第193話 ドルツ救済の開始 その2
救済計画が始まりました。
難民15万人に対し自衛隊は何処までできるのでしょうか。
キーボードをメカタイプに変えました。不慣れですので誤字多めだと思います。
誤字脱字報告ありがとうございます。
LCAC輸送船団・・かっこいい
タイトル変更しました。つながりが・・・・
ここは「いずも」内会議室。
南海将と側近参謀に陸戦司令の橋本陸将補陸戦司令に佐々木陸戦副司令と参謀が集まっている。
「早速だが、陸路の見込みはついたかね」と南。
「いろいろ検討しましたが、途中の川が土石流により下流の至る所で堆積して、自然ダムを作っており道路は冠水して車両の通行は難しい状況です」と佐々木陸戦副司令が説明する。
「そうですか、陸路が使えないと空から運ぶしかないですね」
「ええっ現地の調査によると、我々が上陸する1週間前に豪雨が南大陸中央部を襲い、結果作物の90%が流され収穫量は大きく減少したそうです。それが食料難に拍車をかけて飢餓状態に入った様です」
「ドルツ国民は15万人と聞いていますが、どの程度が」
「ほとんど全員です」
「それは・・・」
「ええっドルツにとっては緊急事態です。本来戦争などと言う余裕はない筈です」
「そんな状況で」
「なに考えているんだドルツ首脳は、いやダークエルフか」
「人の命など、取るに足りないのでしょう」
「本当に本末転倒だな。「民」が居なければ国家は成立しないのに」
「その通りだと思います」
「佐々木副司令、詳細の続きをお願いする」
「はい、この川は本来南大陸中央の山から流れ出ていますが、先ほど言った集中豪雨によって大規模な土石流が発生し、川沿線を巻き込んで堆積しています。この街道に近い一帯が一番ひどく、大きさ直径1キロの湖化しています」
「その自然ダムに道路が飲み込まれているのか」
「南司令、その通りです。まず輸送網を形成する為にも、この自然ダムは破壊するか水位を下げる為の誘導路を作るしか手がありません。
そこで我々は施設隊の協力を受けて、大規模破壊を実施します。
それが一番簡単で確実です」
「うむ。手法は任せる。道路を使用可能な状態に早急にして欲しい」
「ええ、それを考慮した作戦となります。明後日12時に爆破します」
「明後日か、だがドルツ国民の飢餓状態は早急に手を打たないといけないのだろう」
「はい、それまでの間はLCAC(LCAC-1級エア・クッション型揚陸艇)による輸送を実施します。
あれですと自然ダムも越えられますので、食料や医療品に簡易手当可能な1トン半救急車と野外手術システムも運べます。
それと炊き出し用の車両に浴室テントに野戦病院ユニットも移設可能です」
「そうだな、日本における災害並みの支援が必要であろう。LCACは良い選択だと思う」
「では南司令、揚陸船団と連携しまして陸戦隊はその計画を立案します。早急なご承認をお願いします」
「心得た、優先して決裁するようにする。早急に提出をお願いしたい」
「はい、要旨はできていますので細部調整だけですので、早急に提出します」
「その他に支援が必要な物はありますか。日本からの第5次輸送船団に考慮しますから、ついでにお願いします。現在の予定では医療品と食料品のドルツ支援が中心となります。ですが薬等は手持ちだけとなります」
「まだ現地の人々を全てみている訳ではありませんが、病気等は統計をとって必要な物はお願いします」
「日本政府との交渉は任せて欲しい」
「心強い限りです」
こうして、ドルツ救援計画についての打ち合わせを終わる。
ドルツ捕虜の管理は海兵隊に任せ、陸戦隊全体で施設団と協力の上、救援隊を急遽組織して稼働させる。
まだ一部の捕虜は「ドルトムント」に送り、国民救済の手伝いを、また「ハイリン」については水没した畑の回復が出来るまで一時「ドルトムント」に移住して貰い、健康管理を実施する事で決まった。
「さて、また忙しくなるぞ」と橋本陸将補陸戦司令は独り言を言う。
その独り言に応じる様に「まったくです」と佐々木陸戦副司令も返す。
その日の内に、東海岸基地やフルート基地から必要な機材や車両をボンに空輸させる。
資材も同じくボンに集結させていく。
またボンでは各揚陸艦からLCACを元造船所に集結させて積み込みを開始していた。
海兵隊のLCC-19ブルー・リッジ級揚陸指揮艦「ブルー・リッジ」、LHD-1ワスプ級強襲揚陸艦「ワスプ」は東海岸に停泊していたが、日本側のドルツ救済計画に応じてボンに向け航海中である。
まもなくワスプのLCAC3艇も合流を果たすと見込まれる。
元造船所には6艇のLCACが待機していて壮観である。
ただしボンでは給油施設が修復途中であり、各LCACの給油はその母艦である揚陸艦まで戻らなければならない。かなり不便だ。
LCACの航続距離は積載時に370kmとボンからドルトムント片道分であり、現地に給油車両も置かなければならない。
「かなりやっつけな計画になるな」と橋本陸将補。
「緊急性第一ですから、仕方ありません」と佐々木1等陸佐は答える。
ドルツ国民15万人に支援する自衛隊1万人、それに自国民救済の為に解放するドルツ捕虜が2万人。
合計18万人の食料と医療の支援をしなければならない。
しかも陸路は寸断され、LCACに頼るしかない現状では輸送もままならない。
LCACの輸送能力は約50tと言われており、場合によっては60tも可能ではあるが無理をしない事に努めた。
LCAC6艇の輸送能力は300tであり、食料だけではなく緊急車両にテント等の資材も運ぶために何度も往復しなければならない。
最初の計画は、LCACの為に給油車両を運び、そして食料と医療用テント等必要な設備が優先となる。
それでも18万人の為の食料としては微力であり、陸路確保が急がれた。
一方、空挺団施設中隊は天然ダムに対処する為に奮闘していた。
日本からは応援として、西部方面隊の第2施設群から第367施設中隊「367施」と第368施設中隊「368施」が「みうら型輸送艦」にてボンに運ばれていた。
これで重機が南大陸に到着した事になる。
第367施設中隊「367施」と第368施設中隊「368施」は到着したその日から、ボンからハイリンに向かう街道整備を実施していた。ドルツでは東海岸からボンに至る街道は舗装までしていたが、ボンからハイリン、そしてドルトムントに至る街道は砂利と土の街道で、舗装までは行かないが轍を消して平坦にして固める作業を行っている。
それはまるで、日本があの日受けた災害復旧を思い出させる工事であった。
いよいよ第一陣のLCAC隊が発進する時間となった。
ドルツ兵士を約5百名乗せ、食料と資材を満載してドルトムントに向かって発進する。
街道はLCAC1台分の幅しかなく、すれ違いも困難である為に集団で移動する事になった。
南司令も「いずも」を降り、訓令の後に手を振って健闘を称える。
LCACはエンジンを始動させて、その車体? 船体を持ち上げ、街道をばく進していく。
実に壮観である。
途中、施設中隊が道を空けるまで待機を余儀なくされたが、手を振って見送る隊員の横をLCACは通り過ぎ、冠水した街道を、何も無いかのように通りすぎ、約60km/hを超える平均速度で5時間の後にドルトムントに到着、風圧による破壊を回避する為に街入り口で大きく迂回し、難民が寝泊まりするコンクリートの団地手前で停車した。
現地にて作業していた隊員が一斉に駆け寄り、LCACから吐き出される車両や資材に食料品の運搬を行っている。ドルツ兵士も率先して自国民救済の為に働いている。
LCACは給油が終わるとボンに戻って行った。
難民団地では医療用テントと食料配給用のテントに入浴施設が作られ、ポンプと浄化装置により風呂にお湯を貯めていく。
なお、料理担当として陸自隊員他に各艦艇の給養員が応援で駆り出されている。
救済日、最初の昼食はカレーライスであった。
ドルツ難民は食べた事無い食べ物に目を丸くしていたが、美味しいと判ると食欲を爆発させていた。
カレー少なめ、ごはん多めの配給である。
ありがとうございました。
救済計画はまだ続きます。