表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦闘国家日本 (自衛隊かく戦えり)  作者: ケイ
第2章 セカンドインパクト(神々の戯れ)
196/251

第191話 助けられた人々 その1

第191話投稿します。

過去リクエストの多かった、獣人やエルフ達のその後を書きました。

お楽しみいただければと思います。

次話も助けられた人々の続きとなります。

読者ID-2139155様、連休最後の休日ですのに大量の訂正データ(誤字脱字報告)ありがとうございます。

心から感謝しております。

 過去自衛隊によって助けられた人々の様子を書いています。

 オムニバスとなっており、現在進行形のドルツとは関係ないので興味のない方は読み飛ばしてください。


 佐竹三等陸尉はソミアちゃんを連れて、宗谷特別行政区の難民保護センターを訪れていた。

 まだソミアちゃんは泣き止んでいない、ミソラ達との別れが本当に辛くて、エルフ仲間のミミを死なせてしまった時を思い出している。

 ソミアちゃんとは、通信奴隷仲間のミミと共に帝国を逃げ出した、エルフである。

 年は150歳と言っているが正確には分かっていない、人間でいえば22歳位であるが、なんの教育も受けていない為に幼く見える。

 ソミアは120歳の時に帝国に献上された通信奴隷であった。

 帝国軍事部の通信指令室勤務となり、給料も支給されない本当の奴隷であった。

 同じ通信指令室にはエルフが8名いて、その中の一人がミミであった。

 通信奴隷は24時間いつでも交信できる様に待機させられる。

 そして通信の内容に間違いが無いかエルフ2人で対処させられるのだ。

 もちろん、間違った内容を流せば拷問が待っている。


 ソミアとミミはもう30年も一緒のシフトで勤務して、姉妹の様に仲が良かった。


 ある日、日本の攻撃により帝国宮殿が攻撃され、通信指令室の将校達もその対処に出払っていた。

「ミミ、ここ逃げようよ」

「だめだよ。拷問されるよ。下手すれば殺されるよ」

「でも誰もいない今しかないよ」

「でも・・・」

「ミミ行こうよ。東に向かえばハイエルフ様がいて奴隷紋を取ってもらえるらしいよ。

 それに日本とか言う国の街があって、そこでは獣人やエルフにドワーフが仲良く暮らしているとか。

 ソミア行って見たい」

「その噂、私も聞いたことある。だけど遠いのでしょう。行けるのかな。」

「行こうよ。今なら地下の先輩エルフも解放できるし」

「そっか行ける?」

「やろうよ」

 二人は、監視役が居ないのを確認しつつ、地下に行き、エルフ部屋のカギを外した。

「みんな逃げられるよ。東に逃げようよ」

 エルフ達8人は一斉に建物から出て、奴隷服を干してあった平服に着替えて、帽子を深くかぶり特徴的な耳を隠して東の街に行く、途中親切な商人の馬車に隠れ、帝都からミルド街を経由してドミニク・フーラ街に着く。

 ここからハイデルバーグに行き、山脈を超えるか、まっすぐ行き森を通って東海岸を北上するコースしかない。


 ソミアとミミは、まだ若い事もあって森を抜けるコースを選んだ。

 他のエルフはハイデルバーグに行き、山脈を超えると言っている。


 ソミアとミミは街道を外れて歩き、港町ゾーマ・ラシアスの北から森に入って行った。

 その後、魔物に追われ、ミミがソミアを庇って死んだ。

 ソミアはミミの遺品として左の小指を取って、いつかお墓に入れようと噛み切ろうとして飲み込んでしまった。そして半魔人となってトレルラ村郊外で騒ぎを起こしたのを、ミソラ達に救われて保護された。

 なお、ドミニク・フーラで別れたエルフ達はハイデルバーグから日本山に向かい自衛隊に保護されていた。このルートが正解の様だ。


 保護されたソミアはミソラ達と共に、港町ゾーマ・ラシアスから宗谷特別行政区へと送られ、途中ハイエルフの族長に奴隷紋を消してもらって、この難民保護センターにたどり着いた。


「ソミアさん泣き止みましたね。担当官を紹介します。こちらがソミアさんのお世話をする鈴木美奈陸士長です。なにかあれば言ってください。私はこれで戻ります」佐竹3等陸尉は元の任務に戻る。


「はじめましてソミアさん。鈴木美奈と言います。よろしくね。ここは帝国から逃げて来たり迫害されてたりした獣人、エルフ、ドワーフさん達に、この街で生活できるまでお世話する場所です。

 しばらくはここで生活しますので慣れてくださいね」

「・・・はい」

「今はそれで良いですよ。では施設を案内しますが、最初に健康診断を受けますのでこちらに」

 ソミアは隣の白い部屋に入る。

 体重や身長、栄養状態の検診、そして機械をはめられ血圧、それにレントゲンを撮った後に簡単な運動をして身体能力を測定される。

 白い服着た人間の前に連れていかれる。

「こんにちはソミアさん。医師の富沢といいます。結果が出ましたのでお伝えしますね。」

 鈴木美奈陸士長も同席している。

「結果ですが、全体的に栄養失調です。それはここでの生活で治ると思います。

 その他は問題ありません。

 それと内臓については時間がかかりますので、この薬を飲んでください。

 エルフさん用に調剤した抗生物質ですよ。お腹に悪い病気があればやっつけますから。

 飲んでも大丈夫ですよ」

 ソミアは言われるままに薬を飲んだ。


「ではソミアさん、行きましょう」と鈴木美奈陸士長。

「ソミアさんがしばらく生活するこの施設を案内しますね。それと生活に必要な物を支給しますので最初に支給室に行きましょう」

 ソミアと鈴木美奈陸士長は1階廊下の反対側にある支給室に向かう。

「失礼します。今日から入寮するソミアさんをお連れしました」と鈴木美奈陸士長は元気に報告する。


「はい、ソミアさんお疲れ様です。体形を測定しますのでその台に乗ってください」

「はい測りますね。」・・・「サイズはSSですね。一式出します」


「お待たせしました。こちらが下着に着替えが3枚、タオルと手ぬぐい、靴下、靴、こちらは日用品が入っています。無くさないように様に名前を書いてくださいね」

 ソミアは一式が入った手提げを2つ貰う。

「こんなにですか」

「はは。ソミアさんそれ最低限の物しか入っていないのですよ、驚かないでください。行きましょう」

 鈴木美奈陸士長は「失礼しました」と言って、ソミアを連れて建物の後ろから出る。

 そこには宿舎と言うか縦長の家があってドアが沢山ついている。


「ここが生活する宿舎です。ソミアさんの部屋は・・・ここの504号室です。これが鍵です」

 鈴木美奈陸士長は鍵を回してドアを開ける。


「あのー同室は・・・」ソミアは遠慮がちに聞く。

「えっ一人部屋ですよ」と鈴木美奈陸士長は笑いながら言う。

「それにしては広すぎます」

「いえいえ、一人にはちょうど良い広さですよ」

 部屋にはベッドと机、テーブルに簡単なキッチンとシャワールームが備えてあった。

 電化製品はドライヤーにテレビ、照明、冷蔵庫、電子レンジにIHキッチンそれにエアコンと換気扇が付いている。

「立派すぎます」とソミア。帝国では狭い部屋に8人のエルフが住んでいた。

 しかもベッドもなく床に藁を敷いて毛布だけだった。

 部屋の一角にはツボがあり、それがトイレだった。使用後は消石灰をかけて済ませるタイプであった。

 この部屋にあるシャワールームに備え付けのトイレは水洗の洋式である。


「では説明していきますね。これがシャワールーム。トイレはこれですね」

 操作しながら説明する。

 ソミアは目を見開いて驚いている。

「このハンドルを回すとお湯が出ます。お湯は38度になっていますので調節はできません。

 トイレは蓋を開けて、こっち向いて座ります。用が済んだらこのレバーを下げます。

 あっお尻拭く紙はこれです。無くなったら支給室で貰ってくださいね」

 ソミアは「ふんふん」と一生懸命に覚える。

「それから後で案内しますが、お風呂は外にあります。これは共同ですから入り方を教えます」


「では支給された物を確認しましょう」

 手提げ2つから品物を出して、それを鈴木美奈陸士長は説明して収納していく。

 服装は、今着ている保護服ではなく、上が白のブラウスで下がスカートである。

 下着の付け方を教えると服を着せる。靴下に靴を履かせ、タオルと手ぬぐいを出してタンスの引き出しに並べていく。

「洗濯は外に洗濯コーナーがありますので、それも案内しますね。室内や外のコーナーで解らない事があれば、常駐している世話係がいますので聞いてください」

 二人は鍵をかけて部屋を出る。

 大浴場に案内すると、「ここで脱いだ物をこのロッカーに入れ、扉を締めて鍵を抜きます。それを腕にはめておくと無くさないですよ」

「ここで、まず体を洗って、それから湯船に入ります。風呂は初めてですか」

「・・・はい」

「では、最初長湯しないでくださいね。エルフさんは20分入っていると「のぼせる」らしいので。

 あそこに時計があるので見ながら時間を計ってください。時計の見方は明日から授業で教えます。

 次は洗濯コーナーです」

 ・・

「洗濯コーナーでは洗濯機が10台ありますから、自分の入れた洗濯機を覚えてください。間違うと人の物を取ってしまいます。サイズが合わないと思いますよ。

 蓋を開けて、洗濯ものを入れて、この洗剤を入れてこのスイッチを押して完了です。

 だいたい60分で乾燥されてますので、そうしたら回収してくださいね。

 ブラウスにアイロン・・・これがアイロンですね。アイロンをかけると皺が無くなります。


 使い方分からなかったら、向こうに座っているお世話係に言ってください」


 そこには、エルフが座っていた。腕に「お世話係」と書いてある。

「ソニアさん。今日から入ったソミアさんです。よろしくね」

「こちらこそ、ソミアさんですね。私お世話係しているソニアです。私も難民だったのですよ。

 よろしくね。解らない事があれば何でも聞いてください。いろいろ帝国には無い物ばかりで大変だと思いますが、ここの暮らしは楽しいですよ。がんばって」

「・・・よろしくお願いします」


「次行きましょう。次は食堂と売店です・・・・ここが食堂。朝と夜はここで食べます。

 こっちが売店です。今はお金が無いと思いますが、1か月後はアルバイトして貰いますので、その給金で買い物が出来ますよ。あっ食堂での食べ物は無料ですよ」


 二人は外に出て、再度難民保護センターに入っていく、

「こちらが支給室ですよね、この階段を登って2階に行きます」

 ・・

「ここが教室です。明日から授業が始まります。ここの街の紹介や適性技能の講習など、仕事する為に必要な事を習います。希望するなら日本語の勉強もできます。詳しくは明日の授業の最初に説明があります。

 次は3階です」

 階段を登って3階に行く。


「ここは技能実習室ですね。興味がある技能や適性のある技能に語学が学べます。

 それも明日の授業で教えてくれますよ。

 あっ何も持ち込まないで良いですよ。学習に必要な物は明日渡しますから」

 4階に向かう。

「ここは、レストランです。昼食専用なのでお昼はここで食べます。ここももちろん無料ですよ」

 そこは建物の最上階で、向こうに港が見える景色の良いレストランであった。

 昼の営業は終わっていたが、簡単に説明する。

 自衛隊式のレストランで、自分で全て取っていくシステムである。

 ただし、異種族の為にご飯だけは無く、いくつもの種類のパンなどもある。

 獣人達は黒パンが好物なのである。エルフ達は肉類が苦手なのでサラダバーまである。

 料理は肉類、魚、野菜と選べる。野菜類には大豆ミートなども提供される。


 ソミアは情報量の多さにびっくりしていたが、

「日本の人がいろいろ教えてくれるんだ」「ミソラさんに助けられて良かった」と心から感謝している。

 そしていつかミミの墓を作る事を決意していた。


 宗谷特別行政区の難民保護センターは沢山の異種族に仕事を斡旋し、そのおかげで街はとても栄えていた。仕事は沢山ある。

 エルフ達に人気なのは、その容姿を生かしたホテルの従業員だろう。

 レストランのフロアースタッフや日本人に大陸語を教える大陸語塾の講師も人気であった。

 ステータスが高いのは、宗谷特別行政区空港(通称ドーサ東空港)のグランドスタッフだろう、無線替りに思念で通信して、高い接客技術を評価されていた。


 迫害の中で暮らしていた獣人、エルフ、ドワーフ達は一定期間難民保護センターで教育を受けて、街で仕事についている。今では家族で住んでいる者、家族を作った者までいる。

 異種族の子供達は宗谷特別行政区に作られた、小学校、中学校に入って日本式の教育を受けている。

 現在高校、大学は建設中である。この施設だけは試験によって入学が決まる。


 どちらにしても、宗谷特別行政区は人間(日本人)を含め、みんな仲良く暮らしている。

 心配されていた反乱分子や不良なども、現在は現れていない。

 それはひとえに、宗谷特別行政区の治安は自衛隊と警察、特に警察は積極的に獣人を採用して、交番も設置、見回りも強化されて、喧嘩などは直ぐに対処される。

 それに宗谷特別行政区で騒ぎを起こすと、帝国側に追放されるとの噂が広まり、それも道を外れない為の布石となっている。わざわざ迫害されに戻る異種族はいないと思う。

 

ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 至れり尽くせりの新生活。 新たな生活でどんな未来が待っているのか? 次回も楽しみにしています。
[良い点] 宗谷特別行政区の様子展開 とても良かったです! ありがとうございます(大喜) ソミアちゃん良かったね! これが全ての難民たち移住者たちへの共通の最初の対応なのですね! また丁寧な説明なので…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ