ダムに仕掛けたC4にて土砂の爆破が予定されていた。
幸運な事に、下流に人の住む場所は無く、決壊させても被害は無いと判断された。
時間となった。
「確認」
「回路確認・・・異常なし」
「よし退避。発破60秒前」、「367施」「368施」に協力している水陸機動団施設中隊が発破準備をしていた。
「退避! 退避!」
「退避確認」
55秒後爆裂音が街道に響き渡る。
街道に溜まった水の水位が急激に下がる。
「成功」
水が次第に無くなる街道は悲惨な状態となっている。
水圧によって街道の至る所が斜めに削られ通行できない状態となっている。
堆積していた土砂が街道上にも残っている。
「これは酷いな」
「ええ、ですが陸路による補給を確保する為に必要です」
「そうだな。復旧不可能な場所には橋をかけるしかないな」
「その方が確実です」
「一刻も早く街道を使える状態に復旧させる事が命題だ。頑張ろう」
この頃になると森に迂回路を作り、LCACはそちらの迂回路を使用している。
約1kmに渡って通行不可となっていた街道に対する工事か始まる。
街道に重機の音が複数響き渡り、それは2日も続く、いや2日で街道整備工事は終わったのだ。
短くてすいません。
眠い・・