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戦闘国家日本 (自衛隊かく戦えり)  作者: ケイ
第2章 セカンドインパクト(神々の戯れ)
197/251

第192話 助けられた人々 その2

はい、続きを投稿します。

誤字脱字報告ありがとうございます。


 それからソミアちゃんは1か月勉強して、いよいよ仕事探しとなる。

「ソミアさん、1ヵ月お疲れさまでした。如何でした」と鈴木美奈陸士長。

「ミナさんありがとうございます。いろいろ勉強できて楽しかった。帝国では帝都近くに生まれたがゆえに捕らえられ奴隷として献上されてしまいましたが、ここではいろいろなお仕事や街の事も日本の事も勉強できて本当に感謝しています」

「そうですか、それは良かった。それでこれからですがソミアさんに仕事を探さなければいけませんね。

 何か希望はありますか?」

「うーん、いろいろ考えていたのですが、レストランで働けると楽しいかなと思っています」

「接客業ですね。探してみますね」と鈴木美奈陸士長。

「はい、よろしくお願いします」


 こうして難民と言うより、帝国の奴隷だったエルフのソミアちゃんは、宗谷特別行政区での仕事探しを始めるのだった。どんな仕事に就けるか心配である」


 助けられた人々2


「えっ」驚きしかなかった。

 彼は元小規模要塞都市ドフーラの領主であった、ミトラーラ元伯爵である。

 陸上自衛隊は帝都侵攻を決定した時に、ドフーラ近郊を各師団に対する補給拠点として滑走路を含む工事を行い、将来的には大陸の地方空港としての役割を期待していた。

 帝国が崩壊した現在は、ミリム・バロッサ県として地方自治をを託されていた。


 ミトラーラ元伯爵は思い出す。

 勅命を受け帝都にて勅書を受け取った時に、皇帝陛下から言われた「ドフーラは帝都に対し、東の山脈を超えて攻め込んでくるいかなる軍隊に対しても、その進軍を止め、周辺都市と協力して野蛮人を撃ち砕く義務を負っている。よいな。その役目しかと申し付けたぞ」と言われた。

 その時のミトラーラ元伯爵は張り切っていた。

 皇帝陛下から直接下知され、勅書まで受けていた。

 つまり小規模要塞都市ドフーラは、皇帝陛下も帝都守りの要であると宣言されたのだ。

 そんな皇帝陛下の言葉通り、ミトラーラ元伯爵は内政に努め、良い領主であると同時にここを攻めるのは難しい都市、つまり難攻不落を目指していたのだ。


 そんな状況にあり、帝都の出城として重要な立地にある場所であったドフーラに、陸自第2師団第2偵察隊が強襲偵察を行い、警備隊との小規模戦闘に至り、敵対領主としてミトラーラ元伯爵は陸上自衛隊に捕らえられ、要塞都市ミルドに作られた捕虜収容所に送られ、ドミニクにドーサ方面隊元貴族用収容所が作られると再度送り込まれ閉じ込められていた。もう帝国も解体されて久しい時間が流れていた。


「えっ解放・・されるのですか」とミトラーラ元伯爵は、思ってもいなかった言葉に愕然とした。


 本来なら対立した戦犯として、「とうきょう」なる場所で裁判にかけられ、死罪なのだと思い込んでいた。いやそれがむしろ当然だと考えていた。

 最初の陸上自衛隊との交戦によりドフーラの負けを知った商人共は、そうそうに交易都市ドミニクを明け渡し陸上自衛隊に協力までする始末。その結果、交易都市ドミニクに作られたドーサ方面隊収容所と短距離滑走路が帝都攻略を推し進めていた。

「本当に皇帝の仰る通り、小規模要塞都市ドフーラは帝都守りの要であった。残念なのは商人共が管理している交易都市ドミニクだ。ドミニクが兵士を出しドフーラを側面から支えてくれれば、我々は敗北などしなかったのに。ドミニクが早くに陸上自衛隊に協力を申し出た事で、我々は孤立して自衛隊は我々だけを相手にする事が出来たのだ。まったく無念だ」


 ミトラーラ元伯爵はこう思っており、更に自衛隊に敵対した事で戦犯として死刑は確実だと思っていた。


 当日朝まで少し遡る。


「ミトラーラさん。面会です」収容所で顔見知りとなった、ドーサ方面警務隊の第301保安警務中隊隊員がやって来た。

 やがて監禁部屋から出され、面会室に連れていかれたミトラーラ元伯爵は、意外な人物と対峙した。

「久しぶりですな、ミトラーラ元伯爵」

「本当に久しぶりです。ドーザ方面隊中野総監殿」

「そう固くならなくて良いです」

「いえいえ、ついにその時が来たのだなと思います」

「えっ、なんの時ですか」

「えっ、「とうきょう」に護送されて裁判、戦勝国の裁判は大概戦犯は死刑と決まっておる」

「あはは、いや失礼。ミトラーラ元伯爵は思慮深い人物と言う事ですな」

「・・・褒めて頂いても、その・・・」

「言葉が足りませんでした。我々はミトラーラ元伯爵を釈放しようと考えています」


「えっ」ミトラーラ元伯爵は心底驚く。

「えっ、解放・・されるのですか」とミトラーラ元伯爵は、思ってもいなかった言葉に愕然とした。

 先の驚きはここからきていた。


「ええっ旧帝国でも優秀な人材を眠らせおくわけにはいけません。それに命令だから抵抗したのでしょう。

 あなた自身がそれ以外の罪を犯していないならば、待遇を考えています」


「でっ、ですが・・良いのですか」


「良いも何も、ハイエルフの尋問に罪が確認できていません。それどころか、ドフーラの市民からは領主解放の嘆願書まで出ています。そんな領主他にはいないですね」


「民が・・・嘆願・・・間違ってなかった」


「さて、そんな訳で、場所を変えましょう」と中野総監が隊員を呼び、何かを話している。


「ええ、それで結構です。で同席は?」

「はいお伝えします」

「でっ手続きは終わっているのですよね」

「はい、完了しております」

「では今から実行で宜しいですな」

「問題ありません」


「ではミトラーラ元伯爵をつれて行ってください」

「はい、手配します」

 隊員は急いで部屋から出るとどこかに行ってしまう。


 面会室の向こう側では、隊員入って来てミトラーラ元伯爵を立たせ、連れて行った。


 そこまで見送った中野総監殿は、部屋を出て応接室に向かう。

 入るとドーサ方面警務隊長の安川1等陸佐が待っていた。

「手間をかける」

「いえお気にならないでください。仕事ですから」とだけ返す。


 ドアを叩く音が聞えた。

「お連れしました」「はいれ」「入ります」

 そこには隊員に連れられたミトラーラ元伯爵かポカーンとした顔で立っていた。

「ミトラーラ元伯爵そちらにお座りください」

 ミトラーラ元伯爵は何が何だかわからなかったが、目の前にはさっき面会室で話をした中野総監とこの収容施設で一番偉い、安川と言う名の指揮官が座っている。


 中野総監が口を開く

「先ほど言った通り、ミトラーラ元伯爵には再度頑張って治安、政治をお願いしたい」

「先ほどお聞きしましたが、あまりの衝撃で頭が空白です」

「そうですか、なら最初に休憩しましょう」

 安川ドーサ方面警務隊長は、元伯爵を連れて来た隊員に指示をだす。


「すこしお待ちください。紅茶を出します」

「おお、すまない。これお土産でもって来たのだが、警務隊はダメだったよな。すまない。元伯爵に出してもらって良いか」

「はい、警務隊は外部からの寄付や贈与は一切受け付けていません。ですが元収容者に提供するのには面会差し入れとしてお出しできます」

「すまない」

「お気になさらず」

 中野総監は、その根拠地としたドフーラ駐屯地特製のケーキを差し入れとして持参していた。

「儂は結構だ」中野総監は断る。

 日本語でやり取りされているので、ミトラーラ元伯爵には理解できない。


 雑談の後に紅茶が運ばれて、各自の前に並ぶ。

 ミトラーラ元伯爵の前には中野総監が持ってきたイチゴショートケーキが置かれている。

「みなさんの分は」とミトラーラは質問する。

 中野総監が答える。

「儂の駐屯地特製ケーキですよ。お食べ下さい。なお警務隊は賄賂拒否で、儂も食べないので残りも全てミトラーラ元伯爵がお持ちください」


「すまない。感謝する」


「では食べながら、飲みながらお聞きください。先ほど言いましたように本日付でミトラーラ元伯爵は釈放となります。ただし条件があります。

 それは、この後お送りしますが、ドフーラの領主ではなく、ドフーラ市の市長として内政と治安などの行政を行ってください。もちろんその為の給料は支給させて頂きますし、一度凍結したミトラーラ元伯爵の財産ですが、自宅建物と所有する馬、馬車については返還します。ご家族とも会えますよ」


「えっあっ・・・」元伯爵は言葉にならない。


「結果だけ申しますと、帝国が解体され、各地区に「県」を設置し、優秀な人物に治めて頂きたいと言う事です。ドフーラを含むミリム・バロッサ県が制定されたのは御存じですか?」

「いや詳しくは・・・」

「はい。バロッサ、ミリム・ソーマ、ドミニク、ドフーラをミリム・バロッサ県として制定しました。

 そしてその各都市の市長が必要になったわけです。勿論ハイエルフさん達に協力して頂き、犯罪をしていない元領主や代表などが、その任に当たります。いなければそれに代わる人材を探します。

 ドフーラについては、市民からの嘆願書などを考慮して、日本に抵抗はしたが優秀な元領主だと言う事で、ドフーラ市の為に仕事をすると条件の元に、戻す事を決定しました」

「それは・・・ありがたい事です。家族と会えるのですか・・・」

「ええもちろん。仕事は混とんとして精神的にもきついですから、ご家族と一緒に生活して見事ドフーラを治めて頂きたいと考えています。

 それと、各都市に市長を任命しています。時機が来ればミリム・バロッサ県の代表者を決めて頂かなければなりません。その為にも議会制民主主義を勉強され、市民の為にドフーラを治めて欲しいのです」


「なんとなく理解はできました。ただ私で宜しいのでしょうか。不安が先にあります」


「ええ、理解できます。日本からは統治に関して補佐できる人物を市長に付けたいと思っています。

 ドフーラにおいても治安の為の警察組織、消防組織、そして市民の病気怪我などを治す病院組織に教育令が出ましたので、学校の設立に運営と様々な方面の仕事があります。

 これをこなして頂かなればなりません。その為には貴殿が最適だと判断したのです」


「・・ありがとう・・ございます。期待に応えられるかはわかりませんが、精いっぱい頑張らせて頂きます」


 こうしてミトラーラ元伯爵はドフーラまで送られ、元領主屋敷に戻っていた。

「では我々はこれで失礼します。奥様とお子様は別の場所で保護されていますので、明日お連れ致します」

「ありがとう」


 ミトラーラは領主屋敷に入った。

「旦那様、ご無事で」直ぐに元執事のトリタリアが出迎えた。

「トリタリア、息災か。待たせたな」

「何を伯爵様。お待ち申し上げておりました」

「よして欲しい。もう伯爵ではないぞ」

「そんな事。私にとっては領主様であり伯爵様です」

「他のメイドとか執事はどうした」

「はい、皆故郷に戻りました」

「お前は残ったのか」

「いつ領主様がお戻りになっても良い様にお待ちしておりました」

「ありがとう。恩に着る。私も戻れて感慨深い」

「そんな、伯爵さまお食事になさいますか」

「もう帝国も貴族もないのだよトリタリア。これからはミトラーラで良い」

「そうですかミトラーラ様」

「して、食事は用意できるのか」

「はい、些少ですが用意できます。愚妻を呼んできましたので」

「そうか。久しぶりのドフーラ料理、楽しみだ。皆で食べよう」

「よろしいのですか」

「勿論だ。もう貴族でもない、領主でもない、いわばお前と同じ平民だからな。皆で食卓を囲もうぞ」

「承知しました。嬉しい限りです」


「ところで、トリタリア教えて欲しい。ドフーラの市長を仰せつかったのだが、その業務は何処で行っている」

「はい、前と同じ城で行っております」

「そうか、では明日城に行けばより詳しい事が解るのだな」

「そうかも知れません。私はこの屋敷を守っておりましたので」

「ところで宰相のスイータは健在か」

「・・・言いにくいのですが、スイータ宰相は逮捕されております。なんでも贈収賄だそうで、出入りの商人から金を受け取って贔屓していたとか」

「そうか・・・スイータがか。儂の行政も大したことなかったと言う事か」

「そんな、旦那様は民から支持されております。スイータが小さな悪事をしただけで、民は元領主であったミトラーラ様を支持している事には変わりはないです」

「でもな、儂がもっと細かく見ていれば悪事などする隙間を与えなかったと思うと、多少悔しいな」

「お気になさらず。日本の方と打合せしました。ミトラーラ様は朝9時城に入ってください。向こうで白鳥と言う方が補佐として付きます。それからご家族ですが、ドフーラ郊外の日本基地から明日来ますので、お戻りになったら会えると思います。

 それとこの屋敷の料理人とメイドは如何致しますか」

「そうだな、トリタリア夫妻に世話になっても良いが、大変だろう。雇うとするか。料理人一人とメイド一人で結構。足りない分は家族も自分達で行う事とする」

「それは・・流石でございます。早速街中の斡旋所に行き、優秀な人物を雇ってまいります」

「そなたが認めた者なら文句ないだろう。頼むぞ」

「はい」

 それからミトラーラはトリタリア夫妻と食卓で一緒に食事をして、満足して自室に戻った。

「昨日まで戦犯捕虜だったのに、まるで夢の様だ」と深いため息をつくと眠ってしまった。


 翌日からミトラーラは積極的に動き、仕事を覚えていった。

 家族にも会え「今日から一緒に暮らすぞ」と言いながらミトラーラは涙があふれている。

「お父様泣かないで」娘のサリーナが涙をふく。

「サリーナ大きくなったな」

「お父様。まだサリーナは7歳ですよ。お父様とは4か月会えなかっただけです」と言いながらサリーナの目にも、また涙が溢れる。

「あなた、お帰りなさい。必ず会えると信じていました」と妻のジョリジアが抱きつく。

「心配かけた。こうして戻ってこられた。しかもこのドフーラ市長として。日本に感謝だな」

「良かったお父様と家族3人で暮らす事が出来るのですね」と娘が抱きつきながら言う。


「本当は日本軍に捕まり連行された時に死を覚悟したのだが、昨日は驚く事ばかりでこうして生きている。そしてお前達にも会えた。これ以上の幸せはないと思う」

 しばらく3人で抱き合い、トリタリア夫婦と食事を共にする。

「旦那様。雇った者達は明日朝来ますので会ってください」とトリタリア。

「お前達はどうするのだ。もし構わないのであればここに一緒に住んで良いのだぞ。お前達夫婦も家族だと思っておる」

「宜しいのですか。手が足りないなと思っていたので愚妻と共に働かせて頂ければ幸せです」

「結構。部屋は沢山あるのだ、住んで欲しい」

「はい、早速明日越してきます。とは言ってもボロ屋でしたので近い内に引っ越しを考えていました」

「なら、尚更良い事だ。ここに住んで欲しい。これは私のお願いだ」

「ミトラーラ様」夫婦は涙を流す。

「今日はみんな泣いてばかりだ。でも嬉しいぞ」ミトラーラは幸せをかみしめて同じく涙を流す。


 ミトラーラは帝国の家臣として働き、ドフーラを任されて戦闘までに至った。

 だが、本来なら勝った国は無慈悲なほどに元帝国民や貴族を迫害し、全ての財産没収と死罪が待っている筈・・・だった。


 ・・・だった。なのに日本と言う国は・・・戦勝国なのに無理を言わず、それどころか正当な評価までしてくれる。変な国だなと思う反面。負けたのが日本で本当に良かったと思う。

 ミトラーラは久しぶりに満足感でいっぱいであり、夫婦の寝室に娘と3人で眠りについた。

 幸せだった。



ありがとうございます。

次話は救済計画をスタートします。

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[気になる点] 「お父様泣かないで」娘のサリーナが涙をふく。 「サリーナ大きくなったな」 「お父様。まだサリーナは7歳ですよ。お父様とは4か月会えなかっただけです」と言いながらサミーナも目に涙が溢れる…
[良い点] まともな内政していた帝国貴族たちの方は無事にやり直せてるようですね! [一言] 付随した意見などは 参考程度で良いです! 気に入ってもらえて ありがとうございます!
[良い点] 丁寧な執筆に楽しくなります。 日本と外国の触れ合いや旧列強国との文化の繋がり方が好きで、自衛隊の描き方が同じ題材でも鮮烈に違う事にお気に入りにしました。 度々戦闘シーンと外交シーンの開き…
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