第187話 ドルツ民間人救済計画
第187話投稿します。
敗戦救済に向けて、民間人が避難している街を調査します。
誤字脱字報告ありがとうございます。
過去話を読んでいたら(文中に反映させる為に)やたらと一人の話で「」が多いなと思いました。
これも整理しなければと思って悶えています。
長かったドルツ国の戦いも、ドルツ首相ハインリッヒ・ベトーラゼの決断によって無条件降伏が確定した。
南総司令は日本から来る輸送船団の目的地を東海岸からボン港へと変更し、「ハイリン」と「ドルトムント」に集められているドルツ国民に対し最初の食料支援を実施する事に決めた。
全てのドルツ軍は武装解除され「ボン」に集められている。
もちろん東海岸に集められた捕虜も全て「ボン」に移送されている。
ドルツ総司令部で、ベトラーセンが全ての無線で「ドルツ敗北」を知らせている。
「ベトラーセンさん、作戦行動中のUボートは何隻ですか」と橋本は尋ねる。
「現在は6隻だけです。全て東海岸に集まり武装解除して降伏の指示をしています」
「そうですか。反抗する様な船長はいますか」
「それは考えられないです。自害する船長はいてもダークエルフ様のいらっしゃらない現在において反抗などと言うのは考えられない事です」
「そうですか、それは良かった」
橋本はリナを見る。リナは軽く頷く。全て正しいようだ。
「ベトラーセンさん次に秘密基地について聞きたいのですが、何か知っていますか」
「それは・・・最高機密としてダークエルフ様と首相のハインリッヒ・ベトーラゼ、他には作戦行動に従事している司令官程度です。
ですが噂で宜しければお伝えします。
この大陸南西に位置する大きな島があり、そこが秘密基地と言われている場所です。
本来この施設は、西大陸・・・あなた方が言うドーサ大陸でしたね。
そこでの支配を堅実なものにする為に、我々陸軍研究所で開発したV-2ロケットを製造と艤装に使用しています。日本も作戦参加したと思いますが」
「例の全通型ミサイル艦ですね。南西の島ですか……V-2工場はクルップの地下にあると思っていました」
「いえ、炸薬が約千キロで、巨大で搬送が難しく、燃料が入っていれば爆発の危険性もあります。爆発すればクルップ全部が吹き飛びます。ですので秘密基地をクルプセンの技師たちに設計させて、ドルツ軍に作らせました。
秘匿性を高める為に殆どの建設を陸軍で作ったと記録にはあります」
「そうなのですね」橋本は大型液体燃料のロケットを想像している。それは間違っていない。
「はい、ドルツ国技術の結晶だと思っています。ですが航行装置が貧弱で、ジャイロと速度計に高度計程度しか搭載していない為に、3百キロ飛んで目標誤差10~17キロと言う記録があります」
「それは目標に対して大きな誤差ですね・・・大きすぎますね」
「それでも、炸薬量と燃料自体も爆発物となりますので、爆発力は大きく、この時代・・・おっと千年前の中世程度の文明に対する心理的影響は大きい物だと考えていました。結局使わないままに凍結されて、今回初めて出撃しています。
本来日本軍が上陸した際にも使用が検討されたのですが・・・」
「目標誤差が大きく友軍を誤爆する事を考慮した・と言う事ですね。」
「その通りです。V-2ロケット誤爆はシャレになりませんから。例えばフルート基地は1発当たれば基地機能の90%を無効にします」
「そうですね。良く解ります」
「結局V-2ロケットの使いどころは、遠距離で友軍がいない場合に限られています」
「そうですね。我々の時代も研究が盛んで、戦略兵器として大きな期待をしている者達が大勢います。
我々自衛隊は持っていませんけどね」
「それと・・・秘密基地の大きな研究としては「核」兵器の研究があげられます。
核兵器は理論上大型爆弾3千~5千発分に相当します」
「よーくわかります。それに研究が進めば更に強大な破壊力を手にする事になります」
「あなた方も研究をしていたのですか」
「まぁそういう所です。我々も機密事項なので」
「なんと恐ろしい。私は反対していたのです。いくらドルツとは言え、民間人を殺戮に巻き込んで良いのかと。しかしダークエルフ様が面白がって研究を進めろと命令を・・・」
「我々の研究でもダークエルフ自体が核攻撃を持っていると聞いています」
「そうなのですか。我々は知りえない事です。ダークエルフ様に質問などできませんので」
「良く解りました。放送を続けてください」
ドルツ総司令部に、モールス信号が鳴り響く。
・・
ボン港町には次々と浮上航行したUボートが集結していった。
ドルツ敗戦を知らされていたためか、目だった抵抗は受けていなく、武装解除をすんなりと受け入れていた。
ドルツ陸軍及び海軍の捕虜達は、ボン港に集められ、荷役作業に従事していた。
本来捕虜に対し強制労働は国際法違反なのであるが、ドルツ国民を救済する為と目的を告げると自主的に協力を申し出てくれたのだ。
こうして日本から運んできた食料と水はボン港で水揚げされ、冷蔵冷凍を要する物は「いずも」の倉庫で
保管されている。
しばらく待つと東海岸から「おおすみ」と「しもきた」の2隻のLSTが向かってくる。
もちろん内陸部にある「ハイリン」と「ドルトムント」の各街まで物資を輸送する為である。
ボンから各街に向かう街道は、首都近郊と違い普通の切り開かれた土の道である。
トラック輸送も検討されたが、その路面の凹凸が激しく輸送品の痛みが懸念された。
しかも道路だと言うのに所々に大きな水たまりがあり、民間人は小型手漕ぎボートを出して人を渡していた。
・・
ドルツ首都「ハイデルバーグ」の警備は海兵隊に引き継がれ、第1水陸機動連隊はAAV7を駆ってボンに向かっていた。ボンまでは戦車通行を考慮した舗装道路である。
空爆の際も道路への損傷は避け、戦後処理の為の動脈としての期待があったためである。
同時に水陸機動団施設中隊も東基地およびフルート基地整備を完了し、ボンへの移動を命じられている。
ボン防衛航空基地を航空機離発着できる程度に修復し、LCACで運べない品物をオスプレイ等で運ぶためである。この航空基地では一部施設がまだ火災をおこしている。
・・
ドルツ総司令部を離れた橋本陸将補は一旦ダークエルフ宮殿に戻り、会議に参加する。
議長は南司令だ。
「それで、ドルツ国民救済の為に現地調査が必要だと思うが」と南。
「上空偵察だけは充分ではありませんし、南司令が向かわれる前に地上偵察を終わらせる必要があります」
「そうだな」と橋本も同意する。
「南司令、提案ですが、私と1個小隊にハイエルフさん2名を付けて頂ければ、オスプレイで先に街を探索し、ドルツ国民の話を聞くことができます」
「陸戦司令の橋本陸将補自ら行くのか」
「ええっこれでも元第1空挺団の団長ですから、多少の荒事は大丈夫です」
「それはそうだが」
「いや、誰かが正確にドルツ国民の現状報告をしなければならない。それに陸将補の言葉ともなれば即動くことができる筈だ。多少無理はあるが私は橋本陸将補に期待する」
南司令が言ったことで反対者はいなくなった。
「では、橋本陸将補安全を確保しつつ両街の現状を見て聞いて報告して欲しい」
「はっ承ります」
会議は解散となり、「ハイリン」と「ドルトムント」の現状確認が最優先された。
なお、この2つの街に対する「敗戦報告」は、総司令部からのラジオ放送にて伝えられている。
周波数1MHz(1,000kHz)でのラジオ放送は、ベトラーセン政府高官と言っても陸軍将校ではあるが、その言葉を録音してループ再生で流していた。
・・
こうして街の現状調査を命じられた橋本陸将補とハイエルフ2名は「かが」から飛来したオスプレイに乗り、一旦フルート基地に寄り、高機動車3台を積み込み給油する。
その後、ボン防衛航空基地にて待機していた空挺団1個小隊を乗りこませ、調査へと赴く。
・・
報告通り「ハイリンに通じる道路は軍事用に整備されていないな。だが道幅だけは助かる」と橋本。
「凄い光景です。昔の村に通じる道路みたいですね。幅だけは広いですが」とリナ。
ハイエルフ村の事だろうか・・・ハイエルフ村には道などなかったはずだが・・・
「リナさん。ハイエルフ村には道があったのですか」と橋本。
「ああ、現在の村ではなく、例の迫害を受けた村です」
「なるほど」報告書に書かれていた通り、チロルの森の領主ハイデルバーグの父に当たる当時の領主からハイエルフを奴隷として差し出せと申し入れをして、その日の夜中に包囲網を抜けだし、一人も村に居なかったと言う話である。今から50年以上も前の、その村の事を言っているらしいと推測した。
それに・・・ハイエルフの寿命は平均800年と言われている。
50年前の話でも、少し前の話なのであろう。
橋本は気を取り直して、窓から見える光景に注目する。
森の中に通された道路は土色で、所々に池が・・と言うより道が池に飲み込まれている。
「これは東南アジアだな」とため息を漏らす。
やがて開けた畑がある街と言うより村に到着した。
「前に聞いた話とずいぶん違うな。農業都市「ハイリン」だと聞いていたが、これは農村「ハイリン」だな」と橋本は感想を漏らす。
村の外にオスプレイは停止して、一同は高機動車に乗り換え移動する。
村の中心部にハイエルフと入っていく。
村の広場では、首都「ハイデルバーグ」から放送されているラジオが流れていた。
「このラジオでドルツ敗戦を知ってくれていると良いが」と橋本は思う。
一人の村人が橋本達を見て、いそいで家に入り隠れる。
その隠れた家に向かい、ハイエルフに頼んで思念を送ってもらう。
『私はハイエルフ。ドルツ国敗戦に伴い、民間人のあなた方を助けに来ました。
この街の長の元に案内してくれると助かります』
村人? は突然の思念に驚き、家の中でひれ伏している。
『出てきてくれると助かるのですが』とリナは再度呼びかける。
村人は恐る恐る表に出てくる。
『助かります。長を紹介してください』と送る。
村人は歩き出す。
その後ろをハイエルフと橋本、それと警備の1個小隊がついて行く。
少し大きな家、数人が寝泊まりそして食事が出来る程に大きい。
「こちらがハイリン町長の家です」と案内してくれた主婦の様ないでたちの女が言う。
『ありがとう、呼び出してくれますか』とリナは続ける。
橋本は「街」ではなく「町」だったのかと思う。
町人はドアを開けて、何かを中と話す。
やがて老人が現れた。
ありがとうございます。
あっ関係ないですが・・ミソラの国内冒険編とハイエルフデビューへの道がタイトルだけで書きかけでいます。余裕があれば書きます・・・トホ
1年以上前に作ったのですが、入れる機会をうかがっている内に・・・・