第185話 ダークエルフ宮殿
第185話投稿します。
古川様レビューありがとうございます。参考にさせて頂きます。
誤字脱字報告ありがとうございます。
投稿が遅くなってすいません。宮殿を1話にしようと書き溜めていました。
結果、あまり新しい発見はないのですが・・・・
ハイエルフを乗せたオスプレイは、中央を走る幅広い街道に着陸した。
ダークエルフ王宮調査に当たり、罠や迷路などを警戒する為であるが、当然ダークエルフ本人が戻ってこない保証もないのである。
その全ての対処にハイエルフは心強い味方となるであろう。
「族長つきました」
『ごくろうさま』
族長にリナ、ミーナ、レイナの通訳3名と村から8名を加えた12名がドルツ領の首都「ハイデルバーグ」中心部にある、そこだけ異様な中世作りのダークエルフ宮殿前に集合している。
「族長、これは・・・」
『ダークエルフの趣味なのでしょ』
「それにしても、日本で見た「ベルサイユ宮殿」の様です」
『ですが、そこまで大きくはないようですね』
確かに「ベルサイユ宮殿」を模したと思われる1600年から1700年のバロック建築の様である。
しかも前庭は忠実に再現され、宮殿に続く道は全長500mほどあり、樹木も手入れをされている荘厳な雰囲気を醸し出している。
宮殿前には噴水が綺麗な水を流しており清涼感すらある。
しかし、宮殿自体は2階建てであり、本場の「ベルサイユ宮殿」はコの字状に建物が建てられているのだが、この宮殿は住まいがダークエルフだけなのか、2階作りの普通の住まいの様である。
ハイエルフ達には、陸戦本部から佐々木副司令が合流している。
「凄い建物ですね、まるで日本の高級フレンチレストランの様です」と佐々木。
恵比寿にある三ツ星シェフがやっている超高級フレンチレストランを思い出している。
『なるほど、確かに作りは近いですね』と突然族長が佐々木の思念を読んで話す。
「あっ読まれましたか、入った事はありませんが憧れでした」と佐々木。
陸戦幕僚が佐々木に何かを伝える。
「そうでした。ハイエルフの皆さんには建物内部の調査をお願いします。
その為に警護として1個中隊を付けます。また事前調査に1個中隊を、庭の調査に1個中隊を出しますのでよろしくお願いします」
『わかりました』
「それでは探索を開始させます」と言うと佐々木は幕僚から無線マイクを受け取り指示をする。
「佐々木1等陸佐から、第1水陸機動連隊本部、今より宮殿探索を開始する、手順は事前送ったデータどおりだ。当方は現在宮殿前にハイエルフ12名と共にいる。
手配完了次第、護衛をよこして欲しい。以上だ」
通信を終了後5分で第1水陸機動連隊が整列して来た。
「隊長、整列しました」と報告を受ける。
第1水陸機動連隊隊長兼陸戦隊副司令の佐々木は集まった機動連隊に指示を出しながら、第1水陸機動連隊本部を宮殿前道路に設置する様に指示をだす。
「本部並びに第1中隊「1水機-1」は周辺庭園の調査、人外な罠があるかもしれない調査は慎重にせよ。
つづいて第2中隊「1水機-2」は宮殿内部に敵勢力がいないか調査。
第3中隊「1水機-3」はハイエルフ達の警護だ。一人も傷つけられる事の無いように。よいな」
「はっ」「対処開始」一斉に第1水陸機動連隊は散っていく。
第3中隊はハイエルフ護衛であるので、宮殿庭前に警戒態勢で並ぶ。
「族長、第2中隊からの報告をお待ちください」と佐々木。
『了解した』とだけ返す。
やがて各方面からの報告が本部に集まり始める。
それによると、庭及び建物内部の半分について調査を終えたが、現在の所は罠や建物に人員は確認できていない。
まだ半分の調査であるが、宮殿及びその敷地に人はいないとの報告である。
引き続き全ての調査を指示する。
「まだ調査半分ですが、ダークエルフもドルツ兵もいない様です」と佐々木は族長に報告する。
『我々もダークエルフの思念を捉えられていません、不在だと思います』と返す。
「佐々木一等陸佐、宮殿に人の痕跡はありますか」とレイナが聞く。
「レイナさん、それも確認できていません」
「そうですか、これだけ広大な庭園や建物を整備するのに人がいないと言う事は考えられないのですが」
「はい我々もそう思います。もしかしたら民間人を雇い整備していたなら、「ハイリン」に逃げているのかも知れません」
ミーナが言う。「うーん、ダークエルフはこのドルツ国最高の機密である筈ですから、民間人に手入れをさせる事はあり得ないと思います」
リナが口を開く、「あなた達お待ちなさい。ダークエルフの立場を私たちに置き換えると、ドルツ兵や民間人を使用するなどあり得ません。手入れは不要かダークエルフの思念によって操られた人が手入れをしていると考えるのが自然だと思います」
「そうですね。それが自然ですね。機密を知っても記憶を操作して持ち出させない様にするでしょう」とミーナ。
『あなた方の考えている事は間違っていないと思います』と族長。
続けて
『宮殿内部の調査を始めればわかる事です』
「「「はい」」」
『ミーナ、副総司令を捕らえたと聞いています。いろいろ聞いてきなさい』と族長。
「はい、族長」
「副総司令はアメリカ海兵隊が保護管理しています。案内をつけますので一緒に行ってください」
佐々木は第3中隊長に命じて4名を選抜、ミーナに同行させる。
ミーナは案内されるまま、海兵隊本部へと行く。
第31海兵遠征隊本部は「ハイデルバーグ」の北側に設置されている。
佐々木は副総司令の尋問をする事を陸戦隊本部経由で海兵隊本部に連絡をしてもらう。
佐々木の元に「探索隊1階、2階完了。引き続き地下に入ります」と報告が入る。
「お待たせしました。宮殿内部1階と2階の調査は終わった様です。行きましょう」
佐々木は第3中隊長に合図を送ると、第3中隊は先頭に立って警戒しながら宮殿に近付いていく。
「この先はどんな罠があるかも知れません。危険を感じたならすぐに逃げてください」と佐々木は念を押す。
『ありがとう、気を付けます。あなた方も危険だと感じたならば逃げてください。皆を守る事はできません』と族長は答える。
「それは・・・」佐々木は言いかけてやめる。
やがて宮殿入り口に通じる大理石の白い階段が見えて来た。
やがて族長達は大きな白い扉前に到着し、扉を開けて内部に入る。
「豪華な作りですね」と佐々木が感心する。
『・・・・』族長は何も念じない、悪趣味なのであろうか。
扉内部は大理石が使用された白い空間となっていた。
入ってすぐに目につくのは、2階への階段が両側にあり、どちらからでも行ける様になっている。
しかも階段は少し湾曲して登っており、優雅なドレスを着た貴婦人が降りて来ても違和感がない様に感じる。
「なんて贅沢な作りに・・・」佐々木は声が出ない。
『これはダークエルフの趣味と言うより、人間が想像した「宮殿」と言う物を具現化した様な違和感を感じます』と族長。
佐々木は族長の言う通りかもしれないと思っている。
報告書にあったハイエルフの村は、木造作りで文明的な物は一切ない。
自衛隊によって川の水を浄化して水道と言う形で供給していたが、元は川に汲みに行っていたようだし、竈も木を乾燥させ薪にして利用していた。
その様な事からも、ダークエルフが中世バロック建築を好んでいたと思えないのである。
そんな考えを振り切るかのように佐々木は続けた。
「族長、一階から探索をしたいと思います」
『よろしい』
第2中隊の報告では、1階には部屋が8つあり、応接室が主で20名程で会議ができる部屋もあるとの事。
1階全ての部屋を回ったハイエルフは何も言わない。
「では族長、引き続き2階の探索をお願いします。報告では開かない扉が2つ確認されています」
報告では2階には部屋が6つある。
その内3部屋は控えの間の様で、簡易な応接だけである。
1つは謁見の部屋で豪華な内装であるそうだ。
開かない部屋は、その謁見の間に通じる部屋の扉、そして、2階一番奥の部屋である。
開かない扉の奥が大きな部屋である場合は、廊下の扉、そして謁見の間の扉が1つの部屋に繋がっている可能性がある。
2部屋であった場合は、2つの部屋が続いており、廊下からの扉と謁見の間の扉は別の部屋となる。
『では最初に開かない扉に行きましょう』
族長達は謁見の間に入っていく。
「開きませんね、鍵でもかかっているのでしょうか」と佐々木。
レイナが言う「佐々木さん、思念による閉鎖が確認されます」
「思念ですか」
「はい、ダークエルフが施した物であると考えます。そしてダークエルフにとって人間に入られては困る部屋だと思います」
「寝室か何かでしょうか」
「ふふふふ」レイナは笑うだけであった。
人間の女性ならそうなのであろう。
だが相手はダークエルフである。
「どちらにしろ、この宮殿の主は不在の様ですから入りましょう」とレイナは当然とでも言うように入ろうとする。
『まちなさい』突然族長がとめる。
『なにか・・・衝撃が加わる仕掛けがしてあります』
「衝撃ですか」とレイナは扉のノブから手をはなす。
『一旦廊下に出て、扉を解除しましょう』
ハイエルフは廊下に出る。
『あなた方は爆風に巻き込まれないように、私たちの後ろで待機してください』
「はぁ、そうします」訳が解らず、佐々木も3中もハイエルフの後ろで待機する。
全員が部屋から出たのを確認すると
『ではやりましょう』と族長は念じ、ハイエルフ全員で扉の思念を中和するべく念じ始める。
部屋の奥では「カチ」と音がしてロックが外れる音がした。
『まだ罠があります』と族長。
「私たちが見に行きます、佐々木さんはここでお待ちください」とレイナ。
「はぁ護衛が守られては・・・」と佐々木が愚痴をこぼす。
「いえ、あなた方では解除できないので私たちがやります」とリナ。
「そういう事でしたらお待ちします」
それは思念でしか開けられない扉であったが、ダークエルフが魔界に逃げる時しかけた手りゅう弾が1つ、ドアに連動してピンが抜ける様になっていた。
宮殿の探索にハイエルフを連れて来るであろうと言うダークエルフの読みであったが、族長はその残留思念を読み取り罠がある事を察知していた。
『リナ、はさみはありますか』
「族長ございます」リナは持っていたバッグの化粧ポーチから小さなはさみを取り出すと族長に渡す。
族長は屈んでドアを少しだけ開け、手りゅう弾に繋がる紐を切った。
『これで大丈夫です』
族長は扉を開け放ち中に入る。
そこには粗末な長ソファーが1つだけある、白い空間であった。
「なにもありませんね」とリナ。
「扉もありませんので、独立した部屋ですね」とレイナ。
『次の扉にいきましょう』と族長。
廊下に戻って来たハイエルフ達は佐々木に「なにもありませんし、独立した部屋でした」と報告し、次の扉に向かう。
「一応内部確認」とだけ命令すると直ぐに隊員は動いた。
廊下の一番端の扉の前
『残留思念は感じません』と族長が念じる。
「では」とリナが言うとハイエルフ達は思念を扉に集中させる。
「カチ」と言う音がして扉のロックは外れた。
「族長」とレイナ。
『いきましょう』
扉の中は広い空間でダークエルフの衣装が詰まっている。
特に罠もない様だ。
「地下に行きましょう」とリナ。
地下探索していた2中から報告が入る。
「地下に開かない扉が1つ、その他は倉庫」
「我々もそちらに向かう」と3中隊長が連絡を入れる。
地下1階には倉庫と思われる空間が広がっており、その先壁にはやはり扉がある。
「あれですね」と佐々木が確認する。
地下空間は3個中隊が入れる程の大きさがあり、何に使用していたかは不明であるが、扉だけは存在している。(建物より地下空間の方が広い)
『やりましょう』
「「はい」」
ハイエルフ11名で扉の解除を試みた。
2階と同様に思念によるロックがかけられており、「カチリ」と重々しい音でロックは解除される。
『罠はありません』
3中隊員が10名掛かりで開ける。
木製の扉に鉄を打ち付けた重く大きい扉が少しずつ開く。
「なんだこれは」隊員が扉の中を見て言う。
5m×5mの空間に中心となる部屋の真ん中に高さ1m一辺の幅30cmの石柱が立っている。
『これは神の扉の操作パネル』
佐々木は報告書にある「神の扉」は通路の端に石柱があり、それを操作すると岩の通路に空間が現れそれが通路であると説明されていた。
ここにある部屋の中央にある石柱も確かに「神の扉」を操作する物に違いないが、真ん中に存在するなどとは聞いていない。
「族長、「神の扉」の操作盤なのですか」と佐々木は聞く。
『そのようです、ただしこの様な形状は知りません』と族長は答える。
「確かに初めて見ました。この部屋全体が扉になるのかもしれませんが強大な魔素が無いと操作は無理だと思います」とリナも目を細める。
「この部屋全体が扉ですか・・・」と佐々木。
「私もそう思います。首都は民間人もいた筈で、全て「ハイリン」に移したとか聞いています」とレイナ。
ドルツ捕虜を思念で尋問した時の話を思い出す。
「でしたら、ダークエルフが民間人をこの部屋から「ハイリン」に送ったと言う事ですか」
「判りません。ミーナの報告を待ちましょう」とリナ。
一行は地下にも手がかりが無い事を確認して外にでる。
ミーナから思念が送られてくる。
「族長、副総司令の記憶ではダークエルフは艦隊が南大陸北に現れたと同時位に首都の民間人を「神の扉」を使い街に送り届けたとあります。
それからダークエルフは魔界に行っているそうです。
それは例のダークエルフが搭乗した飛行機を落とした時、戻って来たダークエルフは片腕が無くなり、すぐに魔界に行ったとの事です。その時の説明では「神から手を出すな」と言れたそうです」
「ダークエルフは私たちが上陸する直前に魔界に避難したようです。直接戦闘に手を出すなと「神」に言われていたそうです」とリナが思念で解った事を佐々木に伝える。
「解りました。ダークエルフは魔界にいると、不在と言う事ですね」と佐々木。
『その様です。疑問はありますが』と族長。
なぜ艦隊を見に来たのか、本当に手を出すつもりはなかったのか・・・疑問が沢山浮かぶ。
だが・・・そんな事は無いだろうとも思う。ダークエルフなら「神」の言いつけに理由を付けて介入しようとするであろうとも思う。
『佐々木一等陸佐さん、「ハイリン」、「ドルトムント」と言う民間人が保護されている都市には何時行けますか?』と聞く。
急に階級付きで言われた佐々木は緊張が高まる。
「はっはい。現在はまだ予定がありませんが、港町「ボン」占拠はドルツ民間人保護の為の作戦です。
必ず民間人保護を行いますので、しばらくは猶予をお願いします」と緊張して答える。
『わかりました。私たちに興味があるのは、ダークエルフが使用した塔です』
「はい、解っております。南司令からも「神との対話ができる塔」だとお聞きしております」
『では戻りましょう』と族長。
佐々木はほっとする。緊張がほぐれる様だ。
なぜ宮殿地下に入った時から緊張したのか理由は解らないが、その時から今まで緊張が続いていた。
ありがとうございます。
やはり本作にまとめて書き足す事にしました。
結果、第二章が長くなってしまいますが、よろしくお願いします。