第172話 ドルツ国首都攻防戦 その4
第172話を投稿します。
街道上に作られた検問所に対し攻撃されています。
誤字脱字報告いつもありがとうございます。感謝しています。
「ドリア・シュナイザー司令。移動指示は完了し、現在基地警備隊第1中隊は敵側面攻撃の為に、基地警備隊第3中隊合流移動を開始しました。
また基地警備隊第2中隊と戦車中隊は敵側面及び敵後方から攻撃すべく、街道を移動し4~5Km先から戦車中隊は側面攻撃に、基地警備隊第2中隊は敵後方に回り込み攻撃を開始します。
なお、軍本部より伝令です。
新型戦車10両を首都防衛の為にフルート基地に向かわせる。
なお、新戦車隊の指揮はトリアーノ中尉が行っている。
協力して基地を防衛し、首都に敵を近づけるな。
以上です」
「副官、トリアーノ中尉とはトリアーノ元帥の次男だったな」
「はい、その様に聞いています」
「親のコネで、中尉程度で新戦車の隊長だと、ふざけているのか軍司令部は。
ここが突破されると首都陥落だぞ」
通常ドルツ国でも中隊長は少佐以上である。
中尉は良くて小隊長のレベルである。
「なんとも」
「良い。トリアーノとかにはせいぜい働いて貰うとするか。
副官。新戦車隊が来たら直ぐに街道を6Km北上させ、敵背後から強襲させよ」
「司令。街道は敵に渡っています。6kmも北上は危険だと具申します」
「なに、ドルツ国最新最強の戦車だぞ、そんな街道を死守しているだけの敵に負けてどうする」
「ですが、敵の兵器武器も解らず、戦車隊を突入させるのは危険だと思います」
「ならここで、敵が来るまで待たせろと言うのか。そんな余地はフルート基地にはない」
「ですが・・・」
副官も解っている。敵に確保されている街道を北上する危険、そして敵の背後から攻撃する優位性。
天秤にかけるなら、ドリア・シュナイザー司令の作戦はギャンブル。だが甘い誘惑でもある。
それに、新型戦車が本当に無敵なら突破できる可能性は大きい。
「解りました。トリアーノ隊長と相談します」
「よし任せる」「はっ」
・・
「かが」内に作られた陸戦司令部。
「佐々木陸戦副司令。「フォース・リーコン」先遣小隊からデータ通信です。
基地左翼兵士1個中隊が右翼に向けて移動中。以上です」
自衛隊から見ると左翼と右翼が逆になる、つまり敵左翼は第3中隊と合流を指示された基地警備隊第1中隊である。
「ふむ。右翼と左翼が合流して、右翼正面の空挺団第1普通科大隊に対する圧力を強める作戦か、こちらも移動させているからな、悟られたか。金蝉脱殻作戦のつもりだったのにな」
(敵に悟られない様に、密かに味方を移動させる作戦)
「司令、ですがまだ海兵隊や水陸機動連隊は発見されていない筈です。単純に空挺団第1普通科大隊を正面と側面から圧力かける為の移動と考えます」
「ふむ。敵将ならどう考える。こちらの移動を」
「多分ですが、パラシュート降下する部隊であるから物資は限られ、戦闘維持能力も低いと判断していると思います」
「常識的にはそうだな。こちらは更なるパラシュートによる物資降下で補給をしていると考えも及ばないと言う事だな」
空挺団第1普通科大隊に対して空挺団本部は食料弾薬に戦車遭遇を想定し迫撃砲弾と84mm無反動砲と砲弾を追加で供給していた。森の中では01式軽対戦車誘導弾は使用に限界がある為、カール君を選んでいた。勿論01式軽対戦車誘導弾も各中隊に2発は携行している。
「ドルツ国では空挺専門部隊はないと言う事ではないでしょうか」
「そう思ってくれるとありがたい。このままで空挺団第1普通科大隊は行けそうか」
「はい、報告通りですと戦力比としては4個中隊対2個中隊となりますが、街道に進出した敵は水陸機動連隊が、右翼に戻れば海兵隊が抑えると思います」
空挺団第1普通科大隊は本部中隊に空挺普通科3個中隊である。
また別の幕僚が答える。
「街道警備の水陸機動団偵察中隊はドルツ国新戦車に対抗する為に01式軽対戦車誘導弾も用意しています。
軽く抜かれる事はないと思います」
「そうだな水陸機動連隊本隊が所定位置に着けば、基地から来る援軍は全て押さえられるな」
「そう願っています」
「敵航空機は最近見ないが、健在なのだろう」
「はい。首都南にある陸軍航空基地がまだ健在である為、先に叩く必要性を進言します。
最近は全てF-35Bとの戦闘に負け続けているので、出撃はしてこないのですが」
「われわれが首都に入ったら死を覚悟して特攻すると思うか」
「はい。我々にとっては嫌な記憶ですが、あり得ます。そして我が方の地上被害も大きくなります」
「そうだな。テロみたいなものだからな、なにも残らない特攻は悲劇だけは残すな」
「はい。都市復興や国復興に割ける人材も不足します」
「よし解った。作戦本部と協議して先に航空基地を次に新型戦車を量産している工場の爆撃を進言する」
「「よろしくお願いします」」
しばらくして、幕僚達から作戦指示書を受け取った佐々木陸戦司令は、オスプレイで「いずも」に作られた南大陸侵攻作戦本部に飛んでいった。
・・
南大陸街道警備の水陸機動団偵察中隊は各小隊に分かれ、一部は水陸機動団施設中隊と共同で堀や塹壕を掘り、街道上には障害物を設置している。
現在最前線は水陸機動団偵察中隊第2小隊15名が、街道上基地から5km地点で検問所を開設している。
「小隊長。森の中に仕掛けた赤外線センサーが複数兵士の移動を感知しています。センサー023と055です」
「森から街道に向かう位置だな。敵の右翼中隊が移動していると警告にあったが、これか」
「可能性はあります。本部へ連絡します」
「直ぐに入れてくれ。残った者は所定位置にて待機。なおAAV7は左側の森に向けて配置。
森に対して周囲警戒行動に入る」
「了解。総員配置に付け、AAV7は警戒配置Cに移動。森を監視せよ」
専任士官(曹長)からの号令で小隊隊員は一斉に動き出す。
小隊長と通信士のみとなった。専任士官は外で指揮を執っている。
・・
急遽移動指示が出た基地警備隊第3中隊は基地右翼の森から街道に向かって、基地警備隊第1中隊との合流を目指して移動していた。
突然街道方向から重機関銃の連射音が轟く。
街道検問所で警戒していたAAV7上部のターレットに乗っている主武器である12.7mm重機関銃M2が唸りを上げる。陸上自衛隊が導入したAAV7はAAV7A1 RAM/RSと呼ばれ兵員輸送タイプである。
A1タイプは機銃席に12.7mm重機関銃M2と40mm自動擲弾銃Mk19が並んで配置されている。
「水陸機動団偵察中隊第2小隊より本部。森から敵勢力が現れ、現在交戦中。敵兵力は中隊規模と推定される。応援要請。至急応援要請」
「本部了解。水陸機動連隊本隊は君らの後方500mに接近。援護を要請する。もう少し持ちこたえて欲しい」
「水陸機動団偵察中隊第2小隊。了解。適時後退しつつ牽制します。以上」
「本部了解。無理はするな」
水陸機動団偵察中隊第2小隊隊員は一部がAAV7の上に乗り、89式5.56mm小銃で応戦する。AAV7も12.7mmM2と40mmグレネードで応戦しながら緩やかに後退する。
基地警備隊第3中隊は移動途中で、街道に一番近い第4小隊が突然の重機関銃により全滅した。
「敵は投擲弾と重機関砲。固まるな散開して取り囲め。
砲兵は迫撃砲を用意、目標前方敵周囲、距離500m1時の方向」
ドルツ兵砲兵は、すぐに手で運んできた5cm leGrW36(50mm迫撃砲)を用意すると射撃を開始する。
5cm leGrW36の有効射程は50m~500m程度で、迫撃砲弾も50mmとAAV7の40mmグレネードと同等であった。
水陸機動団偵察中隊第2小隊はAAV7から距離50m前後で迫撃砲弾が炸裂する。
「小隊長、敵の迫撃砲が届いています。急速後退と応援要請を」
「直ぐに連絡」
「水陸機動団偵察中隊第2小隊より本部。敵は迫撃砲を使用。上空支援の要請」
「本部了解。ただちにコブラを向かわせる」
「水陸機動団偵察中隊第2小隊了解。後退しつつ牽制します」
すると、1発の迫撃砲弾がAAV7の近くに着弾した。
AAV7自体に被害はないが、徒歩で後退していた隊員が砲弾の破片で負傷した。
「敵着弾が正確になって来た。全員装軌装甲車内に退避しろ」
隊員を収容するとAAV7は街道を後退し始めた。
ドルツ兵士はそれを見て追撃を始める。
「砲兵移動。兵士は現在の間隔を保ち緩やかに包囲」
基地警備隊第3中隊の生き残り第1小隊から第3小隊と本部小隊が緩やかに包囲網を狭めていく。
だが、相手戦車への有効打は小銃では無理であった。
「砲兵、今の位置から前進500m、敵を射程範囲内に捕らえよ」
砲兵は14kgしかない迫撃砲を抱え、砲弾を一人4発持ち徒歩で移動する。
・・
水陸機動団偵察中隊第2小隊では、「ハッチ閉じ、機銃手も中に入れ」
AAV7の機銃座は光学サイトが外にある為にハッチを閉じても狙う事が出来る。
水陸機動連隊本隊の指揮車仕様のAAV7が偵察中隊第2小隊の後退するAAV7を発見する。
「あれだな。偵察第2小隊さがれ。交代する。本部車両は街道側道に退避、第1中隊は圧力をかけろ」
「了解。第1中隊先行します」
「偵察小隊より敵迫撃砲使用とある。40mmグレネード同等らしい。気を付けろ」
「了解」
・・
フルート陸軍基地に、新型戦車10両と補給中隊が到着した。
「トリアーノ中尉。フルート基地参謀のフルト・ハイナです。作戦打合せをお願いします」
「フルト・ハイナ中佐。よろしく願いたい。ただ先ほど特別に少佐に昇進して階級章が間に合っていません」
「失礼しました。トリアーノ少佐」
「いえ、戦時特別措置ですので、お気になさらず」
フルト・ハイナ副官は、ドリア・シュナイザー司令が言う程酷い人物には思えなかった。
「さて、当中隊の命令は軍本部から直接出ています。なお、我々の行動は極秘ですので、ご理解をお願いします」
「基地の応援ではないのですね。解りました。ただし命令内容は公開して頂けないでしょうか、基地としても貴戦車中隊に対する支援ができません」
「いえ、それは補給中隊が来ていますので結構です。最新の敵状況だけ教えてください」
フルト・ハイナ副官は判断を保留した。
司令に連れて行くか、独断で状況を知らせるか悩んでいる。
ありがとうございます。