第186話 ドルツ敗戦交渉
投稿します。
終戦交渉が始まりました。
首相はどう思うのでしょうか・・
誤字脱字報告ありがとうございます。助かります。
「南司令報告です。陸戦司令部より首都「ハイデルバーグ」の制圧を完了したと報告があります。
特に総司令部及びダークエルフ宮殿の占拠および調査が完了、また、ドルツ総責任者である首相のハインリッヒ・ベトーラゼを無傷で海兵隊が確保しておるそうです」
「うむ。その首相ハインリッヒ・ベトーラゼなる人物は、全権掌握しているのか」
「はい尋問を行ったハイエルフからは、全権を委譲されているとあります。
付帯する報告ですが、首相の話ではダークエルフは冥界が混乱している為と神からこの大戦に手を出すなと命令されており、冥界に戻って行ったと報告されています」
「どうりでダークエルフが最初の艦隊対航空機戦以後姿を現さないはずだ。そんな理由があったのか」
「司令どうします。首都「ハイデルバーグ」に行きますか?」
「了解した。行って戦いを終わらせよう」
・・
「作戦司令本部より陸戦司令部宛、本日14;00(ひとよんまるまる)首都に南司令が入る。
F-35Bが護衛につくので、第1水陸機動連隊は中央道路上のごみ、石等、薬莢、銃弾等ジェットエンジンに吸い込む可能性のある物を排除して欲しい。以上だ」
「第1水陸機動連隊集合。これからF-35Bとオスプレイが本日14:00に総司令を乗せ来訪する。今から2時間、地上に落ちている石やごみに薬莢弾丸等は全て人力で拾うようにとの命令だ。南側から北側に向けて探索を開始する。目についた物は全て拾え。
それから輸送隊はⅡ号戦車残骸、南側残骸は街の外に押し出して、中央と北の残骸は全て北の広場に移動させよ。その残骸から落ちる部品やボルトナットについても落ちたら拾う事。よいな。かかれ」
AAV7は一斉に移動を開始して、先に南の残骸を街外に追い出す。
次に中央総司令部前を守っていた残骸はけん引ワイヤーをかけて、北の広場に引きずっていく。
同時に海兵隊のAAV7も街道北を守っていたⅡ号戦車残骸を広場の隅に運んでいく。
陸戦本部は、会談場所を宮殿1階会議室に決め、ドルツ高官2名と首相を連れて行く。
宮殿1階には応接室群があり、その1室を控室として捕らえたドルツ高官3名を監視付で待たせる。
ついで、陸戦本部より、お茶、珈琲、紅茶などの飲み物と簡単な軽食を運び入れる。
日本側の立ち合いは、総司令南海将と幕僚3名、陸戦司令部からは橋本陸将補と佐々木一等陸佐、それに海兵隊からはジェリー・マクドネル中将が参加する。その他はハイエルフ10名と書記官が同席する。
なお、宮殿地下の通路を使用してダークエルフが侵入するのを防ぐ為に、地下の大扉は閉じられ、外に自衛隊員が武器を持ち24名が監視している。
会談1時間前
占拠した港街ボン港内で停泊中の「いずも」より南司令と幕僚が3名、オスプレイ2機に乗りこむ。
護衛機はF-35Bタイガーシャーク隊2機である。
同時に東海岸に停泊している「かが」からは4機のF-35Bが首都直上警戒の為に飛び立つ。
直上警戒は1時間毎にフルート基地の海兵隊F-35Bと交代をする事になっている。
いざとなれば、フルート基地にはコブラ2機、スーパーコブラ2機が待機している。
刻々と時間は迫る。
宮殿前の広い道路にオスプレイとF-35Bが到着する。
「お待ちしていました」第1水陸機動連隊第1中隊第3小隊長の中島三等陸尉が案内する。
一行は会議室に入っていく、先に海兵隊ジェリー・マクドネル中将と陸戦司令部から橋本陸将補と佐々木1等陸佐が座っていた。
挨拶しながら握手をして回る。
全員が席について話を始める。
「今日は終戦協定についてドルツ側と話をしたいと思う」と南司令。
「同感」とマクドネル中将。
「ですが、ドルツは実質ダークエルフが支配していた国です。首相が応じるでしょうか」と橋本陸将補。
「我々も一抹の不安を持っています」と総司令本部幕僚が発言する。
「いや応じなければ、犠牲者が増えるだけだ」と南。
「それにだ、南にはドルツの秘密基地があると聞いている。これも無血占拠する為には終戦協定は必要だと思う」と海上幕僚が発言する。
「それだけではない。各東西南北にある基地の内、北基地と南基地は確保したが、東と西の崖内に作られた基地は健在であり、これはUボートの基地として機能している。
これも無効化しないと和平はあり得ません」と航空幕僚が発言する。
「確かにその通りだ、各秘匿された基地もそうなのだが、私としてはドルツ国民の健康状態や食料、それに教育が心配なのだ。その為にも終戦協定に織り込もうと思っている」と南。
「そうですね、「ドルトムンド」と「ハイリン」に民間人は避難していると聞きます。「ハイリン」は農作物を収穫し保存しているそうですから、食料としての心配は無いと思いますが、「ドルトムント」に避難した民間人は苦労しているのではと思います」と佐々木一等陸佐が説明する。
「そうか。我々はまだ「ハイリン」や「ドルトムント」の現状を知らない。それも考慮するとしよう」と南。
「海兵隊からはなにかありますか?」と橋本陸将補。
「特にない。この作戦の主権は日本にある。ただ我々は一部領土が確保できると大変喜ばしい」
マクドネル中将はアメリカ領事から言われた事を思い出しながら言った。
「領土ですか?」と南。
「大変危険だと思うが、私はやろうと思っている。
それはハイエルフ達と「ハイリン」と「ドルトムント」の間にあると言う、ダークエルフが管理している塔に行こうと、そして神の言葉と言うのを聞いて来ようと思っている」
南司令は、ダークエルフが管理する「神の通路」の分岐と言われており、冥界や神の元にもいける塔に行って日本を元の世界に戻す事をお願いしようと思っている。
それが自分の命を削る事になっても・・・
その時ハイエルフが10名入って来た。
『おまたせしました』と族長が挨拶する。
「いえ時間通りです。我々が事前打ち合わせしていたので早めに入りました。
どうぞお座りください。
揃いましたらドルツ高官と首相は呼び込む事になっていますので」
南はハイエルフに気を使いながら椅子を指す。
「では最初に本日の目的をお話しさせて頂きます」と海上幕僚が各自の前に書類を置いて行く。
ドルツ国敗戦処理関連と書かれた書類である。勿論英語版も用意している。
「では最初から説明させて頂きます。
本日はドルツ側に降伏条約締結させる事が主目的です。
本来、戦勝国は戦敗国に対し、戦費の徴集をしますが、ご存じの通りドルツ国の経済は戦争中心で経済活動は無いに等しく、この点においては社会主義国に近い物があります。
また一部のドルツ捕虜からの聴取では、ドルツ国民は食料配給にて生活していると聞きます。
酷い事に医者や看護師は全て従軍しており、先の「ハイリン」と「ドルトムント」には医者や看護師もいません。
つまり現在どんな病気が蔓延しているかもわかっておりません。
ですが、その様な状況にいくら敗戦国民だからと言って何もしないのは、日本、いや現代国家であるアメリカも含めて放っておけない状況であると思います。
特に食料、ドルツ国は小麦が取れる国であると聞いていますが、供出は軍関係が一番で、国民はその残り
を配給で食いつないでいるだけだと捕虜から聞いています。
これらの根本的解決の為に、終戦締結後ドルツ軍は解体し、一部の医療関係者以外は国民が避難している「ハイリン」と「ドルトムント」に派遣し、自衛隊と共に民間救済を実施します。
次に食料ですが、日本より貨物第3船団が米や水その他食料を満載して向かっております。
その様な状況でどこまでドルツ国民を救えるのか当事者たちから聴取し条約締結したいと考えます」
日本政府と交渉した海上幕僚が説明をする。
「ご意見ありますでしょうか」
『自衛隊はいや日本は民間人を救いたいのですね』と族長。
「はい。解っていましたが、大勢いるのではないかと思います。救えますか」とレイナ。
「はいやるしかないですね。南司令さんも同じですか」とミーナ。
「ミーナさん同じですよ。敗戦国の状態は酷い物です。我々も経験していますので、そんな思いはさせたくないのです。ハイエルフさんも協力頂けますか。我々軍服組よりもハイエルフさんの方が民衆に入りやすいと判断します」と南司令。
『そうですね。ダークエルフを信じていた民衆ですからハイエルフの方がまとめやすいでしょうね』
「族長。とても大変なお仕事です」とリナ。
『リナ。解っていますよ。大変なのは、ですが民間人には何の罪もありません。みな政府に従った結果がこれです。それを解きほぐしてあげるのも我々の役目』
「族長それは良く理解しているつもりです」とリナ。
『日本の方々は私たちハイエルフを守り、そして経済と言う形で支援をしてくださいました。それは過去なかった事、崇めはするが私たちを助ける者はいませんでした。私は戦争なのに日本に慈悲を感じます』
「はい族長がそうおっしゃるのでは、従わないといけませんね」とリナ。
「そうですとも、慈悲に溢れた日本ですから、私も働きますね」とミーナ。
「はい決まりです」とレイナ。
「他の参加者は宜しいですか」と海上幕僚。
「うむ。マクドネル中将。我々は「神」なる人物なのか生命体なのかは存じないですが、元の世界に戻してくれることが一番なのです。アメリカもそれが望みでしょ。なら領土の件は一旦保留して、その方向で動きませんか。もし帰れないと決まったのであれば、領土問題もドーサ大陸の分割地以外にも日本政府は考慮すると思います」と南司令。
「わかりました」とマクドネル中将。日本語で答えた。
「では呼んでくれ」と南司令。
ドルツ高官と首相の3名が入ってくる。
首相は相変わらず口枷をしている。
ドルツの後ろには5名の自衛官が並んでいる。
「首相のハインリッヒ・ベトーラゼさん。自害しない事を約束頂けますか」と南。
首相は少し考えると、首を縦に振る。
後ろの自衛官が2名で口拘束を解いた。
「すまない」首相はドルツ語で感謝する。
「さて、ここからはハイエルフさんに協力頂いて通訳をお願いします」と南司令。
「ではレイナがやります。ミーナとリナ間違っていたら訂正お願いね」
「「はい」」
「では南司令どうぞ」とレイナ。
「本日はこの場で終戦協定を締結しようと思います。首相ですから当然できますよね」
『本日はこの場で終戦協定を締結しようと思います。首相ですから当然できますよね』
レイナは話した内容を思念に変え伝える。
「本来・・・この国の最高指導者はダークエルフ様である。ダークエルフ様抜きの交渉は・・・」
『交渉はなんです』「殺される可能性がある」
『わかりました』
「本来・・この国の最高指導者はダークエルフ様である。ダークエルフ様抜きの交渉はダークエルフに殺される可能性があるとの事です。」とレイナは聞いた内容を付け足す。
「ですが、ドルツ国最高文官である首相のあなたは、ドルツ国並びに民衆の為に戦争を終結させる義務があると思います」
『ドルツ国最高文官である首相のあなたは、ドルツ国並びに民衆の為に戦争を終結させる義務があると思います』
「それはそうなんだが、ダークエルフ様が主導者として君臨されてからと言う物、私は命令を実行する立場でして」
『ダークエルフ様が主導者として君臨されてからと言う物、私は命令を実行する立場でして』
「しかし世界的には、首相と言う立場は、国間の条約を締結できる立場です。終戦条約もそれに当たります。
あなたが決断されない事には、ドルツ国民を我々が救う手立てはありません。
それと、ダークエルフは冥界に戻ってこちらにはいない。貴方はダークエルフより託されているのではないですか」
『首相と言う立場は、国間の条約を締結できる立場です。終戦条約もそれに当たります。
あなたが決断されない事には、ドルツ国民を我々が救う手立てはありません。
それと、ダークエルフは冥界に戻ってこちらにはいない。貴方はダークエルフより託されているのではないですか?』
「そうです。それは理解しています。ダークエルフ様より託された事も事実です」
『それは理解しています。ダークエルフより託された事も事実です』
「なら戦況はドルツにとって戦争を終わらせる以外ないでしょう。ご理解できますよね」
『ドルツにとって戦争を終わらせる以外ないでしょう。ご理解できますよね』
「理解できます」
『理解しています』
「でしたら、自害迄しようとした命を懸けて終戦に合意されては如何です」
『自害迄しようとした命を懸けて終戦に合意されては如何です』
「はい、覚悟決めました。たとえダークエルフ様の怒りを買って殺されても、国民が元の生活に戻れるのなら惜しくはありません」
『覚悟決めました。たとえダークエルフの怒りを買って殺されても、国民が元の生活に戻れるのなら惜しくはありません』
「でしたら、終戦条件のすり合わせと行きましょう」
『終戦条件のすり合わせを行いましょう』
「すり合わせは必要ありません。我々は無条件降伏に合意します」
『我々は無条件降伏に合意します』
「了解しました。この書類にサインをしてください。ドルツ国民に対して日本は最大限の支援を行います。
また、軍事施設については、その全てを放棄してください。武装も解除願います」
『この書類にサインをしてください。ドルツ国民に対して日本は最大限の支援を行います。
軍事施設と兵士全ての武装解除と軍事施設は放棄をしてください』
首相ハインリッヒ・ベトーラゼはドルツ語で書かれた書類を読むと「感謝」とだけ言いサインをする。
「これで戦争は終結しました。全てのドルツ軍に対し布告をしてください。
我々は妨害していた電波全てを停止します」
『戦争は終結しました。全てのドルツ軍に対し布告をしてください。我々の妨害は停止します』
「ありがたい」
『ありがとう』
「ではあなた方の総司令部に高官を派遣し、全てのドルツ軍に終戦を宣言し、艦艇はボンと東海岸へ浮上寄港させてください。
地上軍は全て施設を放棄し、ボンに集結してください。できますね」
『総司令部に高官を派遣し、全てのドルツ軍に終戦を宣言し、艦艇はボンと東海岸へ浮上寄港。
地上軍は全て施設を放棄し、ボンに集結してください』
「はい、このベトラーセンがします。頼むぞ」
『このベトラーセンが全てを放送します』
「では橋本陸将補と数名でついて行ってください。あと3人の内一人お願いします」
『ではリナいきなさい』
「はい族長」
本日15:00にドルツ国が使用する全ての無線周波数により、ドルツ敗戦が放送された。
ありがとうございます。
敗戦処理・・自衛隊はどう動くのでしょうか。
またダークエルフが使った塔はどうなるのでしょうか。