第176話 トーマス日本に行く その1
例のトーマスとリエラが日本に行き国交条約を締結します。
長くなりましたので2つにわけました。
誤字脱字報告ありがとうございました。あまりの多さにびっくりして自信喪失中です。
帝国は解体され、県と呼ばれる都市連合からなる組織に変えられていた。
各県は代表者1名を選出して、ドーサ大陸平和協議会(旧帝国、首都は旧帝都)が発足し、各県代表と平和協議会構成メンバーで様々な問題を検討、処理している。
現在の協議会代表は例のトーマスが務めている。
トーマスはスルホン帝国崩壊後、皇帝からの直接依頼によって皇帝印を預かり、自衛隊に協力して帝国を議会制民主主義へと移行させ、民意を政治に反映させたそれまでの帝国とは違う国とするべく奮闘していた。
トーマス自体は「いやいや」ながら協議会代表をさせられているわけだが、自衛隊の言う通り暫定政府として旧帝国の分裂を防ぎ、民主主義的教育や議会設立を働きかけ、本人の意思とは別にドーザ大陸平和協議会にとって無くてはならない人物になっていた。
またトーマス達が懸命に働いていたムリナ街に作られた臨時政府は、陸上自衛隊の調査が終わった皇帝城に戻って、いつもの執務を続けていた。
帝国崩壊から7ヶ月が過ぎた。
「トーマス代表。行くのですか」リエラが聞く。
「リエラ、当たり前だろう。日本政府の招待だし、未来を見るのも悪くないだろう」
「ですがトーマス代表。まだ旧帝国は再建の最中です。代表不在に乗じて反乱を・・」
「リエラ。考えすぎだ、旧帝国親衛隊が警察や警備隊に入って、陸上自衛隊の指導の下により公平な世の中になっているではないか、それに反乱については、我々よりも陸上自衛隊の方が目を光らせている。
それは民意を反映していないからだと思う
「えー。トーマス代表もまるく・・・」
「リエラだけ、絞首刑だな」
「裁判も罪状も無しでですか」
「うむ。リエラについては全て許される」
「理不尽極まりないです」
「それがリエラだからだ」
「説得力ないですよ」
「と言う訳で日本に行くぞ」
「話をすり替えないでください。まだ混乱が続いているのに」
「だが、儂は日本行って、その日本人女性が接待してくれる酒場に行きたいのじゃ」
「本音が出ましたね。日本から言われているドーザ大陸開発協定なんかどうでも良いのでしょ」
「当たり前だ。本心では皇帝印も日本に渡したいくらいだぞ」
「あーあ。言ってしまった」
「ふふふ。儂は酒飲んで楽したいのじゃよ」
「あらら、5ヵ月前から給料も出たのに全て飲んだのではないでしょうね」
「ん?金なら少しはあるぞ」
「ふーん。トーマス代表なら全部飲んだと言っても驚ませんよ。それに覚えています?酒代貸しがありますが」
「そんな昔の事は忘れた」
「都合の良い記憶力ですね」
「そうだろう、凄いだろう」
「褒めてません。それでいつから行くのです」
「7日後に出発だ」
「お供はどうします。武官も文官も連れて行かねば」
「うーーーん」(連れが多いと酒場に行くことができん)
「人数が多いと酒場に行けないとか、考えてないでしょうね」
「ギクなぜわかる」
「やはりそんな事考えていたのですね」
「はははは」
「ダメです笑って誤魔化しても」
「リエラ。一行の人事は任せる。ついでに交渉も」
「それは良いですが、交渉締結はトーマス代表しかできませんよ」
「それもちょいちょいと」
「できません。それに代表が行く理由もそれでしょう?締結まで私がするならトーマス代表はここで執務してください」
「そんな、リエラ様」
「今更なついてもダメです」
「ちぇー。つまらん奴」
「つまらなくも結構。代表は代表にしかできない仕事をしてください」
「うっ」
そんなベテラン漫才師の様なやり取りをしながら、日本使節団の選考を済ませ一行は日本に旅立った。
「大変です代表。さっき親しい陸上自衛隊の方から聞きましが、日本はなんでもドルツとか言う国と戦争中らしいです」
「えっ」トーマス代表、同行の武官、文官も一斉にリエラを向く。
「ちょっと待てリエラ、ドルツって旧帝国大陸にあるおとぎ話じゃないか、
なんでも当時の帝政王国に対し神が怒って、神の軍隊を派遣して、2週間で大陸全土が燃やされつくしたと言われる神の軍隊ドルツの事だろう」
「ええ、私も何千年前のおとぎ話だと思っていましたが、実際に日本はドルツと交戦中だと。日本に着いても気を付けてくれと言われました」
「えっとリエラ、話しを整理すると神の軍隊である日本と神の軍隊であるドルツが戦っていると言う事か」
「どうやらそうらしいです」
「いったい・・・」
「そうですよね、訳が解りません」
「まったくだ。おとぎ話では「背徳」にまみれた帝政王国に対し神が怒り、突然神の軍隊ドルツが現れ、帝政王国の軍隊や砦をあっという間に破壊して、当時の王都を滅ぼししばらくはドルツが大陸を支配し、ある日突然消えたとおとぎ話にある。その旧制王都の遺跡だけは残っていたが。これはどういう事なんだ」
「トーマス代表、解りません。なぜ神の軍隊同士が戦っているのか」
「だな。日本についたら聞いてみるか。おとぎ話ではドルツの首都は南大陸にあるとか聞いていたが」
「ええ、自衛隊も南大陸に上陸してドルツ首都を攻撃するらしいです」
「と言う事は、神の軍隊ドルツより日本の自衛隊の方が強いと言う事か」
「どうやらそうみたいです」
「何千年前のおとぎ話のドルツ軍隊もあっという間に大陸を席捲したと聞く。そんな強い軍隊より自衛隊が強い等と」
「トーマス代表。ここで推理しても仕方ありません。日本に到着してから考えましょう」
「そうだな。情報が足りん、考えても推測しかできん。もう考えない」
トーマス一行は旧帝都西側のキャラ村に出来たドーサ大陸西空港から大三角州空港(ドーサ大陸東国際空港)に向かい、ここで入国手続きを済ませ、大三角州空港(ドーサ大陸東国際空港)から国内線で羽田に向かっている。
ドルツ国と戦争していても日本は平和である。
トーマス一行は50名もの大使節団であったが、各旅客機は日本政府が特別に手配してくれた特別機である。
「リエラいよいよ日本だな」
「ええ、ドーサ大陸東海岸は全て日本政府の管轄です。一部にアメリカとかフランスとかロシアとか、聞きなれない国名を聞いていますが、全員この時代に転移してきて、日本が勝ち取った領土を分割して移譲しているとか、やはり領土って必要なのですかね」
「うーん。それについては良く解らん」
「でも旧帝都領についても日本の管轄とか良く言い出しませんでした」
「日本もそんなに国土が欲しいわけでは無かろう。守るのも領民を食わすのも大変だからな」
「そんな物でしょうか」
「そんな物だと思うぞ」
「はぁー」
「ところでリエラ。日本の首都に行くわけだが、ムリグナ中央都市に反映させる事は忘れていないだろうな」
「ええ、トーマス代表。旧帝都(ムリグナ中央都市と改名)に日本の商業や工業を定着させるための文官と自衛隊や警察を見て訓練を見直す武官が同行しています。みんな張り切っていますよ」
「そうか。折角東京に行くのだ吸収できる物は全て吸収させて旧帝都再建の足掛かりにせねばな」
「おっトーマス代表まじめに仕事してくれる気になりましたか」
「いや、やるのはリエラと文官に武官だと思っている」
「あらら。変わらないですね」
「当然だろう。そうでもなきゃやってられん」
航空機のVIP席で漫才をするトーマス達である。
「トーマス代表、いよいよ日本ですよ」
前方の地図に描かれている飛行機マークが日本固有の領土に入った事を示している。
「北海道と言うところらしいですね」
航空機の左側窓から見える大地を指さしてリエラが言う。
真下は海である。
この頃の日本は米軍に指定されている航空路がある程度解放され、大三角州から羽田に至る、最短空路が開設されていた。
遠回りして羽田に至る、稚内からの航空機と同程度の飛行時間で大三角州から羽田には着ける。
しかも大三角州は日本が空路を勝手に決めて良いとなれば、最短距離での空路開設が実現している。
稚内-羽田間は1時間30分のフライトであるが、大三角州は直接日本海を通り、北海道をかすめ、秋田、福島上空から羽田に至る。距離は遠いのだが直線で行ける為に所要時間は同程度である。
いよいよ着陸となる。
「トーマス代表、東京は高い建物が多いですね。それに車も、人も多そうです」
「リエラ燥ぐな、田舎者と思われるぞ」
「いえ、これだけの近代都市を見せられれば、誰でも興奮しますよ」
「そうか。だが東京に降り立つと更に驚くことがあると思うぞ」
「トーマス代表は東京詳しいですね」
「うむ。自衛隊と毎晩・・ゴホゴホ、親交しているからな」
「お酒ですね」
「いや、そのなんだ」
「絶対酒ですよね」
「そりゃーお近づきの印に少し」
「お酒ですよね」
「いろいろ聞き出せたし、東京についても日本についても」
「そういうお酒は否定しません。ですがストレスをお酒で誤魔化す飲み方は体を壊しますよ」
「うむ」
「到着したようですね」
「凄いなムリナからドミニクに行くのだって早馬で10日も掛かるのにな。文明って凄いな」
「ホント凄いですよね。騎兵隊が移動する距離では考えられません」
「ああ、1日50kmが限界だからな。それに馬もつぶれるしな」
「ええ。こんな遠い所から自衛隊は来ているのですね」
「そうだな。そして帝国をあっという間に、元帝国軍人としては複雑な心境だぞ」
「本当に戦わなくて良かったと思います。戦っていたなら今頃は・・・」
「ははは。酒も飲めんな」
「そういう問題ですか」
「そういう問題だ」
「はぁー飲み過ぎて会談に遅れるとか無しですよ」
「えっダメなのか」
「当たり前です」
トーマス一行のドーサ大陸使節団は羽田のVIP通路から外務省が用意したバス2台に乗り、先にホテルへと向かっていた。
「トーマス代表、宿屋だと聞いていましたが・・・これは皇帝城以上の豪華さです」
「うむ。東京にもこんな所があったのだな。凄いな。皇帝に謁見する為に向かった皇帝城の豪華さにも驚いたが、ここはその比では無いな。豪華だがなんか品がある気がする」
「ここは東京を訪れるVIPが泊まる「ホテル」と言う建物らしいです」
「カリム文官。ムリグナ中央都市にもこんな宿屋を作りたい。地方都市から集まる代表の為の宿泊施設を設計して欲しい」
「トーマス代表。早速設計図と内装見本を外務省にお願いしてみます」
「頼むぞ」
「はっ」
「おっ仕事してますね」
「誰だと・・」
「えーとトーマス代表はインペリアルスウィートと言う部屋らしいです。最上階だそうです」
「えっ老体に鞭打って階段を上るのか」
「ご老体。エレベーターがありますよ」
「誰がご老体だ。本当だエベレーターがある」
「間違ってます」
「多少の事は良いのだ、通じれば」
一行をホテル支配人が迎え、ベルボーイが荷物を運ぶ。
「いらっしゃいませ、ドーサ大陸平和協議会トーマス代表と使節団の皆さま。各お部屋はそれぞれご案内いたしますので、しばらくお待ちください。
カフェテリアがございますので、アルコール以外の物をサービスいたします」
「ちぇ、アルコールが無いのか」
「トーマス代表はしたないですよ。素直にお待ちください」
トーマス、そしてリエラから順に呼ばれ案内された。
トーマスはその部屋の豪華さにびっくりしていた。
「失礼します。リエラです」
「うむ入れ」
「無理です。オートロックとかで鍵が無いと入れません。開けてください」
「やれやれ」
リエラは入るなり部屋の豪華さに目を奪われた。
「凄い。会議もできますね」
インペリアルスウィートは部屋が4つあり、食事、寝室が2つに20名程度の会議ができる部屋がある。
「超VIP待遇ですね」
「これが招待した貴賓客を泊まらせる宿屋なのだな」
「凄い部屋ですね。私の部屋も応接室がついています」
「そうか。凄いな」
一行は荷物を置き、またバスに乗って外務省を訪問していた。
100名は入る大きな会議室に使節団一行は通され外務省職員を待っている。
「お待たせしました。お久しぶりですトーマス代表」
ドーサ大陸で顔なじみとなった外務省政務官の富沢が入って来た。
「おお、富沢殿お久しぶり。御変りはありませんかな」
「はい。ようやく2ヶ月前に日本に戻りました。その節はお世話になりました。
そして私が使節団の皆さまのお世話係を申し使っております。
行程は今から渡しますので、お一人一枚をお受け取り下さい」
と言うと同行の職員が5名で紙を配り始めた。
結構厚めである。
「はい。行き渡りましたね。
では説明します。
まず先に武官の皆さまから説明します。
武官の皆さまは防衛省にて説明と見学が予定されています。
いまからバス移動ですので簡単に説明します。
武官の皆さまは、使節団の皆さまとは別行動になります。
自衛隊、警察、消防、そして救助隊に海上保安庁と行き先が多彩で工程も詰まっております。
この先は防衛省で再度説明がありますので急ぎバスに集合して頂けますか」
そう言うと、ドアから職員が入り、大陸語で「武官の皆さまはお集まりください」と言って、皆を引き連れ出て行ってしまった。
「次は文官の皆さま、担当が決まっている様なので、政治や政府関連を視察なさる方と都市視察の皆さま、そして商業、工業を視察なさる方に分かれます。
政治や政府関連施設の視察なさる方は、各政府機関との調整をしていますので、行程Bを参照してください。
都市視察の皆さまは、本日東京1泊で翌日から名古屋、大阪、神戸、京都、福岡に最終札幌となります。
移動が多いので疲れましたら同行する職員にお声がけください。
なお、移動は新幹線を使用します」
突然「おお」と言うどよめきが起こる。
ドーサ大陸で語られる「日本にある夢の超特急」に乗る事が出来る事が興奮の原因であろう。
「ははは。では続けます。工業、商業関連の視察なさる方は行程Dを参照願います。
先に商業、東京都内を見学、そして中小工場が密集する大田区や江戸川区、観光の台東区や千代田区、そしてお台場などの商業施設にディズニーランドとシーを見学して頂きます。
他の方の訪問先などについては行程BCを参照ください。
そして代表を含む条約締結の予定は行程Aを参照願います。
本日はお休みで、都内散策をして頂きます。
明日から条約締結が幾つかあります。
また、正式に国交を結ぶ事になりますので、明日総理との国交締結後に、天皇陛下謁見が入り正式な友好国としての承認がなされます。
その後に再度当壁総理や各大臣との会合が予定に入っております」
「うむ。忙しそうだな」
「お仕事ですね。トーマス代表」
「リエラ、お前先に締結条約について審議してこい」
「言われなくてもしますよ。その間酒飲まないでくださいね」
「無理だな」
「即答ですね」
「うむ」
残った文官達は何時もの光景になごんでいた。
「はい。ではホテルに戻る方とここで国交条約を検討する方に別れて頂きます」
トーマスはホテルに戻る事を選択した。
「ではリエラさん。始めましょうか。別室を用意しています」
リエラと文官数名が締結前交渉に入る。
トーマスはホテルに戻っていた。
「やーっと一人になれた。さて夕食前に酒でも飲むか」
「にまっ」としたトーマスは、ボーイに説明して貰ったミニバーの扉を開けてずらり並んでいる酒を眺めていた。
「ボーイの話では、氷と水は電話で頼むらしいと聞いたが、このフロアのエレベーター前カウンターでも頼めるか」
トーマスは電話が面倒なので、カウンターに行き、水と氷とお湯を頼んだ。
夕食前だが、トーマスの酒は止まらくなっていた。
「旨いな。大陸と大違いだ」
その頃リエラは外務省職員との締結文書交渉に奮闘していた。
その内容は外務省にてひな形を作り、リエラ達文官が大陸の現状に合うように修正していくと言う作業である。
最初、戦後補償等を心配していたリエラであったが、皇帝ガリル3世が帝国にため込んだ財産等を、主に金貨の価値が高いらしいが、それを日本買い取り価格に換算して相殺してくれた。
価格は日本円にて1兆円近いらしいが金貨を市場に流すと金相場(実質日本国内相場)が下がるらしいので、日本政府預かりとして、ドーサ大陸開発(主にインフラ整備)に当てると言う事らしい。
そんなこんなで徹夜になってしまった国交条約案については一旦落ち着き、明日の内閣閣議にて審査を行い、現在開催されている国会に法案として提出すると言う事らしい。
リエラは外務省からタクシーを呼んでもらい、ホテルへと帰って行った。
トーマスは昨夜酒を飲みよい気分となっていたが、代表としての自覚なのか酔いつぶれる事は無く、本日の予定をこなすべくホテルを出発している。
トーマスは午前中当壁総理と会談し、記者会見にも総理と二人で現れ、ドーサ大陸の開発状況や日本との国交締結について答えるのだった。
つづいて午後からトーマスは国会にて挨拶を行い、再び外務省にて国交条約案について説明を受け、ホテルに戻って行った。午後8時になっている。
「うぉー疲れた」トーマスはソファに倒れ込む。
「リエラは何処だ」同行した文官に呼ぶように伝える。
「お呼びですか。代表」
「リエラ・・・儂のサポートはどうした。いなかったではないか」
「ええ、昨日は外務省に泊まり込みで国交案をまとめていましたよ。戻ったのは今朝の9時です。
死ぬかと思いました」
「儂は一人で当壁総理と話したり記者会見したり、国会で演説したりで疲れた」
「お疲れ様です。ホテルで仮眠取って外務省で見ていましたよ」
「まだやっていたのか」
「当たり前ですよ、国交締結が終われば開発援助に警察や湾岸警備にドーサ大陸軍に渡す武器等輸出に関する合意、そして日本の庇護下に入るための相互協力協定にドーサ大陸平和協議会で制定する為の法案作成と仕事が山積みですからね」
「ふん。儂は疲れたのだ」
「子供ですか。自分の事は自分でお願いします」
「いやだーー」同行した文官も「またか」と言う顔をしている。
「はいはい。トーマスちゃん泣かないんでちゅよ」
「・・・」
「そんな事より、ドルツについて解りましたよ。
突然神の啓示を受けたダークエルフがドルツに日本と戦えと命令したとか。
日本は攻撃を受けて仕方なく戦っているとか。
しかも日本にドルツが上陸して日本人を人質にしたとかで、日本は無謀な戦争を止めさせるために
南大陸まで行ってドルツ首都を狙っているらしいです。
ここ何日かで決着するだろうと外務省は言ってました」
「それは秘密ではないのか」
「ええ当然日本国民も詳しくは知らないと思いますよ」
「そうだろうな」
「戦争となると目が輝きますね」
「根っからの軍人だからな。こんな仕事より武官としていたかった」
「いや皇帝から印を預かった時点で無理だと思います」
「そうだな。あれから変わったな。他に人もおらんし、参ったな」
「あっそうだ。ガリル3世ですが日本の下町で働いているそうです。
なんでもお妃様と皇女様とお暮しになっているとか、2人は外務省で我々があげている文書や条約の翻訳をしているそうで、皇女様は大学に入学したとかするとか聞きました。
お3人ともお元気らしいです。
それと、武官についてはムリグナ中央都市から遅れてサリエルが到着したので任せています」
「皇帝もただの人か・・・でも日本で良かった。旧帝都なら皇帝擁護派が暗躍する所だな」
「全くです。日本人たちの先を見通す目は確かですね」
「本当だな」
「さて・・・トーマス代表。このホテルにはバーがあるらしいです。土産話の一つとして行きませんか」
「リエラ・・・お前気が利く様に・・・」
「トーマス代表泣かないでください。行きましょう。夕食はバーで取りましょう」
「うっぅぅ、行く」
リエラも仕事疲れでバーに行き飲みたい気分となっている。
「凄く暗いが見えなくもない」とトーマスが。
「ええ、文官も連れて5人ですね」リエラが「5人」と手を上げる。
案内はテーブル席に連れて行き、急遽ドーザ大陸語で書かれたメニューを出した。
リエラはみんなにスコッチの水割りと食べ物を5品頼みトーマスに向いた。
「スコッチにしました。トーマス代表好きでしょ」
「うむ。あのウイスキーとか言う木の香りがする酒は旨い」
「でも明日も仕事なので水割りです。日本を立つ最終日にはもう少し強めでも頼みますよ」
「そうか期待している」トーマスはホテルバーの持つ重厚な雰囲気に呑まれ大人しくなっている。
2時間程度飲んだトーマス一行は部屋に戻って寝る準備に入っていた。
「トーマス代表、リエラです」
「入れ」トーマスがドアを開ける。
「皆の前では言えなかったのですが、日本はいよいよドルツ首都に向けて進撃開始だそうです。
ダークエルフは不在だそうで、日本が勝ちそうです」
「やはりな。ドルツ・・南大陸に上陸を許した時点でドルツの負けは決まったも同然だったな」
「ええ全くです。それで明日国会に国交案が提出され問題なければその場で決するらしいです。
もう大陸との和平条約は締結していますから、問題ないだろうと言う事です」
「なんか複雑な手続きだな。大陸なら直ぐに決められる物なのに、日本は面倒だな」
「それが民主主義ではないですか。良くは解りませんが」
「そんな物なのか」
「そんな物でしょう」
「締結して、天皇陛下に謁見して、自由だな。よし接待してくれる酒場に行こう」
「まだです」
「つまらん」
「あと少しですから」
「ホントだろうな」
「全ては1週間程度で終わりますから。それと日本視察を提案されています。大阪だそうで行きますよね」
「えっおねぇ・・・」
「接待酒場ですか、連れて行きますよ。まったくもう」
「リエラ良く言った。ドーサ大陸平和協議会のほまれだ」
「はははは。代表だけの評価です」
翌日国交条約は国会を無事通過して(野党工作はあったらしいが、日本の国益に大きく寄与する為に見逃された様だ)可決となった。この為に与党野党会談は事前に行い、短期間で国会通過する様に働きかけていた。
いよいよ、赤坂迎賓館で国交締結して、その足で天皇陛下謁見を行う。
馬車かリムジンが選べるのだが、トーマス代表が馬車は見慣れている為にリムジンを選択した。
「ではトーマス代表。大使館を東京に置いて頂きますので、最初の大使任命を戻りましたらお願いします。
大使館と言っても規模は小さく、連絡事務所となる予定ですが」
「そうか、大使ですか」トーマスは自分がなりたいと思っている。当然リエラに怒られると思うが・・
トーマス代表は天皇陛下謁見を果たし、正式に国交が認められた。
ありがとうございます。
閑話として挿入したのですが、長くなってしまい次回も続きとなります。
すいません。